Ω-7のアイリスとSCP-105-C君が本来なら運用が想定されていないプロトタイプの人型ロボに乗る話。プロトコルGATTAIのその少し後。

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えいぷりるふーるです。よろしくおねがいします。
かがみのくにのあいりすのにかんはまだですか?


GATTAIの国のアイリス

 まず、前提として。僕は■■■。異常存在を扱う『財団』という組織に所属している、軍事訓練を受けた高校生だ。正確には、SCP-105-Cという異常存在であり、機動部隊Ω-7なる特殊部隊に加わることになった一員として。

 本来はこの財団が扱っているような異常存在の無い世界で暮らしていた僕は、適当に本を開くと必ず少女の写った写真が挟んであるなんて怪現象に見舞われていたんだ。そんなある日、その写真に触れるとそのまま写真の中に引きずり込まれて、財団の内部、サイト17に移動していた。

 で、件の写真の少女がSCP-105ことアイリス・トンプソンという少女だったことから、僕はSCP-105-Cと呼ばれることになった。

 そうしてしばらくの月日が経って、アイリスは何やら新しく設立される機動部隊のリーダーに抜擢されたんだ。14歳の少女に何をやらせるのかと思ったけど、まあ、調査がメインの仕事だからなんだろう。それなりに上手くやっていけた。*1

 そこで僕もスパイやらオブジェクトの事前もしくは事後調査やらといった仕事をしているのだけど、それは本筋に関係ないから放っておこう。

 

 

 

 僕は、サイト17で自動販売機バトルロイヤルが開催されることを知っていた。何もかも普通だ、きっと。けれども、僕はアイリスの私室から出て少しの廊下で後ろから張り倒された。緊急警報がけたたましく鳴る。僕は殴られるより他に仕方がなかった。*2

 ……何者かが向こうからやってきた。アイリスだ。ただし、体の線がもろに出るようなパイロットスーツを着ているが。財団勤務でSafeクラスとはいえ、SCPだぞ。服装とかこう、色々とあるだろう。

 

「■■■!あぁ神さま、彼を見つけてくれてありがとう!ちょうどよかった。Ω-7のブリーフィングルームに行きましょう!私のチームにはあなたが必要なの!」

 

 そう言うがいなや、アイリスは僕の手を引いてサイト17の廊下を駆けだしていく。

 おかしい。彼女はあんなにΩ-7に対して積極的だったか?確かに機動部隊のメンバーとは友達のような間柄を築けてはいるが、あそこまで喜び勇んで任務に向かうような性格ではなかったはずだ。

 疑問に思いながらも彼女の勢いに引きずられるようにして移動する道中では、カオス・インサージェンシーだのビッグオー・ファイブの技術だのと言った単語が方々から聞こえてくる。というか、腰の武器に加えて日本刀を帯刀する職員がやけに多い。それに、服装や髪型、髪色もだ。まるでアニメだな。なんなんだ……一体。

 そうして廊下を抜け、ブリーフィングルームにまで辿り着くと、そこは殺風景な会議室に似た部屋……ではなかった。

 アニメや特撮、それも日曜日の朝9時や夕方のゴールデンタイムに流れて見かけるようなその指令室のモニターには、ショッキングな緑色の髪をした人物が映っていた。やけにヒラヒラとした黒いマントをつけているのは何故なのだろうか。

 

「ああ、アイリスとキミ。よく来てくれたね。私は、まあ、トゥーとでも呼んでくれ」

 

「──05-2!そんな重要人物が一体なんで……!」

 

 ん?一応05評議会のことは知っているが、あそこの人間は直接SCPに接触することはない筈だ。何が起きているんだ。

 僕のそんな独り言に反応したトゥーは、近くに置いてあったホログラム装置を起動した。

 空中に浮かび上がったのは、巨大なロボとその設計図だ。どうやら5人乗りのようで、変形機能も搭載しているらしい。

 ──サイトとの合体?いや、何かの見間違えだろう。きっと。

 

「これが、カオス・インサージェンシーに強奪されたサイト合体システムの情報によって誕生するロボ、通称"ビッグオー・ファイブ"だ。そして、それが今このサイト17に向かっている。君たちには、このロボの破壊を行って欲しい」

 

 待ってくれ。ここは収容サイトだぞ。いいのか、破壊って。というか、どうやって?まず、サイト合体システムってどういうことなんだ。そう思ってアイリスの方を向くが、ああ、ダメだ。彼女は目を輝かせている。

 

「方法についてだが、今回財団が奪われたのは、ロボの情報だ。同系の物は作れるだろうが、このサイトのコントロールが奪われたり、合体に使われたりすることはない。いわば、イミテーションだな。故に、本来のビッグオー・ファイブではない以上、十分なダメージが加われば破壊は可能だろう。よって、こちらもロボを使う」

 

「ですが、この操縦席は5つありますよね。私たち2人では動かせないのでは?」

 

 え?ツッコむのってその点?とか色々と言いたいことはあるが、まあそうだろうな。並行世界の僕を更に呼び寄せるとか、そんなトンチキなことをしない限りは操縦できないだろう。……財団だったらやりかねないかもしれないというのは、僕の偏見だったらいいのだけど。

 

「その指摘ももっともだ。それに、GATTAIプロトコルは禁断の手段。そうそうとれるものではない」

「──故に、そう。君たちに操縦してもらうのはあくまで()()()()()()だ」

 

 平時であれば、すごく燃える単語だ。決戦兵器のプロトタイプ。いいじゃないか。ただし、それに僕たちが実際に乗る羽目になっていなければの話だけれど。

 

 ──ただ、そう。アイリスは14歳なのである。日本にも"奈落の悪鬼、黒き翼の堕天使アイスヴァイン(14)"がいるし、このアメリカにも"漆黒の刃(ダークブレイド)(17)"がいる。つまりそういうことだ。

 

「──プロトタイプ、ですか」

 

 アイリスは更にキラキラとした目で息を呑んでる。

 

「キミたちの乗る機体は、2人で動かせる分、連携が重要となる。本来ならツインブライトシステムによる運用を想定して作られた機体であり、普通の人間では動かすことすら不可能だ。だが、キミたちなら。同じ番号(No.105)を共有するキミたちなら!必ずこの機体を、ヴェセルカを動かせると信じている!頼むぞ……っ!最後の希望……ッ!」

 

 なんか託された。

 

 コックピットに乗り込むと、席が密着して二つある。互いの息遣いが聞こえるほどの近くに座ってコントロールレバーを握ると、男の声が聞こえた。

 

「人類は恐怖から逃げ隠れていた時代に逆戻りしてはならない。他に我々を守るものはいない、我々自身が立ち上がらなければならないのだ。だから、止まるんじゃねえぞ……」

 

 誰かは知らないが、きっとこの機体を作った彼が勇気づけてくれたのだろう。一度、息を吸う。

 

「Ω-7・チームアイリス」

「ヴェセルカ」

 

「「──出る!」」

 

 二人でアクセルペダルを踏むと同時、ヴェセルカはその名の通り虹の燐光を纏いながら加速していく。対するビッグオー・ファイブ・イミテーションは、スクラトンドライブによってミサイルやねこの井戸、緋色だったり鈍色だったりする鳥などをこちらへと放ってくる。どうやら、カオス・インサージェンシーは日本のオブジェクトの情報も手に入れていたらしい。情報さえあれば、スクラトンドライブによる現実改変は似た能力を持つオブジェクトを出力する。それはまるでかつての戦いでの"正義の(ジャスティス・オブ・)収容違反(コンテイメント・ブリーチ)"すら思わせる攻勢だ。だが!

 

「「()()()()()()()()()()!」」

 

 アイリスのポロライドカメラが内蔵されたメインカメラで撮影された写真に入り込み、相手がどう動くかは既に経験済みだ。

 

「セキュア・スナップショット!」

 

 アイリスは信じられないほどの即時行動でミサイルを撃ち落とし。

 

「ウルフドア・コンテイメント・バイト!」

 

 猫を挟み込むように巨大な力場で放り投げ。

 

「ガールズアウト・プロテクション・ナイト!」

 

 僕は一度写真の中に入ることで影響を無効化したことによって、メインカメラという犠牲を払い緋色だか鈍色だかの鳥との繰り返されるバトルに勝利した。

 これがシンクロニゼーションのちょっとした応用。

 そう、05-2がこんなこともあろうかと予め取り付けておいたこのワン-ゼロ-ファイブ・カップリングシステムによって!

 

 ──そうだ。僕たちは知っている。本来のビッグオー・ファイブは人間の意志によってその力を発揮するのだと。

 故に──!

 

「収容の意志を持たないお前たちに!その真の力は引き出せない!」

 

 そうだ。叫ぶ必要はない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()。けれど、彼女は叫ぶだろう。

 

「君が収容違反するなら、僕は……」

 

 何を言えばいいかは分かってる。ただ、湧き上がる魂(14歳の日々)を解き放てばいい。そうだ。あの時のブライト博士も、後に続く誰か(アイスヴァイン)もそうだったのだろう。

 立ち上がり、手を伸ばす。破壊されたメインカメラから落下したカメラを受け止め、シャッターに手を添える。

 そう、君が収容違反するなら──

 

「僕も……」

 

 アイリスの手が、僕の手に重ねられる。ああ、そうだ。財団はこんな、人の温かみを守るために戦っているんだ。だから──!

 

「僕も、収容違反する……!」

 

 

 

 ──第一に、ヴェセルカは収容サイトではない。であれば、タウミエル-級XK奥義である正義の収容違反は使うことができない。

 ──第二に、パイロットはSCP-105と105-Cであり、他にこの場に使うことができるオブジェクトはない。

 ──故に、決め手に欠けるヴェセルカのパイロットたちに待ち受けるのは敗北であり、奮闘もそれを先延ばしにすることしかできない。

 

 

 

 ──本当に?

 

 

 

 

 -もし、例外があるとすれば、それは"自分自身"だ。

 ──そう。『彼女』は知っている。かつて虹の神(アイリス)の名を持っていた『彼女』は知っている。この世界の自分は一人じゃないと。今の自分はもはやミーム(SCP3002)と化し、実体がないとしても。『彼女(リリー・ヴェセルカ)』が、虹の彼方で微笑んだ気がした。

 

 

 

 

「「だから、答えてくれ……!ヴェセルカァァァァァァァァ!」」

 

 

 直後、虹の光が辺りを包む。亜光速でこちらに向かってきていた収容違反オブジェクトたちは次々に停止していき、ビッグオー・ファイブ・イミテーションは動きを止めて自壊していく。

 そして僕は全身があったかいものに包まれる感覚がして……

 

 

 

『ねえ、■■■。あの子を、私を、忘れないで(remenber me.)』。

 

 ──ああ、覚えているさ。どれだけ離れようと。世界を隔てようと。必ず。

 ──僕の居場所は、君の隣だ(Remind You.)

 

 

 

 目が覚めると、ベッドの上にいた。あのバカ騒ぎは一体何だったのかと考え直すけれども、近くのベッドで寝ているアイリスの服装は普通だ。間違ってもあんなピチピチのパイロットスーツじゃない。あれは悪い夢か。僕は二度寝した。

 

 

 

-備考

 Ω-7・チームアイリスが財団日本支部のプロトコル・GASSINの発令により出動した事実はありません。ありませんったら!

 

 

*1
アイリスは銃を扱う、というか鉄火場での才能が凄かった。不意を打てば、特殊部隊の5人くらいなら倒せるんじゃないだろうか。

*2
本当に?


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