SLAYER'S CREED 継承   作:EGO

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SLAYER'S CREEDアンケート企画第三段。

第一章のプロローグです。



Episode1 狼の道
Memory01 始まりの海原


 一言で言えば、青かった。

 見上げてみても青い空が広がり、回りを見渡しても水平線の彼方まで青い海が広がっている。

 足元にあるのが木の板であることは残念ではあるが、船の上にいるのだから仕方がない。

 舵を取る操舵手。

 彼に指示を出す航海士。

 巨大な船の上を右往左往しながらも自分の役目を果たす船員たち。

 潮風に押されて揺れる、商会の紋様が織られた帆。

 その全てに無駄がなく、船そのものが一つの生き物のように白波を立てながら海を突き進む。

 その船を預かる船長は潮風に当てられて粘つく髪を掻きながら、僅かに疲労の色が滲む溜め息を吐き出す。

 

「お客さん、そこにいられたら邪魔なんだが!」

 

 そして何の脈絡もなく怒鳴り声を出したのは、仕方がないことだろう。

 そんな完璧とも言える甲板に、何もしていない異物がいるのだ。

 甲板を囲う柵に寄りかかり、ぼんやりと空を見上げ、いつの間にか船に追いついてきた鷲を見つめている一人の男。

 上等な、けれど使い込まれているのか傷が目立つ革鎧に、多くの裁縫の跡が残る外套。

 銀色の短髪に夜空を思わせる蒼い瞳の、まだ顔に幼さが残る青年。

 目立つには目立つのだが、視界に納まっているのになぜか存在が希薄なその青年は、運ぶ荷物の一覧にいつの間にか名が載せられていた。

 貴族か、商会か、ともかくどちらかの力が働いたのだろう。おかげで無駄な仕事が増えてしまった。

 船長の声に反応して視線を落とした青年は、辺りを見渡し、『俺か?』と言わんばかりに自分を指差した。

 船長はその反応に額に青筋を浮かべて再び怒鳴ろうとするが、突然鳴り響いた鐘の音に言葉を詰まらせた。

 

「船長、海賊だ!」

 

 船員の一人が単眼鏡を覗きながら悲痛な声で叫び、額に汗を滲ませながら船長へと目を向けた。

 彼の声に反応して単眼鏡を覗いた船長は、「ぐぅ……!」と苦虫を噛み潰したような表情になりながら唸った。

 どこかの国の紋様でも、商会の紋様でもない、黒く染められた帆を誇らしげに揺らすのは、海賊以外にいるわけがない。

 

「面舵だ!逃げるぞ、お前ら!」

 

『アイアイサー!』

 

 船長の即断に船員たちが応じ、甲板上を巣をつつかれた蜂のように駆け回る。

 その様子をどこか他人事のように眺めていた銀髪の青年に向けて、船長が吼えた。

 

「だー、くそ!邪魔になるから船倉に引っ込んでろ!」

 

 再びの怒号をぶつけられた青年は気にした風もなく、せっせと甲板を降りて船倉へと続く扉を潜っていった。

 

「……なんか言えよ!?」

 

 そんな青年の背中に再び吼えるが、今はそれどころではないと意識を海賊船へと戻した。

 そして、その直後に船の真横で水柱があがった。

 吹き上げられた海水が雨のように降り注ぎ、甲板と船員たちを濡らしていく。

 そして何より、それが問題なのだ。

 

「もう射程に入ったのか?!どんだけ速いんだよ、くそ!」

 

 本来ならもう少し時間がかかってもいいものだが、今の

 見れば海賊船の射程に入ったことは確実。

 

 ──どうする、逃げ切れるか。

 

 相手の船の速さ、砲手の練度を加味し、こちらがただの商船であること──武装はあれど威嚇でしかない──も考えれば、もはや考えるまでもない。

 

 ──無理だ。

 

 船長は項垂れながら「くそ……っ」と悪態をつき、その場に(うずくま)った。

 悔しさに任せて甲板を叩き、その姿に船員たちの中にも諦めの雰囲気が出始める。

 彼らの動きが止まれば船も止まり、船が止まれば海賊船に追い付かれる。

 数分もしないうちに商船の脇についた海賊船は、次々と鍵縄を投じて互いの位置を固定すると、続々と海賊たちが船に乗り込んできた。

 数は十人。全員が只人(ヒューム)

 

「素直な連中は好きだ。仕事が楽に終わる」

 

 その中の一人。海賊たちを押し分けて現れたのは、一人の美丈夫。

 腰には曲剣(カトラス)拳銃嚢(ホルスター)には短筒(ピストル)が二挺。

 整った顔立ちをしているものの、その瞳はこの状況に興奮しているのか見開いており、僅かに血走っているようにも見える。

 おそらく彼が頭目なのだろう。彼が「縛れ」と呟いた途端に海賊たちが動きだし、船長を含め、船員たちを縛り上げ、甲板に並べていく。

 

「さて、さてさて。積み荷は何かな」

 

 頭目は愉しそうにニヤニヤと嗤いながら船倉へと続く扉に目を向け、海賊数人に目を向けながら顎で示した。

 その指示に頷いた海賊たちが扉へと、念のためと武器を構えながら近づいていく。

 

「お、おい!そっちに行くんじゃねぇ!」

 

 縛られたまま叫んだ船長の脳裏にあるのは、先程の青年の姿だ。

 彼が何者なのかもわからないし、言い方が悪いが彼も荷物なのだ。

 荷物を守るのは運び手の、今回は自分たちの役目に他ならない。

 

「おう、必死だな。何があるのか楽しみ──」

 

 頭目がニヤリと口を三日月状に歪めた瞬間、船倉へと続く扉が凄まじい破砕音をたてて吹き飛んだ。

 

「え?」

 

 そう声を漏らしたのは、船長か、船員か、頭目か、海賊の誰かか、あるいはその全員か。

 全員の視界に映るのは、吹き飛んだ扉と、それに巻き込まれ海へと落ちていく海賊一人と、扉の残骸が頭にめり込んで絶命した海賊の一人。

 そして扉の向こうにいるのは、蹴りを放った姿勢になっている銀髪の青年だ。

 先程までなかった剣を腰に帯び、背中には長筒(ライフル)

 振り上げた足をゆっくりと降ろした彼は、蒼い瞳を巡らせて相手の人数を確認。

 頭目と見られる相手を含め、八人。相手の船にももっといるとなると、さて何人の相手をしなければならないのか。

 銀髪の青年は首を鳴らすと、腰の剣を抜き払った。

 陽の光を反射して鋭い銀光が放たれ、青年に目を向けていた海賊たちの視界を一瞬だけ潰す。

 その瞬間、銀髪の青年が消えた。

 船が揺れる程の衝撃と共にその場を飛び出し、すれ違い様に海賊二人の首を撫で切る。

 一刀の元に首の骨が斬れ、繋ぐものを失った頭部が噴き出す血の勢いのままに吹き飛び、海へと落ちていった。

 どぼんと頭が海面に叩きつけられる音を聞き流しながら、青年は更に加速。

 甲板に罅を入れながら即反転し、再びの強襲。

 仲間の死に狼狽える暇を与えずに、一つ、二つ、三つと首を刈る。

 一刀一殺。もはや美しいとまで言えるその技は、殺された相手に必要以上の苦痛を与えない。

 

「いい。いい。いいぞ!」

 

 次々と海賊の首が刈られていく中で、頭目は心底愉しそうに笑いながら、降り注ぐ血潮を浴びるように両手を広げる。

 血の温もりがあり、死の気配があり、事実死が支配している。

 

「だが、足りない」

 

 海賊船からは助けようと海賊たちが乗り込もうとしているが、それを手で制した頭目は、第一陣の抹殺を終えた銀髪の青年に向けて言う。

 

「血の臭いがあり、死の気配があり、実際に死が撒き散らされている。だが、足りない!足りないんだよ!」

 

 頭目は地団駄を踏みながら曲剣を振り回し、その切っ先を銀髪の青年へと向ける。

 

「悲鳴が、恐怖が、死に対する敬意と、生に対する冒涜が、足りない!!」

 

 頭目は天に向かって吼えると、曲剣の刃を手頃な船員に向けた。

 

「見せてやる、若いの!これが──」

 

 曲剣を振り上げ、感情に任せて叫んだ瞬間、ブツン!と肉が断たれる鈍い音が鼓膜を揺らした。

 直後に感じるのは、異様なまでの熱さと、軽さだ。

 腕に熱が溜まっていく感覚と、身体が腕一本分軽く感じる。

 頭目は振り上げた腕を見上げ、ぎょっと目を見開いた。

 肘から先がなくなり、手にしていた曲剣は甲板に突き刺さっている。

 それをしたのであろう銀髪の青年は剣に血払いくれながら、ゆっくりとこちらに振り向く。

 腕を断ち切られた事を視認し、認識すれば、次に来るのは激痛だ。

 熱せられた鉄の塊を絶えず押し付けられるような、形容のしようがない激痛が頭目の腕を支配する。

 

「あぁぁあああああ!がっ!?」

 

 そしてその痛みに脳が焼かれるよりも速く、頭目の胸に剣が生えた。

 瞬時に彼の背後に回り込んだ銀髪の青年が、剣を突き立てて心臓を貫いたのだ。

 がぼがぼと血の泡を噴き、それに溺れながら、頭目はどこかに向けて手を伸ばす。

 

「我が御霊も、御身の下へ……」

 

 穏やかな表情を浮かべながら呟いた言葉が、頭目の最後の言葉だった。

 剣に突き刺さったまま彼の命は潰え、事切れた。

 

「……」

 

 銀髪の青年はゆっくりと剣を引き抜くと、倒れかけた頭目の身体を支え、その場に寝かせてやった。

 穏やかではあるものの、目を見開いたままでは気味が悪い。

 青年はそっと頭目の目を閉じてやると、念のためと身体を改めた。

 拳銃嚢ごと短筒を引き剥がすと自分の腰帯に固定し、懐に入っていた手のひら程の大きさの硬貨(コイン)を引っ張り出す。

 丁寧に彫刻された紋様に見覚えはない。どこかの国の通貨というわけでもなさそうなそれは、名も知らぬ何かに属していることの証だろうか。

 まあ考えても仕方がないかと、思考を投げ捨てると同時に頭目を一息で肩に担ぎ上げ、甲板の端へ。

 そして頭目を海へと落とし、沈んでいくその姿を見下ろしながら静かに呟いた。

 

「安らかに眠れ。仲間たちと同じ、この海で」

 

 死に行く者には敬意を払え。

 それは尊敬する父からの教えであり、顔を知らぬ祖父の、それまた祖父以上の頃から続く教えであるらしい。

 

「祈ってるところ悪いんだが……!」

 

 そうやって父の教えを思い出していた銀髪の青年に向けて、船長が声をかけた。

「どうした」と呟きながら振り向けば、他の海賊が続々と乗り込み、こちらに殺意を剥き出しにしている。

 

「縄を解いてくれないか!?」

 

 そんな海賊たちに、縄で縛られたまま対峙することになった船長たちは、顔を真っ青にしながら銀髪の青年に助けを求めた。

 

「……」

 

 青年はその声に小さく頷くと、再び音を置き去りにして動き出す。

 船長たちは、ただ見ているだけだ。

 見えもしない速度で走り回る何かが甲板を暴れまわり、数十人といる海賊たちを蹂躙していく様を。

 そして海賊たちもまた、残像すらも見えない何かに蹂躙される恐怖の中で、絶命していった──。

 

 

 

 

 

 そんな不運な遭遇から幾日か。

 真昼時の船長室。

 

「それで、あんたはどうしてこの船に乗ってきた」

 

 船長用の座席に座り、執務机の上に秘蔵のワインを置いた船長が、対面に座る銀髪の青年に問いかけた。

 仕事だからと運んでいるわけだが、先日のあれを見せられたら彼が只者ではないことは確実。

 そんな彼が、なぜこんな商船に乗っているのかと問うのは、至極当然の結果だろう。

 問われた青年は懐を探ると、一枚の小さな板を差し出した。

 船長は一目でわかったが、それは国の冒険者たちが身につける認識票だ。しかも、銀色の認識票。

 それを受け取った船長は執務机の端に置いた角灯(ランタン)の側に持っていき、彫られた文字を確認する。

 名前から身体的特徴、種族、と、最低限のことしか書かれてはいないが、この青年のものではないことは確かだ。

 

 ──三十代には、見えないからな……。

 

 認識票に書かれている内容を要約すれば、只人(ヒューム)の男性。髪は白。瞳は蒼。年は三十となっている。

 気になる所と言えば、出身地が船の目的地なことだが……。

 船長はそれを銀髪の青年に返しながら、「これが、なんだ?」と首を傾げる。

 

「父のものだ」

 

 銀髪の青年は大事そうにそれを受け取り、確かに懐に押し込むと、そう告げた。

 そして小さく溜め息を吐くと、気まずそうに頬を掻きながら言葉を続ける。

 

「成人したから冒険者になったんだが、思いの外早く行くところまでは行ってしまった。それで、まあ、父の故郷が気になったから、飛び出してきた」

 

「……子供か」

 

「好奇心の赴くまま。冒険者らしいだろう?」

 

 船長が半目になりながら告げた言葉に、銀髪の青年は笑いながら返した。

 確かに冒険者とは、ギルドがなければ無頼の輩と相違ない。

 だが自ら死地に飛び込む彼らがいなければ、世界は幾度となく滅びているだろう。

 故に冒険者というのは必要で、国民の血税の一部でギルドが運営されているのだ。

 そこでふと、船長は銀髪の青年に問うた。

 

「行くところまで行ったと言ったが、等級はなんだ。まだ二十歳にもなっていないだろうに」

 

 こうして面と向かいあえばわかる。

 あの海賊数十人を屠殺した人物も、自分よりも遥かに年下なのだ。自分の半分すらも生きてはいまい。

 冒険者になれるのは成人してからだ。

 白磁、黒曜、鋼鉄、青玉、翠玉、紅玉、銅、銀、金、白金とある十段階──と言っても大半は銀止まりだ──で、行くところまで行ったとなると、銀等級は固いだろうか。

「ああ」と頷いた青年は、「今年で十八だ」と苦笑混じりに答え、首から下げていた自分の認識票を引っ張り出した。

 銀色の輝きを放つそれは、在野最高の冒険者たる証明に他ならない。

 只人の成人が十五だから、僅か三年足らずでそこまで駆け上がったということなのだが……。

 

「なんだ、金じゃあないのか」

 

 と、相手が子供と分かれば僅かな悪戯心が生まれ、弄るようにそう告げた。

 ついでにワインを一口呷り、「飲んでみるか?」ともう一つ杯を取り出し、それを差し出した。

 対する銀髪の青年は溜め息を吐き、「金には、()()()()()()」と肩を竦めた。

 そして杯を困り顔で受け取りはしたものの、「止めておく」と返して執務机の上に置いた。

 

「……ならなかった?」

 

 そんな彼の行動を他所に、船長はどうにも可笑しい一言に噛みついた。

「ああ」と頷いた銀髪の青年は、銀色の認識票を撫でながら懐かしむように言う。

 

「金等級になるように打診されたが、断ってここにいる。まあ、国に戻れば上げられるかもしれないが……」

 

「き、金等級への昇級を断ったって、お前、何を考えてる?」

 

「出来る限り、自由に生きたいだけだ。父もそう言って断ったそうだが、そんなに可笑しいんだろうか?」

 

 困惑する船長を他所に、銀髪の青年はさも当然のようにそう告げて、心底不思議そうに首を傾げた。

 守るべき人々と共に生きろと、冒険者になり街を出ると決めた自分に、父はそう教えてくれた。

 金等級とは、すなわち国の命運を握るほどの力を持った冒険者のことだ。

 国から手厚く庇護される、無頼漢だった者たちからすれば、冒険者としての成功を納めた証だと言っても過言ではない。

 国の未来を、世界の命運を懸けて戦いに身を投じるのは確かに誇らしいことだろう。

 その分身分に拘束され、行きたい場所に行きたい時に行けず、救えたかもしれない人たちを見捨てることになるかもしれない。

 世界の命運は我らが勇者(姉さん)に任せて、自分は街を守れればそれでいい。

 

「……」

 

 彼の言葉を理解できず、ぽかんと口を開けて間の抜けた表情をしていた船長は、とりあえずワインを呷って意識を戻す。

 金等級への壁は、それまでの銀等級昇格に比べれば異様なまでに高いのだが、目の前の青年はそれを越えても金等級にならず、その父親もまたそれを断ったということだが……。

 

「……馬鹿なのか?」

 

 どうにか絞り出した言葉は、相手によっては殴られても仕方がない無礼も良いところなもの。

 だが銀髪の青年は気にした素振りを見せずに笑うと、「だろうな」と肩を竦めた。

 

「そのくらいが丁度いいさ。冒険者に模範も何もないだろう」

 

「そうは言うがな」

 

 あっけらかんと笑う銀髪の青年に、船長は神妙な面持ちで告げた。

 

「目的の国には冒険者ギルドなんてないぞ。冒険者業休止してまで行ってどうする?」

 

 冒険者ギルドがどの国にもあるわけではない。

 冒険者が必要のない国──凄まじい軍事力を持つ国や、住民が下手な冒険者以上に強い国──の方が数多く、目的地もその一つに数えられる国だ。

 つまりは先程の認識票はただの首飾り(アクセサリー)に他ならず、持ってきたとしても意味はあるまい。

 

「?さっきも言った筈だが……」

 

 それでも銀髪の青年は不思議そうに首を傾げ、自分の胸に手を当てた。

 いや、触れているのは胸ではなく、懐に仕舞われた父の認識票だ。

 

「父の故郷に行ってみたいだけだ」

 

 父親譲りの蒼い瞳に好奇心の光を灯し、母親譲りの銀色の髪が窓から入り込む潮風に揺れる。

 

「それはそれとして、まだ付かないのか?船に乗ってそろそろ一月になると思うんだが」

 

「ああ?もうすぐだよ。多少の問題(トラブル)はあったが、おおよそ予定通りだ」

 

「そうか」

 

 船長の言葉に銀髪の青年が嬉しそうに笑いながら頷くと、外から『陸が見えたぞー!』と見張りの声が届いた。

 その声にいち早く反応した銀髪の青年は、興奮のまま椅子から立ち上がると部屋を飛び出していった。

 それでも足音一つたてない青年に、船長は僅かに恐怖の念を抱きながらもその後を追いかけた。

 幼い頃から何度も通った廊下を進み、階段をあがり、甲板に顔を出す。

 

「おう、見えたか」

 

「はい、前方に!」

 

 先程の青年を探して辺りを見渡しながら問えば、見張りが単眼鏡片手に駆け寄ってくる。

 それを受け取った船長は操舵手の隣に行くと、単眼鏡を覗いて件の陸地を見つめる。

 火が灯っていないが灯台も見え、遠目からでも活気に満ちている港町が見える。

 

「おし!入港準備だ、お前ら!」

 

『了解、船長!』

 

 船長の指示に船員たちは一斉に応じ、やれ錨の用意だ、渡し板の用意だと、海賊が襲来した時ほどではないが慌ただしく走り回る。

 港の次は甲板に意識を向けた船長は、相変わらず見当たらない銀髪の青年を探して視線を巡らせた。

 だが、いない。あの身なりではそれなりに目立ちそうなものではあるが、いくら探してもいないのだ。

 

「あのお客さんはどこ行った!」

 

「上です、船長」

 

 舵を握る操舵手が帆柱の先を指差しながらそう言うと、船長は陽の眩しさに目を細めながら見上げた。

 そして、いた。

 帆柱の頂上付近。旗の付け替え用に取り付けた小さな足場の上に、外套を揺らしている銀髪の青年の影が見える。

 

「いつの間に、あんな所に……」

 

「ひとっ跳びでいきましたよ、あそこまで」

 

 操舵手は少々気味が悪そうにそう言いながら、「冒険者は違うな~」と愉快そうに笑う。

 海賊を屠殺した時もそうだったが、あの青年は只者ではないと、船に乗る全員が口を揃えるほどだ。

 今さらあの程度では驚かないのは、慣れてしまったからか、あるいは諦めてしまったからか。

 

「まあ、楽しそうならそれでいいか」

 

 いや、諦めてしまったのだ。彼と自分たちとでは、身体の作りも、見えているものさえも違うのだと。

 そんな船長からの視線を感じながら、銀髪の青年は相棒たる鷲を腕に止め、蒼い瞳に新天地を映していた。

 好奇心に突き動かされ、

 

「あれが父さんの故郷。どんな場所なんだろうな?」

 

「キィ!」

 

 銀髪の青年に鷲は先に行っていると言わんばかりに鳴くと、その言葉の通りに新天地を目指して飛び立った。

 段々と小さくなっていく鷲の影を見つめながら、銀髪の青年は帆柱に寄りかかりながら腕を組む。

 あまり過去の事を語ろうとしない父が、産まれたとされる場所。

 あの大地はきっと、この『眼』の起源(ルーツ)を探る手掛かりにもなるだろう。

 見えないものを見る力。

 消えた痕跡をたどる力。

 真実の、あるいはその先を見据える力。

 幼い頃から付きまとう、人とは違う不思議な『感覚』。

 父は『タカの眼』と呼んでいたこれが何なのか、あの地に何かしらの手掛かりはあるのだろうか。

 母が教えてくれなかったものを、知る為に。

 父が教えてくれなかったものを、この『眼』で見る為に。

 そして、尊敬する両親の背を越えていく為に。

 

「俺はもっと強くなりますよ、ならず者殺し(父さん)

 

 

 

 

 

 ──SLAYER'S CREED 継承──

 

 ──Episode1 狼の道──

 

 

 

 

 

 




というわけで、始まりました『SLAYER'S CREED 継承』。
私生活も忙しくなるので、今のうちに一話だけでも投げさせてもらいました。

感想等ありましたら、よろしくお願いします。





ここからは私事。興味ない方はスルーして構いません。





ようやくゴブスレ14巻を読んだのですが、その中にあったゴブスレさんの台詞が気になって調べたら、まさかのダンまちコラボネタ……。

この作品、R-18版、私生活では仕事と、やることが増えていく中で、やりたいことがまた一つ。
でもダンまちの原作はないんだよなと、悶々としております。
まあ、コラボ自体はだいぶ前らしいので今更感もありますしね……。





ついでにTRPGの本も買えました。
そしてようやく理解するログハンのヤバさ。
常時『察知(センスリスク)』発動に、任意発動の『敵意(センスエネミー)』(気づかれるデメリットなし)。
それが回数、時間制限なし。
更にエピローグ後なら、いくつかの魔術が熟練クラスで扱える。

……ヤバくね?バランスブレイカーとか、そんなレベルじゃなかったよ。
そりゃ神様たちも頭抱えるよ。
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