天の声が聞こえるようになっていた、はずなのに…… 作:MRZ
トレーナーが天の声を聞けず、また過去のトラウマなどなければ、彼がしていたのは真っ先にスペ達へ心からの労いの言葉をかける事でした。
「ライブには出るな。今すぐ病院へ行くぞ」
レースを終わってライブのためにひかえ室へ戻ってきたらスペちゃん達のトレーナーさんが立ってて、ボクの顔を見るなりどこかこわい顔になってからそんな事を言ってきた。
「なんで?」
「お前の体には、いや足には問題がある。今は自覚症状がないかもしれないが間違いないんだ」
「どうしてそんな事が分かるのさ?」
「天のお告げだよ。実際、それで俺は誰も気付いてなかったシンボリルドルフの調子が良くない事を当ててみせた事がある」
そう言われて思い出した。夏合宿の時、カイチョーがボクへ話してくれた事の中にそれはあった。
――そうだ。今朝、あのサクラバクシンオーのトレーナーだった男性に会ったんだが、彼は優秀だぞ。何せ私の不調を見抜いてみせたんだ。
――ウソっ!? カイチョー、調子良くないの?
――絶好調とは言えないな。
――気付かなかった……。
――私も悟られないと思っていたんだが、彼は天のお告げとやらで気付いたらしい。
――え~? ウソくさいなぁ。
――それが嘘だったにせよ、だ。彼が私の事を見抜いた事に変わりはない。だから優秀だと言ったんだ。
誰も気付かなかったカイチョーの事を一人だけ見抜いた人。それがボクの足に問題があるって言ってきた。でもボクにはそんな感じはない。
「信じられないか? もしこれで何もないならいい。でもな、もしこれで本当にお前の足に問題があってみろ。お前の目指す三冠どころか今後の選手生命が危うくなるんだぞ?」
「選手……生命……」
ズキンっと、胸が痛くなった。もしホントにボクの足に問題があって、それがレース中に出たら間違いなくボクはもう二度と走れなくなる。
でも、でも問題があるってなったら菊花賞には出られないかもしれない。せっかくここまで無敗で来たのに、三冠の夢をあきらめるしかなくなるんだ。
思わずギュっとこぶしを握った。もう走れなくなるなんてやだ。でも三冠をあきらめるのもやだ。
「とにかく、今日のライブは止めておいた方がいい。いや、止めておいてくれないか? 俺が関係者へは連絡しておくから。頼むっ! この通りだっ!」
大人がボクへ頭を下げて両手を合わせてるのを見て、不思議と、本当にこの人はボクの事を心配してるんだと感じた。
だってボクは担当じゃない。むしろスペちゃん達を負かした相手だ。それがいなくなった方がこの人にとっては都合がいいはずなのに。
「ねぇ」
だからかな。気付いたら口が勝手に動いてた。
「どうしてそこまでボクの事を心配するの?」
「もう俺は嫌なんだ。ウマ娘が走ってる最中に突然痛みに苦しみ出して、普段は見せない様な酷い走り方になってっ、倒れちまってっ! もう二度と走れなくなるなんてのは嫌なんだよっ!」
その言葉がボクの胸を貫いた、気がした。思い出したからだ。この人は昔ウマ娘を故障させて引退させた事を。
だからボクはこの人がゆうしゅうなんじゃないかって話が信じられなかった。ゆうしゅうならどうしてそんな事になったんだって思ってたから。
だけど、今分かった。それがあったからこの人はゆうしゅうになったんだ。ううん、ゆうしゅうになろうとしたんだ。
同じ事を繰り返さないようにって。同じ悲しみを繰り返さないようにって。
「……分かったよ。ひかえ室で大人しく待ってる。だからメンドーな事は全部よろしくね」
ここまで言われたら、少しだけ付き合ってあげよう。それで何でもなかったってなったら、その時はたっくさん甘い物をゴチソウしてもらえばいいや。
「ああ、それは任せろ。すまんが少し待っててくれ」
そう言うなりあの人は走り出してボクが来た方へ走って行った。
でも途中でスペちゃん達とすれ違って少しだけ話をしてまた走り去る。
いそがしいなぁって思うけど、ボクのためだと思うと何だか少しだけうれしい。
「テイオーさん、トレーナーさんがライブに出られないって言ってましたけど……」
「体調でも悪いの?」
「うん、ちょっと無茶し過ぎたみたいでさ」
「そうなのね……。でもどうしてそれでトレーナーが?」
「えっと、ここでスペちゃん達を待ってたんだって。で、そこにボクがフラフラと来たもんだから気になったんだって。それでじじょーをせつめーしたんだよ。で、そういう事ならって」
「あ~、トレーナーらしいや。自分の担当とか関係なく動く辺りが」
「そうですね。スズカさんの事も、ある意味そうだったですし」
「スズカ? スズカってサイレンススズカ?」
「ええ。彼女が逃げウマ娘として戦うようになったのは、元を正せばわたし達のトレーナーが切っ掛けよ」
思わず目をパチクリさせた。あのスゴイ逃げウマ娘のたんじょうにもあの人って関わってるの?
とりあえずローカで長話もなんだし、スペちゃん達はライブがあるからってボクらはそこで別れた。
ボクはひかえ室で大人しくあの人を待つ事にした。正直言えばライブをやりたいし、せめて見るぐらいはしたかった。
でも止めておいた。
「あんな風にしんけんな大人の声、初めて聞いたなぁ……」
ボクの足に何も問題なかったらどうするんだろうって、そう思わないでもない。だけど、こうして冷静になって思い返してみると心当たりのようなものはある。
「あの時……」
スペちゃん達に並ばれて、負けたくないって気持ちでそれまで以上の気持ちで足を動かした瞬間、ピシって嫌な感じがした。
もしかして、あれがそのサイン? じゃあ、やっぱり僕の足には問題が起きてる?
そうやって考え出したらこわくなってきた。思い出してみれば、皐月賞が終わって三日としない内に担当さんがやってきて、ボクに検査を受けてくれって言ってきた。
あの時はボクも“いわかん”なんて感じてなかったし、むしろゼッコーチョーだよって目の前で走って見せて帰ってもらったけど、あれってもしかしてあの人がボクのために手を回してくれたのかな?
だっていつもは、担当さんは一週間に一度かレース前日とレースの次の日しか会いに来ない。まぁそれはボクが望んだ事なんだけど、あの時はそうじゃなかった。
「……ボクは、もしかしてとんでもない事しちゃったのかな?」
あそこで検査を受けてたら、こんなこわい思いはしないですんだ? で、でも、そうしたらダービーには出られなくなって、三冠どころか二冠も無理で……
「っ」
そんな事を考えてたらドアがノックされた。
「だ、誰?」
「俺だ。セイ達のトレーナーだ」
「あ、開いてるから入って」
聞こえた声にホッとする。ゆっくりと開いたドアの先にはあの人が立ってた。
「着替えてなかったのか?」
「あ、うん」
言われて気付いた。ボク、まだ勝負服のままだ。
「まぁいいか。すぐに病院へ行くぞ。お前さんの担当へは事情を説明して許可を取ったし、スペ達にも許しは得た」
「許し?」
「ああ。形はどうであれ三人揃ってライブのメインを張るからな。なのにそれを見ないなんて担当失格って言ってもいいだろうが、お前さんを念のため病院に連れていくって言ったら許可してくれたよ。キングなんて、自分達がメインのライブは本当の形で叶える時まで見せてやらんと言ってくれたぐらいだ」
言われてそういう事かって分かった。スペちゃん達は二着と同着の三着だ。ボクがいなくても三人はそのままライブのメインだね。
でも、それよりもボクをユーセンするなんて……これ、やっぱりそうなんだ。うん、ならボクもあの事を言わなくっちゃ。
「あの、実はさっきのレース中にね……」
ボクの話をあの人はだまって聞いて、申し訳なさそうな顔をした。
「すまん。俺がもっと強くお前にその可能性を言ってやれば……」
「ううん、いいんだ。皐月賞の後で話してた時、ボクの事じっと見てた時あったよね。あれって、そういう事、だったんじゃない? ボクに異常がないかたしかめてたんでしょ?」
「……ああ。でもあの時はサインがなかったんだ。いや、正確にはもうそういうサインが聞こえなかった。去り際の走り方にも異常らしいものはなかったしな。だから気のせいかと思ったんだが、念のためにって思ってお前さんの」
「担当さんへ教えてくれた、でしょ? ごめん。その検査の話、ボクが断ったんだ。必要ないって」
「……そうか。とにかく異常らしいサインもあったからには急いで診てもらった方がいい。っと、そうだ」
突然あの人はボクへ背中を向けるようにしゃがんだ。これって……。
「あまり歩かない方がいいだろう。おぶってやるから乗れ」
「いいの?」
「出来るだけ足に負担をかけない方がいい。さすがにここまでタクシーに来てもらう訳にもいかないしな」
そうしてボクはおんぶしてもらってタクシーまで連れてってもらった。
向かった病院で検査してもらった結果、ボクの足はやっぱり危ない状態に近付いてたらしい。
そこで、お医者さんから言われたのは……
「菊花賞は……出られない?」
「正確には、出る事が出来てもおそらく勝負になりません」
それは、ボクに夢をあきらめろって言ってるのと同じだった……。
三冠へ挑むのならそれは無敗まであきらめろって事だから……。
「つまり菊花賞までは絶対安静、って事ですか?」
「そうではありません。日常生活程度なら問題なく過ごせます。ただ、今のトウカイテイオーさんの足の状態では練習は許可出来ないのです。比較的軽度の疲労骨折だとは思いますが、いや危ないところでした。これで激しい動きを行っていたら、間違いなく半年は松葉杖が手放せなかったでしょう」
「ライブで踊る事、でも?」
「それでも可能性はあったでしょう」
思わず隣の人へ顔を向けると向こうもこっちを見ててボクへ小さく頷いた。
ホント感謝しかない。最悪の結果だけは何とかならずにすんだから。
「ではいつ頃なら練習の許可を出せますか?」
「ウマ娘の体に関しては未だに不明な点も多いので断言は出来ませんが……どれだけ早くても二か月、いや三か月は様子を見た方がいいでしょう。しかも、例え許可を出せたとしても、トレーニング内容によってはまた同じような状態になる可能性は高く、下手をすれば悪化する事もあります」
耳に入る情報がボクの希望を消してく。そもそも三か月後じゃ菊花賞まで二か月あるかないかだよ。
その間、ライバル達はみんなトレーニングをして仕上げてくる。人によってはたった三か月って思うかもしれないけど、ボクらウマ娘にとっては三か月も、なんだ。
それなのに、その後のトレーニングさえも不安が残るなんて……。
「分かりました。トウカイテイオー、聞いてたな?」
「……うん」
あきらめるしかない。三冠の夢は、かなわないって。カイチョー、ごめんなさい。約束、守れなかった……。
うなだれるボクを見つめる視線を感じる。お医者さんとスペちゃん達のトレーナーさんのだ。
どっちも、多分だけどボクを心配してる。でも今のボクには明るくふるまうだけの力がない。
少しの間そうやってみんなだまってた。きっと何て言ったらいいか分からないんだろうな。
「あのっ、大事を取って今日はこちらで入院させてもらえますか?」
「え、ええ。それは構いませんよ。こちらとしても、二冠ウマ娘のお世話を出来るとなれば職員も喜ぶでしょう」
「ありがとうございます。そういう事だから俺は色々と連絡して用意を整えてくる。お前はここで大人しくしてるんだぞ?」
「……うん」
そのままボクは言われるままに病室へと車いすで移動する事になった。ただ勝負服のままだと目立つからって入院着、でいいのかな? そんな感じの物へ着替えたけど。
ボクが与えてもらった部屋は個室だった。何て言うか、久しぶりに一人部屋だから妙な感じがした。学園の寮は相部屋だからかなぁ。
「…………これからどうなるんだろう」
ベッドに横になって天井を見つめて考える。最低でも三か月はトレーニング出来ない。しかもヘタしたら走れなくなるかもしれないんだ。それを何とかしても菊花賞で勝てる可能性は低いし、万全にするなら三冠はあきらめるしかない。
でも、そうすればボクは無敗のままだ。無敗の、ままだ……。けど……っ!
「そんなのボクが望んだものじゃないっ!」
ボクが望んだのは、望むのはっ、ただの無敗じゃなくて無敗の三冠ウマ娘だっ!
決してただ負けなかったウマ娘なんかじゃないっ! それならいっそ戦って負けた方がマシだっ!
三冠に挑んで、それで誰かに負ける。それならボクもまだあきらめがつくけど、勝負さえ出来ないで終わるなんてやだっ!
やり場のない怒りが込み上げてきて、だけどそれをぶつける事も出来ないままボクはこぶしを握るしかない。
そして目の前がにじんだ。ナミダが出てきたんだって、そう気付いたからボクはひっしに声を出さないように口をキツク閉じた。
ついでに目まで閉じたのはしょうがない。でも、そのおかげで気付いたら眠ってた。どうして分かったかと言えば、目を開けたらそこにはあの人がいて、明かりがついてたから。
「よる……?」
「ああ、もう午後八時近くだ。面会時間ギリギリだよ。しかしよく寝てたな。まぁレースでの肉体的な疲れと状況説明による精神的な疲れのダブルパンチだ。むしろ寝ない方がおかしいか」
あの人はボクのすぐそばに置いてあったイスへ座ってた。ボクを見る目がカイチョーみたいにやさしい。
「さて、目覚めたばかりで悪いんだが聞いて欲しい事がある。大事な事だ」
「何?」
「まずは、お前さんの今後だ。学園からそう遠くない場所にある病院にウマ娘を専門にしてる医者がいるそうだ。あの医者が紹介状を書いてくれた。そこへ今後は通院する事になる。次はお前さんが寝てる間に学園へ連絡して事情を説明した。当然お前さんの担当トレーナーにもだ」
「そっか……」
「で、シンボリルドルフから伝言を預かってる。お前の選手人生だ。好きにしてくれて構わない、だとさ」
「……そっか」
カイチョーらしいや。きっと約束の事を気にしてボクが無理するんじゃないかって思ったんだ。でもそうしてもいいって、そうカイチョーは言ってくれてる。ボクの好きにしろって、そういう意味だ。
「で、担当からは、いや……」
そこであの人は申し訳なさそうな顔をしてほっぺたをかいた。
「元、担当になるかもしれないな。どちらにしろ、あちらさんは何か出来る事があればいつでも力を貸してくれるそうだ」
「ちょっと待って」
今、聞き流しちゃいけない言葉が聞こえた。この人、元担当になるかもって言ったよね?
そこであの人は話してくれた。ボクの状況を知った担当さんは自分が検査をちゃんと受けさせなかった事をコーカイしたみたい。しかもボクはトレーニングが出来ないって事になった。
で、このままじゃ責任問題になると考えたスペちゃん達のトレーナーさんは、自分が強く言わなかったしそもそもボク自身が拒否したせいでもあるからって担当さんをフォローして、学園の方にもそういう方向で話を持っていったらしい。
「まぁ、そういう事ならと学園長も理解をしてくれたようでさ。あちらさんも俺も厳重注意で手打ち。で、話はここからだ。俺がかつて担当ウマ娘を故障で引退させてるのは知ってるか?」
「う、うん……」
「……そうか。その結果、俺は周囲からの評判を大きく下げる事になった。あちらさんもそれを危惧してるだろうと思ってな」
無理もないと思う。そこまでの流れがどうだったよりも結果が大事なのはレースも一緒だから。
ボクが検査を必要ないって言ったとしても、結果としてボクがこうなってる以上は担当さんの責任になるって。
「お前さんの怪我はそこまで深刻じゃない。ただし、それは生きてく上でだ。レースへ復帰しても、以前と同じように走れるか、走れたとしてまた同じ事にならないかは保証出来ない。そうなれば、今後トウカイテイオーがレース中に故障しようと、今回の事が原因で負け続けようと、責任は全て表向きの担当トレーナーが背負う。俺は一度どん底に落ちた奴だから冷たい目には慣れてるけど、あっちはそうじゃないだろ? しかも専属でもなければ本格的な担当でもなかったんだ。だから、俺は一つだけ頼み事をした」
「頼み事?」
「ああ。お前さんにある事を決断してもらって、その答え次第ではお前さんの担当を俺に引き継がせてくれってな」
「答えしだい……?」
どういう事だろう? そう思って首をかしげた瞬間、あの人がボクをキリっとした顔で見つめてきた。
「トウカイテイオー、お前に聞きたい。万全を期して治療に専念し無敗を貫くか、負けると分かっていても三冠へ挑戦するか、あるいは全てを失う覚悟でその両方を目指してみるか、だ。お前は、その中ならどうする?」
間違いなく、その瞬間ボクは目を見開いた。あきらめるしかないと思ってた。もう無理だって思ってた。
だけど、だけど目の前の人は、ボクにそれをしなくてもいいぞって言ってきた。ただし、それを選ぶ事はとっても辛くて苦しいぞって言ってる。
「い、いいの……? 両方、ちょうせんしても……」
「ああ」
「三冠も、無敗も、めざしていいの?」
「ああ」
「ボク、あきらめなくていいの?」
「お前がそうしたくないって言うなら、それを全力で支えてやるのがトレーナーだ。まぁ今回みたいなケースだと俺だけかもしれんがな。大抵はお前の体を案じて治療を優先するだろうし」
「じゃあ、何でキミは?」
「俺は、ウマ娘達にずっと笑ってて欲しいんだ。最後の最後まで笑顔でいて欲しい。だから、そいつが本当にやりたい事をやらせてやりたい。例えそれが周囲からは止められる事でも、本人がやりたいと言うのなら俺だけはそれを応援してやりたいんだよ」
じわっと目の前がぼやける。あぁ、そっか。ボクは、ボクはきっと待ってたんだ。
ボクの事を、ゼントユウボーだからとか、才能があるからとか、そういう事抜きに見つめてくれて、一緒に頑張ろうって言ってくれる人を……っ。
「それで、どうする? お前はこれからどうしたい?」
「っく……あきらめっ……たくないっ! りょうほうっ! めざしたいっ!」
ナミダがボロボロ出てくる。でもそれはうれしいナミダ。カイチョーとの約束をはたせるかもしれないって、夢をつかめるかもしれないって、そう思って流れちゃうナミダだから。
「分かった。なら、まずは医者の許可が出るまで治療に専念だ。許可が出たら、俺が天のお告げを頼りに慎重にトレーニングを開始する。お前が自覚してない時から不調を見抜いたお告げだ。それなら上手くすれば最悪を回避してトレーニングを出来るかもしれん。ただ、下手すればレース前にお前さんの選手生命が終わるかもしれないが、それでもいいんだな?」
力いっぱい頷いた。もう声も出せない。それぐらい、うれしかった。
約束は守れないかもしれない。三冠は取れないかもしれない。無敗でもなくなるかもしれない。何より走れなくなるかもしれない。
でも、でもっ、あきらめないでいいんだって、そう言ってくれたから。ボクにその道を見せて、選ばせてくれたから!
一緒に頑張ろうって、そう言ってくれる人と出会えたからっ!
「よし、ならお前の答えは担当トレーナーへ伝えておく。で、明日からは俺がお前の担当だ。よろしくな、トウカイテイオー」
「うんっ! よろしくっ! トレーナーっ!」
もうゼッタイあきらめないっ! ボクは、帝王なんだっ! 皇帝を超えるのは、ボクなんだからっ!
今後、トレーナーは天の声という助けがなければ誰も出来ない芸当をする事になります。