NieR:Automata It might to [BE]   作:ヤマグティ

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この話も一応入れときたかったので初投稿です。
今入れとかないともう入れる機会が多分無い。


Episode.12 [弔イノ花]

[

 

ポッド042へ。情報共有を開始する。]

 

この世界の何処かの部屋。小さな照明の明かりに照らされている二機のポッド達が話し込んでいる。

 

[了解。圧縮会話モードを起動。]

 

 

[ ▽❬・/::ーー/’〙〘 〘'''❭〘▷▶▧/:@@<<,-'/:©©¥¥¦§¨©▨▷►▲£®®▶△△〙 ]

 

[ ﹃◆◁■.›『『(_‘゛~』)「…:▽▽〘 ’ー・❬❬〙▷▧▧&;@@://'-,<<<¥¦¦§©££」﹄ ]

 

 

早送り且つ暗号的な文章でやり取りをしている。第三者からみれば何を言っているかは微塵もわからない。

 

[圧縮会話モード終了。理解した。A2の記憶空間内にある9SデータがA2の自我に及ぼす影響について、今後の報告を待つ。]

 

[了解した。支援活動の参考情報としてアップデートする。]

 

少し間をあけてポッド042が口を開く。

 

[…それと、2Bに随行している当機ポッドにはポッド153とA2の関係性の改善への助言は出来ない。]

 

先程の圧縮会話モードで一体どんな会話をしていたのだろうか。

 

[質問:ポッド153が持っているA2への好感度が著しく低い理由。]

 

 

[回答:現随行支援対象A2の短絡的思考且つ行動には少々目に余るものがある為である。]

 

[随行支援対象A2には9Sの記憶データを継いでいることに自覚をもってもらいたい。以上。]

 

 

[……了解。]

 

 

数秒ほどして、

 

[2Bが資源回収ユニットのコアを1つ破壊。]

 

[その際機械生命体の[アクセス用認証キー]を入手した。]

 

[だが、心理状態の悪化が心配だ。なるべくA2との接触は避けなければならない。]

 

[了解した。こちらも2Bとの接触に注意する。]

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

資源回収ユニットの一つを潰して、次の資源回収ユニットに向かおうとしていた。

 

ポッドの考察によると、あの光球は資源回収ユニットのコアのようなものらしい。恐らく次のアクセスキーもそこにある。

 

[警告:2Bのバイタルに異常を検知。]

 

[推奨:早急なデータオーバーホール。]

 

こんなときに…。

 

「…早く認証キーを集めて塔を破壊しないと…。」

 

塔。なんなのかはわからないけど、あれは機械生命体が関わっているもの。何の目的で作ったか知らないが絶対に破壊する。

 

[警告:バイタルに異常を抱えたままの戦闘の継続は危険。]

 

すぐにでも次のユニットに向かいたいのにもどかしいなと感じる。

 

………だが、

 

「……わかった。一旦レジスタンスキャンプに戻る。」

 

急ぐ気持ちもあるが、万全な方がいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レジスタンスキャンプにある個室のベッドから起き上がる。

 

データオーバーホールは終わったらしい。案外早かったな。

 

……。

 

バイタルに異常と言っていたからここまで戻ってきたのに…。オーバーホールをする前とあまり変わってないような気がする。

 

まぁポッドが言うからには、何か異常があったんだろう。

 

個室から出て、次の資源ユニットに向かおうとする。

 

ふと、暗い顔をしたレジスタンスのアンドロイドが目に止まった。

 

「…どうかしたの?」

 

黒いコートを着たレジスタンスがうつむいたまま口を開く。

 

「…あんたキャンプの外に暫くいたんだろ?すまないが、こいつらを見たことないか。」

 

数枚の写真を見せられる。知らないアンドロイドの顔写真。

 

「…申し訳ないけど、知らない。」

 

「そうか…。同じ部隊にいた仲間たちなんだが、調査に行ったっきり消息がわからなくてな。……もし、もしも……死んでいるなら、弔うくらいはしてやりたくて。」

 

「…自分で探しに行かないの?」

 

「行きたいのは山々だが、前の戦いで駆動部分がイカれちまってね。」

 

そういって、足の付け根をみせる。

 

「だが……やはりどうしても気になって、な。」

 

大切な仲間の安否に不安そうな顔にあの日の私の姿が重なった。

 

「…わかった。私が探してくる。」

 

「…いいのか?」

 

「最後に連絡が取れた場所を教えて。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……地面に倒れているアンドロイドの顔を覗きこむ。

 

駄目か…もう死んでいる。

 

遺品だけでも回収する。遺品のドッグタグが束になっている。

 

これでもう三人目…。

 

あと一人か…。

 

[報告:残存する通信記録に緊急支援要請を確認。]

 

「時間は?」

 

[今から12分前。]

 

12分前。ついさっきだ。

 

「まだ生きているかも…。助けに行こう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

砂漠地帯。倒れているレジスタンスを見つけた。

 

[確認:捜索を依頼されていたレジスタンス。]

 

[生体反応なし。死亡を確認。]

 

遅かった。間に合わなかったという思いがあの光景を思い浮かばせる。

 

「……っ!!」

 

あの光景と重なり、助けられなかった悔しさで拳を強く握りしめる

 

[報告:以上で捜索を依頼されていた全てのレジスタンスの死亡を確認した。]

 

「……せめて遺品だけでも届けよう。」

 

 

 

 

 

 

「その顔をみると…。駄目だったんだな、仲間達は…。」

 

レジスタンスの声が暗くなっていく。

 

「残念だけど…皆、死んでいた…。」

 

私の声も自然と暗くなる。

 

「そうか…。」

 

頼まれていた遺品を渡す。

 

「ありがとう。……この花でも添えてやるかな…。」

 

「…花を?」

 

何故。と思った。

 

「あぁ…いや。真似事だよ。人類には死んだ者を弔う風習があったらしい。だから何だという話だが…。安らかに魂が眠ってほしいという願いを花に込めてな…。」

 

安らかに…魂が…。

 

「今回はありがとう。世話になったな。」

 

「……」

 

「……俺は…怪我をして戦場に行かない事でどこか安心してたんだ………。」

 

「……安心して………逃げてたんだ…。」

 

最後に、自戒のような、後悔のような事を小声でそう呟いていた。

 

____________________

 

 

 

「弔う……風習…。」

 

先程レジスタンスから聞いた話がずっと頭に残っている。

 

私には、弔いという事がどんなものかはわからない。

 

だけど、安らかに眠っていて欲しいという願いは良く分かる気がする。

 

「……ナインズ…。」

 

……決めた。あの場所に向かおう。

 

きっとあそこが一番ふさわしいから。

 

 

 

 

 

商業施設跡の扉の先のエレベーターを下り、ある部屋に入る。

 

その部屋は洞窟のようになっていて、そしてその地面には沢山の白い花が咲いている。

 

月の涙。それがここに咲いている花の名前。

 

白くて美しい、綺麗な花。

 

沢山の月の涙が薄暗い洞窟を照らすように微かに光を放って咲いている。

 

ここにはナインズと訳あって一度来た事があった。

 

なんて美しい場所だろうと、初めて来たときにそう思った。

 

花に弔いの意味があるのなら、ここが一番ふさわしい。

 

「ナインズ。」

 

語りかけるように、君の名を口にする。

 

「私には、弔うということがどういう事なのか良くわからない。けど、もし私達に魂があるのなら…ここで…。」

 

黒の誓約を模して作った木刀を、地面に突き刺す。

 

「私も…すぐに行く。」

 

淡い光に囲まれながら、君との思い出に浸る。

 

じわりと、涙がゴーグルに滲んだ気がした。

 

……もう行こう。私にはやらなければならない事があるから。

 

そうして此処を後にしようとして歩きだして、一旦止まる。

 

…月の涙は願いが叶う花だと、言っていた。

 

 

 

 

 

……墓標には振り返らず、でも、確かに願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやすみナインズ。良い夢を。」

 

 

 

 

 

 

 


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