夏の夜、花火で遊ぶ男女二人の日常の一遍。






幼馴染の二人が久しぶりに浜辺で遊ぶだけの話です。
恋愛に発展…?

短編小説。完結済み。

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処女作になります。

温かい目で読んでください。


残花の景色

《1》

 

 ──-煌々と照らす夏の日差しがカーテンを閉めているにも関わらず、外の暑さの余韻を部屋の中でベッドに寝転んでいる杏奈に伝えてくる。

 

 今日も暑い.ただただ暑い。

 

 暑すぎる! 

 

 この毎年更新されている気温だけは好きになれない。というか、好きな人なんていないはず。

 家の中なのにクーラーもつけずに生活なんてできない。

 電気代を節約しようと我慢していたけど、これ以上我慢していたら熱中症で倒れてしまいそうだ。

 今日の夜は久しぶりにいつも集まるメンバーと花火をする約束をしているから倒れてなんかいられない。

 

 ──ピロン! 

 

 さすがの暑さに耐えられずとうとうクーラーをつけようと立ち上がってリモコンで操作していると、徐にメッセージの着信音が鳴る。確認してみると友達四人のグループLINEの通知だった。

 

『ごめん、今日の花火いけなくなっちゃった! ほんとごめん!』

『申し訳ない、俺も行けなくなってしまった』

 

 それは約束していた花火のキャンセルの連絡だった。

 

『二人とも来れないのか……』

 

 二人の連絡に翔が反応する。この企画を計画していた翔が久しぶりに会う同級生との集まりを楽しみにしている事を知っていたので私は居た堪れない気持ちになったが残念に思いながら「また今度にしようか」と返信を打つ。すると、すぐさま返事が届く。

 

『ごめんね!ありがと!また予定立て直そう!』

 

 そんなグループの会話が途絶えてからほどなくして、翔から個人宛に連絡が届いた。

 

『今日予定空けちゃってて暇だし俺らだけで花火しない?』

『いいね! しちゃおうか!』

『じゃあ予定してた時間にいつも買い出しに行くスーパー集合で』

『了解!!』

 

 メッセージを送ってから元々今日着る予定だった服を出しながら、ケータイの上に表示されている今の時刻を確認する。

 まだ集合時間まで余裕がある事を確認してやっと涼しくなってきた部屋でゆっくりと出かける準備を始めた。

 

 

 ──────────────────

 

《2》

 

 

 予定していた時間より少し早く待ち合わせているスーパーについたが翔の姿は見えない。

 大体こういう時はいつも5分以上遅れてくるので今日も時間通りに来るとは全く思っていない。

 

 スーパーに隣接している公園のベンチで待つことにして歩き出した。

 しかし、後ろから足音が近づいてきたので不信感を覚え振り返るとそこに立っていたのはまだ来るとは思っていなかった翔だった。

「よぉ、杏奈はやいな」

 声をかけられ驚いて声も出せずにいると翔が「驚きすぎだ」と笑う。

 

「いつも遅れて来るのに今日だけ早かったらそりゃびっくりするよ!」

「たまには早く来るのもいいかなって」

「たまにじゃなくていつも早く来てほしいんだけどなー」

「気が向いたらな」

「えー!! なんでよ!」

 

 そんな話をしながら花火を買うために二人でスーパーに入っていく。

 

 季節ごとに関連商品をまとめてある特設ブースには今の期間は花火のブースになっているので、まっすぐそこに向かった。

 たくさんの花火セットの中からいくつか手に取ってセットの内容を見ていく。

 

 二人だけなのでそんなに多くはいらないかなー、と一人で考えつつ一応翔にも相談してみる。

 まだ近くにいると思い振り返ると違う方に向かって歩き出していたのであわてて呼び止める。

 

「ねぇ翔! どこ行ってるのよ。花火このぐらいの量でいいかな?」

「おー、そんくらいでいいと思うよ! ……それとさ! お酒と、少しつまめるものも買っていこーよ」

「いまそれしか考えていなかったでしょ? まぁ、時間的に小腹空きそうだし。買って行っとこうか」

「よっしゃ! 何買う?」

 

 買うことを許可すると、翔は小さな子どものようにはしゃぎながら小走りで駆けて行ってしまった。

 一体中身はいくつなんだ、とあきれながらも選んだ花火を持って歩いて翔の後を追いかけた。

 

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 私たちは花火以外にもおつまみやお酒などのお会計を済ませお店を出た。

 お店を出ると、入ったときはまだ明るかった青空が夕焼け色に染まっていた。

 

「おつまみ、だいぶ買っちゃったねー」

「まぁ食べきれなかったら半分こして持って帰ればいいっしょ」

「そうだねー」

「じゃあいつもの浜辺に向かいますかー」

 

 

 ──────────────────

 

《3》

 

 

 学生の時からみんなで集まって遊んでいた慣れ親しんだ浜辺に到着して花火の準備を始める。

 おつまみを食べたりしながらの作業だったからかいつもより時間がかかってしまった。

 夕日はあっという間に落ちてしまってオレンジ色の空は暗く染まり明るい月が太陽の代わりに辺りを優しく照らしている。

 

「よし! やっと準備できたー! どれから火つけようか?」

「派手なのからどんどん火つけていこーぜ!」

「早速? んー、じゃあミニ打ち上げ花火からしちゃう?」

「いいねー! 初めの花火は盛大にいこう!」

 

 ガサガサと花火セットの中から小さい打ち上げ花火用のものを出し砂浜に持っていく。

 二人で砂を集めて花火を固定をした。火をつけるのは怖いので翔に任せる。

 翔は私が離れたことを確認するとすぐに火をつけ、その場から急いでこっちに駆けてきた。

 

「さぁ、いけー!」

《ドーン!》

「わぁ!!」

 

 花火の音は自分が思っていたよりも大きく、びっくりして声が出てしまった。

 

《シュー.》

 音を立てながら最初の勢いをなくしていく。

 

「さすがミニでも打ち上げ花火だな! 派手で楽しいぜ!」

 と言ながら、その花火を最後まで見ることなく翔は次の花火の準備に取り掛かっていた。

「はやくない!? ちゃんと最後まで見なよ! もったいないなぁ!」

「いいだろ! 次の花火もガンガン飛ばしていこうぜ!」

 

 そう言って次から次に設置型の花火を準備しては着火を繰り返し、あっという間にセットの中に入っているミニ打ち上げ花火を消費していった。

 

「あとは手持ち花火だけだね。早かったなー」

「手持ち花火もどんどん火つけようぜ!」

「いや、火だからね! 気を付けながらしてよ! もう子どもじゃないんだからそんなにはしゃがないでよー」

 

 そう言いつつも私も久しぶりの楽しい時間で内心では翔と同じくらいはしゃいでいた。

 

 

 ──────────────────

 

《4》

 

 

 手持ち花火も残り少なくなってきて、最後に残ったのは線香花火だった。

 今まで持っていた手持ち花火をバケツにいれて線香花火とライターだけ持って石階段に二人で並んで座る。

 

 今まで騒いで火照ってしまった体を手うちわでパタパタ扇いだ。

「あっついー」

「これだけ暴れりゃそりゃ暑くなるわなー」

「そうだ! 線香花火、どっちが長く持つか競争しようよ!」

 

 ただ線香花火をするだけでは物足りないような気がして提案をしてみる。

 競争好きの翔がこの誘いに乗らないわけがない。

 

「いいぜ! 絶対負けねーかんな!」

「それじゃ、せーので火をつけたら競争はじめるよ」

「おう!」

 お互い一本ずつ線香花火を用意し手にもって火を点けるだけの状態にした。

 

「いくよ? せーの!」

≪かちっ≫

 

 …………

 

 無言の時間。

 二人の線香花火の火が燃える音と波の音や虫の声だけが響く。

 

 いつもは騒いでばかりだしほかのメンバーもいるから珍しい時間だな、と思いながらぼーっと火を見つめる。

 

 丸い玉にになって小さい火花が飛び散っている。

 かと思えば、だんだん火が小さくなっていき終わりを感じさせる。

 

 もう少し、もう少しだけ頑張れーと心の中で思いながら、できるだけ動かさないでじっとしてみると

 手元の火はそんな私の思いを汲み取ったかのようにまたぱちぱちと火花を散らし始める。

 

 もう少しだけ続きそうでホッとしながらまた火を見つめる。

 

「ああ!!!!!!!!!!!!」

 

 隣からの突然の大きな声に驚きすぎて声も出ずに体を揺らしてしまった。

 案の定、その振動で火種は落ちてしまい線香花火が終わってしまった。

 落ちたことを確認してすぐに翔の方を向いて抗議の声を上げる。

 

「もう! いきなり大きな声出さないでよ! 落ちちゃったじゃんか!」

「だってもっといけると思ったのに落ちちゃったんだぜ? 叫びたくなるだろ!」

「なりません! 子どもじゃないんだから。あーもう、もう少し続きそうだったのに!」

「それはごめんじゃん。まだ線香花火はあるしもう一回やろうぜ」

 

 翔は怒っている私をなだめる様に「な?」と言いながら次の花火を渡してくる。

 

 

 ──────────────────

 

《5》

 

 

 私はふくれっ面になりながらも渡された線香花火を手にする。

 さっきの線香花火でそれとなくコツをつかめたような気がして少しだけ余裕を感じ翔に話しかけた。

 

「ねぇ、こうやって二人っきりになるの珍しいよね。初めてかも」

「.おー、たしかにな。初めてではないけど」

 

 翔は集中しているせいか反応が鈍い。

 

「いつが最後だろう?」

「最近は全然ないな。高校のときとかだっけ?」

 

 よく覚えているな、と思いながら少しだけ隣に座っている翔を盗み見る。

 翔は線香花火の火種を穴が開きそうなほどじっと見ていた。

 

 すると、私の視線に気づいたのか翔がこっちを見る。

 咄嗟に視線を外し海の方を見た。

 

「あ! おまえ落ちてんじゃん!」

「え! あー、ほんとだ」

 

 翔に言われて手元を見ると、翔に言われた通り火種は落ちてしまっていて摘まんでいる線香花火に火は灯っておらず静かに垂れ下がっているだけになっていた。

 

「わー、負けたぁ。悔しい」

「ちゃんと落ちたなら言えよなー」

「翔が一生懸命頑張ってたから言い出せなかったんだよ」

 

 翔のことを見ていて気付かなかったとは恥ずかしくて言えない。

 

「えー、お前気づいてなかったじゃん。まー、これで一勝一敗だな」

「そうだねー、この勝負で翔に負けるのは悔しい!」

「勝負ごとは負けねぇ! さぁどんどん勝負しようぜ!」

 

 私が翔を見ていたことには気づいていなかったようで密かに安堵のため息を吐いた。

 

「あ、次で最後だ」

「え、もう終わり? 早くない?」

「まぁ、手持ち花火は小さいのしか買ってないしな」

「早くも最後の勝負かー、次は負けないから!」

 

 今回負けてしまったので、次は負けないように集中してやろうと意気込み、次の線香花火を翔から受け取る。

 負けず嫌いなのは翔とあまり変わらないなぁと自分でも感じながら次の準備をする。

 

 ──────────────────

 

《6》

 

 

 線香花火を受け取りながら座り直し、早速二人でタイミングを合わせて線香花火に火をつける。

 今回は慢心せずしっかりと火種を見て落ちないようにバランスをとる。

 

「なぁ、お前さっき俺の顔見てたろ」

「え!? 気づいてたの?」

 突然の翔の声と言葉で驚き、思わず動かしそうになった手を止めて問う。

「……がっつり見てたくせに、気づかないと思ったのかよ」

 そう言いながら翔は線香花火を気にしながら落ちないように静かに笑っている。

 見ていたのがばれていたのが少し恥ずかしくて顔が火照っていくのを自覚する。

 

 鈍感な翔のことだから気づいていないと思っていた。というのは黙っておく。

 

「翔の真剣な顔を久しぶりに見てびっくりしちゃっただけだよ! いつもはあんな顔しないからさ」

「馬鹿にしてる?」

 

 少しおどけた口調で翔が聞いてくる。

 こういう声の時はだいたいニヤニヤしているからわざわざ顔を見なくても想像がつく。

 

「してないよ! するわけないじゃん!」

 しかし、顔に出てしまっていたのか翔からの視線が痛い。

「お前時々俺のことそうやって馬鹿にするよなー」

「馬鹿にしているわけじゃないんだけどなぁ.」

 

 でも、本人がそう思っているのならそう思われるような行動をとっていたのだろう。

 少し反省しつつ黙って線香花火を見つめる。

 

 最初と同じように線香花火はぱちぱちと音を立てながら火花を散らしている。

 小さくなった線香花火は火花の散り方を変え小さい火花が散る。

 そしてまたその火花が開き大きく火花を散らしていく。

 線香花火の何通りもある散らし方を見ながら、

 今回はしっかりと火種を見て落ちないようにバランスをとって続ける。

 

 ──────────────────

 

《7》

 

 

「やっぱり杏奈は線香花火得意だな!」

 線香花火の火種が落ちた瞬間話しかけてきたその声に驚き少し体を揺らす。

「翔はもう終わってたんだね」

 そう言いながら顔を翔のほうに向けると翔は私の持っている線香花火を見ていた。

 

「俺のは最初より短かかったけど、杏奈の線香花火が見れたからいいや」

 目線を私に合わせて《にかっ》という表現がしっくりくるような満面の明るい笑顔を向けてきた。

 

「まぁ、翔にはこういう勝負はあってないからね」

 いつも見ている表情のはずなのに何故かその笑顔を直視できず海のほうに目線を向けながら返事をする。

 

「お前それ分かってて勝負仕掛けてきたな?」

「今更気づいたの?」

 やっと私の思惑に気づき悔しそうにする翔を見て思わず笑ってしまう。

「意地わりぃな!」

 

 私がお腹を抱えていつまでも笑っていると翔が立ち上がり、振り向きながらこちらに手を伸ばす。

 

「ほら、もういいだろ。片付けようぜ」

 

 そう言いながら手をこちらに差し伸べる。

 笑いすぎて涙が出てしまっているのを拭いながら、その手をつかんで立ち上がりお礼を言う。

 

「ありがと!」

 勢いをつけて立ち上がると翔は笑って「どーいたしましてー」と言いながら振り返りそのまま階段を降りていった。

 私もその背中を追いかけて今消えたばかりの線香花火を持ってゆっくりと階段を降りた。

 

 買ってきた花火全部を消費し終わりそれぞれ片付けを開始する。

 花火と一緒に買ってきていたおつまみは少し余っていたので二人で食べたいものを持ち帰ることして分けた。

 

 この場所で遊んだときは、来た時よりも綺麗にして帰ることが私たちみんなで決めたルールだ。

 今回は私たちだけだったから二人で分担して片づけをする。

 粗方片付けが終わり辺りが綺麗になったことを確認して持ち帰るものをそれぞれで分ける。

 お互いが持ち帰るものをもって浜辺を後にした。

 

 ──────────────────

 

《8》

 

 

 夜になるとそんなに街灯もない私たちの町は、夜景は見れないがそのかわりにとても星が綺麗に見える。

 そんな宝石のような夜空を見上げながら翔と肩を並べて帰路を進む。

 

 いつものメンバーでいるときは誰かが話しているのが当たり前になっていて賑やかなのが日常だったが、いざ二人きりになるとあまり会話がなく二人の間に静かな時間が流れる。

 

 ほかのだれかだと苦に感じるこの静寂な時間が、翔相手だとそんなに苦に感じない。

 それは、翔だとこんな時間も楽しいと感じられるからだろうか? 

 

「俺さー、久しぶりにこんなゆっくり星見ながら帰ってるわー」

 星空を見上げながら唐突にポツンと翔が話し出す。

「確かに、私も最近はこんなにゆっくり星見ることなくなってたなー。やっぱりこの町の星空が一番きれいに感じる」

 突然翔が話しだしたのに少し驚いたが平常心を装い普通に返す。

 

 いつも集まるメンバーそれぞれが自分のしたいことのために町を出たり、地元に残って家の跡を継ぐために勉強をしたりしている。

 私の場合は夢のために町を出てしまって、時々長期休みなどを使って地元に帰っている。

 今回もみんなが長期休みで一時帰宅するというタイミングでの集まりだったわけだが、ほかのメンバーがこれなくなってしまったのは本当に残念だった。

 しかし、久しぶりに翔との二人の時間が作れたのである意味ではよかったのかもしれない。ほかのメンバーには悪いが今回は楽しかったので、たまにはこういう時間もいいなと思ってしまった。

 

「お前昔から星見るの好きだったもんな」

「そうだねー、だってきれいじゃん? 何光年も離れた星の輝きって、それぞれ違う輝き方しててさ」

「ぷはっ! やっぱ杏奈ってポエマーだよな」

「なんで笑うの!! ってか、ポエマーじゃないし!!」

 

 そういって怒る私の隣で爆笑している翔に手加減せずに肩にパンチする。

「痛い」と肩を抑えながらもまだ笑いを止められていない翔を睨みつけながら「もう知らない!」と言って速足で翔を置いていく。

 

「待てよー、悪かったってそんなに怒んなよ」

 まだ笑いをこらえ切れていない翔が謝りながら小走りで追いかけてくる。

「まだ笑ってるじゃん!」

「いや、好きだよ? ポエマーな杏奈」

 突然の”好き”という言葉にそんな意図はないと分かっているはずなのに、一瞬ドキッとしてしまい体が固まる。

 笑っていた翔も自分が言った言葉を考えたのか、少し赤くなった顔を隠すためそっぽを向いてしまう。

 

 

 ──────────────────

 

《9》

 

 少し気まずい雰囲気になってしまい、先ほどとは違う沈黙の時間が流れる。

 二人とも赤くなった顔を隠すためにさっきまで見上げていた顔を下に向けて歩く。

 なんとなくこの雰囲気をどうにかしたい気持ちが出て私から話しかける。

 

「で、でもさ、やっぱみんなとも集まりたかったねぇ! 全員この町に集まること最近は滅多にないからさ!」

 

 さっきまでからかわれて怒っていたことなど忘れ、別の話題に向ける。

 

「そう、だな。まぁ、仕方ないだろ。ドタキャンは誰にでもあるし」

「確かに、翔も高校の時熱出してすごく楽しみにしていた夏祭り行けなくなったもんねぇ」

 

 高校時代にあった話を思い出しながら話していると自然に二人とも夜空を見上げる。

 

「あれ、ほんと悔しかったわー。みんなで浴衣着ていこうって言ってせっかく浴衣用意してたのによー……

 あ、でもみんなが祭りのあと俺んち来てお土産いっぱいくれたのはうれしかったな」

「そー言うこともあったねー、別日にまた浴衣着てさっきの浜辺で遊んだしね」

 

 楽しかった思い出しかなかったわけではない、たくさん喧嘩もしたし、たくさん議論することもあった。

 それすべて含めてやっぱりみんなに出会えてよかったと思うし、出会わなければ今の私はいなかったと思う。

 

 そんなことを考えながら昔話に花を咲かせるているといつの間にかお互いの家の近くまで来ていた。

 二人の家はそんなに離れていないためこの分かれ道でそのまま分かれて帰るかと思い立ち止まった。

「それじゃあ、ここで」

 立ち止まった私より一歩先に行った翔に声をかける。

 

「いや、そこまで離れてないし夜遅いから送る。ここで帰ったら俺のかーちゃんから怒られるしな」

 そう言いながら翔は、ははっと笑う。

「そっか、じゃあ翔が怒られないように送ってもらおうかな」

 と言いながら翔に笑いかけた。

「お、おぅ」

 そう言って翔はそっぽを向いてしまう。

 

「なんで送るのに照れてんのー」

 と笑うとさっき私をからかっていたくせに翔の方が「笑うな」と言ってくる。

 

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《10》

 

 

 私がからかって笑っていると少し不貞腐れながら、こちらを振り向き手を伸ばしてきた。

 

「それじゃあ。姫、家までのご同行をおゆるしくださいますか?」

 とわざとらしく言ってニヤリと笑いながら目を合わせてくる。

 

 そんな翔の無駄な演技に私は恥ずかしさで顔に血が集まるのを自覚しながら、こんな顔を見せたくないので慌てて手で顔を隠した。

 

「おい、返事しろよ。スルーされるとこっちが恥ずかしいだろうが」

 私が返事をしなかったからか、翔はむっとした顔をしながら返事を急かしてくる。

 

「ごめん、いきなりすぎて笑っちゃった。是非、お願いします」

 

 そう返すと翔は嬉しそうに笑い「おぅ、任せとけ!」と言いながら前を歩き出す。

 ほんとは全然笑えなかったし恥ずかしさで走って逃げてしまいたかったが、そんな不自然な行動を取った方が後々恥ずかしいかもしれないという理性が残っていたので、我慢をして顔が赤くなってしまったのを隠すために翔の方を向かないように歩いた。

 

「いやー、今日ほんと楽しかったわ。来てくれてありがとうな」

「いやいや、私も今日時間空けてて暇だったからね。私も楽しかったよ。誘ってくれてありがとうね」

「おう、次こそはみんなで集まろうな」

「そうだね、今度はもっとゆっくり帰ってくるよ」

 

 次遊ぶ予定を立てながら歩いているとあっという間に家の前についてしまった。

 少し物足りない気持ちになりながら玄関の門に手をかける。

 

「今日はありがとうね。ここまで送ってくれて」

「おぅ、ゆっくり休めよ」

「ありがと! そこまでだろうけど、気を付けて帰ってね」

「おぅ、こちらこそありがと。またな」

「うん、またね」

 

 そう言った翔は踵を返し歩き出した。それを確認して玄関を開け入る直前にまた翔のほうを見ると、ちょうど翔もこちらを振り返り目があったので手を振ってみた。

 

 そうすると翔も手を振り返して、くるりと向きを変えまた歩き出した。

 それを見て私も家に入り玄関を閉めカギをかける。

 自分の部屋に戻りながら小さいころも今みたいなことあったなーと思い出してフフッと笑ってしまった。

 

 自分の部屋に戻り荷物を置き、持ち帰ったものを整理し片づけを始める。

 

 お風呂などを終わらせ部屋に戻ってきてベッドに転がり今日のことを振り返る。

 

 今まで翔の行動に対してあんなに恥ずかしがることもなかったのに、

 今日は翔のちょっとした表情や行動にドキドキしてしまったのに疑問を覚えながら夢の中に引き込まれていった。

 

 END

 




最後まで読んで下さっってありがとうございました。

これから少しずついろんなジャンルを書いていきたいと考えています。
ちょっとずつ文章力をあげていけるように頑張ります!

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