俺は私で私は俺で。二人で一人の男女の、奇妙な生活。   作:馬汁

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ちゃんと書いてますよ。
気力の源泉は(好意的な)読者の存在感なのだと、再び実感していました。



性趣向なんて人それぞれだ、と私は思った。

 

 万が一にも問題を起こすと思わないけれども、一応。

 席を立ってあの白い姿を探す用意をする。鳴海妹も同じ様にして立ち上がるが、あっと何かに気づいた様な顔をして携帯を手に取る。

 

「ど、どうしましょう。これからクラスの方に行かないと」

 

「ん、出し物の当番? なら私らだけで行くよ」

 

 猫探しを理由に遅刻するわけには行かないだろう。

 それだけの重大事件とは言えないし、そもそもとして私たちが勝手に連れてきたのが原因だ。他の人を巻き込むのは、私らの価値観としては不義理と言える。……あるいは誠意がなってない? とにかくそんな感じ。

 

「うーん……でも」

 

「でも?」

 

「猫もそうですけど、双子2人から目を離すと大変な事になりそうだなー、って」

 

 それは、うん。そんな風に言われちゃうと私達も不安になるけど。

 私らってもしかして動物と同列くらいに思われてる?

 

「そしたら、えっと。……あ、そうだ」

 

「うん?」

 

「お姉ちゃんに頼んでみます」

 

「うん??」

 

 なんか、そういう話になった。

 

 

 

「なんで私が妹に頼まれなければ行けねンだよ……」

 

 入れ替わり立ち代わり。去り際に「よろしくお姉ちゃん!」と言い残された鳴海姉は、しばらくしてから荒い言葉遣いで愚痴を零した。

 それでも断らないのは、姉妹としての関係がまだまだ残っているからか。

 

 確か鳴海姉は、妹と距離を離しておきたいと言っていた筈なのだが。

 

「まだ仲良しなんだね」

 

「……」

 

 満更でもないという顔だ。私達が感じ取れるくらいには分かりやすく顔に出ている。少しは隠す努力をするべきでは無いだろうか。

 

 距離を取ろうという態度でも尚、ああまで頼られる姉と言うのも少し興味が湧くけれど。

 

「頼られるのって、どう言う気分なの?」

 

「……別に」

 

 別に、と言う顔でもない。

 けれどそこまで隠そうとするなら、敢えて突くべき話では無いのかな。この話題から手を引くとしましょうか。

 

「そ、そんでよ。午前に噂で聞いたんだけどよ」

 

 話変えるの下手かな?

 

「あ、もしかして噂を聞いたのってメイド喫茶の」

 

「黙って聞け」

 

 はい。

 

「アンタら双子、付き合ってるのか?」

 

「しばらくは付き合ってる」

 

「しばらくってなんだよ……」

 

 しばらくはしばらくだ。

 姉には妹から説明を受けていない様に見える。私たちから改めて説明するべきかなと思って……止める。

 今は猫の方が優先。

 

「猫、どうやって探す?」

 

「話変えんの下手……。猫が居そうなところって言えば、正門とかじゃないの?」

 

 どうだろう。あそこに居座ってるのって、私たちが出てくるのを待ってるだけなんじゃないか、って考察していたんだけれど。私らが正門から出ると動き出すし。

 あの猫の事だ。むしろ猫だと思わない方が良い気がする。

 

「どう思う?」

 

「探すだけ探す。だが深刻に捉える程じゃない」

 

「そんな所だよねえ」

 

 確かにあの猫は賢い。私達の言いたい事を大体理解している気がするし、暴れたりなんかもしたことがない。

 人を襲う事がなければ、自分がそこに居るだけで騒ぎを起こす可能性すら自覚しているかもしれない。

 

 けれども。

 

「そうだな。理由のない信用で放って置いたら、言い訳もできなくなる」

 

 他の人にとっては、あの猫は只の野良猫だ。私たちがあの猫に理性を感じていたとしても、やっぱり猫を猫だと思って行動した方が良いだろう。

 

「決まり」「決まり」

 

「やっぱ置いてけぼりになるよなあ……」

 

 行動の方針は、賛成2人と無投票1人で決定となった。

 さて、探すならば何処を探れば良いのやら。

 

 

 

 

 流石の私達も、猫探しとお付き合いごっこを両立する気が起きなかった。

 何かを探すならば手分けする方が良い筈。と言うことで只今は片割れと別行動である。

 

「珍しいな。あの双子が別行動なんてな」

 

「そうかな?」

 

 そして鳴海姉は私と一緒。付き合いごっこの必要が無くなったとは言え、目をつけられてるのは私なんだ。

 

「もし告白されるなら私だし、明一の事を恋敵だーって攻撃される事もない筈だし」

 

 鳴海姉が目指す様な不良像は、あの男子の様子からは感じられない。上手く隠している可能性もあるけれど、そういう性格なら人前で手を出す事も無いだろうと思う。

 

「そうかよ……。そう思うってんなら大丈夫だろうな」

 

「その喋り方しなくても良いよ? あいたたっ」

 

「うっせ」

 

 肩を強めに握られた。ちょっと痛いというか痛気持ち良い。もしかして肩もみとか上手だったりとか? っていちち。

 

「かってーな、肩。家でパソコンでもやってんのか」

 

「まあね」

 

 私の肩に何かを感じたのか、肩もみが続行される。なんか、硬いらしい。

 

「明一と一緒にやってる」

 

「双子だし、そんなもんか」

 

 まだ揉まれる。今度は両手で両肩を。

 私がそんなに硬いと言うなら、片割れもきっとそうなのだろう。後で鳴海姉に彼の事も……いやいや、それはなんか違う気がすっ

 

「おふっ」

 

「おい変な声出すな」

 

 何、今の、めっちゃ効く。勝手に肩持ち上がった。

 

 

 

 

 それっぽいところを色々探してみたが、やっぱり見つからない。

 階段裏は見た。人気のない部屋は見て回った。校舎の外も一通り。

 

「猫は何処に居るんだろうな」

 

「誰かに連れていかれてたりしてな」

 

「……ありそうだけど。あるかなあ」

 

 ちょっと愛着が湧いてたから、それは困る。猫が連れていかれるとしても、保健所とか、そういう保護施設だと良いのだけれど。

 それ以前のあの子が人に捕まる様子が想像できない。

 

「つかさ。お前はどうなんだ」

 

「うん?」

 

「告白断るって事は、他に気になってる奴とか居るんじゃねえの」

 

「うん」

 

「え、マジで」

 

 鳴海姉の目がカッ開いた。すっごい開いてる。

 この文脈で“気になっている奴”と言えば、恋愛対象の事だよね? 居るっちゃ居るけど。でも人に言う事じゃないし。

 

「ジョニーじゃくしょん」

 

「は?」

 

「ジョニーじゃくしょん」

 

「……ジャクソン?」

 

「そうそれ」

 

「いや誰だよ」

 

 知らない。答える気がないから適当なこと言っただけだから。

 答えたくない。なんて返しは場の雰囲気を悪くする。女子なりに頑張って人間関係に馴染もうとしてた頃の、ちょっとしたノウハウだ。

 私にとっての、明一よりもちょっと優れた部分だと思ってる。

 

「変な事言うんだな、お前……」

 

「たまにはね。好きな人を教える相手って、相当仲良くないとダメでしょ?」

 

「ああ、答えたくないのね」

 

「うん」

 

 色恋沙汰は人気がある。少なくともこの学校ではそうだ、って最初の頃に実感した。

 鳴海姉がどうかは知らないけど。

 

 

 雑談と言うには雑すぎる会話の区切りに、携帯の振動に気付いて取り出す。通知音がなんとなく苦手だから、電話以外の通知音は切っている。

 

 メッセージの送り主は記者さんだ。文化祭の仕事の傍ら、例の男について調べていると聞いていたんだけど……。

 

「……うわ。え? うわ」

 

 驚愕、二度見、驚愕。どっちかと言うと「引いた」に近い。

 実在したんだ。いやそんな事言ったら同性愛者さんには悪いけど。

 

「どうしたんだよ?」

 

「明一が」

 

「アイツがどうしたんだよ」

 

「告られてる。男子に」

 

「まっ、ぅえ?」

 

 気の抜けた音が、エセ不良さんの口から漏れた。

 

 

 

『件の男子に関して報告です』

『明一さんがあの男子に告白された……。と湧き立つ集団を発見しました。現在はこちらで事実確認を行っております』




重ね重ね、遅くなっていく更新頻度に関しては謝意を抱いております。
それはそれとして、書きやすいようにやっていきます。マラソンは歩いてでもゴールラインを踏まなかればならない、という心持ちなので。
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