俺は私で私は俺で。二人で一人の男女の、奇妙な生活。   作:馬汁

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 私の中で生まれた妄想を陳列しておきました。



番外編・その年の境目における2人の様子

【 さいしょの ふゆの ひとまく 】

 

 

「冬だぞ……」

 

「冬だねえ」

 

「だから冬だって」

 

「どしたのその顔」

 

 目線が下に向く。

 私も下を見る、私の足が見える。うん、寒いけど鳥肌とかは無いね。

 

「なんか足についてる?」

 

「つけろ、というか着なさい」

 

「んー? ……あ、もしかしてタイツの方が好み」

 

「ちが、いや、そう。そう」

 

 言葉を飲み込んだような様子で頷いた。どうやら私の脚が気になって仕方がないらしい。

 冬でもよっぽど寒くなければ暖房をなかなかつけたりしない私たちの部屋は、日差しや体温が貴重な温まりポイントになる。

 これだけだと寒すぎるかもしれないけど、毛布や重ね着だけでだいぶ楽できてしまう。パソコンもなかなか暖かい。

 

 んで、どうして足をこんなにも見つめられているのかと言うと。

 

「そんなに足が気になる?」

 

「寒そうだし、目に悪い」

 

「これでも肌には気を遣うように言われてるもの」

 

 まあ言われてるだけだけど。思い出したらやっている程度である。

 

「だから目を逸らしても視界に焼き付いてるのか」

 

 思ったより効果出てるなあ、私の足ってば車のライトばりに光ってるらしい。それは確かに隠さねばならない。彼の視力が落ちたら困る。

 しかし私も私で、タイツという選択肢を敢えて取らない理由があったりするのだ。

 

「でもね、靴下とかタイツとかつけてると足がスッキリしない」

 

「それは分かるけども」

 

 べつに汗腺ドパドパしてる訳ではないけど、そういうものをつけてると足がジメジメしてくるのだ。特に足指の間とか。

 さすがに外出るときとかは付けるとはいえ……。

 屋内の私服に関しては、この人生で謎に定着した価値観によって、許容される露出度と言うのが短パン程度なのである。さすがにパンイチ族にはなれない。ブルマも怪しい。付けないし買わない。

 

「……明一くんも脱いだら?」

 

「別に靴下は履いてないんだが」

 

「いや、もっと脱げるじゃん」

 

「パンイチになれと?」

 

「これ」

 

「ああ……」

 

 私が履いてる短パンを指さす。彼もまあこの程度なら、と長ズボンの裾を弄る。くるぶしのチラ見えがなんとも健康的で……。

 

「あ、私は気にしないよ。男の子に毛の処理とかも求めてないし」

 

「気にしてるのは……ああ、うん。毛の事ではあるんだが」

 

 うーん……? あ、そっか。

 

「別に寝るときに足がじょりじょりしてても気にならんよ」

 

「足絡めてくるの前提か……」

 

 べつに今更じゃないの。

 

 

 

 

【 はつひので まんいんさんぱい 】

 

 

「こっち来い」

 

「言われずとも」

 

 明の身体を手繰り寄せて、なだれ込む人混みから守る。

 雰囲気と緊張感は、バトロワゲームのラスト3部隊という状況と似ている。大雨の後にくる川の流れのような力強さはあるが、肝心の流れの速さは数センチ程度の歩幅を少しずつ進めていくくらいで。

 

「すごいね、人」

 

「普段行ってた所よりは人数少なめかしら~」

 

「普段はもっと居るのか……」

 

 ちょっとラッキーとでも思っておこう。

 少しずつ足が進められるこの行列の中で遠くから笛の音が聞こえる。流石にこの状況だから交通整理がされてて当然だ。

 また列が進んで、坂だか階段だかの所まで来る。足元は見えないが、多分階段で良いだろう。と判断しつつ慎重に足を運ぶが。

 

「あわっ」

「うぉっと」

 

 足元が見えない中で段差でも見落としたのか、明が足を踏み外してバランスを崩す。

 さっきから結構くっついてたから、直ぐに抱き込んで倒れないようにする。

 

「わ、あ、ありがと」

 

「捻ったか?」

 

「いや、変な段差があっただけ」

 

「そうか、良かった」

 

 こんな状況じゃ、中々列から離れられないからな。

 バランスを立て直して、しっかり立ち上がれたのを確認してから手を離す。……といっても不安だから、何時転ばれてもいいように腰周りに手を回しておく。

 

「……ね、ね」

 

「どうした?」

 

「家に帰ったらもう1回……」

 

「……?」

 

「息苦しくなるくらい抱きしめられるの、なんか……よか」

 

 ストップ、ストップ! 母の目の前でヘキを開拓するんじゃねえ!

 

「エッ……モ、って奴かしら?」

 

 やかましいな!

 

 

 

【 つめたいだんぼう つめたいおてて あつあつふたご 】

 

 我が家にはコタツがない。

 あらゆる漫画やゲームに出没しているあのコタツだが、実の所私達は実物すら目撃したことがないのだ。

 

「今どんぐらいだ?」

 

「2つくらいレベル上がったとこ。うひーつめた」

 

 私たちにとっては布団の中で互いに温め合うのも選択肢だが、プライベート以外ではそれも出来ないのである。お、パソコンの排気暖かいわ。

 

「いよいよ暖房つけても良いだろ。冬も本調子だ」

 

「そうかも、そっちでリモコン押してくれる? ……あ、見て見て私の手ぇかじかんでる」

 

「り。……見た目じゃ分からんな」

 

「なのに手汗びっしょり」

 

「見た目じゃ分からないって」

 

「じゃあ触る?」

 

 やくとくやくとく。明一くんは少し悩んでからリモコンを取りに行く素振りをやめた。なんでよ。

 

「いいじゃん」

 

「こっから動いたらあせあせハンドに捕まる未来が見えた」

 

 首から足先まで布団で包み直した彼がボヤく。私そんな変な事しないし……。という訳でソイヤっ。

 リモコンのある所まで行ってボタンを押してやった。エアコンが動き出して寒い寒い寒い。

 

「あれ温度設定、あれ、あれれ」

 

「少し待てば暖まるんじゃないか。布団でも被っておけ」

 

 暖房の設定で動いている筈なのに冷風を吐き出されたけども、少し待てばエアコンも本調子になるかもしれない。明一の提案に乗って、しばらくお布団の中に避難することにした。レベル上げは中断とします。

 じゃ、おじゃしゃーす、最近お隣に引っ越した明ちゃんですどうも。

 

「やっぱり人の温もりが残ってる」

 

「そりゃ俺が入ってるもの。現在進行形で」

 

「あ、これはつまらない物ですが」

 

「誰がご近所さんだひょあっ!」

 

 うお、過去イチ変な音が出てきた。んや別に変なとこ触ってないんだけどな。ちょっと冷えたおててで首筋をツンツントーツンしたくらいで。

 

「ちょっと変に動かないでよ、外の冷たい空気が入る」

 

「手ぇ冷たいな!」

 

「いやー明一くんの買ってくれた服だと首元があったかくていいや」

 

「やり返せない……!」

 

 やったらやったで私の声で明一くんが自爆するんじゃないですかね。と呆れた目線が彼を刺す。彼の目が濁る。

 明一のお手手は既に温まってるはずだから、ここら辺に触られても背筋を這う刺激にまでは及ばないハズ。私ってば無敵。

 

 布団の中から手を出したくないからと、首元に隙間を作ってから布団の中を覗き込んで携帯をぺたぺた弄って、またしばらくマッタリと。

 

「でさー」

 

「なにー」

 

「私たちでは初めての年末だけどさー」

 

「おー」

 

「今頃はもしかしたらお互い卒業してた……かもしれなかったじゃない」

 

「……今耳鳴りなっててなんも聞こえない」

 

 ああそう。

 

「配慮してちょっとぼかしてやったんだけどー?」

 

「想像の幅が広がるんだよ!」

 

「むっつり」

 

「カパッ」

 

 はんっ。

 そんでまあ、私たちの場合はイチャラブ純愛に該当する訳だけども。この恋愛が何処まで深まっていくのか、ちょっと気になったのである。

 

 双子という関係である以上、法的に結婚を成立させることは出来ないのだ。けども、認められなくとも進んで行ける所に、また名前のついた関係性があるのだと思う。愛人とか。

 

「今の私はあんま気が進んでないけど、大学生にもなったらやる事やってんのかなあって」

 

「分かっててその話してる……?」

 

「あははー顔真っ赤」

 

「最近そういう話ばっかりで食傷気味なんだが」

 

 それはそう。人間やっぱり下ネタの方が盛り上がってしまうのか。あくまでも純愛のもとで行われる健全なセッセが下ネタかというと、なんか違う気がしないでも無いが。

 

「話変える?」

 

「頼む」

 

「大好き」

 

「うっ」

 

「明一くんは?」

 

(……え、俺同じ言葉で返さないといけないのか? ちょっとそれは……恥ずかしいというか、だいぶ勇気いると言うか……)

 

「ほらー、どうなのさ」

 

 彼の視線が揺れる。内心の動揺が表れているようで面白い。あるいは愛おしさを感じているかもしれないけども。

 

「……」

 

(う、むうん。これは、これからの関係を考えても遅かれ早かれ避けられないし、この一言さえ言えない男の子と言うのも情けない)

 

 こうやって観察していると、またいつも以上に心の声が聞こえているような気がして、なんだか満足感が……うん、中々。

 

(よし、言うぞ。唸れ俺の声帯!)

「だ……だい……」

 

 鏡の中を見つめる私の顔と、私の事を見つめる彼の顔では、こみ上げてくる感情も全然違うもので。心を揺さぶってまでして観察する価値があると確信できるくらいで。

 ほら、真正面から捕えようとする私への視線。

 

 はぁぁぁぁぁっ……良いね。

 

「だ……すき、です」

 

「え、“抱いて、好き”だって?」

 

「家出する」

 

 あれちょっと待って今なんて言ったてか聞き逃した!

 

 




 明も多少懲りてくれるかと、明一くんはひっそり家から離れましたが、2駅くらい離れた公園で休んでいたら追いつかれました。めでたしめでたし。

 ・追記・
 途中で視点がどっちかわかんなくなって入れ替わっちゃったので、直したついでにちょっと書き換えました。



 ・私の所感・
 はい、年末のちょっとした空き時間にちょっと書いちゃいました。

 ネタの消化に関しては計画性が無いので、のちのちに本編のイチャイチャネタが物足りない……。ってなっても致し方なしです。
 ラブコメはサスペンスやらホラーやら交えずに、それ単体で書くのがいちばん楽しい。

 では、また夏に会いましょう。具体的には太陽が頭頂部を睨める角度になった頃。
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