俺は私で私は俺で。二人で一人の男女の、奇妙な生活。   作:馬汁

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“私”はそこまで変な子ではない!

 たいっへんお見苦しいところを出してしまいました。どうも明ちゃんです。

 呆けた所からの第一声が大分良くないものだったのは、私も自覚しているところです。なんだよ交尾って。

 単純なことでは上げられない明一ポイントが下がってしまった。あーあ。

 

(で、どうするのさ)

 

(どうしようかね……)

 

 交わす眼差しは今後への不安を交換するようで、私の心はまた陰ってしまう。

 

 夏から冬にかけて、自制心が鍛えられた同級生はそれ故に動きが少ない。向けられるのは視線や好奇心ばかりで、実際に声をかけられたりはほとんど無かった。

 この点では安心出来る。去年の焼き直しは勘弁だ。

 

「そうか……。ようやく、グズッ。むずばれだんだッ……!」

 

「自称天使は退場願います」

 

 ただし視界はうるさい。文化祭での小さな騒ぎの原因が、今しがた教室の外へ押しやられていた。

 一応、あんなんでも私たちのコレの切っ掛けではあるんだよね。確かにキューピットの様な事は出来ている。

 

 

 それから間を置かずに担任が入ってきて、追いやられたばかりの男子も、担任に着いていく形で戻ってくる。

 

「はいはいはい戻ってくださーい。はい、おはようございます皆さん」

 

 半年ほど続く挨拶だけども、年末年始を置いているから久しく聞く定型文。そこからやはり、大人達も無視できないであろう噂に対しコメントを。

 

「色々とやかましいですが、とりあえず先生はノータッチの方針と相成りましたが、ただ一言。噂であれ、事実であれ……」

 

 しん、と教室が静まる。続きの言葉を勿体ぶる様に頭を傾げるが……。

 

「この先の言葉を考えるには先生の国語力が足りませんでした。ではホームルームにしましょうか」

 

 結局言及されないまま点呼に入った。見逃されているようで、1歩の距離を置いたところから監視されそうな予感がした。

 ……あんまり問題を起こし過ぎると、クラス替えで生き別れてしまいそうだ。ああ恐ろしい。

 

 

 

 

 いざ昼休みを迎えてみれば、遠巻きに向けられる視線にも慣れる。明一の方を振り向いたら、クラスの半数からの視線が向けられてるのに気づくんよ。ホラーだね?

 

 私たちでなんか対応した方がいいのかな。軽く手でも振ってみるけど……、なんかクラス中が一段とどよめき始めた。なんかちょっと楽しいぞ。

 

「明、どっか行かないか?」

 

「えー、まあ、良いかな」

 

 折角人との関わり……関わり? が楽しくなってきた所だったとはいえ、ちょっとこれは騒がしい。

 

 するする、と好奇心を向けられないように気配を消しつつ離脱する。

 なにやら新婚旅行とか言い出す声が聞こえたけど、これは先程の会話を曲解されたのだろうか。よくできたゴシップである。

 

 いやね、居心地の悪い部屋から逃げたいだけなんよね。旅行にはあんまし興味ない。

 ……しかし、2人っきりのお泊まりには興味が湧く。フンフンフン。そして明一からのほっそい眼差しで我に返る。

 

「入浴シーンは男女別だ」

 

「そんな所までは想像してないヨ」

 

「どうだか」

 

 お堅いんだから。

 

 

 部屋を脱出した先でも目線は向けられているが、クラスメイトほど強烈では無い。昼ごはんを詰めたビニール袋を片手に、もう少し居心地のよい所はないかと徘徊する。

 そんな私達の様子をふと俯瞰したのか、思い出したかのような素振りで明一が呟く。

 

「……逃避行だ」

 

「おお? 確かに」

 

 恋愛の始まりとして相応しい要素だ。囚われの姫が白馬の王子に救われるシーンかもしれないし、ヒロインが謀(はかりごと)に追い回される一幕かもしれないし。

 

 想像しているだけでなんか楽しくなってきたが、それはそれ。一旦置いておく。

 

「それにこれ、去年もやった奴だ」

 

「去年……あー!」

 

 懐かしい! 今日とは違って放課後のことだった気がするし、なんだかんだとあの時の着信が互いにとっての最初の通話なのだ。

 

「思い出のワンシーンだな」

 

「そだ、アルバムでも開いてみる?」

 

「滅多に写真は撮らないが」

 

 まだまだ食べそびれているビニール袋の中身には手を伸ばさず、止まぬ思い出話を続ける。適当な壁を寄りかかる所に選んだら、お昼の残り時間も忘れてしまって……。

 

 

「あ」

 

「うん?」

 

「鳴海妹」

 

 去年ぶりの姿を見て、無邪気に手を振るのである。

 なになに、顔真っ赤じゃん、ハハッ。……交尾かぁ。

 

「あのー、えっとですね」

 

「なんだ」

 

「双子、ですよね? それって良くないことでは」

 

「まだ言ってるのか」

 

「不健全なこと言ってないもん……」

 

「アンタじゃない」

 

 え、私じゃない? そっすか……。

 

 

・・・

 

 

 鳴海妹、下の名前を思い出せないけども、今までも絡みが程よく続いているから、彼女との関わりに抵抗感などは無い。なんせ友達だから。多分。

 友達ならいい加減覚えろって話だけどね。アプリで連絡先も交換してるけど、プロフィールの何処を見ても載ってないのだ。持ち物に名前付けてても苗字だけだし。

 

「えぅっと、私ここにいていいんですか?」

 

「まあまあ」

 

 これ以上2人っきりだと、また何か口を滑らせそうでね。是非ここに座って頂けると。

 

「ゆっくりしてこ?」

 

「あっでもご飯……」

 

「……トモダチだものね」

 

「あっあっあっやっぱ後で食べますぅ」

 

「またそう言うのばかり上手くなって……」

 

 それにほら、あの流れで2人きりだと妙に気になるじゃん? ……気にならないけど。

 でも何となく引き留めてしまった。理由と言える理由は、私の失態を誤魔化す所にしかないことに気づいた。私ってばだいぶ自分本位だな。

 

「あ、普通に帰っても大丈夫だからな。明が俺と二人っきりになると色々顔真っ赤にするだけで」

 

「あっはい。……それって完全にやってる奴じゃないですか!!」

 

「あれ?」

 

 やーいやーい、自爆してやんの。私だってまだやってないもん。性知識なんて座学しか知らんもん。それってつまりムッツリって事?

 

「あっあっあっ」

 

「アド取った直後に自爆するな」

 

 誘爆しちゃった……。

 

「一応訂正するがな」

 

 色々自滅して沈む私を置いて、誤解を正す明一の声が続く。その内容でさらに私は沈んでいく。

 交尾とか言ってないし……。言いました……。

 

「明さんって思ってたよりヘンテコさんなんですね」

 

「俺と同じくらいヘンテコだぞ」

 

「明一さんは少しくらいはマシですよ!」

 

「そうか? そうだな」

 

 

・・・

 

 

 なんだか鳴海妹に序列を付けられた気がするけど、私は元気です。

 こんな短時間に何度も爆発していたら、少しは耐性が出来るものだ。色々乗り越えた女は強い。

 

「そういえば、何か用事があったのか?」

 

「あ、それは。友達として噂の真偽を確かめようとしたというか。ちょっとした野次馬根性というか」

 

「はあ」

 

「保体の実習だよぐへへみたいなことしてませんよね?」

 

「してないが。なんだその表現は」

 

「漫画でたまに見ますよ」

 

「えっなにその漫画気になる」

 

 今度見せてくれないかな、女の子同士のよしみで。

 

「このくだりって男がやるものでは」

 

「男女差別は良くないぞお兄ちゃん」

 

「はんっ」

 

「バカにされてますね……」

 

 んええ、そんな目で見ないでー。

 鳴海ちゃんが私を情けない子みたいに見てくる

 

「そういえば明さん、お兄ちゃんって呼んだりするんですね?」

 

「あっ気の所為」

 

「なんならアニメで聞いたような発音でした!」

 

「ばっっ、気の所為!!」

 

「もしかして俺ガイタ見てます?!」

 

「みてないっ!」

 

 お兄ちゃん呼びの為にアニメ切り抜きとか色々見たのとか! 昔のから今に至るまでの妹キャラを勉強したのとか! 明一に知られるのは少し恥ずかしい! てか無理!

 

「お兄ちゃんに対する愛情という点ではあきたちゃんはすっごく強いですよね! 異性愛抜きの完全な家族愛って言うところ、すっごく妹って感じがして」

 

 えっそうなの。

 って、横から強烈に呆れの眼差しが!

 

「(声にならない呆れ)」

 

「あっまってお兄ちゃんそんな目で見ないで、ね?」

 

「隠したがってるようだが、7割くらいは予想つくぞ……」

 

「(声のない断末魔)」

 

(パントマイム……?)

 

 原作見ずに切り抜きから見始めてごめんなさい!




 己の人生観や性格の変わるような出来事が次々と現実に起きているので、作風の変化はもう受け入れました、わたくし。
 明らかにおかしいくらい双子たちの性格変わってたら教えてやってください。活動報告のコメント欄とかいいんじゃないですかね。
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