Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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賭け事、勝っても負けても……あり?

―――この世のすべては妾の都合の良い様に出来ている。楽しませてみろ。

 

 

 

傲慢と言う言葉をその身に体現したかの様な物言い。

第一印象最悪を通り越している、と評しても過言ではないだろう。

 

 

だが、言い得て妙とも言えなくもない。

 

確かに、ツカサは彼女と会った事がある。

そう、王都に来ていた時だ。………それも、何度も何度も繰り返し(ループ)し、突破した最後の回で、彼女と鉢合わせした。

 

それ以前の道筋であれば、戻ってしまうので、彼女と会えたとしても、その事実さえなかった事にされる。それが故に、記憶を引き継いで時間遡行するツカサの魂、記憶には刻まれても、彼女の記憶に刻まれる事は一切ないだろう。

 

 

初めて出会った当初も、運よく出会い、運よく見初められ、運よく御眼鏡にかなった、と言うモノ。

あの時、先を急いでいたツカサにとって、時間ロスはしたくはなかったのだが、無視する訳にもいかないので、ある程度会話をしようとして………結果長引いた。

記憶(セーブ)を怠ったが故にだ。

 

但し、記憶(セーブ)したら、死に戻り(スバル)に擂り潰されてしまうから、ツカサには非が無いとだけは伝えておこう。

 

 

 

「……………知っているの? ツカサ」

「ん? ……ああ、ちょっと前に王都で。エミリアさんを探してた時だよ。――― 一番最後(・・・・)にね」

 

 

ここでラムに説明をする……が、少々違和感に気付く。

思った事を躊躇いも無く口にするのがラムの美徳―――と本人談からある通りなのに、ラムは口を出さない。

 

第一印象は、どう言い繕っても最悪。

大胆不敵なのか愚痴無知なのか……、後者を言えば烈火のごとく怒りそうだから決して口にはしないけど、そんな相手に対してもラムは無言だった。

 

兎に角、彼女は怖れと言う言葉を一切知らない。

 

出会った当初では、荒くれが根城にしてそうな入り乱れた路地裏での事だったが、そんな場所でも、全く態度が変わる訳でもなく、更に言えば根城から這い出てきた見たまんまのチンピラ数人相手にも全く臆す事も怯む事も無く、自分を貫く。

 

 

そんな場面に遭遇してしまったものだから、更に時間がかかってしまったのは言うまでも無いだろう。

ただでさえ、死に戻り(スバル)と言う天敵からの大ダメージを負った身体だったというのに、更なる混乱と余計な体力を使わされてしまった。………だからと言って、見捨てたりしないのは、ツカサの性分ではあるが。

 

 

「クククっ。さぁ、どうした? 見たところ今回はそう慌てている訳でもあるまい? 妾を楽しませてみよ」

「まるで こっちがそれに乗ると100%決まった事前提で話しますね………」

「光栄に思うが良い。無知蒙昧であろうが、有象無象であろうが、そなたは妾に見初められたも同然。これ以上の誉れは無いぞ」

 

 

ある意味スバルにも通じるかもしれない、この妙に自信満々な所作は。

だが、絶対的に違うものもある。……その我を通すだけの()があると言う事。

 

そして、彼女はツカサが思っている以上な熱意を持って接してきているのだ。

 

 

「妾に都合が良い事しか起こらん筈のこの世において、其方は、《本気を出す(・・・・・)》と言い、後の勝負に望んだ。……妾を相手取ると言う事は勝敗の決まった事柄に対面したも同然だと言うのに、な。……じゃが、それが虚勢では無かった。あの瞬間から、世界が変わった。……あの時より、妾はそなたを見る目が変わった。妾の希少な有限の時間を無駄にして良い、と思う程にな。それに―――思った通りでもあったな」

 

 

彼女は、チラリとツカサの傍に控えているラムに視線を送る。

一瞬目が合ったラムは、少し控え目に目配せをして、一礼をした。

 

 

「この妾の目に適ったのじゃ。そこらの凡愚とは訳が違うとは思っておったが、妾が知らぬだけで、相応の高貴な身分の持ち主であるらしい」

 

 

傍から見れば、ツカサはラムを連れている。ラムの恰好はメイド。……使用人を付き従えている様に見える。極普通の一般人であればそぐわない光景だと言えるだろう。

 

 

「取り敢えず、それは違うとだけ言っておこうかな。彼女は 別の主人に仕えている使用人さんだよ。今は、オレの面倒を見てくれる様に頼まれてるから、従ってくれてるだけで」

「……………」

 

「ほう」

 

 

何やら言いたげなラムの視線を感じるが、等の本人は無言を貫いている。不利益な事、発言等があれば、口を挟んでくるかもしれないが、今の所は いわば 主の一歩後ろに下がり、従ってる感、なのである

 

橙色の髪を靡かせ、手に持った如何にも高価な扇子で口元を隠し……ラムをじっと見据える。

ほんの僅かな心の機微さえ逃さないと言わんばかりの眼力に、流石のラムも眉を顰めかけたが、何とか堪える。

 

ラムがここまで堪え性があるとは思いもしなかったが、ここまでくればツカサとて理解出来る。

 

ただの町娘、一般人であるならまだしも、見てくれから解る通り、この女性こそが高貴の身分である、と言う証明にも繋がった。

 

ここで不要な発言をし、ツカサ――――は良いとして、ロズワールに不利益があってはならない、と言うメイドとしての嗜みであろう。

明確な敵意なら兎も角、今の所は一切その類なのは見られないから。

 

 

 

 

「確かに急いでないけど……、何をすれば? 大道芸みたいなのは嗜んでないんだけど」

「簡単な事じゃ。――――あの日の続き、延長戦と行こうか」

 

 

 

彼女は懐から―――……ではなく胸元から。

 

 

その豊満な胸の谷間から取り出したるは、ルグニカ王国の通貨聖金貨。

豊満さから解る通り、その触らずとも解る程の弾力さも兼ね備えてそうな谷間だ。コインの1枚や2枚、仕舞っておく事くらい容易いだろう。

 

 

 

《いったい何て所から取り出すんだ‼》

 

 

 

と思ったのはツカサだが……、ここで忘れて欲しくなのはツカサとて男の子だと言う事。

例え記憶がなくても男の子。生まれて間もなかったとしても男の子。

実年齢不詳ではあるが、見た目から察するに、スバルと大差ないだろう。そんな男の子。

 

ラムとの1日や先ほどのやり取りでも十全なダメージだと言うのに、ここまで性に直接的に与えてくる視覚の一撃は、言うならばスバルの死に戻りにも匹敵しかねない。

 

 

なので、受け止めるのは不可。

直視する事が出来ず、思わず顔を赤くさせて視線を躱した。

 

 

「……何処見てるのよ」

「……不可抗力を加味してもらえると助かる」

 

 

ラムの視線の一撃が続く。

 

 

だが、実力行使をしてない所を見ても、まだ良しとしているのはラムの判定である。

 

以前スバルが使用人として仕事をする際、女性の下着を洗濯している際のあの表情と食い入るように見つめている下衆びた視線、間接的に辱めを受ける様な眼差しには、相応の返礼を持って答えたものだ。

 

その点、今のツカサの反応は良い。直ぐに視線を逸らせた所が良い。

 

まさに初々しさが映るのも良い。加点だ。

 

 

………だが、そのラムには決して届かないであろう、その二つの巨砲に対して、初心な反応を見せている、と言う点においては減点も減点。加点消滅な上に更に下がる大減点である事実は変わらないが。

 

 

そんな葛藤など露知らず、聖金貨を掲げながら続ける。

 

 

「あの日、其方が落とした聖金貨の表裏の柄を、妾が一切見ずに言い当てたであろう? 都合が良い風に事が運ぶ妾にとって、当然と言うべき結果。……が、もう一度試してみたい。……無論、其方の本気を、な」

 

 

扇子を前に突き出して、宣戦布告。

スバルがここに居たら、ただのコイントスじゃん!! と皆さんには伝わらないであろう言葉を用いながら盛大にツッコむだろうが、残念ながらスバルはここには居ないので、彼女の独壇場である。

 

 

「……じゃあ、一度。一度切りの勝負、で良いですか? あの時とは確かに違います。あの時程、切羽詰まってないですし、そこまで時間に追われてないです……が、待ち合わせはしてます。なので、あまり長く時間はかけられないんです」

 

 

非常に時間がかかる相手であると言う事は前回で解っているので、敢えて1発勝負で終わらせる事を提案。

すると、彼女は笑った。

 

 

「うむ。それで良い。……一度切りの大勝負と行こうか」

 

 

扇子で口元を隠し、コクリと頷く。

勝敗が見えない勝負に赴く所作を心行くまで楽しんでいる様にも見えた。

 

都合の良い様に事が運ぶ―――と言う人生もある意味刺激が足りなく、退屈するのでは? と以前は思っていたが、もしかしたら、彼女も同じ様に思ったからこそ、ツカサに絡んできたのだろう。

 

彼女の世界を混乱させる稀有な男として。

 

 

 

「そうさな……。妾が勝てば、今日1日其方を好きにするが、それで良いな?」

「良いですよ。それで、こちらが勝てば何かあります? 個人的な用事は果たす事が出来たので、現時点では特に望みは無いんですが。ああ、勿論待ち合わせはあるので、解放はして貰いたいですが」

 

 

二つの大き目な麻袋を、彼女の前に出して見せた。

中には色とりどりの果物が納まっていたり、ちょっとした調味料や野菜、茶葉……多種多様に及ぶ。

 

 

その所作を見て、全く動じず、一日の自由を奪う発言をしたのに眉一つ動かさずに返答した目の前の男、ツカサを改めてみて彼女は再び扇子で口元を隠しながら笑う。

 

 

《待ち合わせをしている》

《時間は長く取れない》

 

 

そう言っていたのにも関わらず、一日拘束する様に約束を取り付けたのだ。

普通であれば、反論の類、拒絶の類をしても良さそうなものだが、全く躊躇う様子無く答えて見せた。

 

 

 

 

 

 

彼女は―――プリシラ・バーリエルは、生まれて初めて、先の見えない勝負に赴く。

 

 

 

 

 

 

都合が良い方へと傾かない勝負へと赴く事に心が躍る。

勿論、勝ちに行くつもりではある。

 

全身全霊で、自身が持つ加護を信じる――――と言うこれまで一度もしなかった思考を保ちながら。

 

 

「其方も男と言う事」

「?」

 

 

布石を投じる……とは、格下が行う事と一蹴してきたプリシラだが、今回の相手に限ってはその心情、信念は捨て去っていた。全力で貰いに行く所存だからだ。

 

 

 

「先ほど、妾を見て(・・・・)赤面してみせたのを妾は見逃してはおらぬぞ」

「えっと……はい?」

「くくっ、愛いヤツよのぅ……。益々気に入った。―――其方が勝てば、妾の胸を1日好きにさせてやろう」

 

 

 

ここで、まさかの爆弾発言到来。

 

視覚的刺激はこれまでにも幾らか(強制的に)味わってきたつもりだが、まさか聴覚的にもここまでの一撃を喰らったのは初めてだ。

 

敢えて言えば、直ぐ隣にいるラムがそう。

 

2人切りの場所で、無防備に寝息を立ててる姿。……聴覚的にも、ラムの息遣いは相応の威力があるが、やはり、直接的な一撃の方が威力が上がるのは仕方が無い。

 

 

 

 

「え、ええっ、いや、そのっっ、えと……」

「…………………………………」

 

「―――……くくくっ」

 

 

 

 

顔を真っ赤にさせるツカサを見て、更に笑うプリシラと無表情さに拍車が掛かるラム。

 

 

「で、でも、ほら! オレにも、今日、待ち合わせが……っ」

「くくくっ。今回の様に妾と再会した時であればいつでも構わぬぞ……? 何なら、陽日、冥日と関係なく、累計1日、と言う事でも構わん。明確な期日は設けるつもりは端から無い」

 

 

扇子を、ぽんっ、と胸元に叩くプリシラ。

 

 

つまり―――ツカサが勝てば、プリシラの胸を好きに出来る。それも累計1日。

そして―――ツカサが負ければ、プリシラに1日好きにされる。

 

 

結局な所、プリシラはツカサと1日一緒に居られる、と言う。

ツカサにとっても、真の男であるのであれば、欲望と言うものが欠片でもあるとするなら、この性格、高慢で傲慢で、高飛車な所は目を瞑れば、間違いなく美少女に分類されるであろうプリシラ相手に、これ以上ない。男子の本懐と言うモノだ。

 

 

「ぅ、ぅ……、ええと、そ、それは……」

「どうじゃ? これで良いと言うなら、始めるが。……いや、先に其方は良いと了承した筈。そして妾が何を差し出すかに対して口を出されとうは無い、な。―――やるぞ」

「っっ!!」

 

 

勝負は最初から全力で―――ズルをしにいくと決めていたツカサ。

だから、運も何も関係ない。未来で起こった事を過去に戻って修正するだけだ。この業は、かの剣聖ラインハルトでさえ初見では看破出来なかった代物。

 

オットーを始めとした商人達全員斬りを達成したジャンケンも、この業を使っている。

 

 

正直、ズルだと解っているので、良心の呵責はある。なので、用いるのは遊び、若しくは決して負けられない何かを背負う時と決めている。

 

 

 

勝っても負けても、男の獣欲を満たせるかもしれない事情ではあるが、心の中のナニカ、葛藤、そして何より色々と遺恨あり気な勝負に赴くには、……正直ツカサには まだ若過ぎる。

 

 

だけど、そんな心境などプリシラにとってすれば知った事ではない。

焦らす事なく、指に聖金貨を乗せて―――弾いてしまった。

 

 

あ、と声を出す間もなく、宙をクルクルと回りながら飛翔する聖金貨。

 

 

色々と心の準備が出来てないのに! とそう思っていたその時だ。

 

 

 

「見つけたぜ、ゴラァァァァァァ!!!」

 

 

 

これぞ運命の導きか、路地裏からガラの悪い男達が出てきた。

 

それも少数ではない。……目算でざっと10人程。

 

 

「なんじゃ? 誰じゃ貴様ら」

 

 

上げた聖金貨を不満気な顔で取って仕舞うと、不満気……と言うより明らかに不機嫌な表情で振り返った。

 

 

「ついさっき会っただろうが、このクソ女!!」

「その様な腑抜けた顔、知らぬな」

「あぁ!?? もう泣いて謝っても許さねぇぞ、ゴラ!!」

 

 

ぞろぞろ、と敵対心剥き出しに、集まってくる。

 

どうやら、完全に怒っているのは先頭に立つ男だけで、他は呼ばれて招集した、と言った感じだろうか。

 

 

「(ある意味助かった……?) ラム。ちょっと手を」

「なに?」

 

 

不機嫌さではプリシラにも負けずと劣らず、危険には備えて控えている使用人気質を守っていたラムだったが、ツカサに手を握られて、少し表情が和らいだ……と思ったら。

 

 

テンペスト(・・・・・)。扱い方はもう知ってるよね? ここから丁度逃げたいなー、って思ったのも事実だから。一緒に付き合ってくれ」

「………逃げて本当に良いの? ツカサの獣欲を発散できると思うのだけど」

「オレをどんな風に見てるか解んないけど、逃げて良い、って事だけは頷いておくよ。………ただ」

 

 

ツカサは、プリシラの方を見た。

大丈夫だが……、大丈夫ではないのを知っている。

 

 

どちらも(・・・・)見捨てる事はしないかな。あまり、見たく無い事でもあるし」

「?」

 

 

ツカサはそう言うとラムから手を放し、ラムの肩に乗っていたクルルを腕に窶して、プリシラの方へ。

 

 

 

 

 

「一体何したの?」

「知らん。勝手にほざいておるだけじゃろ。ただの凡愚共をいちいち覚えてやる必要もない」

「……絶対に何かした、って感じがするけど、そっちは? 気のせい、他人の空似……って事は無いかな?」

 

 

続いて、ツカサはTHE・あらくれ集団の先頭に立つ男。……あらくれAに話しかけた。

だが、血走った表情は収まる事を知らないらしい。

 

 

「こんな口がわりぃ、目立つ女を見間違える訳ねぇだろうが、ボゲぇ!!」

「……ですよね」

 

 

はぁ、とため息を1つして、次にプリシラの方を見た。

 

 

「知らんものは知らん。まぁ、道端の塵でも蹴飛ばしたかもしれぬが」

「絶対知ってるヤツだよ、それ」

 

 

 

実の所プリシラは覚えているのだろう。

 

だが、この状況は面白くない。自身の都合の良い風になっているとは到底思えない。

ツカサが起こした事情ではないのは明らかだと言う事もイラつきのポイントだ。

 

まるで、世界の流れを司る何か……オド・ラグナに似たナニカが、全てツカサに味方をしている様な感覚さえする。

 

 

―――そんな事は無いとだけ、言っておくが、プリシラにとってはそれくらいの衝撃であり、イラつきであり、非常に好ましくない状況なのだ。

 

 

 

―――勢い余って、あらくれ共を皆殺しにしてしまいそうな程に……。

 

よくよく思い返してみれば、最初に出会ったときも、こんな風にチンピラを相手にしていたな、とツカサは思い返す。

 

 

 

 

「てめーら纏めて死ねやぁぁ!! 野郎ども行くぞぉぉ!!」

《うおおおお!!!!》

 

 

 

そして、堪え性とは縁のない勢いで暴走し始めた。

 

ただの猛進。後進のネジがとんだ状態。

 

相手の力量を推し量る事が出来ない者は、きっと長生き出来ない。

 

 

この世界は―――絶対に優しくなんて無いから。

 

 

 

プリシラの目が光った様に感じたその瞬間を狙って、ツカサが練っていた魔法を、プリシラよりも先に発動。

 

 

「テンペスト」

 

「!!??」

「な、なんだなんだ!!??」

「うがぁぁっっ!?」

「か、からだが………!!?」

 

 

プリシラに、その刃や鈍器、拳が届く事はなく、またその逆も無い。

触れる前に、不可侵の領域に触れたかの様に……、その身体は意志を持つ竜巻に宙を巻き上げられてしまった。

 

 

規模で言えば小規模。でも、大の男10人以上を巻き上げるのだから、限定的ではあるが、相応な規模。……精密な魔法操作、と言う事で練っていたのである。

 

 

「今、アイツらを殺そうとしたね? ……流石に止めといた方が良い」

「ふん。他者から命を含む全てを奪おうとするのじゃ。……ならば、相応の覚悟を持って然り、と言うのは当然ではないか」

「うん。それは解る。……でも、相応の力量を持つ者なら、少しは憐みを持っても良いと思う。こんな所で大惨事、凄惨な現場にしちゃったら、ラインハルト……じゃなくても、衛兵たちで賑わいそうだ」

 

 

ツカサは、そう言うとゆっくりとラムの身体を抱き寄せた。

そして、自身にも風の魔法……テンペストを利用し、身体を宙に浮かせる。

 

 

子供達と一緒に空中浮遊を楽しんだのは、この力だ。暴風を発生させるだけではない。傷つけるだけの魔法ではない、と言う事である。

 

 

 

「ぬ、貴様まさか……」

「今回のは……無効勝負、って事で……、じゃあ!」

 

 

 

勝負をせず、盤上から逃げの一手。

それも兵法の1つ、強さの1つ。

時には逃げも大切だから。

 

 

 

プリシラの返事も聞かず、ツカサは風に乗って、男達を引き連れて路地裏へと消えて言った。

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

有無言わせず、去っていった男の方をじっと見つめるプリシラ。

 

都合が良い事しか起こらない筈……だったが。

 

 

 

 

 

―――何か1つでも、思い通りにならない事があった方が張り合いが無いかな? その方が楽しかったりするかもしれないよ。

 

 

 

 

それは、以前の勝負で、ツカサが言っていた事だ。

 

 

勝敗などない。勝つ以外ないと疑ってなかったが故に、プリシラはそれなりに驚いた。

想像以上に驚いたものだから、ツカサもそう声を掛けたのである。

 

 

この時は、加護等の事柄は知らなかったし、運要素まで全て思い通りになる、と本気で考えていたのには驚いていたが。

 

 

 

「く、くくく……そうじゃな。あっさり手に入れて終わり、と言うのも面白うない。手元に置くより、その道末を優雅に眺める、……時を待つと言うのもまた一興か」

 

 

扇子を仕舞い、そして路地裏から背を向けた。

 

 

そして歩く事数分。

 

 

「何れまた近い内に会うじゃろう。……何やら、アルが言っていた事を思い出した。じゃろう?」

「何がじゃろう? かわかんねーけど、オレはさっきから驚いちゃってばかりよ。騒がしそうなトコ探して漸く見つけたと思ったら、よーくわかんない機嫌で歩いてるし、これまたよく解らん事ばっか言ってるし。まぁ姫さんのご機嫌が良いってのは、面倒くさくないから、歓迎だけどな!」

 

 




ラムちーが喋んなくなっちゃってるけど……、まぁラムちーなら知ってるよね? このボインねー様( ´艸`)

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