死ぬなよ、絶対に死ぬなよ! ※コレは、フリではありません。   作:リゼロ良し

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そろそろ題名詐欺になりそうなので、次くらいに主人公を出せたら、と思います。


風と共に盗む(未達成)

「……で? ここに来て 何が決まったかと思えば、オレをダシにした勝負? ナニソレ」

「フハハハハ! その方がより面白いではないか! やはり、我と貴様は一心同体だ。精々頑張るが良い!」

「そんな一方的な一心同体があってたまるか」

 

 

エキドナは、まるで餌を前にした子犬の様に今か今かと待っている。

まるで尻尾が見える様な気までする。

 

置いてけぼりを喰らっている少女たちを気に掛けようとしたその時だ。

 

 

「お前、お前すごいなーー! ピカピカだーー! からだは無いのか?? どっかいったのか??」

「っとと」

 

 

 

近付いてきたのはエキドナと同種。

この世界で魔女と呼ばれる存在。その名を《テュフォン》。

 

 

触ろうとしても触れない相手に、その存在に目を丸くさせ、無邪気に笑っていた。

 

 

そんなテュフォンの様子を見ていて……漸く思い返す。今 自分自身が実体化をしていない事を。

 

とりあえず、器用に光を動かしてテュフォンの頭を撫でた。

 

テュフォンも撫でられる事が解ったのだろう、目を細く、頬を緩ませて笑っている。

 

 

「ここでの私。いや、僕? 我、余、んんん。いかんいかん。一貫性がない……。えっと、こほんっ! オレ、……オレだ」

 

 

一人称をしっかりと思い返しながら、続けた。

 

 

「正確に言えば自我はあるけど、生まれても無いゼロの状態だから。姿が見えないのは仕方が無い事なんだ」

「ふーーん、でも、あっちは見えてるぞ! 凄いんだぞーー!! あっちは触れるのに、こっちは全然触れないから、ルヴァなんか、それでおぎゃー、で、ちゅどーん、だったんだぞー! 面白いんだぞーー! たのしかったんだぞーーー!」

「ほうほう………成る程。………うん。大体解った」

 

 

 

「なんで、今の会話で解る?」

「さ、さぁ……。で、でも テュフォンと、は、話する時 あ、愛を感じる、よ? 感じた、よ? そ、それだけは、わかった」

「あぁぁ、テュフォン……。私も触ってみたいのに………。それに、カーミラ…… 理解出来た事があるなんて、羨ましい……」

「ふぅ……。はぁ……。立ってるの疲れた。……ふぅ。……次に会う時は……はぁ。もう少し立っていられる様にするさね」

「空腹を忘れられる程の高揚って良いですよねーー! できればーー、そのままの姿でーー、ここでーー、一緒にいたいですよーー?? あぁ、でも勝負ですからーー」

 

 

 

沢山の魔女たちに囲まれている。

いつの間にこんなに増えたかは解らないが……そう言う趣向だと言う事は理解した。

 

 

「まぁ、今までとは違う展開だけど、……お前の戯れだっていうのにはもう慣れた。好奇心旺盛で娯楽に飢えてるのは、ある意味この子達と大差ない気もするし」

 

 

ちらり、と視線を向ける。(テュフォンの言う通り、光で構成されている為、傍目からは何してるか解らない)

 

 

くっくっく、と笑っている。

高い所から見下ろすスタイルで、足を組み、手を組み、笑ってる姿。

 

 

「それで? その勝負(・・・・)の事だけど、オレ ここから出たら真っ新な命から始まるんだし、精々頑張るも何も無いよ。ゼロからスタート。全部忘れる。……てか、解って言ってるでしょ? それにエキドナを退屈させてしまいそうだ。帰るのは嫌、って言ってたし」

「その辺りは抜かりない。ある程度は、覚えておいてもらう(・・・・・・・・・)だけだからな。無垢のままだと流石に我が待ちきれん。待つ事は得意としていた筈だったが、こうも心を躍らせればな! ……だが 我の趣向を理解したと言った割には、全てを理解した様ではないではないか? まだまだ一心同体とは言えないぞ」

「言わんで良いって。別に」

 

 

 

 

穏やかな草原だった筈の場所が、徐々に白に染まっていく。

 

 

 

 

「今回はゼロからの始まりではない。貴様がこれまでに得たもの。数多の世界で得たもの………。うむうむ、全てとなると面倒だ。てきとーにくっつけて(・・・・・・・・・・)から放り出してやろう。どうなるか楽しみにしているが良い」

「………………」

 

 

 

 

娯楽に飢えた存在が、楽しみで仕方ないと言った表情で 身体を光らせた。

 

 

それは、全ての存在()を白く塗りつぶす、命の前の(ゼロ)に戻す光。

色々と文句の1つや2つ、言ってやりたかったがその光には 最早抗う事は出来ない。

 

 

――始まるのだから。

 

 

 

 

 

「さぁ、てあわせ……、しょうぶだ。————最初の(・・・)しょうぶは……」

 

 

 

最初の(・・・)と言う部分が 少々気になる所ではあるが、逆らう気もつもりもない。

また、新たな世界が始まる。ただ、それだけを考えて、光の奔流に身を委ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――我ら(・・)を、見つけてみよ。なに、そう時間はかかるまい。……楽しもう。楽しませてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某料理店。

 

 

そこでは、トンデモナイ? 事が起きていた。起き始めた、とオットーは確信する。

 

 

何故なら まるで、大地が、大気が、全てが震えている様な感覚に見舞われだしたから。

先ほどまでの談笑や料理を楽しむ光景は最早見る影も無い。

 

その中心地、最も傍に居るオットーは完全に足腰が立たなくなり、完全に腰を抜かしている。

彼が見つめる先、その視線の先に居るのは2人の男。

 

 

片方は、燃える様な赤い髪を持つ青年ラインハルト。

そしてもう片方は深淵、漆黒の闇。黒い髪を持つ青年ツカサ。

 

 

果たし合うかの様に互いに見合っている。

まるで決闘のワンシーン。

 

 

ルグニカ王国最強、当代の剣聖ラインハルト。

全てが謎に包まれ、突如としてこの世界に(文字通り)舞い降りた異端の者 ツカサ。

 

 

2人は互いに見合い、そして互いの拳を握り締め――――振りかぶって……。

 

 

 

 

 

「「じゃんけん、ぽん!」」

 

 

 

 

 

互いに手を突き出した。

 

 

「わぁぁぁぁっ!!」

 

 

2人が手を出し合った瞬間、発生した風圧に吹き飛ばされるオットー。

 

それでもオットーは耐える。

 

耐えなければならない。見届けなければならない。

 

 

 

 

 

今まさに―――世界の命運が決まろうとしているのだから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って、何 1人で騒いでんのオットー。それに何を変な語りまで入れて……」

 

 

と、ツカサは 自分で倒れ込んだオットーをジト目で見た。

ツカサが言う通り、ここまでの語りは全てオットーの自作自演である。

 

 

「い、いえ! それだけ緊迫感のあるじゃんけんだった、って事ですね! と言うか、気合入り過ぎちゃってたので、僕の方も気合が入っちゃったんです」

「一応ジャンケンで最強! を自称してる身だったしね。なら本気じゃないと。……ってね?」

 

 

呆れていた様子だったツカサだが、最後には笑った。2人で笑っていた。

 

 

 

突如として始まったのは ツカサvsラインハルト のジャンケン1本勝負。

 

 

 

因みに、この対決が勃発した理由については、今し方 横で1人語り部で盛り上がっていたオットーにある。

 

 

最高の食事が終わったから さぁ 衛兵の詰所へ。ラインハルトの案内の元、スムーズに……と言った場面だったというのに、ジャンケンのリベンジを申し立てられた。

 

 

《今度こそ イカサマを暴く!》

 

 

と憤慨しながら。

 

 

それに、意外にも反応を見せたのはラインハルトだった。

 

騎士たる身分だからか、若しくは性分なのか……、恐らく両方だろう。

イカサマと行為に反応したのは。

 

 

 

 

「ふぅ、それにしても中々奥が深い遊びだね。グーとチョキとパーの三竦みからの心理戦。相手の表情や仕草、それらを総動員させ、裏の裏まで読み合う。―――うん、とても楽しかったよ」

「オレも楽しかった。オットーとはやっぱり段違いだね、ラインハルト」

「………剣聖と比べられるなんて 普通な無い事だし、人によっては光栄極まるって話にもなるのに、何だか釈然としない……」

 

 

ただ、ラインハルトは1つだけ解らない事があった。

 

 

「今の勝負……、じゃんけんと言う遊びだけど。何処に不正やイカサマが生じる隙間があるのかな? 相手に手を出させてから自分が出す、後だしの様な事をすればイカサマだと言えるけど」

「ですよねですよね! ラインハルトさんも、どうにか見破ってくださいよ! 僕、ツカサさんに計53回も負けてるんです。全敗ですよ、全敗! こんなの有り得ないじゃないですか!」

「ふむ………。(先読みの加護、みたいなもの……か?)」

 

 

 

何かが違う感覚はするが、その深淵が見えない。

ラインハルトは、間違いなく悪い人物ではないのは解るけれど、この剣聖の剣、龍剣レイドが反応を見せた事もあり、何かツカサには大きな秘密がある様に思えてならなかった。

 

その好奇心がラインハルトを動かす。

 

 

ゆっくりと身体を向き直した。

 

「…………」

 

何だか、その身体にはオーラ? の様なモノが見えたりしてるのは気のせいだろうか?

光輝く何かが、ラインハルトの周囲に集まっている気がする。もう、オットーの大袈裟な語りではなく……、何となくではあるが、見える気がする。

 

 

「もう一度、勝負しないかい? ツカサ」

 

 

まるで臨戦態勢、その中で笑顔。

ここは男としてもう一度勝負を……。

 

 

「……イイエ。勝ち逃げさせてください。今日は1回だけで。それに何だか、今やったら ラインハルト、見破ってきそうで怖い」

「えええ!! そんなのズルイですよ、ツカサさん!」

 

 

勝負を受けない。

まさかのツカサ勝ち逃げ宣言に、オットーからブーイングが飛ぶが、ツカサはただただ苦笑いをするだけだった。

 

 

「見破られる……と言う事は、本当に何かしてるのかい? 加護を使っているとか? それもなければ、普通に余地はないと思うんだけど」

「あ、あはははは。まぁ その辺りは秘密……と言う事で。それに 安心はして貰いたいかな。当然 詐欺まがいの事はしてませんし、これからもしません。あくまで遊び(オットー)の範囲内。ルグニカの騎士ラインハルトに誓うよ」

 

 

邪な考えは持たないし、持つつもりは毛頭ない。

その想いはラインハルトには最初から伝わっていたのだろう。ただただ笑っていた。

しかし、オットーだけは別。

 

「ちょっと! つまり 僕はツカサさんに ずっと負け続けないといけないんですか? 僕が見抜けないから、って」

「いや、遊びだし、そこまでムキにならなくても……」

「遊びとはいえ ここまで負けちゃったら、そうはいかないんです!」

 

 

どうやら、まだまだオットーとのジャンケン勝負は続く様だ。

 

それはそれで、ある意味 縁の繋がりが途切れる事が無い、と言う事で良い事かもしれない。

 

当初、ツカサは オットーに情けを掛けてあげよう負けてあげよう、と思ったりもした……気がするが、今は一切なし。

オットーの場合 彼自身が勝ってしまえば、そこで終わってしまいそうなので。

 

 

「ふふふ。ツカサがそう言う事をする人だなんて、僕は思ってないから心配はしてないよ。……ただ、僕は見破って見たかった、と言う気持ちが少々強い……、かな? 遊びとはいえ負けちゃったのは悔しいし」

 

 

ラインハルトは2人のやり取りを見て笑っていた。

因みに先ほどの勝負は……。

 

ラインハルトが出した手は、《チョキ》

ツカサが出した手は《グー》

 

一度もあいこになる事なく1発で決まって終了である。

 

 

「じゃあ、日を改めて再戦と行こうか。宿敵(とも)よ」

「あははは……」

 

 

友、と言う言葉が重く感じたのは言うまでもない。

ラインハルトは遊びであったとしても真剣そのもの。物凄く生真面目なのだと言う事を改めて悟って……この店を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ラインハルトとは詰所で話を通してくれた後、別れる事になった。

 

「いや、こんなに貰えるなんて………。ねぇ? これってやっぱり凄い金額?」

「そりゃそうですよ。聖金貨で200枚。就任したての王国騎士たちの初任給のざっと10倍程ですから」

「えぇぇ……。そんなにもらって良いのかな? あんなスゴイ料理まで振舞って貰ったのに、そんな大金まで……」

 

 

キラキラと輝く聖金貨と呼ばれる貨幣を、それも凡そ100枚もある貨幣を前にして畏縮してしまうのは仕方が無いかもしれない。

 

 

「いえいえ。僕は妥当だと思ってます。……それは、僕自身がツカサさんに助けられたから、と言う主観も有りますが、僕やラインハルトさんの証言と白鯨の一部を今後の為に渡した事、普通に当然の額かと。いや、安いかもですね? まぁ、僕の竜車に乗りきらない分全部持って帰ってたら、もう1つ2つは0が増えそうです」

 

 

オットーは逆に胸を張って断言していた。

白鯨を相手にした快挙を考えれば、金銭の問題ではない筈だから。

 

 

「やる事がとんでもなくスゴイのに、何だか庶民感覚なんですね、ツカサさんって」

「……みたいだね。もう薄っすらあった記憶の殆どが消し飛んじゃったみたいだけど、どうやら、そう言う感じだったみたいだ。オレは」

 

 

1枚の聖金貨を暫く見た後……懐へと仕舞った。大通りとはいえ いつまでも見える範囲で持っているのは不用心極まりないだろうから。

 

 

「でも、オットーにはここまで乗せて貰ったし。ほんと代金無しで良いの? もうオレ、無一文じゃなくなったよ?」

 

 

聖金貨を入れた袋をじゃらじゃらと鳴らす。

オットーはそれを見て、生唾をゴクリ、と飲み込んだ。欲しくない訳ない……が。

 

 

「借りがとてつもなく大きい。ツカサさんは僕の命の恩人ですよ? 何だか雑な扱いもちらほらされちゃってますが、それでもツカサさんが命の恩人である事に変わりはありません。乗せるくらいなら幾らでも! それと借りたモノはしっかり返すのが商人ですから。……ツカサさんの場合、それが大きすぎて、いつ返せるか解りませんが」

 

 

 

そう言って笑っていた。

ツカサは、それを聞くと笑顔でコクリ……と頷いたその時だ。

 

 

「っへへ! 貰ったっ!!」

 

 

まるで宙を飛んでいるかの様に、建物と建物の間から、何者かが出てきた。

伸ばした手、狙いは当然これ見よがしに見せている袋。

 

 

「(とんだボーナスだぜ! 今日はラッキーだな。……もう1つ(・・・・)の仕事に加えて、これだけあれば、一気にたどりつける!)」

 

 

迷いなく、ただただ奪う事にだけ全神経を集中させる。

油断しきってる2人の男だ。掠め取る事なんて余裕だろう。逃げ切るのも間違いなく余裕。

 

 

容姿を見れば解る。片方は見覚えがあるが、もう片方は見慣れない服装、何処かの田舎からやって来たと容易に推察できる。いつもなら、そんな相手見向きもしない所だが、先ほどの一連のやり取り、聖金貨を見せて袋に戻しているやり取りを見て、金持ちだとふんだのだ。

 

 

そして決めたら行動は早い。

 

 

間違いなくあの大金の入った袋に目を付け……奪った、と思ったその時だ。

 

 

「ぇ………っ?」

 

 

目の前にいた、盗った、と思った筈なのに、その男がいなくなった(・・・・・・)

いや……。

 

 

 

 

「ダメだよ? 他人のモノを盗んじゃ」

 

 

 

 

 

横から声が聞こえた。

声と同時に、頭を軽く叩かれ、そして……。

 

 

「っっ~~~!!」

 

 

あまりにも想定外の出来事だったからか、反応が遅れたが、完全下に見ていた相手がまさかの行動。叩かれたまでは良いが、今は頭を撫でられている(・・・・・・・)。それはプライドに触った。

 

 

 

「ば、バカにすんな! それに盗めてねーじゃねぇか!! ……くっそ、ぼーっとしてる兄ちゃんかと思ったら、メッチャガードが固かった……!」

 

 

風の様に現れた者……少女は、人通りが多い事と、これ以上のやり取りはあまりにも目立ちすぎる、と言う事で 現れた時の印象のまま、風の様に駆けだし、建物から建物へと、飛び移り……消えていった。

 

 




じゃんけんくらいは・・・・ラインハルトに勝てるよね? 勝っても良いよね?

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