Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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クソイカレキチガイ殺人女とやり直す奴

「………………」

「ツカサさん? 本当に大丈夫なんですか?」

「あ、ああ……、ダイジョウブ。ほんの、2~3回やり直してるだけで……」

「言ってる意味、解んないんですが……」

 

 

現在、オットーと共に貧民街を歩いている。

勿論、ラムと手分けして迷子の捜索……と言う名目は変わらない、同じだ。

 

 

――――違和感を、そして薄々感じてる人? もおられるだろうが、その通りだ。また繰り返した。最大級の歓迎(苦痛)を受けながら、世界をやり直した。

 

 

……ツカサはこれが4回目(・・・)である。

 

 

少ない情報を頼りに、色々捜索しているのだが、未だ時が戻る原因の片鱗さえ掴めない。

 

発生源? の様なモノは クルルが示してくれてるので、ただソコを目指すのみなのだが、苦痛が半端じゃない。

 

1度目よりは2度目、2度目よりは3度目……、と重ねられる。

この苦痛は本当にどうしようもないが、記憶は何故だか保持されるので、情報が集まりやすいのがせめてもの救いだ。

 

 

………だが、良い事ばかりではない。

 

 

戻る間隔も短くなっている。

3回目の世界に至っては、迷子の捜索開始と同時に戻された。

かなり腹が立っても仕方が無いが、オットーやラムに当たっても無意味である事、戻った先で待っている2人にすれば 突然怒り出した狂人としか認識出来ないと言う事も解るので、何とも救われない話だ。怒りの矛先でも見つかってくれればありがたいのだが……。

 

 

世界がバラバラになる感覚と苦痛、外的損傷も目立つ様になってきたので、そこは召喚獣クルルの力を持ってある程度の誤魔化しは効く様になっている。……が、如何せん体力や魔力(マナ)……にも限度と言うモノがある。

戻ったら体力や魔力(マナ)はリセットされているのだけれど、苦痛は上書きみたいなモノだから。

 

 

《きゅきゅ??》

 

 

外に出されるのを待ってる? 気がするクルル。生憎今は回復中なので出すつもりは無い。自身に魔力(マナ)消耗による疲労感として返ってくるが、回復出来るのはこのクルルだけだから。

今は少々忌々しい気もするが、クルル(コイツ)が居なければ、最悪廃人になっていた可能性だって否定できない。……背筋が凍る想いだ。

 

 

「大丈夫なら、良いんですけど……、気分が優れないのなら、他人よりも自分の事を優先すべきだ、って僕は思いますよ? ただ、ツカサさんを見て ラムさんが 普通に頼んでるのは少々意外でしたが。《ハッ! そんなザマで、ラムの何を手伝うって言うの? 目障りだから消えて》くらい言ってきそうだと思ったんですが……」

「……今の声マネ、本人が聞いてたら、過激な風が吹くと思うから気を付けなよ?」

 

 

オットーのラム真似を聴いて、ツカサは苦笑いをした。

確かに、オットーの言う事も最もだ。

 

一番最初に出会った時……ラムは倒壊する家屋の瓦礫が彼女の頭上に落下してきたのを、彼女自身の魔法で防いで見せた。助けるまでも無く相応の使い手だと言う事は見ていてわかるし、元々の性格? もあって オットーの言う通り 明らかに体調不良っぽい、それも2人から見れば、突然体調が悪くなったと言って良い男の手は借りないと思うのが普通だろう。

 

でも、ラムは何も言わないし、そのまま突き返そうともしてない。それどころか、《頼む》とまで言ってきた。最初の段階で《頼む》と言われるのは初だったので少々驚くが、過去一番の苦痛顔を更新し続けるツカサ。その顔を見て動転してしまったのだろう、と無理矢理感はあるが納得させる。

 

 

「さ………、たぶん、たぶん。これで最後。これで終わらせる……。やり直すのはもううんざりだ」

「へ? やり直す? 何の事です?」

「いや、こっちの話。……オットーとの約束ももうそろそろ終わりだし、これを終わらせたらお別れだ、って思ってただけ。時間的にも」

「あ、う~~、確かに…… 名残惜しい気はしますが仕方ないですよね。必ず大物になるであろう、ツカサさんの足を引っ張る枷にはなりたくないですから」

 

 

オットーは笑ってそう言うが、現状の財力では ツカサを雇う事は無理だと言う所から来てた発言だったりしている。それをツカサも解っているので、ただただ苦笑いをするだけだ。

 

 

「さて、……盗品蔵の位置は……」

 

 

情報はしっかりと仕入れている。

原因系の片鱗は掴めてないが、場所だけは極めて詳細に。

 

2の世界では情報収集。

 

貧民街の住人は最初は懐疑的で、協力的とは程遠かったが、ツカサは金にものを言わせる事が出来る。

 

《聖金貨1枚で盗品蔵の情報求ム》

 

と言う条件を出して 小分けにした聖金貨を渡していた。貧民街の住人は目の色を変えたのは言うまでも無い。それだけあれば温かい服、食事、寝床………夢のような金額だから。

 

因みに袋から取り出す所を見られない様にするため。見られたら、吹っ掛けられる可能性が高くなり、尚且つ時間ロスにも繋がるからだ。

日々命懸けで生きている面々だ。生きる為に、詐欺(そう言う)行為をするのは、褒められたモノじゃないが、あまり否定はしたくないし、騙された方が悪いとも思えなくない。

 

だが、それでもロスだけは避けたい、と言うのがトップに来る。

 

交渉事に関しては、ある程度 記録(セーブ)を使えれば、最適解に導く事は容易ではある、………が、今はダメだ。

 

 

何故なら、世界が巻き戻る際の苦痛。

 

 

アレは、記録(セーブ)の数に比例されていくから、無暗矢鱈に使えないのが悲しい所だ。

 

 

「(()ジャンケンしたら(・・・・・・・・)、不敗神話が途切れるな……)」

 

 

と、ツカサは自虐的に笑った。

 

 

重い体をどうにか誤魔化して、オットーになるべく悟られない様に盗品蔵を目指す。

また戻るかもしれない事に恐怖を覚えるが、それでも進まなければより悪い未来に繋がりそうがしてならない。

 

原因が、せめてほんの少しだけでも情報が欲しい。そう思いながら向かっていたその時だ。

 

 

 

 

「誰か! 誰かいねぇのかよっっ!! 誰かぁぁぁぁぁぁ!! 誰か助けてぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

助けを呼ぶ声が。悲鳴が この貧民街に響いてきたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――俺の名前はナツキ・スバル!  無知蒙昧にして天下不滅の無一文! 更に付け加えるとするならば、たった今! 夢を追い、チャンスを求め続ける、華憐で儚い……そして口が物凄く悪く、手癖も悪い少女フェルトを 狂人の凶刃から守り、無事外へと逃がした男の中の男!

 

 

 

 

盗品蔵では、只今修羅場を迎えていた。

 

 

現在、場に立っている(・・・・・)のは3名。1名は倒れており命が助かっているかどうか定かではない。

 

 

ナツキ・スバルと言う少年は こんな修羅場とは程遠い、平和極まりなく永遠何にもしなくても生きていける様な世界で暮らしていた筈なのに、何を間違ったのか 自身が知る世界とは異なる世界……異世界へと召喚されてしまったのだ。

 

彼の知る異世界モノと言えば、自身には強靭な力が備わってたり、天を割るような魔法を放てたり……、即ち最強(チート)能力の1つや2つ、持っている様なモノ、の筈なのだが……生憎戦って勝つ! と言う力と呼べるようなモノはスバルには無かった。

 

 

ただ、唯一あるのは 地獄の苦しみを味わう……苦痛を伴い、世界をやり直す能力。

名付けて《死に戻り》。

 

 

自身が死ねば、最初に戻る。

何度も世界をやり直す事が出来る、と考えたら 大概反則に近い能力かもしれないが、死と言う苦痛を何度も味わうのは御免被るし、何よりも その能力の上限値の様なモノがあるかもしれない、と考えれば、怖くて安易に選べたりはしないだろう。

……これまでは理不尽にも選んだのではなく選ばされた、殺された結果だ。

 

因みに、自身の能力。それに気づく事が出来たのは、4回目のループからだった。

だが、ただ重ねただけではない。アドバンテージはしっかりと持ち帰る事は出来ている。

 

結果、世界を重ねた事でどうにか殺される事なく、最初の世界で助けてくれて、そして殺されてしまった少女。本当の名も知らない少女を救ったハッピーエンドに漕ぎ着けそうな感じ……だったのだが、現実とは中々上手くいかないモノである。

 

 

 

「そろそろお遊びも見飽きたのだけれど、まだ私を楽しませられそう?」

 

 

露出の多い黒装束に身を包んだ女。

何もしなければ、無害であるならば、目も眩む程の美少女。その妖艶さはエロスを感じさせ、天国へと誘ってくれそうな程の女なのだが、関わると本当に天国へ逝かされる。

 

事実、スバルがこの女に過去2度殺されているのだ。

そして、今隣で共に戦っている少女も1度、殺されている。

 

それを知るのは、スバルただ1人ではあるが、許せない思いがこの場の誰よりも何倍もあるのは間違いない。

 

だが、悲しいかな……、スバルは健康的な一般男子高校生レベル。

異世界ファンタジーの攻防に付き合っていけるだけの技量も力も備わってるとは言えない。

 

ただ、火事場の馬鹿力を発揮し、幸運が重なって この場から1人の少女を離脱させることに成功しただけに過ぎないのだ。

 

闘えば……、そう長くはもたない事も解る。でも、だからと言ってハッピーエンドを諦めてる訳ではない。

 

 

「秘められた真の力とかがあるなら、出しといた方が良いと思うけど?」

 

 

スバルは 息を切らせながら隣の少女に提案する。

少女の闘い方を見ているスバル。力の無い自分と違って、彼女は精霊使いと言うジョブらしい。 闘いの序盤こそ、ネコ型の精霊が出てきてくれて、優位に進める事が出来ていたのだが……維持できなくなってしまって、引っ込んでしまった状態。

 

それでも、少女は氷の魔法を使い、闘い続けてくれている……が、その額の汗や切り傷等を見れば、旗色が良くない事位解る。

 

 

「切り札は……、あるにはあるけど。使うと私以外は誰も残らないわよ?」

 

 

前言撤回。本当の意味で旗色が悪いワケではない様だ。

スバルも同様に思ったらしく、慌てた。

 

 

「自爆系かよ! ……お願いだから早まらないでね?」

「……使わないわよ。まだ、あなたも頑張ってるのに。だから、最後の最後まで、足掻いて足掻いて足掻き抜くの」

 

 

少女の決意に満ちた横顔を、……最後()をも覚悟した険しい表情を見て、スバルは思った。

 

最初の世界だ。

 

初めてこの世界に降りたった時、何度も何度も命を落としながらも、求めようとしたモノがある。

 

そう、彼女の笑顔だ。……笑顔に救われた。

 

そして、もう一度見てみたいと思った。―――微笑む姿を見せて貰いたい、と。

 

 

「じゃあ、ワリーな、さっきのは忘れてくれ。……何で俺がここにいるのかやっと思い出した」

 

 

スバルは、自身の身体程も有りそうな棍棒を握り締めて、指をさしながら言った。

 

 

「やる気がみなぎってきたぜ!! てめぇぶっ飛ばしてハッピーエンドだ!!」

 

 

 

言っている意味が解らないのは、横の少女も、目の前の殺人鬼女も共通して同じ事だっただろう。

 

「……元気が有り余ってるのね」

 

ただ、まだ瞳の中には元気有り余ってる事には、有難い。

もう飽きてきた、と言う女は 後は身体()を裂くだけの楽な仕事、程度にしか思ってなかったから。

 

 

突っ込む、凶刃が迫る。どうにか少女の魔法で援護してもらう。

攻防と呼べる展開に持ち込む事は出来ている気がしたが……どうしても言葉とは裏腹に、この女と刃を交わしていると解る。勝てない。勝てる未来が見えない、と。

 

 

 

「さぁ、幕を引きましょう」

 

 

 

再びあの死が、間近に迫ってきた。

 

その時だ。

 

 

 

 

「きゅきゅきゅきゅーーーーーーー!!!」

 

 

 

ドゴンッっ! と言う轟音と空気を切り裂くような音と共に、何かが女とスバルの間を通過した。

 

 

女は、体勢的にはスバルを切りつけよう、としていたのだが、咄嗟にバックステップで 得体のしれない攻撃? を回避。故に丁度スバルと女を分けた形になり……店の壁に激突した。

 

 

「? 何かしら?」

「なん……だ? ありゃ」

 

 

通り抜けた先を見てみると……そこには何かが刺さっていた。

いや、うねうねと頭から刺さった壁から脱出しようとしているのを見ると、物ではなく生物か何かだろう、と言うのは解る。

 

 

ただ、エメラルドに輝きを持つ生物なんて、中々想像がつかない……が。

 

 

「精霊ね」

「精霊!」

 

 

少女たちは、混乱するスバルを他所に、その乱入者? が何者なのか結論。

 

 

「驚いたわ。まさか、まだ精霊を使えるだなんて。お腹、開いてみたかったという私の願いを聞いてくれたのかしら?」

「……そんな物騒な願い、聞くワケないでしょ。……でも、私もすごーく気になるケド、私の精霊じゃない」 

 

 

ほんの僅かではある、が息つく暇も無い戦闘が一時停止する。

そして、きゅぽんっ! と可愛らしい擬音? と共に、あの弾丸精霊が頭を引っこ抜き、こちら側を見た。

 

 

いや、違う……突入してきた方を見た。

 

 

「きゅきゅきゅきゅきゅーーー!!」

「ひと使い……召喚獣……、精霊使い荒いって? ……こっちは何度も何度もしんどい目見てんのに殆ど手を貸してくれてなくて、鬱憤イライラその他諸々が溜まりっぱなしなんだ。それに、トコトン コキ使うって言っただろ? 諦めろ」

「きゅんっっっ!!」

 

 

エメラルドの輝きを持つ宙を浮く獣は……。

 

 

「(お、おお? あれって、アレじゃね? カーバンクル、ってやつ!? 額に赤い宝石、輝く緑の毛並みといや、それしか思いつかねぇ……っと、それよりも)」

 

 

スバルは、目の前の精霊よりも、外から聞こえてくる声の方に意識を集中させた。

こんな場面で新たに乱入してくる者は、味方なのか、敵なのか、それを見極める為に。

 

 

 

大穴の空いた店の壁を蹴破りながら入ってきた男の乱入者。

 

その男は、一頻り場の状態を確認すると、3人の方を見て言った。厳密には2人。……女性の方。

 

 

 

「さて、幾つか質問をするよ。フェルトと言う女の子から聞いた、《クソイカレキチガイ殺人女》と言うのはどっちの事を言うかな? 急ぎだったから、細かな特徴は聞いてなくて

 後……、こっちは 解らなかったら無視してくれて構わないけど、何度も何度も何度もやり直してる奴(・・・・・・・)がここにいるかどうかも聞きたい」

 

 

 

それを聞いて、新たな援軍と言う喜びと同時に驚きに身を包まれるスバルだった。

 




色んな意味で激おこ。
八つ当たり気味。(笑

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