スペシャルウィークが先輩で、サイレンススズカが後輩だったらどうなるかというエイプリルフール企画。
某ロリスぺちゃんのお話しで出ていたので勢いで書いてみました。
明るいスぺ先輩と寂しがり屋のスズちゃんは案外しっくりきました。

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スぺ先輩とスズちゃんのお話し

あの人の走りはまるで風の様で

最初に見たときから、わたしはあの人に恋をしていた。

 

 

 

スぺ先輩とスズカちゃん

 

 

 

私が初めてスぺ先輩を見たのは、編入初日のレース場だった。

弥生賞

クラシック三冠の初戦 皐月賞の前哨戦であるそこで、あの人は素晴らしい走りをしていた。

後ろから豪快にごぼう抜きで抜き去っていくその走りは、本当にきれいで、私はずっと見ていたいと思うぐらい見惚れてしまった。

その後のライブまでばっちり見てしまったせいで門限を過ぎてしまい、初日から寮長さんに怒られたのもまたいい思い出である。

 

寮の部屋は、なんとスぺ先輩と相部屋であった。

憧れの人と相部屋なんて、なんて運が良いのだろう、そう何度も感動したが、元来口下手な私は碌に楽しい話もできずにどもってしまうばかりだった。

スぺ先輩に呆れられちゃうと泣きそうになったが、スぺ先輩は明るく、そして辛抱強く私の話を聞いてくれた。

そのまま膝枕をしてくれて、髪を指で梳いてくれたその感触を、私は絶対忘れないだろう。

頭も洗いたくなかったが、そういったらスぺ先輩にお風呂に連れていかれて全力で洗われてしまった。

 

 

 

スぺ先輩は強くてきれいで、でも可愛らしい所もいっぱいあった。

まずよくご飯を食べる。

毎回山盛りのご飯を食べているし、お昼ご飯用といって大きなおにぎりも準備していた。

そしておにぎりを準備していたはずなのに、お昼ご飯も私と一緒に食堂でランチセットを食べていた。

 

あまりに食べるので、周りから良く注目を集めていたが

 

「お話ししながら食べれば、みんなお互いの顔しか見ないから、ご飯に注目は集まらないですよ♪」

 

という持論を述べるスぺ先輩は一切気にした様子がなかった。

周りはいつも、いやその山盛りご飯の前にはそんなことはないだろうと心の中でツッコミを入れていた。

 

また、スぺ先輩は体重管理が苦手だった。

あれだけよく食べていればしかりといったところである。

良く体重計の上で悲鳴を上げては

 

「スズちゃんはスマートで羨ましい」

 

とぼやきながら、お風呂なんかでお腹をくすぐってくるから少し恥ずかしかった。

 

わたしの左旋回の癖についても、スぺ先輩は何も言わなかった。

わたしは少しでもストレスを感じると、部屋で特に意味もなく左に回ってしまう癖がある。

部屋の中でしょっちゅうぐるぐるしていたが、スぺ先輩は

 

「スズちゃんかわいいねぇ」

 

と言ってわたしの奇行をながめているだけだった。

太め残りが出そうなときは、一緒にぐるぐるしてくれた。

特に何か意味があるわけではなかったが、とてもうれしかった。

 

 

 

ダービーに優勝し喜んでいるスぺ先輩にあこがれて、私もダービーに挑戦したこともあった。

結果は九着と惨敗。

悔しかったが、自分が泣く前にスぺ先輩が泣いてくれた。

泣きながら一生懸命慰めてくれるスぺ先輩に存分に甘えながら、次こそは勝ちたいと思ったものである。

 

天皇賞秋では、初めてスぺ先輩と勝負することになった。

調子が最高潮だった私は全力で逃げ続けた。

スぺ先輩へ恩を返すなら、自分の全力で挑み勝つことだと思った私は、本当に全力で走り続けた。

素晴らしい速さで先頭を駆け、徐々に誰も見たことのない景色へと近づけているはずであった。

 

鈍い音がした。

左脚に激痛が走り、動かなくなる。

故障したのはわかった。このまま転倒したら大惨事になると思い必死に足を動かすが全くいう事を聞いてくれない。

一歩目はどうにか踏み出せた。

二歩目は全力で足を振ってどうにか踏み出せた。

三歩目は、もう踏み出せなかった。

左側に倒れそうになる。

地面が近くなる。

その瞬間、スぺ先輩が飛び込んできた。

 

わたしの異変に気付いたスぺ先輩は、レースそっちのけであの素晴らしい末脚を発揮し、わたしを抱きかかえたのだ。

そのまま二人して地面をすごい勢いで転がる。

外ラチにスぺ先輩の背中がぶつかり、やっと止まることができた。

 

「大丈夫? スズちゃん」

 

笑顔でそういったスぺ先輩は、その後すぐに気絶をした。

 

 

 

復帰は絶望的

わたしに下された診断はそんなものであった。

左脚の粉砕骨折。歩くのすら難しいかもしれないとそういわれた。

スぺ先輩も重傷だった。

全身数か所に打撲を負い、特に外ラチにぶつかった時に肋骨にひびが入ったらしい。

スぺ先輩に守られた。

スぺ先輩に助けてもらった。

わたしがいなければ、わたしがこんなことにならなければ。

スぺ先輩が勝っていただろう天皇賞を、わたしがつぶしてしまった。

 

その晩は一晩中泣くしかできなかった。

 

 

 

そんな私を助けてくれるのはやっぱりスぺ先輩で

翌朝、泣きすぎて腫れぼったい目の状態のところにスぺ先輩は元気にやってきた。

わたしはまた泣きながら、ごめんなさいと何度も謝った。

スぺ先輩は苦笑しながらこう言った。

 

「助けてもらったと思ってるなら、言うのはごめんなさいじゃなくて、ありがとうですよ」

 

って。

そしてさらにこう言った。

 

「これくらいの怪我、大したことないですって。次のジャパンカップ見ててください。スズちゃんに捧げますから」

 

そんなわけない。

わたしの怪我は絶望的とはいえ脚だけであった。転倒事故は死亡例が圧倒的に多い。

死にかねない事故の中、わたしが足以外怪我をしていないという事は、すなわち彼女がすべてをかばっているはずだ。

歩くのだって辛いのではないかと思うにもかかわらず、スぺ先輩はいつもの笑顔を浮かべた。

 

だめ、やめて、すがってお願いしてもスぺ先輩は決意を変えなかった。

 

「本当の敵はあきらめなんですよ。まあ見ててください。全部ひねってきますから」

 

 

 

そうしてスぺ先輩は本当にジャパンカップに勝利した。

凱旋門賞に勝利し、エルコンドルパサーを抑えたブロワイエにも完勝し、日本総大将とたたえられた。

その次の有馬記念では残念ながらグラスワンダーに差されて2着になったが、彼女は満足そうにトゥインクルレースを卒業した。

 

わたしは必死にリハビリに臨んだ。

絶望的と言われた脚は、苦しいリハビリを経て、走れるほどに回復した。

今日は復帰初めてのオープン特別である。

スぺ先輩が観客席で応援してくれている。

きっと勝つ。スぺ先輩のためにも、あきらめないことを見せるためにも。

決意をみなぎらせて、わたしはゲートに入った。




「という夢を見たの、スぺちゃん」

明日はスズカさんの復帰第一戦である。
スペシャルウィークはサイレンススズカから突拍子もない話を聞いて困惑した。

なんだこのスぺ先輩は。
ところどころ自分っぽい要素はあるが、基本別人である。
スズカさんは、まあスズカさんかもしれない。結構寂しがり屋なところがあるのはスぺもわかっていた。

「だから、やっぱり、明日の復帰戦、見に来てほしいな」
「う……」

見に行かないということで話がついていたはずだが、スズカは上目遣いでおねだりして来た。
こうなったときにスぺがスズカのおねだりを断ることができたことはない。
結局スぺは応援に行くことになってしまうのだった。





スぺスズ概念もっと流行れ。
参考
アルティメットスぺちゃん爆誕【実況プレイ風動画】


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