SEVEN's CODE二次創作夢小説【オレンジの片割れ】短編集 作:大野 紫咲
※このお話は、「オレンジの片割れ」未執筆パート含め全編に渡る、うっすらとしたネタバレを含みます。
作者の覚書も兼ねているので、本編連載中に設定が変わる可能性もありますが、ご了承ください。
※このお話の後編は、別シリーズに跨っています。→ https://syosetu.org/novel/271719/53.html
こちらは、直接的には「オレンジの片割れ」には関係ありません。
『キミは……キミは、史上最大の偉大なる傑作だ。
時間跳躍の理論研究の過程で、まさかこんな思わぬ副産物が生まれるとはね』
最初に目に入ったのは、ニヤついた研究者の口元と、キラリと反射する眼鏡のレンズだった。
ボクは、生み出された。
電脳の世界で、ヒトでも生命体でもない、モノですらない、存在として。
ボクを生み出した主もまた、ヒトではなかった。
『意志を持つプログラム……人工知能ともまた違うな。
感情を埋め込まれた臓器から……過去という概念と思い出の蓄積から誕生した、ヒトのようでヒトならざる存在。
キミは特別だよ。いかなるアウロラの主要植能も、キミのような形に変態したことはない』
『植能……ボクはこの世界の、臓器なのか』
『その通り。キミはアウロラの右の角膜。
ただし、口を持って喋り、自在に己の意志で動き回る、ね。こんな植能は見た事がない!』
手があり、足がある。指が動き、体には知るはずもない煌びやかな服を纏って、ボクは最初からそこに立っていた。
さっきから手を打つ白衣の男が、ボクの創造者で、主人らしい。それ以外のことは分からなかった。
『ボクの目的達成には、脳の研究はもちろんのことながら、時間跳躍やタイムパラドックスを利用した、綿密な計画が不可欠なんだ。
キミはその計画に、思いもよらぬ助けをもたらすかもしれない……実験だよ。生み出す予定はなかったが、ボクの手駒として、放流する価値はある。
ボクは未来の存在だが、ひょっとしたらキミは、過去のボクにとっても役に立つかもしれないからね』
薄ぼやけた光の中に立つボクの手に、白衣の科学者は手を置いた。
『これからの旅の過程で、キミはキミがこうなった原因を、その目で見ていくことになるだろう。
ボク自身がキミの変化をこの目で観測出来なくなることは残念だが……そうまでしてでも、キミの貴重さはプロジェクトへの参加に値するからね。
『もう一つの空っぽの主人公』が、その中に何を詰め込んでいくか、楽しみにしているよ。
キミもせいぜい楽しむといい。ヨハネによろしくね。あの子はボクの大事な子なんだ。キミにもいずれ、その意味が分かる』
ボクには、感情がわからない。
臓器は臓器であって、自分でものを考えたり何かを感じたりするはずがないのに、こいつは何を言っているんだろう。
この身体を以て、何をしたらいいのだろう。
動く必要のないボクに、この身体を与えられた理由は何なのだろう。
それでも、ボクはこの男——ニレと呼ばれる男の言うことに、従うことにした。
ボクは臓器だ。
司令塔からの指示を忠実にこなす。逆らったり、役割以上の働きをこなすことはない。
それが自分の存在意義なのだ。
*****
彼女は、泣いていた。
ボクのことを見て、どうして、と。
ニレ曰く、ボクの最も特別な点は、時間を逆行していくのが可能なところだそうだ。
ボクの時間はヒトとは「逆」に流れているらしい。
ヒトにとっての未来はボクにとっての過去で、ボクにとっての過去はヒトにとっての未来になる。
ただし、ヒトが一度去った時間を巻き戻せないのと同じで、ボクも一度過ぎた時間軸に戻ることはできない。
ニレは、時間を超えられるボクから、過去の情報を求めた。言われたことをこなすと同時に、コルニアを使って、それを時間軸の原点にいるニレに通信で送ることが、ボクの役目だった。ボクは、「過去」に向かって歩き続けた。
その理論に沿って考えるのなら、彼女は「これから向かう先のボク」に、既に会っていることになるのだろう。
でも、だからと言って、なぜ悲しまなければいけないのかがわからない。
面識があるからといって、悲しみが生じる理由が理解できない。
このボクも、ボクにとっての未来にいるボクも、体が老朽化すること以外に、何がそんなに変わると言うのだろう。
そもそもなぜ、ボクを見て悲しんでいるのだろう。
『勝手に、少しずつでも、心が通じ合えたと思ってた。きっと、私の勘違いだったのかもしれないね』
『でもね、君は本当は優しいいい子だって、私は信じてるから』
彼女の言っていることは、何一つ理解できなかった。
優しい。それは感情表現の一種か?
本当も何も、ここにいるボク以外に、本物のボクなんていない。
ボクは何も変わらない。誰かと関わることもない。だってボクには、ココロがないんだから。
それなのに、彼女の顔にあった表情と、涙の光沢が、なぜか胸をざわつかせた。
あの表情の意味を知りたくて、辞書を引いた。
数多の小説や漫画を調べたら、どうやら、「悲痛」という表現が正しいようだ。
悲しい。痛い。
どちらもわからない。
けど、痛い時や悲しい時に、悲しませた相手に向かって笑うのは、おかしいことなんじゃないだろうか。それだけはよくわかった。
*****
あの涙を、もう一度見たい。
時間を巻き戻せるはずはないのに、ボクはそればかり考えていた。
人間の体から出る水の他に、空から降る雨や、大地を流れる川や、それが注ぐ海があることを知った。
今ボクがいるセブンスコードには、雨が降る。
降り止んだ雨の雫が、葉影からいっぱい垂れ下がる頃、その水滴の中にふと七色の模様が映っているのを凝視して、空を見上げたら、虹が架かっていた。
あの虹を形容する言葉を調べたら「綺麗」と出てきた。
だからきっと、あの涙は「綺麗」なんだと、ボクは結論づけた。
「綺麗」なものに、人間は心を惹かれるらしい。
流れている涙は、どうして「綺麗」なんだろう。
ニレのターゲットだったこともあるが、ボクはそれを聞きたくて彼女を追った。
けれど街中で彼女を見ていたら、彼女がボクそっくりのあいつといる時は、意外といっぱいその涙が見られることがわかった。
彼女はすぐに笑う。すぐに泣く。記録している暇がない。
いちいち感情表現を報告していたら、ニレに「そんなにマメに彼女ばっかり見つめていなくていい」と笑われてしまった。
ああなるほど、これが「綺麗」に惹かれるということか、と思った。
これじゃ、まるでボクが人間にでもなったみたいだ。変なの。
彼女の「綺麗」は、涙だけじゃなかった。
笑っている時の顔。怒っている時の顔。物を食べている時の顔。「幸せ」と言ってる時の顔。
くるくる変わるその表情に魅入っていると、彼女があいつといる時のそれは、尚更特別に見えるのがよくわかる。
何が違う?
ボクは、自分の分身のような存在——左角膜を持つヨハネのことを、じっと見つめた。
ニレは、ボクがこの姿になったのはあいつが原因だと言っていた。
まあ、これだけ似ていれば、同じ角膜という共通の植能を持つあいつから、植能そのものであるボクが何かしらの影響を受けていると見て間違いないだろう。
あいつは、人間。人工的に生み出されたボクとは違う。
コルニアで視界を盗み見ても、ヨハネの目や感情を通して見る世界は、実に色彩豊かだった。
でも、こんなにそっくりだったら、さすがにボクでもあいつの代用が効くんじゃないか?
そうすれば、もっと近くで、彼女のことが見られる。
ボクの方が、完璧な「櫟夜翰」として彼女の傍にいられる。
そう思って、ボクはこっそりヨハネのフリをして彼女に近付いた。元々が擬態や幻覚を得意とする植能なんだから、このくらいは楽勝だ。視覚情報に多くを頼っている人間は、決してボクとヨハネの違いを見破ることはできない。所詮、見た目と振る舞いが一緒なら全部一緒だ。
けれど、結果はボクの予想とは違っていた。彼女はすぐにボクの正体に気が付いた。
そして……気が付いただけならまだしも、彼女をヨハネから奪おうとしたボクに「友達になろう」と言ってきた。
なぜ?????
いきなり握られた掌にびっくりすると、何驚いてるの、と彼女が笑う。
命の恩人なんだから、お礼だってしたいし、仲良くなりたくて当然でしょう、と。
恩人??? ボクが?????
そしてまたボクに繰り返す。ボクは本当は、優しい人間なのだ、と。
ボクは一応、あんた達にとっての敵じゃないのか?
命まで助けるほど情が移るような事が、この先起こるのか? とても信じられない。
首を傾げるボクとその日一緒に過ごした彼女は、沢山の「綺麗」をボクにくれた。
ヨハネに向けるそれとは違っていたけれど、違っている分、これはボクだけにくれたんだ、という感じがした。目に見えて触れるモノのように、感情や表情を「貰った」と感じるのは変かもしれないが、本当にそんな感じがしたんだ。なんだか胸がふわふわした。
そして、形のあるものもちゃんともらった。
軽い気持ちで強請った「ボクの名前」を、彼女は一日中ずっと考えてくれていた。
そして、虹彩と同じ意味の「エリス」と名付けてくれた。
ボクが初めて、この世界で「綺麗」を知ったものと、同じ名前だった。
彼女と一緒にいると、今までなかった感情が沢山生まれてくる。
そっぽを向いて目を逸らしてしまうのに、次々込み上げてくるこれが、何なのかわからない。
でも、彼女によって「ボク」は「ボク」になったんだ。
それだけは、確かだった。
*****
当たり前だけど、ボクに名付けた日より前の彼女にその記憶はないから、ボクが誰かにその名前を呼ばれることは二度とない。
それでもボクは、自分の名前を大切な宝物のようにしまっていた。
ニレにすら、本当は知られたくないくらいだった。
そんな名前をくれた彼女が、ある日ネットの地下深い場所で、ニレの仕向けたエレメントにやられて重傷を負った。
『あなたは……ッ、一体どうしてここに!?!?』
排水管のように、すっかりボロボロになって薄汚れたチューブの廃線跡で、ムラサキを庇った背の高い女が叫ぶ。
黒めの露出が多い服を着た、腰まで届く長い髪の女。ニレの配下だった時の名前は、サヤコだっただろうか。
『通信環境が悪いんでしょ。ボクがここに残る。あんたは早く、助けを呼んできて』
『く……ッ』
床に血まみれで倒れ伏すムラサキを、断腸の思いという顔で見つめてから、サヤコは線路の外へ駆け出した。
ヨハネは、かつてのサヤコの恋敵だったと聞いている。大方、ムラサキを助けるのにボクの力を借りなければならないことが、不本意だったのだろう。
けれどどうせ、ここから出れば、外で張っているSOATの中で隊長をしている、本物のヨハネに出会うはずだ。そうすれば、地下で会ったのは別人だと分かるし誤解も解ける。ボクが何者だったのか騒ぎにはなるだろうけど、この際それはどうでもいい。
『うう……』
腕の咬み傷に苦しんで呻いている彼女の傍に、ボクはしゃがみ込んだ。
クチュールの裾を割いて、止血の処置をする。
いくら通信環境が悪くて傍受の危険が少ないとはいえ、なぜボクは、ニレの配下の裏切りをあっさり見逃すような真似をしてしまったのだろう。なぜサヤコを始末したり、あるいはこの時代のニレの元に連れ戻そうとしないのだろう。
何にせよ、ムラサキの命を救うことは、命令には反していないはずだ。彼女に死なれては困ると、ニレは言っていたから。
『……』
失血もひどいが、血が止まらないのは、サヤコの植能と融合した彼女の紋が、暴走で興奮状態にあるからだろう。
裂かれた背中の布から見える、蠢く蛇の化け物を見て、ボクは片側の髪をかき上げると、彼女の口元へ顔を寄せた。
ニレには伝えていないが、ヨハネがムラサキに口付けることで紋の譲渡に成功していることは、ボクは知っている。
もしヨハネがボクのロールモデルなのだとしたら、遺伝子配列が全く同じボクにも、おそらく出来るはずだ。
湿った唇で触れると、微かな痛みが首筋に走り、背中から腰へと蛇の刺青が這い回るのが分かった。
……六匹のうち、引き剥がせたのは一匹だけか。それでも多分、何割かだけでも引き受けられただけ、マシなはず。
出来ることはやったし、しばらくすればSOATの助けが来るだろうが、ムラサキの顔色はあんまりよくない。
意識が混濁して、何か魘されているようにも見える。
こういう時、どうしたらいいんだろう。
『うう……』
『大丈夫……大丈夫だよ』
ボクはふと、ムラサキがヨハネや、ヒバリと呼ばれる少女相手にやっていたことを思い出して、見よう見まねで、とんとんとんとその肩を叩きながら言い聞かせてみた。
自分で言っておきながら、何が大丈夫なのかちっとも分からないが、不思議なことに苦悶の色が僅かながらにすうっと薄れ、ムラサキは穏やかな顔になった。
遠くから、連なった足音が響いてくる。そろそろ潮時だ。
『君は……誰……?』
うっすらと目を開けたムラサキが、眩しげな瞳で問うていた。
そうか。まだボクの事が誰か、わかる余地もないよな。
大丈夫。「あんたの未来」で、きっとわかるから。
「櫟夜翰のドッペルゲンガー」としてではなく、「ボク」を見てくれた、あんたならきっと。
最後に一度だけムラサキの手を握り締めてから、ボクはヒールを鳴らし、影のようにその場を立ち去った。
*****
この頃のボクは、既にニレのやり方には疑問を覚えるようになっていた。
けれどボクの思いに反して、ボクの時間が先へと進めば進むほど、ボクとムラサキ達の関わりはどんどん薄くなっていく。
味方になると言い出すどころか、下手に接触することさえ困難だ。
どうすれば、あの歴史を変えられる?
どうすれば、ニレよりも上手を行くことができる?
ボクは手をこまねいて、ムラサキとヨハネの、じれったい進展の模様を眺めることしかできなかった。
そして彼女らの人間模様を見ている間に、感情とは何か、恋とは何か、少しずつ分かりかけてきた。
彼女らは、困った時に人と助け合う。
彼女らは、時として我が身を顧みず、大切な誰かを救おうとする。
彼女らは、人の心境を思い、誰かに共感して、涙を流す。
彼女らは、心を持っている。
恋というのは、きっと強い感情のバグの一種みたいなもので、けれどそれに酔っている当人達は、満更でもなく気持ちよさそうに見える。
そんな姿を、何度も何度も見てきた。
「綺麗」ばかりではなかったけど……そうして彼女達が困難を超えていく姿は、とても興味深かった。
あの中に生まれる「絆」と呼ばれるものが、どんなに望んでもボクには手に入らないような気がして、羨ましかった。
それと同時に、その感情の流れを不自然に捻じ曲げ、歪めて利用しようというニレの企みが、ますます不審なものとなっていった。
なぜ、ニレは彼女が纏う紋やエレメントに、ここまで固執するのだろう。
ボクは、櫟エリスは、もう誰かの操り人形にはならない。この目で、真実を明らめてみせる。
従順なフリをするうちに、どうやらエレメントが、過去の「アウロラ事件」に関係するらしいということが分かってきた。
それならばいっそ、ボクが過去に向けて歩みを進めることで、この企み自体を潰すことは出来ないだろうか。
そう、たとえば……「捕縛」自体を、なかったことにすれば。
時間はついに、ヨハネがムラサキと出逢う時点よりも前へと、進もうとしていた。
データの中でしか見たことのない、12ヶ月間のループにダイブする直前。
ボクは、ボクの時間に既に過ぎ去った彼女を、救うと決心していた。
*****
この時間軸の人間にとって「未来」の情報を持つボクには、「過去」の改竄など余裕だと思っていた。
けれど実際、ニレの目論みはボクの想像を遥かに超えていた。
初めに辿り着いたループで、ボクはヨハネが既に、セブンスコードにおいて死亡していることを知る。
衝撃だった。それでは、ヨハネがムラサキと出逢う歴史自体が、存在しなくなるじゃないか。
アウロラが……彼女の暴走が、この世界の崩壊と暴走の原因。
だとすれば、守るべきものは基幹となる「臓器」だけでいい。彼女そのものにカシハラが情を持ち始めるのを、なんとか防がなくては。
自分が臓器そのものだったボクは、その所有主が誰であれ、植能さえ後で引き剥がし、アウロラの制御下から外してしまえば、どうとでもなると思っていた。だから次のループでは、ニレに協力するフリをして自ら檻に入り、「アウロラの心臓を守れ」と、面会に来たカシハラユイトに伝えた。
どういうわけか、ニレは彼自身の殻をオージに乗っ取らせて自分は仮のアバターに入っていたし、上手く誘導してカシハラにオージを守らせれば、ニレ本人には殻を返さないまま、仲間を一人救うことも出来る。まあ、ニレにはバックアップもあれば、赤の他人への乗っ取りをする権限もあるだろうから、本人の殻一個を強奪したところで、何の収穫にもならないかもしれないけど、見た目にイヤに拘る奴だったし、目の前で破壊してやれば精神攻撃くらいにはなりそうだ。
それがおかしいと思い始めたのは、隊長服を着て颯爽と留置所に歩いてきたカシハラの中身が、ヨハネだと気付いてからだった。
カシハラがオージの殻に入っているのは会話をした時の雰囲気で確定だったから、カシハラ本人の殻は空のままで、隊長も空席にしてあるんだろうと思っていた。まさか、ヨハネと入れ替わっているなんて。じゃあ……では、ヨハネ本人の殻は、今どこに? まさか、どこかに保管してあるのか?
ボクがヨハネのフリをしている間、カシハラに入ったヨハネは、オージの姿をしたカシハラに、まんまとしてやられた。
後で知ったことだが、この時のカシハラは、以前自分がこの月にニレとしてタイムトリップしたことがある経験上、ニレの中身を過去の自分だと錯覚し、守ろうとしていたようだ。
まさか、同じ特定の時空間の範囲において、意図的にタイムトラベルや、複数人でのID入れ替えを起こすなんて。
どこまでがニレの計算で、どこまでがニレの掌の上なのか、まるで分からなくなる出来事だった。
それでも、諦めるわけにはいかない。
どうしてだろうとか、何でそこまでするのかとか、考えはしなかった。
ただ、ムラサキと仲間たち、それにこの時代をセブンスコードを生きた彼らの思いを、知ってしまったから。
あの「未来」で彼女に笑っていて欲しくて、ボクは、可能な限り足掻き続けた。
まだヨハネが生きている以上、目立つ行動は避けたかったし(それこそ、ボクが二人いるのはタイムパラドックスになる)、謀反を企てているとこの時代のニレに悟られる訳にいかなかったから、直接的な干渉を出来たのは、ヨハネの夢の中と、カシハラがサヤコに入れ替わった時と、「1回目の半年後」に飛んだ時くらいだった。
けれど今思うと、ボクがここまで必死になることさえ、ニレの計算内だったのかもしれない。
だって、ボクが足掻けば足掻くほどに、この世界の「未来」は、ボクが経験した最悪の過去に、繋がっていくのだから。
『ボクは未来の存在だが、ひょっとしたらキミは、過去のボクにとっても役に立つかもしれないからね』
あの言葉は、どこまでを指していたのだろう。
ボクは一体、何をしているのだろう。
もう、頼みの綱は、DCシステムが発動する当日しかなかった。
けれど、ボクの言葉など信じるはずもないカシハラに、ボクはあっけなくやられ、砕け散った。
誰にもボクが知られていない「過去」に、ボクの時間は進んでいく。
『なかなかに興味深い実験結果だったよ。ご苦労様。
キミの役目はここまでだ』
とっくに失われたと思っていた、未来のニレとの通信が、崩壊していく右目の傍で響く。
これで、本当に、今度こそ、ボクは一人ぼっちなのだと、思い知るには十分だった。
セブンスコードサ終に際し、可能な限り録画作業を進めていますが、現在進行形で謎の腱鞘炎により右手がぶっ壊れておりまして、遅々として作業が進みません(^p^)
この話はその作業の途中にふと降ってきたもので、もしかして最後まで復習が済んだら「アッ…矛盾…(^p^)」となるかもしれないのですが、とりあえず上げておきます。
私が大学生の時、専攻していた学科の教授が言ってました。
漢文や漢詩は、結局のところ自分が読みたい解釈で読むもんだと。
私はセブンスコードの二次創作で、全力でそれをやっているところです。
(まあ本当にそれやると、大抵根拠が甘いところは教授に突っ込まれまくってボロクソにされるんですけどね!くわばらくわばら)
この子がどうなったのか、ご興味を持たれた方は、一次創作シリーズの後編をどうぞ。
https://syosetu.org/novel/271719/53.html