シュトラール・イン・シュテルンツェルト 作:一意専心
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ちなみに今話は何の根拠もないオリ主アゲではなく、モチーフ馬が最終的にそこに辿り着くなら、何倍も努力したらその才能も早い内から開花するよねっていう浅はかな展開です。これでも、同期にはやばいのがそれなりにいるので負けます。下の世代はヤバいのがバーゲンセールしてるので負けます。モチーフ分かっている人はwikiやニコニコ大百科なども参照(
後、最後に三つ目のアンケートやってます。
『■■、あなた、自分の人生なんだからあんまり遠慮してちゃダメよ?』
「分かってるよ、母さん」
僕が高校生になってから少しふくよかになった母が、心配を多分に含ませた声音で僕を諭す。
それに対して、この時の僕はと言えば特に取り合うことは無かったか。
それなりに孝行して、世間一般に顔向けできたら良いくらいに考えていたのか。それとも、そうやって考えている振りをしていただけなのか。
これは夢だ。
何もかもが曖昧な世界で、僕は懐かしい頃、前世の母親とのことを夢見ていた。
父親はしょっちゅう単身赴任で家を留守にしていた。母はパートを掛け持っていて、ほとんどシングルマザーのようであった。
女手一つで育ててくれた母に何かしら孝行はしたいな程度には考えていたはずだ。
けど、この夢の世界のように、この時の僕は何もかもが曖昧だった。敷かれたレールの上、それなりに高い位置。座りが良い場所にずっと居座って、時は過ぎ去るのだということを知らずにただただ無為に過ごしていた。
気が付けば、母は死んでいた。
死因はなんということは無い過労だった。
大学を出て就職し、忙しさにかまけて二年だ。何も出来ず母は死んでしまった。
孝行なんてする暇も無かった。
いや、もっと僕が母のことを知り、母の為と頑張っていれば結末は違ったのかもしれない。今となっては後の祭りだが。
思えば僕は、母のことを何一つ知らなかった。知ろうとしなかった。
母親とはそういうものだと、不変の存在だと思っていた節さえあった。
何もかも遅過ぎたんだ。
『■■、人生まだまだこれからなんだから。もっと楽しまなくちゃ、ね?』
母は常々、僕の人生を案じていた。
もっと楽しめと、もっと我儘に生きろと。
それを言うなら、母も母だ。
こんなクズに手間暇かけてないで、もっと楽すれば良かったのに。
⋯⋯甘えてたんだ、僕は。母の温かさに。心配してくれる人の存在に。
思い上がっていたんだ。僕は何でも一人で出来ると。母の死力はただのお節介でしかないと。
その事実に気が付いたのは、死ぬ間際か。この世界に転生してからのことであった。
□
母が倒れた。
その報せは、小学校五年のとある昼休みの時間に届いた。
迎えに来てくれたじいやの車に乗せてもらって向かった病院で、少し窶れた母は力無く笑って僕を出迎えた。
「シュトラール」
「なに?」
パイプ椅子を軋ませて、母に向き直る。
僕を見つめるその眼は倒れたとは思えないほど力強い意志を灯していた。
「お母さんはなんともないわ」
「⋯⋯でも、倒れたって」
「ええ、そうね。もしかしたら、お母さんはもう歩けないかも知れない」
「⋯⋯え?」
いとも容易く打ち明けられた状態に、僕は頭が真っ白になって固まってしまった。
僕が理解出来ていないと思ったのか、母は強い口調でもう一度告げる。
「私の足はもう動かない、そう言ったの」
「⋯⋯分かってる。それくらい、聞いたから分かるよ。でも、どうして?」
母は何回か口を開きかけては口篭るのを繰り返した。言いにくいことなら、無理に言わなくても良い。そう言うと、母は弱く笑った。
「前々から兆候はあったわ。でも、いきなりよ」
「⋯⋯母さんはそれで良いの?」
「良くないわ」
二度と歩けないとあっけらかんとした態度で告白したくせに、未練はタラタラ。ハッキリとそう言う母に驚きはしない。
むしろ、らしいなとさえ思う。
母は天皇賞に取り憑かれている。
メジロ家であることに誇りを持って、僕をメジロのウマ娘足らしめんと尽力してきた。
古式奥ゆかしい仕来りや上品さではなく、メジロのウマ娘という存在そのものであるように僕に求めてきた。
とはいえ、それはおばあさまも似たようなものなのだが。
「だからね、シュトラール。貴女に、託したいの」
「託す?」
正直、今世の母はあまり得意ではない。
好き嫌いの話ではなく、僕はこの人のことが苦手なんだ。
母が僕を見る目は、何処か狂気的だった。
僕を自身と重ねているような、届かない何かを幻視して焦がれているような、言ってしまえばそんな感じか。
けど、やっぱりと言うべきか。
「貴女は私の理想。貴女は私の唯一無二。貴女は私の娘」
「ああ。僕は、貴女の娘だよ」
僕を見る目にそのような色があろうと、どうしても、母は母なのだ。
前世も今世も関係無い。
母の言葉には、母親としての愛情がいっぱいだった。
耳元に触れてから、母は僕の両手を握り込んで真っ直ぐな眼で見据えた。
「だから、
「⋯⋯勿論」
有無を言わさぬ響き。呪いじみた期待。
手のひらに握らされたのは、
これがどういう意味か、分からないほど鈍感ではない。
「私の代わりに⋯⋯メジロに盾を。きっと、約束よ」
「ああ、きっと約束するよ、母さん」
「⋯⋯そう。安心、した⋯⋯わ」
そう言うと、母は目を閉じてそれっきり動かなくなった。
まるで死んでしまったかのように。ずるりと僕の手を握り締めていたその手が滑り落ちる。
聞こえてくる規則的な寝息が辛うじて生存を訴えているが、僕には分かってしまった。
───ウマ娘が死ぬ時は正しく今だ。
走るどころか、歩けなくなってしまったならば、ウマ娘はもう死んでしまっている。
だから、母は僕に託したのだ。
言わば、これは相続にして継承だ。
天皇賞に懸ける情熱も何もかも、そっくりそのままこの耳飾りに秘めて僕に託したのだ。
こんなに子供冥利に尽きることはない。
「母さん、見ていてくれ。僕は、誰よりも強く輝いてみせる」
それが、それこそが今世の母への最大の孝行だと確信している。天皇賞の盾なんて、一つと言わずいくらでも持って帰ろう。
母のくれたこの身体は、その為に使い潰せる最高の肉体だ。
命尽きるその時まで、走り抜こうとも。
「また来るよ、母さん」
眠る母をベッドに横たわらせる。
これ以上無いほどに僕は燃えていた。消えることの無い熱意に突き動かされていた。
託された耳飾りを付けて病室を出れば外にはじいやと、おばあさま、そしてマックイーンの姿。
僕は三人を一瞥すると、目礼をしてその場を後にするのであった。
□
病室から出てきたシュトラールお姉さまを、わたくしは一瞬誰だか理解することが出来なかった。
見た目は耳飾りしか変わっていない。
けれども、その身に纏う気迫は既にわたくしの知るシュトラールお姉さまではなかった。
母親が倒れるという一大事、お姉さまに何と声を掛けたら良いのか。
そんなことを考えていたわたくしは置き去りにされてしまった。
「⋯⋯彼女は至った。マックイーンさん、アレが今のメジロの最高傑作です」
おばあさまに言われなくても分かります。
今、メジロの最高傑作と呼ばれるべきは、メジロマックイーンではない。メジロシュトラールなのだと。
わたくしの努力が足りないだなんて欠片も思いません。生まれてからこれまで、メジロのウマ娘足らんと人生を捧げてきました。
あの人の努力が、大器を並外れた努力だけで開花させてしまったあの人がおかしいのです。
認めることしか出来ないのが、悔しい限りですが。
「良いですか、マックイーンさん。私は、シュトラールさんと同じくらい貴女にも期待しています。あの子と張り合えるステイヤーは、貴女しかいません」
「分かっています」
まるで慰めのようにも取れるその文言。
ですが、おばあさまのその言葉を世辞と捉えることもまたわたくしには出来ない。
シュトラールお姉さまに届き得るステイヤーは同じ年代を探してもほとんど居らず、今のメジロにしても将来的にはという保険が付いた上でわたくししかいないのは百も承知。
それでも。
それでも、わたくしというウマ娘は本能の奥の奥で、お姉さまに負けたくないという剥き出しの渇望が燃えている。
絶対に追い付いて、追い越したいという意思が自分でも怖いくらいに煮え滾っている。
「⋯⋯本当なら、同じメジロのウマ娘同士、それも盾を約束された者達で争い合うのは望まないのですが、この際致し方ありません」
そう言うおばあさまの言葉からは、端々から無念さや諦観が滲み出ていた。
しかし、わたくしには分かる。
おばあさまのその言葉は、きっと、
「マックイーンさん、勝ちなさい。シュトラールさんにも同じことを言いますが、勝つのです。互いに全力を出し合った上で、勝ちなさい」
「はい⋯⋯ッ!」
それはきっと、何処までも純粋な好奇心。
どちらも確実ならば、双方が競い合えばどうなるのかという興味だ。童心と言い換えても良い。
おばあさまからは最も縁遠いような、そんな概念だ。
でも、わたくしが同じ立場ならわたくしだってきっとその思いに駆られることでしょう。
───メジロシュトラールとメジロマックイーン、果たして
待っていてください、シュトラールお姉さま。
絶対に振り向かせてみせます。
他の誰でもないわたくしという輝きを、その目に焼き付けて差し上げますわ。
オリジナルチームの場合は、トレーナーはアプリ版の女トレーナー。チームメンバーは未定。更新に実装が間に合うならゴールドシチーとかアドマイヤベガとかマンハッタンカフェとかエアシャカールとか、それとは別にマヤノトップガンやライスシャワーなんかも入れたい。モチーフ同期のオリジナルウマ娘とかでも良い。
感想やアドバイスなどありましたら、気兼ねなくよろしくお願いします。
主人公が所属するチームは?
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チームスピカ
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チームリギル
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チームカノープス
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オリジナルチーム