ゴミでカスなクズトレーナーは今日も今日とてウマ娘を虐待する。 作:カチュー
すっごく今更ですが、独自設定が出てきますのでご注意を。
後、改めてお気に入り登録・感想・高評価ありがとうございます!
不定期投稿にはなりますが、今後も書き続けていきます。
虐待を愛するものは自らの肉体をも厳しく律しなければならない。
何故かって? 虐待者が被虐待者にうまだっちされ、舐められるわけにはいかねえんだよ!
てことで、しんしんと雪が降り注ぐ大晦日の前日に部屋の大掃除を終えたオレは室内で滝のような汗流してウエイトトレーニングに勤しんでいた。
クッ、たった2時間のトレーニングでもう腕も足もパンパンになってきやがった。すっかりオレの肉体が怠けちまったようだ……。
オレは汗がびっしょり染み込んだタンクトップを投げ捨てる。水分吸収量の限界を超えたソレはぴちゃりと音を立て、フロアタイルの床に着地した。
……あー、これは後でもう一度この周辺だけ拭きなおしだな。
再び掃除をしなければいけない面倒くささとやらかした自分にため息をついていた直後、家のインターホンから高らかに音が鳴った。
部屋に置かれているデジタル時計が示す時刻は17時過ぎだった。
……そういや、新しいフライパンを昨日注文してたっけ。年末なのに届くの早いな。基本的に朝も夜もフルに使っているから、すぐ調理道具にガタが来ちまうんだよな。
だが、インターホンのカメラを確認するとそこにいたのは……
「ライス?」
「お兄さま……」
事前に連絡もせず、訪問してきた無地のコートに身を包んだ不届き者……もとい散々ひどく痛めつけてきたオレの虐待ウマ娘だった。
「一体どうしたんだ?」
「ううん、別に用事があったわけじゃないの。でも、お兄さまとどうしてもお話がしたくて……」
「わかった。今開ける」
思わぬ訪問者に少しだけ驚いたオレは急ぎ足で玄関へ向かう。年末は実家に帰省するってコイツの口から聞いていたんだが……どういう風の吹き回しだ?
「待たせたな」
「ありがと、おにい……しゃましゃまぁ!? あ、あうぅ……!」
ガチャリとドアを開けた瞬間、目を見開き、奇声を上げたライスシャワーは思いっきり仰け反った。
「本当にどうした? 今日は変だぞ」
「変なのはお兄さまの方だよ! でも、そ、その! すっごく、仕上がってるよ! お兄さま!」
「仕上がってる……ああ!? すまん!」
……そりゃ、上半身裸で汗だくになった男を見たら即座に逃げたくもなるわな。
……クク! しかし、その嫌悪感に満ちた真っ赤な顔は悪くねえ! 狙ったわけじゃないが、久々に気持ちのいい虐待ができている感じがするぜえ!
とまあ、虐待ウマ娘の体を冷やしては今後の虐待に差し支える。まだまだライスシャワーの表情を楽しみたいところだがニヤケ面が出そうになるのを堪えつつ、ライスシャワーを自宅に招き入れる。
「お兄さま、それ……」
「……すぐ片づける」
すると、先ほど脱ぎ捨てたホッカホカ汗だく大盛りのタンクトップがオレたちの目の前に現れたので、速攻で未だに熱を帯びたブツを手に取り、洗濯機の中にぶち込んでおいた。
……その時、未だに顔を赤くしたライスシャワーがタンクトップを名残惜しそうに見ていたのは気のせいだと思いたい。ド変態はミホノブルボンだけで十分だっての。
「外は寒かっただろ? 飲み物、コーヒーがいいか? それとも紅茶か?」
飾り気のない黒一色のTシャツに着替えたオレはそのままキッチンへと向かい、ハンガーにコートをかけているライスシャワーに問いかけた。
「あ、その……できれば緑茶があったら嬉しいな」
「……了解っと」
あえてクッソ渋みの強い緑茶を所望とは……やりやがる。けど、コイツの性格上“なんでもいいよ”って答えてきそうなものだと言うのに……今日は反骨精神旺盛じゃねえか。なら、コイツの反骨精神に敬意を表して、今日はさらに苦みが増すように茶葉を多くぶち込んでおく。
ククク、必死に吹き出さまいと口に含み続け、号泣寸前になるところが目に浮かんでくるぜ! こら、存分に飲みやがれッ!
「ほら、できたぞ」
「ありがとう、お兄さま!」
オレはライスシャワーに淹れたてほやほやの緑茶を出した後、長テーブルを挟んで対面上に座った。劇物を仕込まれたことを何も知らないライスシャワーは湯気が立った湯吞に嬉しそうに口をつけ……にこりと微笑む。
「……すっごくおいしいな。お兄さまの入れてくれた緑茶」
……だろうな! だと、思ったよクソが! マジでオレ、飲食づくり全般の才能はないのかもしれない……。
「ねえ、お兄さま。実はライス、紅茶やコーヒーよりも緑茶のほうが好きなんだ」
「そうだったのか?」
「お兄さまと出会う前までは緑茶の苦いところがちょっと嫌だったんだけど、今はその苦味がなんだか落ち着くんだ」
ん? なんだ? 要するに、あえて苦味という苦痛に身を置くことでオレから受けてきた暴虐非道の数々を忘れないようにしたいってことか?
――コイツ、ねちっこいところありそうだもんなぁ……。
「それなら、言ってくれれば毎回緑茶を出したのに」
「うん、そうだよね。言えば、良かったんだよね」
そう言ったライスシャワーはかつてないほど緊迫感を秘めた顔で
「ねえ、お兄さま」
「ん?」
「お兄さまはライスががんばりきるまで、ずっと見捨てないでいてくれる? ライスのトレーナーさんで居続けてくれる?」
アホにも程があることを口に出した。
「……クク、ハハッ! なんだ、そりゃ! クククッ!」
「な、なにがおかしいの!?」
「いや、ごめんな。今までに見たことない気迫で迫ってきた割には、あまりにもおかしい質問だったからつい」
めちゃくちゃ真剣な目で取るに足らないことを言ってきたライスシャワーに笑ってはいけない場面だと知りつつも、吹き出してしまった。だって、その質問の答えは何度世界をやり直したとしても絶対に変わらないものだったから。
「お前に見捨てろと言われても絶対、見捨てないよ」
お前が限界まで走りきるまで、ずっと。お前が何度へこんで、弱音を吐いて、落ち込んだとしてもそこから引きずり出してやる。
そうすると、オレの答えを聞いたライスシャワーは口を結び瞳を潤ませたかと思うと、
「……ふふ、あははっ!」
さっきのオレと同じような笑い方をした。今日のライスシャワー、なかなか舐め切ってくれるじゃねえか……!
「笑うところはなかったと思うんだが?」
「ごめんね。とってもおかしくなっちゃって、つい。あははっ……」
「何がだ、おいっ!」
「や、やめて! お兄さま! あははははっ!」
「やめろと言われても、絶対やめないぞ! おらっ!」
寛大なオレもさすがに限界が来て、ここで立ち上がった。笑ったことでぽろぽろと流した涙を手で拭き取っていたちょっぴり生意気になった虐待ウマ娘の柔らかな髪をわしゃわしゃと触りつくす。
「くすぐったいよお……」
一通り弄び尽くしたところで、手を離すと屈辱で顔を赤らめたままライスシャワーも立ち上がり、必然的に上目遣いになる姿勢で話し始めた。
「あのね、お兄さま、ライスの夢のことって覚えているかな?」
「もちろん。“人々に幸せを分け与えられるようなウマ娘になること”、だろ」
シンプルだが、小柄な体に似合わずでっかい夢だ。そうでなきゃ、虐待のし甲斐がない。
「うん。それでね、もうひとつ夢が出来たんだ。それを今日、話しておきたくて」
「いいことじゃないか。聞かせてくれるか?」
「うん。それはね――お兄さまの夢を叶えるウマ娘になること」
――ライス、お前……。
「だからね、知りたいの。お兄さまの夢って、何かな?」
「……んー、お前みたいなかわいいウマ娘を虐待することかな?」
「もーっ! そうやって、いつもはぐらかすところが! ……ライス、その……ダメだって思うよ? そ、その! ごめんなさい!」
「ハハッ! 怒るのか、諭すのか、謝るのかはっきりさせたほうがいいぞ?」
「……ううっ、ごめんなさい」
「……何があったのか知らないが、また変わろうとしているんだな。んじゃ、新たな一歩を踏み出したライスに免じて教えようか」
怖がりつつも、自分の意見を持ち始めている事実が……ムカつくことではあるが、嬉しい。仕方ない。オレも真正面からコイツに立ち向かわなければ。
「……ライス。オレの夢はな――担当ウマ娘の夢を叶えてあげられるヤツになることだよ」
「お兄さま……」
包み隠さず夢のことをライスシャワーが“あれ、コイツ実はいい人?”みたいな態度をしてきたので、軽い口調で釘を刺しておく。
「おいおい、オレのことを底抜けの善人なんて思うんじゃないぞ。これは、半分義務みたいなもんだよ。一トレーナーとして、一人の人間として当たり前のことを言っているだけ」
「でも、お兄さまは本気でそう思ってくれてるんだよね?」
「……ん? ああ、そうだよ」
「……えへへ、やっぱりお兄さまってやさしいね」
どいつもこいつも、何故こんな普通のことが優しさに繋がるんだ? 絶対他のトレーナーも真っ先に口に出してることだろ。
――担当ウマ娘の夢も叶えられないで、何がトレーナーか。
「もう一つは、そうだな……これは完全に個人的な夢で他人に話したことはほとんどなかったんだが」
「やっぱり、URAレジェンズで自分の育てた担当ウマ娘がトゥインクルシリーズに在籍したまま優勝するところをこの目で見たいな」
「それが……お兄さまの夢なんだね?」
「ほんと、夢のような話だけどな」
URAレジェンズ。
トゥインクルシリーズよりも格上のドリームトロフィーリーグで最上位レートを保持する超強豪ウマ娘と、トゥインクルシリーズの頂点を決めるURAファイナルズ決勝を制したウマ娘が雌雄を決するビッグレースだ。
――議論など、必要ない。知りたいのは、どのウマ娘が最強なのか。
ファンやウマ娘が欲して止まない究極の回答があらわになる文字通り、夢のレースだ。
――無謀だと知りつつもオレは、どうしてもこのレースを担当ウマ娘と一緒に勝ちたいんだ。
オレの夢を黙って聞いていたライスシャワーは、目を閉じた。そして、穏やかに微笑んで頷いた。
「うん。わかった」
「わかったって、お前……オレが言うのもなんだが、URAレジェンズは魑魅魍魎が渦巻く怪物の見本市だぞ?」
「でも、お兄さまと一緒ならどんなウマ娘さん相手でも勝てるよね?」
「ライス……でもな」
「信じて、ライスを」
と、急に語気を強めたライスシャワーは、
「ライスは、どんなことがあってもお兄さまのことを信じる。お兄さまが信じてくれるライス自身も信じる。だから、お兄さまもライスのことを信じてほしいんだ」
オレの右手を取り、両手で包み込んできたのであった。
――こんな寒い雪の中でも、とても暖かい。
お兄さまに駅まで送ってもらったライスは雪が降り積もるホームで未だ冷めることのない熱を胸に抱きしめ続けていた。
今日、お兄さまとお話してわかったのは……お兄さまはライスの創り出した虚像よりも数十倍魅力的な人だったってこと。
お兄さまはとってもカッコよくてやさしい。でも、ちょっとイジワル。ライスが困ったり、慌てたりしたときとか、すごく楽しそうな顔をする。
お兄さまはほとんどの場合、そつが無い。でも、急な訪問に慌てたりして上半身裸で迎えてくれることもある。
――お兄さまの体、すっごく仕上がってたなあ……お写真撮らせてもらえればよかったな。
それと今日はお兄さまの夢も知れた。
一つ目は「担当ウマ娘の夢を叶える」こと。
それは、すごく優しくて完璧なお兄さまらしい夢だった。当たり前ってお兄さまは言うけど、お兄さまみたく自分のことを省みず、ほかの人の為に本気になれる人に今後出会うことはたぶんないと思う。
でも、ライスが歓喜したのはもうひとつの夢の方だった。
「URAレジェンズを担当ウマ娘がトゥインクルシリーズに在籍したまま優勝する」という夢。
つい最近のライスなら「ぜったいに無理」と言っていたに違いない。
お兄さまの言っていた通り、URAレジェンズに出走するウマ娘は――もはや同じウマ娘とは思えない化物じみた走りをする。
その中で頂点を取るのはURAファイナルズを優勝するよりはるかに困難。
まして、お兄さまの夢はトゥインクルシリーズに在籍したままという条件付きだ。未だにURAレジェンズをトゥインクルシリーズから優勝したウマ娘は一人としていないのだから、無謀に無謀を重ねるような話だった。
――だけど、それがなんだ。やっとライスが明確に役に立てる目標ができたんだ。これほど、嬉しいことはない。幸せなことはない。
それにその夢を話した瞬間、いつも自信に満ち溢れているお兄さまが「夢のような話だ」と最初から諦めかけている姿を見て、さらに心の炎は燃え滾り、思わずお兄さまの手を握り締めてしまった。
――今この瞬間、お兄さまの夢を叶えられる存在はライスしかいないってわかったから。
「お兄さまの夢――ううん、ライスたちの夢はライスが絶対に叶えて見せる」
そのためには……
「邪魔するものは――全部、倒す」
魔王誕生秘話、ここに爆誕。
〇嘘予告
ゴミクズトレーナーが自宅に帰還。すると、何やらウマ耳の気配が……!
一体、どこの変態サイボーグウマ娘なのか!? どことなく危うい雰囲気を纏っているぞ! 果たして、うまぴょいは回避できるのか!?