ゴミでカスなクズトレーナーは今日も今日とてウマ娘を虐待する。   作:カチュー

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お久しぶりです。
最近、どんどんチャンピオンミーティングのレベルが上がってきていて辛い。


#20 ミホノブルボン

――ミホノブルボン。

 

 過酷すぎるトレーニングを表情ひとつ変えずにこなし続ける姿から”サイボーグウマ娘”としてトレセン学園内――最近は学園外においても名を轟かせている。

 格闘家すら目を見張る筋肉量としなやかさを両立させた鍛え抜かれたトモによるスピードとパワーは将来有望とされるトレセン学園内でも抜きん出ていた。

 

 ミホノブルボンには努力する才能があった。彼女の努力量を上回れるウマ娘は同期ではまずいない。古バを含めても、ごく少数に限られるだろう。

 努力は裏切らない。彼女はそのことを信じ、常に結果を出してきた。

 

 しかし、培ってきた努力を万人が認めてくれるとは限らない。

 

 ミホノブルボンの本来の適性は短距離である。スピードとパワーを存分に発揮するには短距離の方が適しているというのもあるが――彼女には中長距離を走り切るスタミナが致命的に欠如していた為だ。

だが、彼女の夢であり目標は中長距離路線のクラシック三冠を制覇し、三冠ウマ娘になることだった。

 

 トレーナーたちは言う。

 

『君なら絶対に短距離界のスターになれる』

 

『無理なことはすべきじゃない。君が勝てる道は他にある』

 

『無謀だ。適正距離以外を走るのは勝てないどころかリスクが高すぎる』

 

 ウマ娘の指導者たる彼らは暗に言う。

 

『的外れなところで頑張ることに価値はないのだ』と。

 

 それでも、やる前から可能性を諦めている彼らを認めさせるため、何よりも自分の夢の為にミホノブルボンは更なる努力を重ねた。

 

 けれど、練習し続けても成果が追い付かない。中距離未満のマイルですら、スタミナが最後まで持たない。もどかしい。辛い。苦しい。

 

 表情こそ表に出さない彼女の内面は悲痛に満ちていた。

 けれども誰もが無駄だ、無謀だと匙を投げた彼女の努力と挑戦を認めてくれた人がいた。

 

『スタミナは努力で補える。精神は肉体を超越するとオレは思っているよ』

 

 元トレーナーだった自身の父親と同じ言葉をかけてくれたのは、高身長で筋肉質の少し目付きの悪い若い男性トレーナー。彼は自身をスカウトしたトレーナーではなく――自身とは違うウマ娘を担当している新人トレーナーだった。

 彼は新人らしい自身のウマ娘にかける情熱と新人らしくない豊富で理路整然とした知識を併せ持っていた。また優秀なだけではなく、お人好しで面倒見が良く大人の包容力を以て接してくれた。

 

 時には疲れが吹き飛ぶ大変美味な特製ドリンクを差し入れに貰い、肉体の疲労回復に効果的な方法を丁寧に教えてくれた。

 

 ある時には励ましてくれ、無茶なオーバートレーニングをする自分に対して本気で怒ってくれた。人生で初めての他人からの激怒に、ミホノブルボンは怖いという感情以上に嬉しさから涙腺が緩みかけた。あれほど自分の身を心配されたことは家族以外では初で、自身が彼にとって取るに足らない存在ではないと否定された瞬間だったためである。

 

 ミホノブルボンにとって彼に好意を持つのは当たり前で……やがて好意は制御できない”未知の感情”へと至った。

 

 あなたから指導を受け続けたい。あなたと会話をしたい。あなたに褒められたい。あなたに構って欲しい。あなたと喜びを分かち合いたい。あなたとずっと一緒にいたい。

 

 希薄だと自他ともに断じていた感情が次から次へと溢れだす。

 

 

 ――彼と共に過ごす度に日に日に膨らんでくる甘さと辛さをはらんだ願望を胸に押し込めて、ミホノブルボンは努力し続けた。

 

 

 結果、ミホノブルボンはデビュー戦から、直近のG1レース”朝日杯フューチュリティステークス”まで、隔絶された強さを知らしめた。

 

 ――邪魔で目障りで苛々しく妬ましいのに、どうしてか心の底から嫌いになれないとある同期のウマ娘以外には。

 

 

 

 美しい黒髪で片目を隠した小柄で臆病で内気な性格のライスシャワーは、ミホノブルボンが思慕する彼自らがスカウトしたウマ娘だ。

 彼女の存在は入学当初時点では気にも留めていなかった。これはミホノブルボンだけではなく、トレセン学園内のウマ娘……ウマ娘を管理するトレーナーたちに至るまで同じだっただろう。スタミナが多少ある以外、彼女には目立った長所が見つからなかったからだ。

 

 が、彼にスカウトされたライスシャワーは変貌した。

 その変貌の結果は新バ中距離最強レース”ホープフルステークス”でレース場にいた全員に畏敬と恐怖と絶望を与えた。

 

 前走のレースから察すると差しや追い込みを得意とするライスシャワーが今回取った戦法はミホノブルボンと同じ逃げだった。ペース配分も何も考えない、がむしゃらに前を目指す破滅的ともいえる逃げ。もし、ライスシャワーと同じ走り方をミホノブルボンがしたら一瞬でスタミナが無くなってしまうだろう。

 しかし、ライスシャワーは途中で失速するも息を入れ直した上で前走と同じ末脚で他バを置き去りにした。

 

 弱いウマ娘なんて一人だっていないG1レースのレコード板には”大差”という赤い文字が燦々と輝いていた。会場がファンの大歓声と熱気に包まれる中、ミホノブルボンは震えて凍えそうになる身を必死になって抱えた。

 どんなに理性で振り払っても、本能で理解させられた。努力しても”アレ”には決して勝てない。たゆまぬ努力をし続けても、決して及ばない。

 

 ライスシャワーが才能だけで戦っていたのであれば、まだ奮起できた。戦えた。

 

 けれど、ライスシャワーの根幹の強さはミホノブルボンと同一の”努力”によるものだった。

 

 努力の”質”と彼の存在。これが、ミホノブルボンとライスシャワーの決して埋まりようのない差だ。

 

 一度ミホノブルボンは、自身の願望が漏れ出てしまったことがある。彼の自室でマッサージを受けた後の二人きりの時間に聞いてみたことがあった。

 

『ところで、あなたはライスシャワー以外にウマ娘をスカウトしないのですか?」

 

『ん? 全く考えていないけど……急にどうした?』

 

 不思議そうな顔をした彼に自分でも発するつもりはなかった言葉に少しだけ焦りつつ、ミホノブルボンは無表情を貫いた。

 

『いえ……あなたほど優秀なトレーナーであれば、他のウマ娘の育成にあたっていても不思議ではないかと』

 

『はは、君のいう通り優秀ならそうしていたかもしれないけど……オレは優秀じゃないし、不器用なんだよ』

 

『あなたが、不器用? とてもそうは考えられませんが』

 

『担当ウマ娘ひとりの将来を担当するからには、重大な責任が伴う。決して中途半端な指導は許されない。あってはならない。だから、オレが持ちうる全部を担当ウマ娘になってくれた子に捧げなきゃいけないと思っている』

彼はどこか過去を悔いるかのように、自虐的に笑った。

 

『とても今のオレは複数のウマ娘に全力を捧げられるほど、器用じゃないし優秀じゃないんだ』

 

『そう、ですか……』

 

 言葉どおり彼はライスシャワーに全リソースを注ぎ、彼女を誰の手も届かない怪物に育てるだろう。

 ライスシャワーもまた彼の期待により一層努力し、己を高めていく。笑顔で、誇らしげに、幸せに。

 

 確固たる意思と絆。そこにミホノブルボンが入り込む隙間はなかった。

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 大晦日の夕方。ミホノブルボンは実家に戻らず、毎日のルーティーンをこなした。ただ、そこに秘めた情熱はなく。ただ、日々の業務をこなす機械人形のようだった。

 練習を終え、三女神の像の付近へ差し掛かった時――前と同じく透明で清廉で浮世離れした雰囲気を持つウマ娘が音も立てずに姿を現した。

 

 今回は前置きすらおかず、彼女は美しく微笑みつつ話し始める。

 

「ミホノブルボンさん。これでわかったでしょう。今のあなたではライスシャワーには勝てない」

 

「………………」

 

「でも、本来ならあなたは勝てるはずなの。ううん、勝てていた(・・・・・)。勝てないのは、あの人が傍にいないから」

 

 こちらの心を見透かしたように、透明で清廉な”黒い”彼女はささやく。

 

「もし……もし、あなたが彼の担当ウマ娘になれた。そんな世界があるとしたら、あなたはどうする?」

 

「もしも、そのような世界があるのなら……」

 

 ――どれだけ幸福なのだろうか。

 

「ここは三女神の像の前。ウマ娘の願いを叶えてくれる場所」

 

 彼女はミホノブルボンに密着し、耳元でそっと言う。

 

「私と両手を合わせて、祈って。そうすれば、あなたの願いは叶うわ」

 

「…………」

 

 ミホノブルボンは虚ろになった瞳で彼女の白い手を――。




ダーク因子継承。

一般トレーナーとアプリ版トレーナーの差は激しい。
G1を10冠以上余裕で取れるように育成するアプリ版トレーナーはウマ娘にとって神のような存在ですよね……

まあ、何回もやっていれば嫌でも育成も上手くなりますけど。
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