ゴミでカスなクズトレーナーは今日も今日とてウマ娘を虐待する。   作:カチュー

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テイオーの怪文書に感化されたので投稿します。


#3 虐待不可能!? 恐怖のサイボーグドMウマ娘!

 この学園には“サイボーグ”と呼ばれるウマ娘がいる。

 

 そのウマ娘の短距離からマイルまでの走破タイムは歴代の有名古バとも比較しても遜色ない。

 

 そして、恵まれた体格と体のバネから発せられるターフを抉るほどの脚力により、スピードとパワーは彼女と同年代のウマ娘の中では間違いなくトップ。今からでもクラシック戦線に乗り込んでいけるような将来有望なウマ娘だ。

 

 そして、彼女の”サイボーグ”たる所以は並みのウマ娘なら一日と持たないハードトレーニングを無表情で淡々とこなしている点。

 

 あとは口調までもが機械的。故に人間ではなく、サイボーグなのではないかとまことしやかに囁かれることとなった。

 

 そんな規格外のウマ娘相手にライスシャワーは勝たなければならない。アイツにとって、非常に高い壁だ。

 

 

――そして、このオレにとっても必ず乗り越えなければならない超難敵なんだよなあ!

 

 

 素晴らしき虐待をライスシャワーに与えた日の夜――仕事帰りのオレがグラウンドを覗いてみると、やはりといって良いのかグラウンドにヤツはいた。

 

「……目標タイムより大幅な遅れを確認。測定結果、スピード及びスタミナ不足と判断」

 

 サイボーグウマ娘――ミホノブルボンは夜になると超高確率で自主トレーニングに励んでいる――ように見せかけている。

 

 おおう、やっぱコイツかわいいなあ。

 

 グラウンドの照明と薄い月の光に照らされたミホノブルボンは神秘的な美しさを誇っていた。機械のように均整の取れた肉体と愛嬌のカケラもない無表情にも関わらず、トップ女優顔負けの抜群のルックス。

 

 しかしながら、容姿端麗なかわいいウマ娘が大好物のオレだが――コイツにだけは苦手意識を持っている。

 

 だがよ、逃げるのは恥だ。臆病者だ。そんなのは虐待を愛する男のすべき行動じゃねえ。だからこそ、立ち止まり息を整えているミホノブルボンにオレは平等に虐待をすべく近くに寄り、話しかけた。

 

「こんな遅くまで今日も精がでるな」

 

「こんばんは、ライスシャワーのトレーナー。貴方の考案したフローチャートはまさに完璧。効率的な中・長距離用のトレーニングメニューにより目標“三冠ウマ娘”へと確実に近づいております。改めて、感謝を」

 

「いやいや、感謝なんていらないよ」

 

 ケッ、感謝だあ!? 軽々しく使われてイライラさせるワードを簡単に口にしてんじゃねえよ!

 

 欲しいのは、かわいいウマ娘が苦しむ姿なんだからよお!

 

「で、確認なんだが――無理はしてないだろうな?」

 

「問題ありません。本日の自主トレーニングは3時間35分しか実行していません」

 

「いや、だいぶやってんだろ……」

 

「3分48秒後にスタミナ回復。このまま坂路トレーニングを続行いたします」

 

「やはり全然わかってないじゃないか。坂路トレーニングはもう切り上げたほうがいい。これ以上は疲労が溜まり逆効果になるぞ。1600m一本だけで今日はやめておけ」

 

「……オーダー確認。チャートを修正」

 

 わかっただろ? コイツはサイボーグウマ娘なんかじゃあない。

 

――どんなに虐待しようにも全て悦楽に変換できる生粋のドMウマ娘だッ! 

 

 そう、ミホノブルボンは超弩級のド変態なんだよ! 

 

 だって、ドM以外ありえねえだろ!? トレーナーの指令以外で体を痛めつける大バカ野郎はよお! 

 

 更に! 適正外の距離を走ろうとする茨の道を自らに課すなんざ、頭のネジがどっか飛んでしまっているに違いねえ!

 

 しかも、ほっといたら、いつまでも自らに虐待を加えているんだぜ、コイツ! 一体、造り上げた無表情の裏でどんな快楽を得てるのか、想像もできねえよ……!

 

「3分48秒経過。トレーニング、再開いたします」

 

「タイムはオレが測るから、正確なラップタイムを刻むことを心掛けるんだ」

 

「了解。オペレーションスタート」

 

 無表情のまま、再びターフを駆け抜けるミホノブルボンの姿を見て、オレは悔しさから拳を握りしめた。

 

 ああ、つまらん! つまらん! つまらん! まったくつまらん! 被虐体質のヤツが苦しむことは逆に体を労わってやることだ。

 

 せめてもの虐待がトレーニング内容の軽減しかできねえなんてよお……! 自分が情けなくて、悔しくて仕方ねえぜ!

 

 と、どうやったらヤツに虐待できるのか対策を練っている間にすぐにミホノブルボンは1600mを風を切り、駆け抜けてきた。

 

「また早くなったな。ほら」

 

「……自己ベスト更新。目標へまた一歩前進いたしました」

 

「いい調子だな。短距離からマイルまでなら、君に勝てるウマ娘はそういないはずだ」

 

「ですが、私の目標は“三冠ウマ娘”。まだ目標達成にはステータスが足りません」

 

 そういったミホノブルボンはほんの微かに無表情を崩し、一瞬不安げに瞳を曇らせた。

 

「……やはり、あなたも無謀だと思いますか? 中・長距離に適正のない私がクラシック三冠を制覇するのは」

 

 コイツのトレーナーはヤリ手のベテラントレーナーだ。G1で勝てるような数多くのウマ娘を見てきたからこそ、“正しいだけ”の判断ができる。

 

――ミホノブルボンのことを何もわかってねえから下せる判断だ。

 

 さて、どうするか。いかにドMといえども事細かに現実を突き付けて、ぐちゃぐちゃに歪ませることもできる。

 

 所詮、コイツはライスシャワーと同年代。ドMといえどもサイボーグでもなんでもねえただのかわいいウマ娘だしな。

 

 けどよお――それじゃあ真の意味での虐待とはいえねえし、何も面白くねえよなあ!

 

「オレは君の目標を否定はしない。君が実践してきた尋常じゃない努力を否定しない。君の目標は決して夢物語じゃない」

 

「……はい」

 

「だが、君の目標が叶うことはないよ」

 

「……疑問。根拠を提示してください」

 

「言わなくてもわかるだろ? オレの担当ウマ娘のライスシャワーが必ず君の目標を阻むからだ」

 

 そう、ヤツの夢であり目標をライスシャワーに潰させる。それこそが真の虐待であるッ!

 ミホノブルボンが夢を打ち砕かれた瞬間の喪失感、絶望した姿を間近で見てえ! 

 

 そのためには今以上の虐待をライスシャワーに与えていかなければならねえ!

 

 おいおい、オレって天才か? ライスシャワーもミホノブルボンにも同時に虐待できるなんて、一石二鳥すぎんだろ。

 

 おっ、明らかに無表情が崩れた。眉が数ミリ上がり、口元が引き締まったのが見えたぞ。クク、今更気づいたか! オレがお前の味方でも何でもねえ虐待を至高とするクズだってことをなあ!

 

「三冠ウマ娘になるのは、私です」

 

「いいや、ライスシャワーだ」

 

 クハハハ! 見てろ! 絶対にお前を真の意味で虐待してやるからな!

 

 

 

 

● ● ● ●

 

 ライスシャワーのトレーナーに出会ったのは、私が学園外でのミッション『トレーニング備品購入』を失敗間近の時でした。私が困惑していると察した彼が素敵な笑みを携えて、目的地まで導いてくれたのが始まりでした。

 

 次に再会したのは、私が独自のフローチャートによる肉体改造を行っている最中。

 彼は即時、私の杜撰な計画の問題点を修正。その場で具体性のあるフローチャートを提案。

 

 経験を積んだ優秀な熟練トレーナーなのかと推測しましたが、彼は外見年齢通りの若い新人トレーナーだと発覚。彼に対して、マスターに伝達された情報と私自身の目標を語ったところ。

 

「君のトレーナーの言うことは正しい。だが、スタミナは努力で補える。精神は肉体を超越するとオレは思っているよ」

「……同感です」

 

 その時にかけて頂いた言葉と雰囲気が私を育ててくれた父にそっくりでした。

 

 以降、自主トレーニング時に彼と遭遇する機会増加。その度にアドバイスを頂いてきました。指導ではないものの、彼のアドバイスは明確かつ的確で私の目標実現に多大な貢献を果たしてくれました。

 

 時には差し入れで練習中にもすぐに摂取しやすいゼリーと鶏肉・ハチミツ・納豆・くさやといった栄養価の高い食料を混ぜた特製ドリンクを作成していただいた日もありました。結果、彼は調理も一流だと断言できます。

 

  特に特製ドリンクは大変美味でございました。

 

 トレーナーとして優秀であり、大人の包容力と父に似た雰囲気を持つ彼に『好印象』を抱くのは必然でした。

 

――そして、ある日を境に彼が視界に入ると、自然と目で追ってしまうバッドステータス『散漫』が発生。

 

 視界の伝達情報から真剣な表情で自身の担当ウマ娘であるライスシャワーのトレーニングを見守り、時には激しい檄を飛ばす彼の姿の確認が取れました。

 

「フォームを乱すな! もっと足の回転を速めろ! 踏み込みの力も全然足りねえ! 一瞬たりとも気を抜くな!」

 

「は、はいっ!」

 

 不本意ながらトレーニングの鬼と噂されている私ですら凄烈(せいれつ)であると評価するトレーニング内容。ですが、そのトレーニングの中でもライスシャワーは指導する彼に応えるために全力を尽くしていたと思えました。

 

 彼もライスシャワーから決して目を離さず、常に改善内容を思案しているようでした。

 

 その時、私は視認してしまいました。かぶりを振って、厳格な表情に戻す前にライスシャワーの懸命な姿に満足気に微笑みを浮かべた彼の姿を。その表情パターンは私のログには存在しない心からの笑みだったと推測。

 

 担当ウマ娘であるからこそ、彼から授けられる『鞭』と『愛』。ああ、なんて――。

 

「……ッ」

 

 気づいたら、唇を痛みを感じるほど噛み締めていました。またしても、深刻なエラーが発生。判定結果……『嫉妬』?

 

「……ブルボン、どうした? 唇を切ってるぞ。少し入れ込み過ぎだ」

 

「申し訳ございません、マスター。直ちに修正を」

 

 正体不明のエラーに私はガラにもなく戸惑ってしまっていたようです。私のトレーナーであるマスターから指摘されるまで、全く気づかないとは。

 

 エラーが発生した日の夜。自主トレーニングに励んでいた彼と会った私。その時に発生したステータスは『高揚』でした。

 

 何故、彼と出会うだけでグッドコンディションになるのか解析不能。けれども、不思議と彼といるのは『心地よい』と脳内が判断。

 

 日に日に私に蓄積されたバグは溜まっていき、処理が困難になっていきました。

 

 しかし、バッドステータスを解消する方法を把握。解決手段は、彼に直接会うことでした。

 

 

● ● ● ●

 

 彼がトレーナー室から帰宅する時間が20時40分から20時58分の間。今日も私は彼が現れるまで、淡々と日々のフローをこなしていました。

 

 そして、予定通り姿を現した微かに疲労が顔に出ている彼に私は本日マスターから告げられた『現実』を吐露してしまいました。

 

「……やはり、あなたも無謀だと思いますか? 中・長距離に適正のない私がクラシック三冠を制覇するのは」

 

 サイボーグのような不要な感情を持たない機械なら、自分に絶対の自信を持つウマ娘なら決して発しない『弱気』の言葉を投げかけてしまいました。発言した後、後悔。彼に軟弱なウマ娘だと失望されてしまった可能性大。バッドステータス『不安』が発生。

 

 彼は私らしくない発言に少しだけ目を丸くした後、顎に手を当てて言葉を選んでいる様子でした。若干の間の後、彼はゆっくりと話し始めました。

 

「オレは君の目標を否定はしない。君が実践してきた尋常じゃない努力を否定しない。君の目標は決して夢物語じゃない」

 

「……はい」

 

 ……マスターだけではない。トレセン学園のトレーナーの方々が実現不可能と断言する私の目標を肯定してくれた歓喜から口が逆ヘの字に傾きかけるのを意識的に抑えました。

 

 父に相対しているときとは違う安心感と幸福。いつまでもこの感情を忘却せずにログとして保管しておきたい。けれども――。

 

「だが、君の目標が叶うことはないよ」

 

「……疑問。根拠を提示してください」

 

「言わなくてもわかるだろ? オレの担当ウマ娘のライスシャワーが必ず君の目標を阻むからだ」

 

 私の目標――夢の否定と共に見せた不敵な笑み。それは自身の担当ウマ娘への一点の曇りもない『絶対』の信頼でした。彼による暖かな感情の発露により、先程まで感じていた私の体内における心地よい熱が一気に喪失していく。

 

 すぐさま、歓喜と幸福に包まれていた私の心は一気に光の差さない暗闇へと引きずり込まれていきました。

 

 理解不能の感情と体の奥底から湧き上がってくる負のエネルギーを抑制せずにはいられない。

 

――何故、選定対象が私ではないのか。何故、彼に選ばれたのがライスシャワーなのか。私ならライスシャワーよりも、更なる指導(アップデート)を施せるというのに。

 

 支離滅裂な愚問により、感情の制御不能。致命的なエラーが発生。渦巻く感情の奔流を抑制しつつも、これだけは彼の前で宣言しておく必要があります。

 

「三冠ウマ娘になるのは、私です」

 

「いいや、ライスシャワーだ」

 

 

 あなたはこの学園内でもトップクラスの優秀なトレーナーであると、私の蓄積されたデータから独自判断。ですが、優秀な貴方でも認識すら不可能でしょう。

 

 解析不能。ですが、私が父と似て非なるあなたと接触したいと思案するエラーが生じているのを。

 

 理由不明。ですが、貴方と僅かにでも接触するのを期待して日々のフローチャートを遅延させているのを。

 

 精査不可。ですが、貴方との時間をかけがえのない貴重な時間だと認識していることを。手放す度に失意の底へと急降下していくことを。

 

 

――私には既にマスターがいるのにあなたに、あなただけにいつまでも指導してもらいたいと邪な想いがバグとして存在していることを。

 

 

 新たな目標を設定。彼の『絶対』であるライスシャワーを完膚なきまでに打倒。彼の『絶対』を塗り替えてみせます。

 

 そして、私というウマ娘を……彼のログの深奥に永遠に刻み付けてみせます。

 

 




知らないところで精神的な虐待を加えているクズトレーナー。なお、ミホノブルボンの強化アップデートにより真の意味での虐待は遠のいた模様。

関係ないですが、アプリ版のテイオーのメスガキ感、ほんますこ。独占欲も高いところもすこ。
曇らせ隊が横行しているのも、マジですこ。もっと流行れ。

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