ゴミでカスなクズトレーナーは今日も今日とてウマ娘を虐待する。   作:カチュー

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ウマ娘とは全く関係ないですが

今期アニメ「ひげひろ」の倫理観のアウトっぷりが半端なくて私は好きです。


#8 虐待をすべく、自宅に未成年ウマ娘を連れ込むヤバいトレーナー

 あー、バラードとかマジで気持ち悪くなるから勘弁してほしい。

 

 心が洗われる気がする? 冗談じゃねえよ。

 

 誰があんなお涙頂戴の作為が滲み出ている偽善の塊を聞かなきゃならねんだよ! 気色悪いったらありゃしねえ。

 

「お兄さま、大丈夫? 具合悪そうだけど」

 

「ステータス『不調』だと推測。私が常備している体調安定剤を摂取しますか?」 

 

 オレはトイレで胃液を吐き出した後、カラオケルームに戻った。

 

 すると、ヤツらが妙に心配そうにオレの顔色を伺ってくる。

 

……拷問である「うまぴょい」を強制されて、なお気遣える素振りを見せられるなんてな。

 

「気のせいだって。ほら、いつも通りのフツメンだろ?」

 

 いらぬ心配をかけるヤツらに両の頬に人差し指を押し付けて、ニカっと微笑みかけたらヤツらは顔を赤くして、視線を逸らした。

 

 そうだそうだ、調子に乗るんじゃねえ! 虐待者の鑑たるオレをもっと恐れやがれ!

 いっちょ前にウマ娘がトレーナーのオレのことを心配すんじゃねえよ!

 

――もっと、自分の身のことだけ気にしやがれ。

 

 

 ヤツらの認識を再度改めさせたところで、今日はこの辺で虐待は終わりにしてやろう。

 

 痛めつけすぎて、使い物にならなくなっちまったら本末転倒だ。

 

 飴と鞭は使い分けが重要だからな。

 

 

 後はボーナスタイムとして、オレには何が楽しいのか微塵も分からねえ「クレーンゲーム」をライスシャワーたちにやらせてやる。

 

 こういうのって、女の子は好きなんだろ? 知らんけど。

 

 てか、景品が欲しければ普通にネットとかで買えばよくないか? 時間も金もドブに捨てるクソゲーは見るだけでも苦痛なんだが……アイツらの頑張りに今日は我慢してやる。

 

 ライスシャワーはアームの力の弱いクレーンゲームに翻弄され、案の定オレに泣きついてきた。

 

 憐れなライスシャワーに横でアドバイスを出してやると、ようやく取れて尻尾を左右にぶんぶん振り回して大喜びしていた。

 

 一方、ミホノブルボンは機械類を触ると故障させてしまうという訳わからん言い訳でオレにクレーンゲームをやらせる暴挙に出やがった。

 

 オレを操り人形にしたミホノブルボンは試行錯誤しながら、微調整を重ねてとうとう目的のブツを入手した。

 

「あなたとの、初めての共同作業ですね」

 

 と、目尻を緩ませたコイツはやはりオレの天敵だと実感させてくるわ。

 

 

 ライスシャワーが白、ミホノブルボンが黒のクマのぬいぐるみを確保して満足そうに抱きかかえている姿を見る。

 

 うむ、一生理解は出来そうもねえがアイツらのリフレッシュになったことは間違いなさそうだ。

 

 クハハハ! 次の日からも容赦なく虐待が出来るってもんだな!

 

「今日は楽しかった! ありがとう、お兄さま!」

 

「あなたとのお出かけは大変よい刺激になりました。ありがとうございます」

 

「そりゃ、よかった」

 

 テニスまでは成功だったが、カラオケはオレのメンタルが貧弱なせいで失敗に終わってしまった。

 

 反省点をピックアップし、次は確実にプラン通りの遂行ができるようにならねえと。

 

「……ブルボンさんも今日はありがとね! ブルボンさんのおかげで、よくわかったから」

 

「それは私もです、ライスシャワー」

 

 虐待を受けたもの同士、仲良くなれたみたいだな。

 

 うんうん、良きかな良きかな。

 

 怒りを吐き出す場がねえと、軽度の虐待でも潰れかねないからなあッ!

 

 強引にミホノブルボンは付いてきたが、引っ込み思案のライスシャワーには同志となるウマ娘が必要だった。ある意味ではちょうどよかったのかもしれない。

 

 ひとりぼっちは寂しいもんな。

 

 このまま、ミホノブルボンと仲良くなってくれよライスシャワー。

 

 三冠ウマ娘というデッカイ夢を抱えているミホノブルボンに絶望を送るのがお前の役目でもあるんだからなッ!

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 一日を終えて狂気の虐待施設から脱出したオレたちは車に乗り、オレが暮らしているアパートへと向かっていた。

 

 さてさて、予定では外食をするはずだったんだが……何を血迷ったのか、アイツらはオレの手作り料理を食べたいと懇願してきた。

 

 せっかくオレがめっちゃ旨いと太鼓判を押している、スープがレンゲで掬えないほどのギットギト油マシマシ唐揚げラーメン店を紹介してやろうと思ったのに。

 

……ククク、唯一無二のオレの弱みを的確についてくるとはやるじゃねえか! 

 

 そう、料理だけはオレは何をやっても逆効果! 

 

 来る日も来る日も「うまい!」「おいしい!」とディスられ続けてきた。

 

 だがなあ……ミホノブルボンはもちろん、普段からオレの朝食を平らげているライスシャワーも知らねえ。

 

 夜のオレは文字通り、ひと味違うってことをな!

 

 ちょうど、来たる日の虐待のために取り寄せておいた食材が火を放つときが来たようだな……!

 

 

 現地に到着したオレはウマ娘二人を自室へと招き入れる。

 ライスシャワーは慣れた様子で、ミホノブルボンはゆっくりと丁寧に玄関で靴を並べた。

 

 この絵面、普通に考えたら明らかに未成年の女の子を自室に連れ込んでいるヤバイ奴なんだが、今のオレはトレセン学園のトレーナー! 何の問題もねえ。

 

 どこぞの女子高生を連れ込む危機管理のなってねえサラリーマンとは訳が違うんだよ!

 

 が、その前に汗くせえヤツらにはさっさと洗浄してもらわねえとな。

 

「汗かいただろ? 風呂はもう遠隔操作で沸かしてあるから先に……っと、ミホノブルボンは着替えは持ってきているか?」

 

「はい。替えの下着は準備しております」

 

「それならいいんだけどさ……」

 

 上は事前に汗をかくからと持ってこさせたからわかるんだが、下着も一緒になんて妙に用意周到だな……

 

「しかし、疑問。何故、ライスシャワーには聞かないのですか?」

 

「ああ、それはな……」

 

「ライスは朝練終わったら、いつもお兄さまの部屋で着替えをしてから学園に行くの。ある程度の私物を置かせてもらってるんだ」

 

「……なるほど、承知いたしました。朝練後に、ですね」

 

 説明しようと思ったら、先にライスシャワーが答えた。

 

 ライスシャワーには彼女専用の収納スペースを用意してある。ヤツの私物を保管するということは、間接的に人質に取っているわけだ。

 

 私物を取り返すにはオレの家に嫌々ながら来る必要がある。どんなに辛くてもお前はオレから逃げられねえんだよ! クックックク!!

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 風呂に入った順番は先にミホノブルボンで続いてライスシャワーだった。どうやら、仲良くジャンケンをして決めたようだ。

 

 ライスシャワーもミホノブルボンも何か手伝えることはないかと聞いてきたが、やんわりと断っておいた。

 

 今は二人仲良くニュース番組を視聴中だ。

 

 

 

『速報です。サイレンススズカ選手が約1年の休養期間を経て、本日より復帰することが表明されました』

 

『これまで無敗。皐月賞、ダービーを難なく制した二冠ウマ娘がいよいよ沈黙を破り、本格参戦です。菊花賞前での怪我の発覚さえ無ければ、と悔まれたファンも多かったでしょう』

 

『異次元の逃亡者の異名を持つサイレンススズカ選手。これからの活躍に期待が高まりますね!』

 

 

 

「サイレンススズカ先輩、とうとう復帰するんだ……」

 

「正確なラップを刻むだけではなく、最終直線で差しウマのように更に加速するあの人の走りは同じ逃げウマからすると『化け物』としか思えません」

 

 

 ウマ娘は人間よりも耳がいいからテレビの音は小さくして視聴している。オレには内容は聞こえて来ねえが、アイツらが共通の話題で盛り上がっているのは確かだ。

 

 

 よしよし、このまま黙ってテレビを見てくれ。絶対にこっちに来るんじゃねえぞ。

 

 もともと、飯を作る時に他人にウロチョロされるとイライラするタイプだし……なんてったって調理過程を見せるわけには行かねえからな!

 

 何故かって? 知られちまったら逃亡される危険性が高いほどの劇物料理を今日は作るからだよ!

 

「よっし! 出来たぞ~! 待たせたな!」

 

 オラッ! これで完成だ! この飯を喰らい、死の抱擁を受けなァ!

 

 

 初陣を飾るのは「なめこと納豆とおくらの激辛にんにくネバネバパスタ」だぁ!

 

 女の子が嫌う最悪極まりない口臭の元であるにんにくを刻み、鷹の爪をふんだんに入れてパスタに絡めることで激辛ペペロンチーノ風にまずは仕立てる。

 

 で、くっせえひきわり納豆と喉に纏わりつく茹でて柔らかくなったおくらとなめこを混ぜて混ぜて混ぜまくった一品ッ!

 

 湯気と同時に立ち込める臭気とぬめぬめとした触感は吐き気を催さずにはいられねえはずだ!

 

 お次は「ブルーチーズとゴルゴンゾーラのジェノベーゼ!」

 

 まずは匂いの強烈なブルーチーズとゴルゴンゾーラを悪臭に鼻がイカレそうになりながらも刻んで、温めることでドロドロに溶かしておく。

 

 それにオレ自らが実験体となり厳選した強烈な香りを放つバジル、セロリ、パセリの3種をミキサーに投下する。

 

 そして、エイリアンの血液のような緑色となった液体と溶かしたチーズと絡めることであら不思議!

 

 作ったオレですら涙目になるほどの視界に入れた瞬間に食欲が無くなる劇物料理に大変身だ!

 

 

 で、余ったクッソ青臭いバジルソースやベーコンやチーズを使ってポテトサラダを作成ッ! 更にはにんにくとコンソメでスープでもう一品追加ァ!

 

 おまけにパセリとセロリのスムージーをドバドバっと飲み物として補完!

 

 

 クク、悪いなあ。オレは無駄使いは一切しない主義なんでな!

 

 

 ここまでの最低最悪の力作。今日こそは、今日こそはきっとッ!

 

 

「……今まで、食べてきたパスタとは何だったのでしょうか」

 

「ううっ、うう……!」

 

 暗い顔をし出したウマ娘ふたりを見て、オレはほくそ笑む。 

 

――勝った! 今日こそは、勝ったんだ!

 

 ほら、全トレーナーの諸君! ご覧あれ! 

 

 おもてなしをしてやったオレの目の前だから、飯を吐き出せずにぷるぷると痙攣し始めたウマ娘たちをよ!

 

 コイツら、余りにつらくて泣き始めたぞ! 

 

――ん? 泣き始めた? んん? んんんんん???? おかしいなあ、このパターンって……?

 

「もう、あなたの作ったパスタ以外は口に出来ません。食事で涙を流せることが捏造ではないと認識……」

 

「お兄さまの料理を食べて、おいしすぎて涙が止まらなくなるの何回目だろ……!」  

 

 嘘だろ? と思いオレもネバネバパスタから口に入れてみるが……

 

「……ウガッ!?」

 

 ――即座に顔が青ざめるほどの破壊力だった。

 

 や、やはり調理過程は間違っていないはず!

 

 アグネスタキオンにも「ああ、君の料理は最低だよ。実に、実に最低すぎるッ」とお墨付きを貰ったはずなんだが……!

 

 試食段階でも鼻をすすりながら、自らが残虐料理のモルモットになってまで協力してもらったアイツの努力を無駄にしてしまったッ……!

 

 クソがぁああああああああ!! 次は、次こそは絶対に真の意味で泣かせてやるからな!

 

 

 

 

 

 

 

● ● ● ●

 

 

 

「スズカ、足の調子はどうだ?」

 

「グルーヴ、併走ありがとう。今のところは大丈夫そう」

 

「そうか、それは良かった。だが、あまりハメを外し過ぎるなよ。お前はまだ大怪我から復帰したばかりなんだからな」

 

「そうね。気を付けておくわ」

 

「……スズカ。前から思っていたんだが、少し変わったな」

 

「え? そう、かしら?」

 

「以前よりも表情が明るくなったし、憑き物が取れたようにスッキリとした顔をするようになった」

 

「ふふ、グルーヴは私のことをよく見ているわね。もしかして私のこと、好きなの?」

 

「そ、そういうところもだ! 前は人をからかう性格をしていなかっただろ!」

 

「ふふ、ごめんなさい。でも、そうね。たぶん、私が変わったように見えるのは――ケガをしたことで私にとって一番大切なことを思い出せた(・・・・・・・・・・・)から」

 

「なんだ、その大切なことって」

 

「それはね……」

 

「それは?」

 

「それは……うーん、やっぱり秘密にしておくわ」

 

「おい! さんざん溜めておいてそれか!? 中途半端に止められたら気になってしまうではないか!」

 

 

 




クズの部屋に私物を持ち込むことでマーキングをするライスシャワー。

後から入ってきた新参者にしっかりとマウントを取っていく。

尚、新参者もまたライスシャワーが口を滑らしたせいで良からぬことを企んでいる様子。

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