小さな前線基地で起こった、提督と艦娘の葛藤。


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今朝、日の出前に起きて一気に書き上げたデース。
脳内わやくちゃデース。


届かなかったラブコール

沖縄本島にほど近い、南西諸島のとある小島。そこには

かつて深海棲艦を迎撃するための基地が置かれていた。

建屋を始めとした設備は大部分が朽ち果て、周囲には

雑草が生い茂り、最前線拠点の面影は既にない。

「提督…なぜ私達を残して逝ったのですか…?」

廃墟と化した施設の前で呟く女性。香取型練習巡洋艦

一番艦・香取であった。

 

20XX年。

「まだ遅いぞ皐月! 敵はお前の都合に合わせて攻撃など

しないんだ、もっと周囲に気を配れ!」

「はいっ、負けないよっ!」

「アクィラ! 爆装と雷装の見極めを妖精さんばかりに

頼るな!」

「だってだってぇ~、追いつかないんですぅ~!」

「香取! 回避が間に合わないなら申し出ろ! 大和型や

長門型くらいの主機に換装してやるし、必要に応じて

シールドも作ってやる!」

「なっ!? 鈍足だからって馬鹿にしないでください! 」

ここ南西防衛根拠地では連日猛訓練が続いていた。所属

艦娘は二十名、立地と面積を鑑みればキャパシティも

限界である。

そんな根拠地に新しく着任した一等海佐──二つ名を

『死神に嫌われし男』──に艦娘達は恐れおののいた。

 

艦娘が顕現する前、提督は艦長として護衛艦に乗り組み

深海棲艦と対峙していた。

当時から『敵には最新鋭の兵器が通用しない』のが

定説であり現実であった。

しかし彼はあっさり覆した。

『通じないなら工夫すればいい。人型深海棲艦がいると

いうことは人間と同じツボがあるはずだ』

90式対艦ミサイル及びシースパロー対空ミサイルを

全て無線誘導式に改良し、更に高精度カメラを搭載

したドローンを駆使。

“敵艦主砲の付け根、砲口または砲身を狙撃”

“対人型なら首、脊椎、手首を集中攻撃”

などという究極的机上の空論を実践した。

撃沈こそ少ないが多くを戦闘不能に追い込んだ提督に

幕僚本部はぐうの音も出せなかった。それもそのはず、

オンライン生中継で見せつけられたのだから。

同戦法は直ちに全国の出先に通達されたが芳しい戦果が

挙がることはなく、たちまち幕僚本部は手詰まりに

陥った。

好事魔多しで、ある作戦中に提督座乗の護衛艦の艦橋が

敵の砲撃を受けた。提督は一命を取り留めたが左腕を

失う。狼狽する自衛隊。そこに現れたのが艦娘だった。

報を知った提督は何を思ったか、無理矢理退院すると

幕僚本部に直談判をかまして近々新設される根拠地へ

転属したのである。

艦娘達は当初、提督の風貌に驚きを隠さなかった。

顔面に火傷を負い包帯をグルグル巻きつけた隻腕の男が

指揮を執るのだ。無理からぬことといえよう。

しかしそれも杞憂に終わった。火傷が快方に向かうのに

比例して、訓練・演習・出撃を通して彼への信頼が

高まった。また提督が自分達の退役時期を見据え、空き

時間を利用した勉強会を頻繁に開いたことを機に彼を

異性として慕う者も出てきた。香取もそういった

LOVE勢の一人である。

幕僚本部も提督の行動を訝しんだが、彼に鍛えられた

艦娘の活躍ぶりに舌を巻いた。その後、幾度かの異動は

あったものの、彼の指揮する艦娘は総じて高い能力を

発揮。『困った時の南西根拠地』『高みを目指すなら

南西へ』と評された。

 

順風満帆かと思われた根拠地であったが、所属艦娘に

芽生える不満を幕僚本部は知る由もなかった。

榛名「はぁ…なぜ提督はケッコンしてくださらない

のでしょうか」

サラトガ「わからないわ…サラもお手上げです」

巻雲「司令官さまはご自分の体のことを気にしてる

からでしょうか? 先日異動した皐月ちゃんもわんわん

泣いてましたし」

嵐「そのことだけどさー、埒が明かないから司令に

聞いてみたんだよ俺。そしたら

『私のことなんぞ気にするな。これからはお前達が

この戦の真の姿を伝承し、世界に広めていってくれ 』

だってさ」

由良「提督さんらしいっちゃらしいわね…でも何で

あんなに頑固なのかしら。香取さん、秘書艦よね。

手がかりとかないの?」

香取「…探りを入れたことあるけど『俺はお前らの

誰ともケッコンする気はない。指輪? そんなもん、

本部に突き返してやったわ。それでもまだケッコンを

迫るというのなら、秘書艦のお前であろうと重営倉に

ぶち込むぞ』って。表情一つ変えずに言うものだから

もう…」

山風「袋小路だね…」

提督の本心を掴みあぐねる艦娘達。その間隙を縫う

ように、運命の日が迫っていた──

 

電探妖精「西南西より深海棲艦! 数…およそ200!?

かなりの速度で根拠地に向かってます!」

まるで予期したかのように提督が発令した。

「やはり、な…総員、艤装を装着して北桟橋に集合!

妖精さんも全員、各艦娘に分乗! 全施設の操縦系を

執務室へ回せ!」

「何ですって!? 提督、説明してください!」

香取が素っ頓狂な声を上げる。

「早くしろ香取! 質問は許さん!」

「こんな理解不能な命令、承服できませんよ!」

その時、執務室に残った数名の副官妖精が叫ぶ。

「敵空母群、艦載機発進! 少なくとも500!」

「敵戦艦の射程距離到達までおよそ30分!」

提督の顔に明らかな焦りが浮かぶ。

「くそっ…ギリギリか!」

「提督、どういうことですか!?」

香取は怒りを露わに詰め寄る。いつの間にか扶桑や

グラーフといった第一艦隊の面々も集まっていた。

提督に詳述する余裕はない。声帯も枯れよとばかりに

怒鳴った。

「ごちゃごちゃ言ってないでさっさと行きやがれ!

俺はこの日のためにここに来たんだ!!」

今まで声を荒げたことのない提督しか知らなかった

香取達が一瞬怯む。その隙を突いた提督は彼女らを

外に追い出し施錠する。

「提督、提督っ…!」

香取達が泣きながら扉を叩く。提督は扉の内側に

背中をもたれさせて静かに言った。

「お前らは生きろ…生きて深海棲艦を倒すんだ…

そして人として生きて、この戦の本質を未来に伝え、

この国を導いてくれ…俺の最期の命令だ」

「嫌…嫌よぉ…私達はみんな、貴方を愛している

のに…っ!」

「…ありがとよ、香取。あの世への土産話としては

バッチリだぜ♪」

「てい、とく…ああああぁぁっ!!」

香取の嗚咽が執務室に木霊して、次第に小さくなって

いった…

「皆さん、北桟橋に向かったようです」

副官妖精が扉の外を確認して言った。

「了解。君らも早く行け…佐世保、鹿屋、宿毛、佐伯の

各基地には連絡してあるからな…メンバーの振り分けは

任せる」

「提督さん…」

「ほら、急いだ急いだ」

窓際に待機させたカ号観測機に副官妖精を乗せると、

観測機はゆっくり上昇し、やがて見えなくなった。

「さて、殺りますか!」

本棚をずらして現れたパネルを操作して狙いを定める。

「測的完了。自動追尾セットオン…射程距離まで5分」

大型ディスプレイに、戦艦・空母を中心とした標的用

カラーが点灯した。

「艦娘がいない時分からケチつけてやったからな…

気持ちはわからんでもないが短慮が過ぎるぜぇ?

こんな場末の前進基地によwww」

スピーカーから合成音声が流れる。

「カウントダウン開始シマス。5、4、3、2、1」

「全弾発射ァ!」

 

遠くで爆発音がした。数秒後、別の方向からも。

輪形陣で大海原を駆ける20名の艦娘は一斉に停船、

音源の出所を探す。

「音源、確定しました…最初は1時方向、根拠地…

次は11時方向、深海棲艦の大艦隊…です」

双眼鏡を持つ雪風が涙声で報告する。

「ていとく…ていとく…っ!」

大粒の涙を流し、その場に崩れ落ちる香取。

「香取さん、泣いちゃダメよ…」

香取の前に跪いて抱き寄せる雷も泣いていた。

「司令…司令…っ!」

「なんで…なんでだよ提督っ…!」

秋月が両手で顔を覆い、涼風は泣きながら根拠地の

方角を睨んだ。他の艦娘も全員泣いている。

「ヘイ皆サン、いつまで泣いてるデース!」

一際大きな声で金剛が叫んだ。そのボリュームに

誰もが金剛を見やる。金剛も涙を拭おうとしない。

金剛とて泣き崩れたかった。だが現状は決してそれを

許してくれない。だからこそ勇気を振り絞った。

「テイトクは自分の命を以て私達を助けてくれまシタ。

私達はテイトクから重い任務を拝命しまシタ。それが

何かわかりますよネ!?」

しばしの静寂。沈黙を破ったのは龍田である。

「生きて…生きて…深海棲艦を倒し、この戦争を正しく

未来へ伝えること…」

「Yes! ならば香取! 艦隊総旗艦の貴女がすべきコトは

何ですカ!?」

金剛の檄を受けた香取がゆっくりと立ち上がる。

「はい…ひっく…」

涙に濡れた眼鏡を清め、再びかけ直す。また涙が溢れ

そうになるが懸命にこらえる。

「まずは、どこに向かうか決めましょう。いきなり

押しかけても受け入れてもらえませんし」

「後方より、カ号接近! 副官妖精さんが搭乗している

模様!」

上空を哨戒警備中のホーネット戦闘機隊からの通信。

「ホーネットさん、カ号の護衛を。あきつ丸さんは

収容をお願いします。その後、副官妖精さんを連れて

来てください」

「Yes sir!」

「了解であります!」

「他の皆さんは周辺の警戒を」

「「「はいっ!」」」

副官妖精さんから提督の言伝を聞いた艦隊は速やかに

四グループに分かれ、各々の目的地に舵を切った。

『また会いましょう』

と誓いを交わして──

 

数年後。

香取は残骸へと姿を変えた根拠地の前に立っている。

(提督…今なら理解できます。貴方は私達を一騎当千に

したかったのだと)

開戦初期から現在に至るまで、彼我の戦力差はかなり

縮小させることができた。しかしそれは正に綱渡りとも

言える毎日。小さい綻びが元で、いつ離されるか予測が

つかない。

故に提督は試行錯誤を繰り返し、南西根拠地を横須賀や

呉、佐世保クラスの大規模基地に匹敵するまでに育て

上げたのだ。

提督の最終命令に関しては幕僚本部内でも未だに賛否が

確定していないという。

『相応の力を持っているのだから援軍到着まで支える

ことができたはずだ』

『能力があっても200対20では分が悪い。最も近い鹿屋

から緊急出動をかけても間に合うか疑念が残る』

そんな議論など、香取にはどうでもよかった。提督が

己が命を賭して自分達を育て、守ってくれた事実が

全てであった。

だからこそ知りたかった。どうして彼は今際の際に

自分達を拒否したのか。少なくとも彼は自分達に対し、

恋愛感情に至らなくとも仲間意識的な好意を寄せて

いた。いくら考えても腑に落ちなかった。

「香取さーん!」

息せき切って青葉と古鷹が走ってきた。二人は戦線が

やや安定したこの期を利用して幕僚長にオンラインで

面会を申し出ていたのだ。

「青葉さん、古鷹さん…」

「わかりましたよ、提督の真意が。青葉、お願い」

「了解です…ただし」

青葉は懐からボイスレコーダーを取り出すが、再生を

躊躇っている。

「今から流す音声はここにいる三人だけの秘匿事項に

して欲しい…との幕僚長のお言葉です」

意味がわからなかったが、香取も同意した。

「では…」

青葉が再生ボタンを押した。

 

実は提督は既婚者でな、細君と共に細君の実家へ

里帰り中だった。その時、運悪く深海棲艦の空爆に

遭って…細君のお母様は破片で腹をえぐられて即死、

細君も首を吹き飛ばされ同じく即死。提督も重傷を

負ったが助かり、彼の体には無数の傷痕が残った。

だが提督の心の傷は深くてな…面会を一切受け付け

なんだ。推測の域を出ぬが、非戦闘員…ましてや己の

家族が眼前でむごたらしく殺されてみろ。葛藤で

収まればいい方だ。

そんな時、君達艦娘が出現した。後は君達も知っての

通りだ。これもまた推測だが、君達は彼に否定されたと

思ってはいないか? 香取君の着任から亡くなるまで、

彼は全く変わらなかったか? そうではないだろう。

恐らく非業の死を遂げた家族の二の舞を避けたかったの

かもしれん。あるいは君達と結ばれることは家族への

裏切りと邪推されかねんと思ったか…同時に大切な

戦力を無駄に損耗しないように。

現に彼は、ここに来ると君達を褒めちぎっていたよ。

君達艦娘は兵器であると共に人間だと私も思っている。

彼を愛しているなら、彼の想いを常に心に秘めていて

くれ。

いずれ君達も我々も代替わりを迫られる日が来る。

想いを次の世代に繋いでくれ──

 

「提督…提督っ…貴方って人は…!」

香取は両手で顔を覆いむせび泣く。

「司令官…っ」

「提督…っ」

青葉も古鷹も流れ落ちる涙を拭おうとしなかった。

 

どれだけの時間が過ぎたのかわからない。

ようやく涙を拭いた香取が、自分に言い聞かせるように

呟いた。

「提督、香取は誓います。貴方の想いを胸に戦うと。

そして…平和を取り戻します」

「青葉、誓います。青葉の心は司令官と共にあり、

司令官と共に戦います」

「古鷹は誓います。提督のご遺志を継ぎ、未来へ想いを

繋ぎます」

 

『頼んだぜ…』

穏やかな風が、三人の頬を優しく撫でた。

 

艦!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




私のような凡人にも天啓キタ──(・∀・)──!!
しかしこれで打ち止めでしょうね(笑)

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