東方友戦録   作:彗星のシアン

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何やら用事のある椛を見送り、友希・にとり・文の3人は妖怪の山の獣道を進む。目的地は山の山頂にある守矢と言う名の神社だと話すにとりだが、登山をするにはどうにも苦労が予想される。友希の思いなど意に介さずといった様子の妖怪2人は意気揚々と歩を進める。その先にかつてない窮地が待っているとはつゆ知らず・・・。


第26話 なぜ神の怒りを買ったのか

 見渡す限りの緑。人間のために作られたという林道も申し訳程度で、獣道のように草木に浸食されつつある。

 今友希たちが向かっているとある神社は、妖怪の山の内部に存在するにも関わらず人間が参拝することが可能らしいが、だからと言って全く妖怪に襲われないわけではない。

 しかも手入れがあまり行き届いていないこんな道では誰も通りたがらないだろう。

 その証拠にまだ昼であるというのに薄暗く湿っぽい、まるで樹海の中を歩いているような気分になるのだ。

「ほんとにこの道であってるのか、にとり」

「あってるよ。楽じゃないけど確かに守矢神社に続く旧道だから、我慢して」

 どうやら目的の神社の名は守矢神社と言うらしい。しかし友希が気になった箇所はそこではない。

「いや、旧道ってことはどこかに新しい道があるってことだろ⁉ なんでそこを行かないんだよ!」

「そんなに語気を荒げられても仕方がないんですよ。守矢神社までのロープウェイは今は河童によるメンテナンス作業中で、行っても使わせてもらえない状況なんですから」

「ロープウェイがあるのか・・・。なんか急に近代的だな」

 確かにそんな便利なものができているのなら、わざわざ足で妖怪の山を登ろうなんて大着者は現れないはずなので、この旧道の荒れようも納得がいく。

 ・・・いや待て。歩いて、山を、登る⁉

「俺たちこれから歩いて山を登るのか⁉」

「いいんですよー、私なんか飛べちゃうので。置いて行っても」

「いやいや、山って言ってもあれは無理あるだろ⁉ 富士山級じゃねぇか! てか文は勝手にしろよ」

 そう、目の前にそびえたつ山はとてつもなく巨大で、歩いて登っていたのでは日が暮れてしまいそうなのだ。

 友希自身、生まれ育った地の山に何度か登ったことがあるので山登りの経験自体はあったのだが、いかんせんもう何年も登っていないので体力的に不安が残る。

「大丈夫だよ。今見えているのは妖怪の山全域を見渡した部分であって、実際はもっと緩やかな所も多い。それに参道もしっかりと作られているから、里の人間が日常的に登れるくらいは問題ないよ」

「う~ん・・・」

 まさか真昼間から登山を開始する羽目になるとは。

 紅葉に燃える眼前の大山を仰ぎながら、重い足取りを引きずるように歩を進める友希。

 また当然ながら自然の山は野生動物の宝庫でもある。

 野獣よりも恐ろしい妖怪と一緒に肩を並べ歩いているのだから、何も恐れることはない。しかし人間のための環境が整備されている外の世界とは違い、ここでは当然のようにその野性を垣間見ることもざらだ。

 今、道を行く三人の目の前にはまだ子供のイノシシ、いわゆる『うり坊』の姿があった。それも前足から赤い液体を滴らせて。

「・・・こんなもんかな? 初めてだからよくわかんないんだけど」

「う~ん、巻けてはいるし緩くもないから大丈夫じゃないかな」

 友希はにとりからゴーストドライバーと白いアイコンを受け取り仮面ライダーゴースト ナイチンゲール魂に変身、応急的にだが包帯で手当てを施した。

 外の世界ではよく野生のイノシシには関わるなだとか、自然界に人間が干渉するのはいけないことだとか耳にしていたが・・・。

「これはさすがに、ほっとけないよなぁ」

 いくら何でもこの可愛さは反則である。もしこれを放っておける人間がいると言うのなら正気を疑う。

 それに今はにとりと文もいる。何かあっても友希一人でいるよりは安全だろう。

 そんなことを思っていると、緊張が解けたのかぎこちなく起き上がったうり坊はそそくさと森の中へと消えていったのだった。

 一瞬変身を解いた友希の方を見つめたような気がしたが、多分それは自意識過剰だろう。

「なあにとり、あれってもしかして妖怪にやられたとか?」

「それは断定できないなぁ。そういうときもあるし、単に動物同士の縄張り争いや事故にあったって可能性も十分にあるから」

 普通に考えればそうだ、何も妖怪ばかりが原因ではない。

 幻想郷に来てからもう三カ月は立つだろうか。この世界の実情や力関係は身に染みて分かってきていたし、この場が妖怪が仕切る縄張りであるということもあってか、無意識に警戒心が高まっているのだろう。

 隣にいるのは二人とも妖怪であるというのもまたおかしな話だが。

「済みましたか? それでは先に進みましょう!」

 とはいえ他の動物のことを心配しているのは友希とにとりだけで、文は端の木にもたれかかりながらずっと手に持った手帳とにらめっこをしていた。

 さしずめ「記事にならない」とか「面白くない」とか、文らしいと言えばらしいそんなことを考えているに違いない。こんな身近に正気を疑う者がいたとは。

 文が先頭を切っているのは少々気に食わなかったが、こんな道中で止まっていてはすぐに日が暮れてしまうのは事実。渋々と二人は足を動かした。

 

 

 

「おお、あれが!」

あれから山を登り続けること30分程度、森林を抜けて草原が広がる開放感のある道へと出た友希一行。

そしてその先には、言っては悪いが博麗神社とは比べ物にならないほどに立派な大社が厳かにそびえているのが見える。

 さらに近づいて見てみるとその豪勢さがよりよくわかった。

 非常に鮮やかな鈍色を発する瓦、見ただけで年季と強固さがうかがえる極太の木の柱、きれいに整備された石畳とその周りの砂利。

 極めつけは外の世界でもそうお目にかかれないであろう巨大なしめ縄が、賽銭箱の真上辺りにド~ンとかかっているのだ。

「おお~・・・」

 あまりのオーラに息を漏らすしかない友希。霊夢がいつも参拝客と賽銭の少なさで嘆いている理由が、何となくだが分かったような気がした。

「・・・でも、人がいないようだけど?」

「どうしたんでしょうねぇ。いつもは必ず誰かがいるのに」

「おかしいな、ちゃんと手紙で連絡はしてあるはずなのに・・・」

 今このご時世に手紙なんて・・・とは思ったものの、幻想郷には携帯はおろか電話線すら通ってないので手紙が最も確実な通信手段なのだろう。

 そしてその管理をしているのは他でもない、情報網を網羅している鴉天狗の生業なのだそう。

「ねえ~、天狗の仕事はどーなってんのさ?」

「なぜ失態を犯しているていで話を進めるんです⁉ それに郵便は私の仕事ではありません、知っているでしょう!」

 やはり真っ先に疑いの目を向けられたのは鴉天狗の文だ。しかしこればかりは文の信用の無さが招いた自業自得なので、友希は特に言うこともなく周りを見渡す。

 神社の周囲は切り立つ岩山で囲まれているものの暗くはなく、むしろ岩肌に光が反射して非常に明るい。

それどころか清々しい風が山の間を吹き抜けてこの神社に運ばれているおかげで、開放感に拍車がかかって居心地がすごく良く感じる。

 あまりの心地よさに心を奪われ、友希はふと目をつむってみる。

が、その気分を消し去るように、どこからともなく声が響いてきた。

「その手紙とやらは、これの事かい?」

「えっ・・・⁉」

 静かに自然に耳を傾けていた友希には、意外にもこの声の主の居場所がすぐに分かった。

 見上げる巨大なしめ縄よりももっと上。瓦屋根の最も高いところに日光に照らされて何者かの影が差していた。

「あ、あなたは!」

「えっ、誰?」

 反応から察するに文とにとりには面識があるようで、二人とも大口を開けて恐々粛々といった様子。

 しかしながら当然友希には誰だかさっぱりで、別の意味で大口を開け呆然と見つめるしかなかった。

「ふっ・・・、貴様が紫の言っていた男ね」

 紫。またその名前かとふいに眉間にしわを寄せる友希。

 いつも何やら重要な場面に聞く名前だ。それでいてこの幻想郷に来てからは一度たりともその姿を目の当たりにしたことはない。

 話が早くなるのは友希としても助かるのだが、それ以上に名前や噂だけが独り歩きしていることに多少不安も覚えていた。

 「紫」と言う名前に対する友希の憶測のように漠然とした情報だけが言い伝えられる場合、どうしても分からない部分は受け取り手の都合のいいように想像されがちだ。

 また想像は正の方向だけでなく負の方向に働くときの方が多い。

 負の方向とはすなわち脅威に対する不安。伝わるうちに分からない部分が脚色され、もしや自分に害を及ぼす存在なのではないかと思ってしまうものだ。

そうなってしまえば危機感は暴走・増殖を繰り返しどんどん膨らんでゆく。そしてなかなかその意識を覆すことは難しくなる。ここまでが友希の経験上の知識。

 では今回の場合はどうか。

「よかった、ちゃんと届いていて。彼が書いてあった人間です」

「ああ、我々の平穏を脅かす存在。我々の敵・・・」

「えぇ・・・」

 まさかの後者、それもはっきりと敵であると意識が根付いてしまっている。最も危惧していた事態だ。

「いやいや、違いますよ⁉ おいにとり! 一体なんて書いたんだよ⁉」

「いや普通に盟友を紹介したいって書いたよ⁉」

「【速報】里を守るヒーローは実は幻想郷の敵だった⁉ っと」

「「書いてる場合か!」」

 いつもの調子で変な記事を書こうとする文を二人がかりで制止する。

 そんな中、屋根の上の人物はゆっくりと浮遊し始め、降臨するようにゆっくりと地に降り立った。

 光を全身に受けあらわになったその姿は、紫色の髪をなびかせ紫色の衣装に身を包んだ女性。しめ縄をあしらった装飾や服の模様などを見て何とも偉大そうな感じがするのだが、それ以上にそこらの力自慢の男より大きく見えるのはなぜだろう。見た目にも随分とがっしりした印象を受ける。

 そして表情からは今にも襲い掛かって来んばかりの険しい感情が読み取れた。

「貴様のようなどこの馬の骨とも分からん男に、ウチのかわいい早苗はやらん‼」

「ああ、何か勘違いされてません⁉」

「問答無用っ!」

 友希の言葉に耳を貸すことはなく、にとりの発言を待とうともせず、ゆっくりとだが流れるようにその拳が友希めがけて放たれる!

「うおぁぁっ!」

 咄嗟に友希は横に転がり攻撃を回避する。

 普通の人間ならば当然の反応だが、何やら濡れ衣のこの状況で自己防衛を図ったということは、すなわち半ば罪を認めていると思われても仕方がないということに友希は直後気が付いた。

 意外にも女性は攻撃が外れたことに腹を立てた様子はなかった。むしろ非常に穏やかに体勢を立て直しゆっくりと友希を睨みつけてきた。

 目を合わせているだけだというのにとんでもない威圧感である。次は何をしてくる? なぜそこまで怒りを自分に向ける? 睨まれているだけで心臓が締め付けられているような気分に陥る、まるで新手の拷問を受けているような気分だった。

 だがそれも長くは続かない。

 急にグッと空気が張り詰めるのを感じた瞬間、女性の周辺に突如として光弾が次々と出現、気迫の雄たけびと共に一気に四散する!

「はあぁっっっ‼」

「これはまずいっ!」

 ここで真っ先に逃亡を図ったのは、なんと先ほどまで冗談を飛ばすほど余裕があった文だった。

 強烈な閃光、津波のように押し寄せる弾幕の壁、そして何よりそれはもはや人間の目で反応できるものではなかった。

 驚異の弾幕は一瞬にしてあたり一面を吹き飛ばし、先ほどまでの美しい景観が嘘のように土ぼこり舞う荒れ地にしてしまった。

 とはいえさすがに考えがあったのか大事な本殿は綺麗に避けられていた。と言うより、本殿に接触する前に弾幕が消え失せたかのような痕跡が残っている。

 文は持ち前のスピードで、にとりは早急に甲羅からシールドを展開して身を守った様子。

そして友希はと言うと、ばらばらにはじけ飛んだものの体を水に変えることで何とか難を逃れていた。

しかも今回に関しては人間に反応できなかったことが逆に功を奏していたと言える。

なぜなら反応が遅れたことで体が緊張して生身に戻ることなく水の状態でいられたからだ。

これがもし下手に構えでもしていたらと思うと身の毛がよだつ。

「ちょっと落ち着いてくださいって!」

 にとりが得体の知れない彼女に会話を試みようとする間に、友希はすぐさま文のもとへと駆け寄る。

「おい大丈夫か⁉」

「ええ、何とか・・・」

 文も意表を突かれたのか息が切れて顔色も悪い。どうやらにとりの交渉もうまくいかないようだ。

「って、おいおいおいぃぃぃ‼」

 友希は自分の目を疑った。

 いったいいつどこから持ってきたのか、そんじょそこらの岩山よりも遥かに大きい巨大な柱が太陽の光を遮断しそびえている! それも紫の彼女は片手で持ち上げ構えているのだ!

「そんな馬鹿な! なんでそこまで⁉」

 たまらずにとりは友希に向かって全力で疾走する。

「おいどうなってんだこれ⁉ 何なんだよあの人はぁ⁉」

「人ではありません・・・。彼女は、神です!」

「・・・はぁ⁉」

「砕け散るがいい・・・」

 混乱する感情に任せて言い合っているうちに行動は開始され、そしてすぐさま終わりを迎える。

「盟友! これを!」

「・・・っ!」

 気づかぬうちに近寄ってきていたにとりからまたしてもアイテムが手渡された。

「現状ではこれしかない!」

 この状況では言っていることを理解することはできなかった。

 しかし友希も理解しようとは思わない。一刻も早くこの状況を打開する必要があるから。

 早く仮面の安心を得たいと、心の底からそう思った。

『スタート! ユア エンジン!』

 渡されたベルトを腰に装着、瞬間眩い赤色光に包まれる。

 そしてついに友希たちのもとへと到達した巨大な御柱は先の弾幕とは違い、非常に鈍い音を立てただ一点の地盤を強烈に叩き壊した。

 もちろんそれだけでも威力は異常と言えるものだった。あたりの地表がめくれ上がり、柱の触れた部分はおそらく一メートルほどは沈みこんだのではないだろうか。

「・・・手ごたえが、ない?」

 さすがに神だというだけのことはある。自らの身体とは直接触れていなかったにも関わらず、友希たちが攻撃を逃れていることに気づいたようだ。

 では一体どこへ?

 再び地上に降りてゆっくりと辺りを見渡す神。

「こっちだ」

 唐突に背後から聞こえた友希の声。

意表を突かれたこと意外だったようで、容赦のない裏拳が突発的に放たれる。

 しかし友希には命中しない。すでにそこに姿はない。

 ただ事ではないと直感で察したか、警戒するように少し腰を低くし辺りを見渡す。

『スピード!』

 姿は見えない。確かに声の聞こえた方に今度はしっかりとしたパンチをお見舞いしようと神は振りかぶった。

 そしてその拳が狙った線上に、丁度高速で飛んできた赤い拳が迫っていたのだ。

 両者の拳が勢いよくぶつかり合い、一瞬だが閃光のようなものが走ったようにも見えた。

 神は相手の姿をとらえ逃すまいと事後もさらに強く拳を押し込む!

 触れ合った拳の先には人型をした何か。

 黒のスーツの上に真っ赤な装備が装着され、銀色の複眼が煌々と輝いている。

 さらに一際目を引くのは、左肩から右腹側部にかけて胴体にすっぽりとはまっている赤いラインの入った黒いタイヤである。しかも先ほどからずっと唸りをあげながら高速回転しているではないか。

 一見奇怪な見た目をしている謎の機械生命体に対して、一瞬だが眉をひそめた彼女は驚いているのだろうか。

友希にはおろか周りの誰にも察することができなかっただろうが、彼女は同時にどこか懐かしい既視感のようなものを感じていた。

 その正体に迫りたいとさらにグッと力を籠める神様だったが、それに反応して目の前の戦士も黙ってはおらず一気に腕を振りぬき払ってみせた。

 この赤い戦士だがもちろん正体は変身した友希である。

 友希は左手首にはめたブレスに手をやり何やら操作する。

『スピ・スピ・スピード!』

 今までのライダーのアイテムとは異なり、かなりダンディで低い良い声が響くと同時に胸にかかったタイヤの回転にますます拍車がかかってゆく。

 この奇抜さとメカニカルが融合した謎の赤の戦士は、目にも止まらぬ高速で正義を執行するトップギア警察官。仮面ライダードライブ タイプスピード!

 またしても高速で移動する友希だが、早すぎてもはや何ものとも比べようがない。

 しかしながら標的は一人、神だという彼女に向かってすべての攻撃が一瞬のうちにして浴びせかけられる!

 そのおかげで発生している赤い残像がかろうじて友希の存在を語っていた。

「面白いじゃないか・・・」

 襲い掛かる拳や脚を受けながらそう笑った神。

 友希自身、高速で飛び不慣れな弾幕を浴びせたことはあれど高速でかつ地に足着いて攻撃を放ったことはないので、一発一発の威力には自信がない。当てたらすぐに引いてしまう。

 目の前で攻撃を受ける神の余裕にも薄々気づいていたが、だからと言ってどうすることもできないのでただひたすらに連打をお見舞いする。

「ちょっと! 文も手助けに行ってきなよ!」

「いやいや無理ですって! そんな恐れ多いことは・・・!」

「何を今更⁉ さんざん記事で迷惑かけてんじゃん!」

 友希と神の気迫の戦いの後ろで文とにとりは言い合いを始めてしまった。

 もうこれだけでかなりカオスな状況だが、そこに神がさらなる一手を投じたのだ。

「いい加減に、鬱陶しい!」

「おおぁっ!」

 今まで以上に鬼気迫る表情を見せた彼女はどういった力なのか謎の覇気を放ち、それにより友希は問答無用で後ろに後退させられてしまう。

「俺だってまだまだ!」

 友希の発言を合図にするようにどこからともなくミニカーが神めがけて突進していく。

 それは先ほど友希に渡されたアイテムと形状が酷似しているが色が違い、加えてまるで火球のごとく火をまとって相手の周りを旋回しながら自ら連続攻撃を仕掛けている。

 神はそれを鬱陶しがりはするものの、どうということのないといった感じで弾き飛ばしてしまい、それは友希の手元へと至った。

『タイヤコウカーン! マックスフレア!』

 手に取ったアイテムを操作しベルトから反応が返ってくると、またしてもどこからともなく今度は燃え盛るタイヤが友希めがけて飛んできた!

 そしてタイヤはドライブに既存でついている黒いスタンダードタイヤを弾き飛ばし、代わりに友希の胸にはめ込まれるのであった。

「今度はなんだい?」

 先ほどから珍妙なものを見せられていると若干の呆れ顔をのぞかせる神。

「おおっ、何ですかあれは⁉」

 にとりの言葉攻めにもうんざりの口論から一辺、一方的に文から話を切り上げ友希の別の姿へとカメラを向ける。

「あれはドライブがシフトマックスフレア! でタイヤコウカーン! した、人呼んで獄炎の撲滅警官! 仮面ライダードライブ タイプスピードフレア! スピードもいいけどパワーにも重点を置くつもりだね、盟友!」

 友希に話を持ち掛けられて以来その開発や研究に没頭して、今ではにとりもかなりの仮面ライダーマニアである。

「炎の拳ならどうだぁ⁉」

『フレ・フレ・フレア!』

 燃え盛るタイヤの効果なのか高速の世界がそうさせたのか、再び果敢に立ち向かう友希の行く道には炎が後を引く。

 しかしながらいい加減に受け身はとり飽きたようで、今度は神もついに拳を振り上げる。

 もはや友希は必死だった。

 いくら変身して身体能力の類が強化されたとしても中身は友希であることに変わりはない。

 あの拳が直撃すればどうなる? どうすれば神だという相手に勝つことができる? 退けたとしてどう誤解を解く? というか何で自分に怒りの矛先が向いているのかがそもそも訳が分からない。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・!」

 一つ選択を間違えれば取り返しのつかないことになりかねない。そんな緊迫した気分だった。

 そんなことを考えていたからなのかどうかは分からないが、不意にできた攻撃の間に自身で違和感を感じる。その瞬間に左の頬に激痛が襲った。

 「しまった」と瞬間で身に起きたことを自覚したがそれもつかの間、今度はさらに強力な一撃が友希の顔面にヒットしてしまう。

 そこからはまさに一瞬の出来事。全身に痛みが濁流のように走ったかと思えば、次の瞬間友希の身体は宙を舞っていた。

「・・・っ⁉」

 言葉を発する暇がなかったのか、それとも発せないほどに衝撃だったのか。友希の口からは苦痛交じりの息が漏れる。

「ふんっっっ!」

空中で身動きのとれぬ友希に対して、さらにダメ押しと言わんばかりの強力な蹴りが入る。

骨こそ損傷はしていないものの無防備な腹部には直撃、少なくとも腹部に足がめり込むくらいには強烈な一撃だった。

そのまま吹き飛ばされた友希の身体は地面に叩きつけられ、その部分の石畳が無残にもめくれ剥がれて衝撃の大きさを物語った。

「ぐあぁぁぁっっ・・‼」

「友希ぃっ!」

「・・・っ!」

 あまりの痛みと苦しさに仮面の下の顔をゆがませ、まともな声にもならない断末魔を絞り出す友希にすかさず駆け寄るにとり。

 文は相変わらずカメラを片手にその様子を神妙な面持ちでうかがっていた。

「・・・・・」

 神は何も言わずただ一歩一歩と友希に向かって歩みを進めてくる。

「ちょっと待って、何かの間違いだよ! 友希は何もしてない!」

「河童風情に何が分かるというんだい? その男は我が守矢を危機に陥れかねない脅威、そして大罪人だ!」

「そんな・・・⁉」

 神に全く話が通じる様子はない。

 速さにはついてくる、炎の連撃も特に効いている様子がない。

 変身を解けば水の能力が生かせ攻撃などものともしないだろう。しかしこちらの攻撃力も一気にそがれる。弾幕も撃てないしほぼ無力と言っても過言ではない。

 だいたい相手に水の能力に対する策がないとも言い切れない。なんといっても相手は人間や妖怪の規格を超えた神だから。それはすでに拳を交え痛めつけられた友希には薄々分かっていた。

 どんな策を巡らせようとも結局神という絶対的な存在の前に排除されてしまう。万事休すか。

「うう、にとり・・・」

「友希⁉ 大丈夫⁉ しっかりして!」

「何とか生きてるよ。それよりも、何とかして逃げられる方法を考えてくれ」

「逃げるって・・⁉」

「ここに来た目的は何であれこの状況はさすがにヤバいだろ! 誤解を解くにしても後だ、何されるか分かったもんじゃない! 時間は俺が稼ぐから早くしてくれ!」

「ほう、愚かにもまだ立つか」

 友希の変身はまだ解かれていない。

 どれだけズタボロにやられようとも生身で立ち向かうよりかはマシだ。

 考えることはにとりに任せて、友希はただ目の前の脅威に立ち向かうことだけに専念する。勝ちは絶望的だが時間稼ぎくらいならばできるだろうと踏んだのだ。

 逃げるなんてことはまるで自分たちに非があることを認めているようで非常に癪だが、正直友希にはそれよりも恐怖の感情の方がさらに大きかった。

 一度死を受け入れた友希だからこそ死ぬことの恐ろしさは身に染みていたし、何より神から発せられる直球の殺気が痛いくらいに心に刺さる。一刻も早くこの状況から脱したかった。

「来い! ワイルド! ダンプ!」

 友希が号令をかけると颯爽と二つのミニカーがもとへと参上した。

「スピードは見切られてる。なら、あんたと同じようにパワーで勝負する」

 少なくともこの神が重量級の攻撃を仕掛けてくるタイプだということは、数回拳を受けて分かった。

 にとりが持ってきたベルトとアイテムは少ないが、その中でも力に対応できるものを使用する。

 この状況の緊張感からか妙にゆっくりとした時間が流れているように感じる。

 両者相手の目を見据えながら、一人は仁王立ち、一人は手に持ったアイテムと手首のそれを静かに操作する。

『ドライブ! タイプ ワイルド!』

『タイヤコウカーン! ランブルダンプ!』

先ほどまでの赤い姿からは一転、輝くいぶし銀の素体に漆黒のボディ、右肩にドリルが付いた黄色いダンプタイヤが丸ごとくっついている姿に。

パワーにパワーをぶつける選択が良いか悪いかは別として、友希が命を懸けたこの大一番に選んだドライブの姿、高速豪快なワイルドマシン 仮面ライダードライブ タイプワイルドダンプ!

パワーを重点に置きながらも一定のスピードも出せるワイルドに、猪突猛進パワー特化型のランブルダンプを合わせて強化した姿だ。

フォームチェンジが完了する前に走り出していた友希と神は、とてつもないスピードと威力でその拳をぶつけ合う。

その瞬間分かったことだが、どうやら何をどう頑張っても目の前の神には敵わないようだ。

タイプワイルドに変えたというのにまだ押し負ける。それどころかどんどんと相手からの力が増している。そのくせ顔には苦労など微塵もにじませず、力強くこちらに圧をかけ続けているのだ。

どうしても勝てるイメージが湧かない。どうにかして、一刻も早く、この異常な相手から逃れなければ本当に命が危うい!

力同士が反発しあい弾かれる両者。

ただ『変身をしている』という事実のみから闘志を奮わせる友希。

「うおおおおお‼ くらえぇぇぇ‼」

「ど、どうしよう! 飛んで逃げる? 地面を掘って逃げる? ああだめ、絶対捕まる!」

「こんなところでコソコソと・・・それでも天狗か? 私は・・・」

 まさかこんな事態になろうとは、ここにいる誰が予想しただろうか。

 厳かな守矢神社、三者三葉の思索入り混じる戦場。

 この状況を打開する手はあるのか? 誰が手を差し伸べてくれるというのか?

 終わりの見えぬこの戦いを、ただ自らの正義を貫くために、再び神と人間の両者が激突する!

 

第二十六話 完

 




どうも、作者の『彗星のシアン』です。

東方友戦録は今回で26話、気が付けば一年間放送の特撮でいうところの折り返し地点にあたる話数を迎えました。(友戦録は折り返しではありませんよ!)
あくまで投稿は自己満足になっていますが、これからも意欲が続く限り物語を綴っていきたいと思います! 見てくださっている方がいればありがたいです、感謝します!

さて今回は新たなロケーション『守矢神社』へとたどり着いた友希一行。
ですがそこで待っていたのは「ずいぶんなご挨拶」。次元の違う神様の怒りでした。
果たして神にはどんな理由があって、どんな思いで友希に拳を向けたのでしょうか?
それも含めてなんとこの話は二部作、次回に続きます!

強大な力に恐怖の感情が膨らむ友希。
予想外の事態に慌てふためくにとり。
何やら内心落ち着かない様子の文。

今回の話の最後にもありましたが、この騒動はいったい誰がどのようにして納められるのか。次回その答えが分かります。また友希の行く先に新たな動きが見える予感がします!
それでは次回もご期待ください!
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