4・スカーレットヴァンパイア
「ふう、よし。落ち着いてきた・・かも・・・」
あの衝撃からしばらくがたった。
とてつもない疲労感と混乱。正直もう何も考えたくないと思うほどだ。
ゆっくりとだが歩き続け、その先にあった川沿いで休憩をしている友希とにとり。
独り川のほとりでしっかりとある両手で顔を洗い、ショックと夏の暑さで噴き出した汗をぬぐってすっきりした友希だったが、今まで客観的に幻想郷での奇妙な出来事を感じていたのに対していよいよ自分の体にまでおかしなことが起き始めたのでどうにも気持ちが収まらないでいた。
「・・・・・」
水面に映り込む自分の顔を見て少ししかめたかと思うと、友希はすぐに目をそらす。
あの後どうなったかというと、驚きと恐怖で足元がおぼつかなくなりその場で大きく転倒してしまった友希だった。そしてその拍子にない両腕のほうから体をかばうように手をついてしまった。(何度も言うが今その手はない)
するとまたもや奇妙なことが起きたのだ。
おぞましい腕がズプリと地面に沈み込んだ。もちろんそれにも驚き、勢いよく抜くように飛び起きた。すると今度はどういうわけかさっきまでなかった腕が完璧にもとどうりになっているではないか。本当に訳が分からない。
そんなことがあって動揺しながらも何とかここまで歩いて来た次第だった。
「ん~~~!」
幻想郷に来てからずっと噴水のように湧き出てくる疑問と何とも言えない恐怖を振り払うように頭をかきむしる友希。それを横目ににとりは何かを考えている。
「にとり、どうした? 俺なら大丈夫だし時間もそんなにないんだろ? そろそろ動かないか?」
「ん・・ああそうだね、それなら行こうか。とは言っても・・・」
にとりは川の下流の方向に目をやり指をさす。
「すぐあそこに見えるのが紅魔館なんだけどね」
にとりの指す先には、おそらくこの川が流れ込むであろう湖が森林の木々の隙間から見えており、さらにその奥、湖を超えた先に赤く染まった巨大な屋敷とその時計塔がそびえ立っていた。
「あれかぁ・・・」
「あっ、ちょっと待って」
足早に館へ向かおうとする友希の服をつかむにとり。
「あ、いや、止まらなくてもいいや。歩きながら聞いてほしいんだけど、おそらく友希の能力は『水になる程度の能力』だと思うんだ」
「水に・・なる・・?」
「おそらくね。でも、今まで自分の体そのものを別のものに変化させる能力なんて見たことも聞いたこともないんだよね~。でもでも、実際この目ではっきりと見たからなあ・・・」
「・・・付与確率が低いうえに前例のない能力ねぇ・・・」
何やら特別そうな雰囲気なので友希の心には若干の嬉しさが込み上げてきたが、誰も知らないとなると何もかも自分で模索しないといけないということだ。それにこの手の特別な能力にはリスクがつきものだということも友希は知っていた。
「それにもう一つ根拠があってね。私の能力は『水を操る程度の能力』だから、さっきから友希の体を操れるかやってるんだけど、たまに反応する時があるんだ」
「うそ、全然気づかなかったんだけど」
「だから、いつ発動するのかなって思って。感覚的にどう?」
「う~ん、感覚ねぇ。あの時は力んだだけなんだけどなぁ」
ちなみに二の腕の先がなくなったときは、ないところの感覚だけ完全に何も感じなくなっていた。今思い出しても身震いがする。
「・・・本当に俺の能力が水だとしたら、さっき腕が戻ったのは地中の水分を受け取ったからってことなのか? にしても無意識だから詳しいことはちょっと・・・」
「そっか・・・。参考までに吸血鬼のお嬢様にでも聞いてみようか。湖畔の周りに沿うようにして進めばすぐだよ」
「そだな、止まってても仕方ねーし、行動あるのみだな!」
そう言って友希たちは森林の中から頭をのぞかせている館に向かい歩を進める。
と、いう調子で気を引き締めて館の門の前までやってきたのだが、なんとここにきて思いがけず足止めを食らっていた。
「・・・これ、どうすんの」
「これはいつもの調子なんだけど、おかしいな」
もちろん遠くから見ただけでもわかったが、案の定外の世界では見たことのないほどとてつもなく立派な豪邸だったので門番くらいはいるのだろうと思った。だが予想外だったのは、問題の門番が眠っていたということだ。
「おかしいって、何が?」
にとりは眠っている門番の頬をつんつんと触りながら。
「この門番は『気を操る程度の能力』を持っていて、いつもはすぐに気を察知して起きるんだけど。これは相当深いところまで落ちてるね」
「いやマジでどうなってんだよ、これ」
マンガでしか見たことのない大きな鼻ちょうちんを作って仁王立ちで寝ているこの門番。中華風の動きやすそうな服装、いわゆるチャイナドレスのような緑色を基調とした着物を着た橙赤色の髪をした女性で、気を操るというだけあって寝ていても・・・強そうか?
ただ、仕事中にこんなに爆睡できるんだから肝はすわっているのだろう。
「でもこれじゃあ中に入れないじゃん」
「う~ん、先に違うところに行く?」
「その必要はありませんわ」
諦めて次の目的地へ行こうとしたその時、突如として後ろから声をかけられ驚き振り返るが、そこには何者の姿もなく・・・。
「あ痛たたたたたたたた! 以後このようなことのないようにしまあいいたたた!」
「その言葉いったい何度目よ! お嬢様の顔に泥を塗らないようにといくら言えば分かるの⁉」
確かに先ほどまでこの場には友希とにとり、そして門番の三人しかいなかったのだが、突如としてメイド姿の銀髪の女性が新たに増えており、彼女によって耳をひねり上げられ悶絶している門番。
「今度という今度は・・・」
そう言ってどこから取り出したのか、メイドの女性は両手で合わせて八本の鋭利なナイフを出現させ、門番の女性に向かって突き立てた。
「うわっ!」
咄嗟に顔を隠す友希。
「ちょちょっと待って! 私たち気にしてないから! そこまでしなくても!」
急いでにとりが二人の間に割って入る。
「ほら、にとりさんもこう言ってることですし。ね?」
(ギロリ・・・)
「あ・・・すみませーん・・・」
まるで剃刀のように輝き冷ややかで鋭い目である。
「にとりに感謝しなさいよ・・・」
「あのー? 落ち着きました・・か?」
突如訪れた殺伐とした空気を警戒し、とても申し訳なさそうにかつ小さな声で友希は様子をうかがうようにして話に割り込む。
「お見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ありませんでした。こちらの方は?」
「ついさっき幻想入りしてきた盟友、人間の友希だよ」
「・・・・・」
「友希?」
メイドの女性を注視しながら硬直し立ち尽くす友希。
肩よりは上、かといってショートと言えるほど短くはない美しい銀の髪。宝石のように透き通った青色の瞳。トップモデルもびっくりの美しく整った顔立ち。すらりと長い脚。顔、腕、手、足、見える肌のすべてに共通するきれいな肌。
「あの・・・何か?」
相手を困惑させていることにすら気づかないでいた。
友希自身が一番よく分かっていた。一目惚れである。
「あっ、すみません! おっ俺はっ、一夜友希って言いますっっ!」
友希は別に女子慣れしていないとかではない。男子だろうが女子だろうが普通に会話できる。
しかし友希には恋をした経験がなかった。彼女なんてもちろんいたことはない。むしろ高校生になったばかりなのに誰かのことを幸せにするなんて荷が重すぎるとさえ思っていたのだ。
「ふふっ、なんだかおもしろい方ですね。初めまして、この館のメイド長を務めている十六夜咲夜と申します。よろしくお願い致しますわ」
きりっとしていてなおかつ優しさもあるいい声と表情だが、普通に考えて社交辞令的な何かだろう。
しかしながら、先ほどの門番に見せた厳しい態度とは全くの別物で自分に優しくしてくれているのか、友希の頭にはそんなことばかりが浮かんでいた。
「そしてこちらは、どうしようもない居眠り門番の紅美鈴です。」
申し訳なさそうに頭をかきながら笑う門番、美鈴。
「それでご用件は?」
「さっきも言ったけど友希は幻想入りしたばかりでここに住むことになって、今幻想郷を友達作り兼案内しているところなんだ。それでまず霊夢のところに行って、紅魔館ならいつでも相手してくれるって聞いたから来てみたんだけど・・・」
「霊夢ったら、まるで紅魔館が年中暇しているみたいじゃない。でもわかったわ、今日突然の事なら連絡のしようもなかったでしょうし。そういうことなら私がこの紅魔館を案内して差し上げましょう。友希さん、私についてきてください」
「は、はいっ」
「あ、いいの?」
「ええ。客人をもてなすのもメイドの立派な仕事ですから」
今更だが、霊夢が言っていたお茶しに来るメイドというのは彼女のことだろう。
にとりと共に咲夜の後をついていく友希。
「さぁ、こちらです」
促されるままに門を抜けて正面の玄関の扉を抜ける。
「うわ~! すっごいな~、これ!」
外から見るだけでその立派さは十分伝わってきていたが、中に入るとなおさら感動が込み上げてきた。
全体的に濃い赤色を基調とした内装でまとめられており、上層階と大きく吹き抜けになっているので玄関から見えるだけで五階分の廊下で囲われている。
それに伴って多くの部屋の扉が確認でき、そして巨大なエントランスの真ん中には五階廊下まで伸びた大階段が存在感を放っていた。
「驚きましたか? 西洋でも類を見ないほど立派な館です。しかしながら、この幻想郷には趣向こそ違えど、立派な建造物はそれなりに存在しますから、紅魔館だけが特別というわけではありませんが」
「へぇ・・・」
後をついていきながら思ったのは、一人で徘徊していると慣れないうちは確実に迷子になるということ。
廊下を歩いているうちに同じような扉と廊下を何度も見てきたしどういう部屋なのかも雑把に説明されたが、それでも扉の外見は全く同じなので今のところ窓から外の景色を見て景色の違いで判断するしか位置を知るすべはない。
「到着しました。こちらがこの館の主、レミリア・スカーレット様のお部屋です」
さすがはメイド長、と言うかこの館で働いている以上当然のことなのであろうが、まったく迷う様子もなくこのとてつもなく広い館の中を移動し、ものの十分ほどで目的の主の部屋まで到達した。
とは言っても目の前の扉は特にきらびやかな感じもなく、今までの道中にあった扉と同じ様相だった。果たして本当にこの扉の奥に様とつけて呼ばれるような位の高い人物がいるのか。
咲夜はドアへと手を伸ばし、三回優しくノックをする。
「十六夜咲夜です。ご客人の方がお嬢様に挨拶をと」
「いいわよ。入りなさい」
扉の向こうから聞こえたのはいかにも育ちの良さような威厳と気品にあふれた声だった。しかし、それと同時に少し幼さも感じたのだが、それに関しては友希は特に気にも留めなかった。
「失礼します」
ゆっくりと開かれる扉。友希は無意識に服装を整える。
意を決しにとりと共に歩みだしたその瞬間、中から漏れ出す華やかな花の香。
「よく来たわね。幻想郷で生活をするにあたって、この紅魔館の主である私、レミリア・スカーレットに直々にあいさつを志願するなんて良い心掛けね。ほめてあげるわ」
ほかの部屋と大きさはさほど変わらないが、貴族の宮殿にあるような装飾の施されたカーペットにレースのついた寝具、眼前には二台の長いすと一台の長机が横向きに配置されており、さらにその奥にはほかの部屋にあるよりは二回りほど大きいデスクとその上に積み重なる書類が見えた。そしてそこに腰かけている女性こそが・・・。
「あっ・・・」
少女だ。小学生高学年くらいにも見えなくもない少女。何なら冥界で会った閻魔様より幼いもはやロリだ。
「あの友希さん? どうかなさいましたか?」
「あ、いや・・えっと」
「いいのよ咲夜。私の姿を始めてみる者はみんなそう・・・。いち館の主がこんなにも幼い容姿をしているものだから驚いているのね」
「うぅ・・・すみませんっ!」
「あなたが謝る必要なんてないわ。悲しいことだけれど、もう慣れてしまったもの」
もう少し正確に容姿のことを言うと、頭は薄く紫がかった髪に八雲紫と同じようなふわっとした薄ピンクの被り物、同じく薄ピンクで統一された服と丈長めのスカート。
背丈が低く小学生ほどの容姿をしているが、背中にはしっかりとした黒い羽が生えており真っ赤に輝く瞳をしていて、話に聞いていたとおり吸血鬼であることは間違いがなさそうだった。
「客人って、俺たちが来ること知ってたん・・ですか?」
「ええ、知っていたわ。あなたの名も、何のために来るのかも。なぜならあなたたちはここに来る運命だったのだから」
よくわからない理論を言われたが、手を胸にやり誇らしげに胸を張る当主レミリア・スカーレットに口出しは無粋だと心で悟った。
「ふふ、実は私が先んじてお知らせしておいたのですよ」
「そ、そうね。確かに咲夜から知らせられたわ。でも、運命だったのは本当よ!」
肝心なところをメイドに指摘され苦い顔で言い訳をするレミリア。
この会話を聞いている限り、どうやらメイド長である十六夜咲夜は、この館全体をを実質的に管理しているだけあって館の主であるレミリア・スカーレットに対しての発言力がそれなりにはあるようだ。それに対し、レミリア・スカーレットはどこか少しかわいげのある抜けたところがあるように思える。
「そうよ! こんな話をしていてもキリがないわ!」
これ以上掘り下げられたくなかったのか、レミリアは半ば強引に話を切り上げた。
「あなた、仲間を増やそうと思っているのでしょう?」
「いやまぁ仲間ってほど大層なものは求めてませんけど、まだこの世界のこと全然知らないので、やっぱりいろいろなことを話せる友達がいると思うんです。もちろん寂しくないようにってのもありますけどね」
友希にとっての友達とは微妙なもので、同じクラスの者の中で気の合う者は自然と親しくなれるし、合わなければ一度話せばその後は話しかけられなければもう話さない程度になる。が、友希にはそんなことはどうでもよかった。『一度言葉を交わせば友達』それが信条だったからだ。
実行できているかどうかは別として、それくらいの気持ちで接していた。
しかし今回は事情が違う。初めての土地、妖怪やその他人外がたむろし気を抜くと命の危険もある恐ろしい土地でもある。
ボーっとしていたら何も始まらない。それどころかせっかくの第二の人生が早々に幕を閉じることになる。
ほかの人間だけでなく今目の前にいる吸血鬼にも言えることだが、本来ならばまったく接点がないのだ。同じクラスで授業を受けたり体育祭で協力したりするのとはわけが違う。自分から積極的に動かなければいけない、友希にはそんな気が激しくしていたのだった。
「だから、あの~、失礼かもしれませんけど・・」
「みなまで言わなくてもいいわ。ええ、なってあげようじゃないの。その友達ってやつに」
その場にいた友希とレミリア以外、すなわち咲夜とにとりは唖然とまではいかなくても目を丸くしていた。
「失礼ですが。まさかお嬢様がすんなりと人間との友好関係を結ばれるとは思いませんでした」
「本当にどういう意味よ!」
自分の従者に裏切られ、つい勢いでツッコむレミリア。
「いやでも、私も「なんでこの私が!」って突っぱねられると思ったよ」
にとりと同じで友希も正直そう思っていた。
「以前の私ならそうしていたでしょうね。でも今は、すっかり幻想郷に毒されてしまったみたいでねぇ。賑やかなのはいいことよ。って、それは咲夜も同じでしょうに・・・」
「ふふっ、その通りかもしれませんね」
レミリアの軽いツッコミに優しく微笑んで返す咲夜。『従者』と言うより『分かり合える友』といったような印象を受ける友希。
ここで一瞬緩んだ空気を引き締めるように「コホン」とせき込むレミリア。
「とりあえず! この私があなたの友達になって、ついでに協力もしてあげるわ!」
「ええ⁉ ありがとうございます!」
正直もっと難航するかと思って身構えていたがそれは杞憂だったようだ。
こんなに大きな館を構えているくらいの権力を持つ者と知り合いになれたことは本当にうれしかった。
「あと、協力関係になったのだからそのたどたどしい敬語ももうやめなさい!」
感謝され慣れていないのか、少し恥ずかしそうにしながら強い口調で命令してきた。
「え、いいの?」
意外な要求にすでに敬語が崩れてしまっている。
「言ったでしょう? 変に慣れすぎたのよ、この世界に。今ではこの私に純粋な敬意を払うものなどこの館の者くらいで、他の者に言われるのはなんだかむず痒いのよ!」
何というか本当は吸血鬼であることなんて嘘なんじゃないかと思うほどに拍子抜けだった。
「分かった、レミリア・・・?」
「それでいいのよ。とりあえず私は残りの仕事を終わらせて、そのあとこの館の住民を紹介するわ」
「では、私は紅茶を入れてきますね」
そう言って静かに退出する咲夜。
「その間、館を見て回るといいわ。くれぐれも迷子にならないようにしなさい。それとにとり、また修理を頼みたいのだけどいいかしら?」
そうしてにとりとレミリアを残したまま友希も退出することにした。
まるでわらしべ長者のごとくつながりが連鎖しておりなかなかさいさきが良いので、心から安堵する友希だったが。
「さて、これからどうしようかなぁ」
あまりにもスムーズに事が進むので未だに幻想郷の本質が見極められていないような気がしてこれからの展望に思考を巡らせる。それに伴いボーっと館内を歩き回っていた。
しかし、言われた通りこの館は広すぎて迷いそうだ。
角を曲がろうとして先を見たが全く様相の同じ廊下がただただまっすぐに伸び、無機質な印象から少しばかりの恐怖が込み上げてきたのだ。
「ほんとに、でかいよなぁ」
何の気なしに言葉を漏らし廊下を引き返そうとしたその時だった。
先ほど歩いて来たほうからフラフラと近づいてくる一つの人影に気づいたのは・・・。
「・・えっと、大丈夫・・か?」
どこか具合の悪そうな人影の正体は、先ほどのレミリアと同じような体格をした金髪の少女だ。
(・・・似てるな。もしかしてレミリアの妹か何かかな?)
心配して声をかけたのはいいが、本当に足取りがおぼつかない様子で目線もどこかうつろな様子に不気味だとすら感じた。
一度咲夜に知らせるべきだと思い、とりあえずどこかで休ませるために友希は少女に手を伸ばす。
「離れなさい‼ 今すぐに‼」
「えっ⁉」
後ろから物凄く焦った様子で飛翔してくるレミリアに音で気がづいた。そしてそれを確認しようと首を後ろにやる・・・間など与えないほど一瞬の出来事であった。
「しまった‼」
とてつもない衝撃と共に視界が暗転しレミリアの方向へと体が吹き飛ぶ感覚。
何が何だかわからなかった。ただ微かに最後に見た金髪の少女の目には先ほどのうつろさはなく、鋭くこちらをにらみつけるまさしく吸血鬼のイメージそのものだった。
取り返しのつかないことになったという様子のレミリア、未だゆらゆらと立ちうすら笑みを浮かべる少女。その間に横たわる・・・上半身のない男の身体。
瞬間、胸が苦しくなるほどの静寂がその場を支配した。
第4話 完