東方友戦録   作:彗星のシアン

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狂気の妹フランドール・スカーレットとの対話を経て、彼女の抱える不安と揺らぎを知ることとなった友希。外の世界とは違う幻想郷特有の悩みを垣間見たのだがそれもつかの間、レミリアの突拍子もない思惑により今度は地下の図書館へと足を運ぶことに。次々と嫌な予感に襲われるなか訪れた超巨大な図書館には、とある悪魔と紅魔館最後の要人である大魔法使いの姿があった。


第6話 ”みず”知らずの力

6・“みず”知らずの力

 

「・・・・・」

 あれから一言も発さずに館内を歩き続けること十分ほどが過ぎた。

 昼食の仕込みをしていた咲夜さんも合流して、友希は先頭のレミリアに連れられフラン、にとりと共に紅魔館の大図書館なるところを目指している最中であった。

 それからまたしばらくして、ようやく今までの廊下とは雰囲気の違う大きめの扉に突き当たる。

「ここよ」

 そういうとレミリアは扉に手をかけゆっくりと押し開ける。ゴゴゴと鈍く重たい音を上げながら物々しい雰囲気が漂うなか、その扉の奥へと歩を進める。

「すっげ~、なんだこれ・・・!」

 扉の奥に広がっていたのはおそらく建造物十階建てに相当するであろう、あるいはそれ以上ほどの高さを誇るシェルターとでも言わんばかりの巨大な空間だった。

 友希は小走りで目の前の木製の柵に近寄り乗り出してみるが、先ほどまで歩いてきていた廊下は館の四階部分に相当していたので、今友希のいる図書館の最上階部分から少なくとも四階分下ると一階に、さらに六階分地下に広がっていることになる。

「すごいでしょう? 大きさも蔵書数も幻想郷一よ」

「うん。外の世界でもこんなに大きな図書館、見たことも聞いたこともない」

「それに実は、この大図書館だけで紅魔館の半分ほどを占めているんですよ」

 しかもさすがは幻想郷というべきか。その巨大な館内を重力を無視した無数の本棚がふわふわと浮いて動いているのだ。

到底人間の取れる高さ距離ではないし仕組みも外の世界の感覚では全くもってわからない。

「ついてきなさい。そこのらせん階段から降りるわよ」

 言われるがまま大きならせん階段を下っていく友希たち。

 おそらく友希に合わせてもらっているので「羽は使わないのか」と野暮な発言は喉元の当たりでとどめておく。

「あれ、お嬢様? 今日はパチュリー様とのお茶会の予定は入っていないはずですが、どうかなさったのですか? それに見かけない方もいらっしゃいますねぇ」

 着々と下っているとどこからともなく赤髪ロングの黒を基調とした落ち着いた服装の女性が空中を飛んでレミリアに話しかけてきた。

「今日はこの人間の要望で友達作りのために館の住民を紹介して回っているのよ。一夜友希よ、今日幻想入りしてきたらしいわ。彼女は小悪魔、この図書館の司書そしてここに住み込む引きこもり魔法使いのお世話係をしてくれているの」

「もしかして、その引きこもりの人が・・・」

「ええ、この館最後の一人の住民よ。後は妖精メイドたちがちらほらって感じね」

 吸血鬼に続いて西洋妖怪の代表格である悪魔・魔法使いもとい魔女のお出ましだ。

妖精メイドとは、先ほどから館内で見かける羽の生えた小さなメイドのことだろう。

 にとりから幻想郷は様々な種族が共存していると聞かされていたが、この館だけでも異種混合っぷりがすごいうえどの種族も人間のような姿かたちをしているのでどうにも信じきれない。

「よろしくお願いしますね、友希さん。では私はこれで!」

 友希を見据え一瞥した小悪魔は何か用事があるようで、そそくさと上部を飛び交う本棚のほうへと飛び去って行くのだった。

 その後階段を下り終えとても大きな本棚の間を縫うようにしてどんどん奥へと進む一行。

「ないとは思うけれど机から移動していなければ・・・あ、いたいた。パチェ~!」

 大きく手を振るレミリアの目線の先には、本棚が羅列する中少し開けた場所にポツンとデスクがおいてあり、そこに鎮座する紫色の突っ伏した何かの存在があった。

「ん? なんだ、ボール? 頭か?」

颯爽と駆け寄り名前を呼びながらその物体をゆするレミリア。するとその紫色の何かはもぞもぞと動き出した。

友希たちも急いでレミリアのもとへ駆け寄る。

「どうかなさいましたか、パチュリー様」

「んん・・心配いらないわ。夜通し本を読んでいたせいで、つい寝てしまっただけよ・・・。それよりも、みんな勢ぞろいでいったいどうしたのかしら?」

 ゆっくりと起き上がったそれは、紫色のいかにもインドア派といったダボダボの寝巻のような服装と被り物に身を包んでおり、眠たそうに眼をこする顔にはうっすらとクマができている。

「あ・・初めまして、一夜友希と言います。よろしくお願いします」

 図書館だということもあってか友希は様子をうかがうように物腰低めにあいさつする。

「あら、ここに館の外から人間が来るなんて珍しいわね。この前白黒の泥棒猫が侵入して以来だわ」

「どうかしら? 寝てた間に侵入されてるかもしれないわよ?」

「トラップがあるから大丈夫よ、レミィ」

 トラップがあったのか・・・。見かけによらず怖いことをする人だ。

「そうそう、それでこの友希に館を案内するついでにみんなのことも紹介しているの。何でも友達になってほしいそうよ」

「そうなんです。気兼ねなく話せる人が欲しくて」

「いいわよ」

「えっいいの?」

 あまりにもあっさりと受け入れられたので咄嗟に友希の口から思いと矛盾した言葉が飛び出てしまった。

 周りで見ていたレミリアや咲夜も簡単にいくとは思っていなかったのか、少しの間目を丸くしてフリーズしていた。

「あなたが言ったんじゃない。別に問題はないわよ。見たところあなた、外の世界から来たようだけど、違うかしら?」

「はい、そうですけど・・・」

「なら外の世界のことも教えてもらえそうだし特に私にデメリットはないわね。私に一声かけてくれるならここにある図書も自由に借りていっていいわよ。ただし読書中は邪魔しないでちょうだい」

 ここでやっと魔法が解けたように話し出す咲夜。

「でも・・意外ですね。パチュリー様のことですから冷たく突き放すのかと」

「あなたの私に対してのイメージは時々間違っているわよ、咲夜。私は別に人間を底辺の種族だとは思っていないわ。もちろん愚かなものも多いけれど、この子は初対面の相手に頭を下げて挨拶をするくらいには礼儀もなっているようだし。機会を逃すほうが愚かでしょう?」

 どうやらこのパチュリーという魔法使いは冷静に物事を客観的に判断できる精神的に大人な人物のようだ。ただ友希としては付き合いにメリットばかり気にされるのはあまり気分のいいものではなかったが。

 レミリアが何か話し始めようとしたが、それよりも先にパチュリーが再び口を開く。

「で、用はそれだけじゃないでしょう? それだけならフランをここに連れてくる意味はない・・・違うかしら?」

「さすがねパチェ、説明が楽で助かるわ」

 ここから先の話は聞かされていないのか、咲夜と先ほど後ろから加わってきた小悪魔はそろってレミリアのほうに顔を向けている。しかし、友希とフランにはわかっていた。

そして、特に友希は自分の能力の理解もまだなのに、このままでは命にかかわることになるかもしれないのでみんなに判断を仰ぎたかったのだ。

「この広い図書館を使って、簡単な戦闘を行いたいの。そのためにパチェに許可を取ろうと思って」

 やはりその話題か。

友希は緊張で心臓を握られるような、そんな苦しい感覚を感じて胸に手をやる。

「・・・まさか、フランとその人間を戦わせるなんて言わないわよね」

「そうよ」

 友希の気も知らないで軽い物言いをするレミリア。そしてその発言に呆れ気味のパチュリーと理解できないでいる咲夜と小悪魔。

「ど、どういうことですかお嬢様⁉ なぜ友希さんが妹様と戦う必要が⁉」

「何を言い出すかと思えば・・レミィ。あなた冷静になりなさい」

 二人に間に挟まれたところで激しく首を縦に振っている小悪魔。

「みんな落ち着きなさい。この私が何の考えもなしにそんな無茶なことを言うと思うのかしら?」

「そうは言ってもね・・・」

 突然の思いがけない提案に頭を抱え黙り込むパチュリー。その様子を緊迫した表情で見つめる友希。

「友希がただの人間であることを考慮して、戦闘は弾幕ルールではなく弾幕と肉弾戦の混合よ。戦闘をする目的は二つ。『友希に幻想郷の厳しさを教えること』そして『フランの破壊衝動の発散』よ」

「もし本当に考慮しているのなら、人間にフランの欲の発散が務まらないことぐらいわかると思うのだけど」

 レミリアの説明のすきをついて呆れ気味に鋭く指摘するパチュリーだったが、すぐさまレミリアも反論する。

「パチェは知らないから当然よね~。この友希は、なんと水になる程度の能力の持ち主なの! つまり友希はただの人間とは違って、死なないのよ!」

「何ですって⁉」

 パチュリーが急に勢いよく立ち上がったことにより椅子が音を立てて倒れた。

その表情と瞳は驚きというより興味津々な子供のように輝いており先ほどまでの倦怠感はどこへやらといった感じだ。

 嫌な予感がする・・・。

 

 

 

「はぁ、何でこんなことに・・・」

 たくさんあった長机やいす、本棚はパチュリーの魔法によって綺麗に部屋の端に陳列し、完成した即席の簡素な闘技場の中でフランと共に向かい合って立たされている友希。

 どうやら友希だけではなくフランもこの決闘には納得がいっていないようで、もじもじと体をくねらせ目も泳いでいる。先ほど友希を襲ってきたときとは全く違うそぶりに、本当に自分を変えたいんだなと葛藤を感じた。

「あのー! ほんとにやるの⁉」

 ちょうど図書館の、外でいう一階のあたりの高さをぐるっと一周するように存在している、柵付きの見張らせる廊下。そこから見下ろしているレミリアに向かって再度確認をする。

「もちろんよ! これは必要なことなのよ!」

「パチュリーさんはさっき反対してくれたじゃないですか!」

 今度はその横のパチュリーにも助けを求めてみるが。

「ごめんなさいね、私の好奇心を止めることは誰にもできないわ。体が液状に変化するなんて、いったいどういった仕組みなのか。能力の全貌を早く知りたい!」

「そういうことよ。もしかしたらこの決闘であなたの能力のことがもっとよく分かるかもしれないじゃない。しっかりやりなさい!」

 交渉失敗だ。

 自分のためにやってくれているという一応の建前があるのであからさまには態度に表すことはできないが、それでも友希はドッと肩の力が落ちるのを感じざるを得なかった。

「浮遊する本棚、抑えきれない好奇心、ねぇ・・・」

「ん? 何か言ったかしら?」

「いや、何もない!」

 諦め、ため息をつきながらフランのほうへと向き直る。

 フランもそれに気づいたようで、うつむきながらも友希のほうへと顔を向けた。

「もうどうにもならなさそうだけど、戦うっていったいどうすれば? 俺はいいとしてもさすがに女の子を殴るわけにはなぁ」

「やっぱりやめようよ。きっと止まらなくなるよ、私・・・。友希も壊されるの嫌でしょ?」

「いざとなったら止めに入るから心配はいらないわ!」

 早く始めろと言わんばかりの大声で反応するレミリア。

 それに対して友希は「だったら今すぐこのバカげた状況を止めてくれよ」と心の中で全力でツッコミを入れる。

「だそうだ、フラン。俺さっき部屋で言ったよな。我慢できなくなったら俺で解消すればいいって。その言葉に嘘はない。俺は水になってどんな攻撃も受け流せるからな! ・・・多分」

 そう言って友希は自分の身体をパシャンとはじいて見せる。

 とはいえいったいどういうタイミングで水になれるのか、または生身に戻れるのかははっきりしていないことを忘れているわけではない。

 一瞬よぎった最悪の想像を払拭するように、思い切り頭をかきむしり必死に心の緊張を落ち着かせようとする友希。

「だから、思い切りやれ!」

「・・・わかった。私、頑張る・・・!」

 先ほどから動揺していたはずのフランだったが、覚悟を決めたのか肩幅ほどに足を広げて腕をだらりと脱力させる、なんだかやばそうな構えをとってみせるのだった。

「・・・・・」

 相手が相手だということもあるが、それ以上に見られている緊張感がすごい。

異世界での本格的な戦闘というただの高校生には未知の領域への恐怖も相まって、痛いほどの静寂が友希と図書館を包み込んでいた。

 そして、そんな空間に触発されるように友希もゆっくりと構えをとった、まさにその時だった。

「・・・っ⁉」

 何が起こったのか、あまりにも一瞬のことで友希は理解ができなかった。

 気合を入れて、構え、しっかりと眼前のフランを視界にとらえたその瞬間、とてつもない勢いですぐ目の前までフランが迫ってきた。そしてその一瞬、迫るフランの表情は完全に獲物を狩る猛獣のそれだった。

見開いた眼から覗くスカーレットの瞳、不敵に笑う口元、狂気に満ちたその顔を見た途端、友希の身体は考えるよりも先に逃げるという選択肢を選んだ。まさに本能が行動を起こさせたのだ。

しかし、フランの強襲を知ることができたとはいえ、それでも人間の避けられるようなそんなちんけなスピードではない。

勢いで吹き飛ばされ、転げる友希の右腕はまたしても肩からえぐれるように吹き飛んでいた。

「っはぁ! やばい!」

 予備動作なしでの急な回避によりびっくりした心臓をなだめるように急いで深呼吸を体にかける。そんな友希をさらに追い詰めるようにフランの第二撃がすぐさま襲い掛かろうとしていた。

「へえ、まさか本当に水なのね。すごく興味深いわ!」

 友希の気持ちも知らず呑気に感嘆の言葉を漏らすパチュリー。

 友希は友希でフランとは別に自分の身体がいったいいつ急に戻ってしまうのか、心配で仕方がなかったが。

「あははははははっっ!」

「うおおっ!」

 再びフランが友希めがけて狂気の表情で襲い掛かる!

 友希もそれに合わせ回避を試みるが、やはり体が速度についていかず攻撃の一端を受けてしまう。

 何とか目で行き先を追うことはできる、何とかできるのに、体が対応できない。もどかしすぎるっ。

「何とか腕を回復させないとっ」

 以前の教訓から思い切り床に欠損部分を押し当ててみる。が、回復もしなければ沈み込む様子もない。

「水が必要なら無駄よ。この空間には水はおろか水分すら存在を許していないわ。だって本に水分は天敵だもの」

「そゆことね! 納得しましたあぁぁぶなっ!」

 狂気の吸血鬼が縦横無尽に飛び回るこの空間では腕がないなんて命とりすぎる。

 フランの猛攻を必死に避けつつ(よけきれてはいないが)咲夜へと呼びかけを試みる友希。

「咲夜さん、お願いします水ください!」

「すみません、午後のために用意しておいた紅茶しかありません! それに・・・」

「友希! 戦闘中に誰かに助けてもらおうなんて、実戦じゃ通用しないわよ!」

 確かにそうかもしれない。だが友希はもう我慢ならなかった。

「このままじゃすぐやられる! そうなったら発散させるのも厳しさを教えることもできないだろ! 頼む!」

 厳しさに関してはすでに身に染みているつもりだがそれはこの際置いておこう。

「あっ!」

 飛び交うフランの攻撃が友希の左足を勢いよく切り裂いてゆく。そして両足もズタズタになっていくせいでまともに立つことすらままならないのだ。

 その様はまるで鳥に襲われる赤子のように痛々しいものだった。

「お嬢様!」

「~~っ、仕方がないわね!」

「どうぞ友希さん!」

 上階から友希めがけて午後のための紅茶を盛大にぶっかける咲夜。

 あたり一面に紅茶の橙赤色と澄み渡るさわやかな香りが広がる。

友希はすぐさまその紅茶に這いずり体からすべて吸収し、中身の欠如したすっからかんの制服の中に少し色のついた胴体を生やしていく。

自分で想像してもなかなかにグロテスクだが今の友希にそんなことを気にかけている余裕はない。

「うう、空中にほっぽり出されて襲い掛かられて紅茶ぶっかけられるって、こっち来てからさんざんすぎるだろ⁉」

「友希さん、頑張ってください!」

「あ、は~い!」

 咲夜の可憐なるエールに気分を良くしたのもつかの間、上層階にいる咲夜を見上げた友希の目に映ったのはそれだけではなかった。

「えっ、星⁉」

図書館の暗い天を覆う無数の色とりどりの光球。とその中にフラン。

その大文字に広げた四肢を勢いよく振り下ろした次の瞬間。

「まずいっ!」

 一斉に無数の光球が友希めがけて雨のように降り注ぐ!

「いっけぇぇぇ!」

「うおぁぁぁぁぁ‼」

一層無邪気なフランとは対照的に出したことのない音域の断末魔を上げる友希。

とにかく走ってはみるものの雨が避けられないのと同じように、上を見上げながら猛スピードで迫りくる光球一つ一つを避けるのには無理があった。またしても少しずつ少しずつ体を削り取られていく友希。

(これが弾幕ってやつか! とにかくどこかに隠れないと、あっという間にお陀仏だ!)

 ここで前に向きなおる友希だったがまたしても思いがけないものを目にしてしまう。

 まるで友希を捕らえんとする虫かごのごとく、きれいに網目を形成する弾幕群がそこにはあった。

そして格子の大きさや角度を変えながら迫りくるい、しかも気づかぬうちに四方八方を完全に包囲されてしまっていたのだ!

「禁忌『カゴメカゴメ』‼」

「行くしかないか!」

 これ以上逃げ回っていても何も好転はしないと意を決して真正面に飛び込み弾幕の間を縫わんとする。しかし、不慣れなことに加え特殊な動きを繰り返す弾幕に悪戦苦闘し、全身に食らってしまい体が吹き飛ばされてしまった。

 ばらばらに飛び散る水片を必死に吸い集めながら、勢いそのままに端に連なる本棚たちの中に飛び込む友希。

「っはぁ・・はぁ、きっつい!」

 咄嗟に移動させられ窮屈に立ち並ぶ本棚の隙間に置いてあった机の下に身をひそめ様子をうかがう。

フランはどうやらかくれんぼが始まったと思い徘徊を始めたようで、そう長くはもたないことを感じ取り段々と焦りが募っていく。

(心なしか体が重くて動きづらいような・・・。しっかりしろ俺、どうすればいいか考えろ)

 本来ならば外の世界で発揮したかったほどにぐるぐると高速で思考を巡らせる友希。

(そうだ。まだわからないことだらけのこの能力だけど、何か他に応用できることは?)

 不意に両手を前に出し、まじまじと観察してみる。

 するとあることに気が付いた。

能力のおかげで友希の体がうっすらと透けており、先ほど体中に浴びた紅茶の茶葉かすが水中と化した体の中をゆっくりと浮遊している。

(体が濁るって、なんかごろごろするな。体の中に不純物が・・・)

 友希の中で何かが引っかかる感触がした。

それから少しして。

「う~ん、鬼ごっこは楽しいけど、もう飽きちゃった。全部壊そうかなぁ、そうすれば探すのも簡単だし、もしかしたら死んじゃうかも。あはは」

自我は保っているようだが、それでも狂気の表情は絶やさないフラン。外の世界の感覚だとどうしてもわざとやっているんではないかとすら思ってしまうほどだ。

「まずいわ。いくら私の結界が張ってあるとはいえ、フランの能力となると結界ごと破壊されかねない。あの子も隠れたままだし、やっぱり無理だったのよ」

 さすがにしびれを切らしたのか、パチュリーが出した終了の提案をまだ納得がいかないような表情で思案するレミリアだったが・・・。

「まだですパチュリー様! あれを!」

 声を張り上げる咲夜の指す方を一斉に凝視すると、そこには何やら様子の違う友希の姿があった。

「・・・・・」

フランの後方にたたずむ友希。

「いったい何を・・・?」

 謎の行動に不思議さを隠しきれないパチュリーの目に映る先で、友希は大きく深呼吸をして見せる。そして。

「ふっ!」

 急に体を委縮させたかと思うと、友希の身体から大量の蒸気のようなものが一気に噴射されていく。

「あれは・・・もしかして、やはり友希の能力にはまだまだ可能性が⁉」

 若干興奮気味になるレミリアを尻目に目を丸くしている他一同。

「すご~い! 何が起こるの⁉」

ただ自らの知りえない何かが目の前で起きていると好奇心を掻き立てられ、その場でぴょんぴょんと飛び跳ねながらさらに高揚した表情をするフラン。

「⁉」

 だが、傍観していた者のみが気づいていたのだ。

 蒸気のほうを見ているフランの背後空中で、睨みつけ、振り切れんばかりに湾曲した友希の右足がフランを捕らえていたのを。蒸気の中はすでにもぬけの殻だった。

「きゃぁっ!」

 直撃だ。人間技とは思えないくらいに、恐ろしく早く鋭い蹴撃がフランを襲う!

「・・・っ‼」

追われ続けていた友希の反撃が、今始まる!

 

第六話 完

 




この話を見て「最高」だと言ってくれた心優しい方、「最低」だとおっしゃる目の肥えた方、また評価する程の事でもないというお忙しい方の皆々様。何はともあれこの話を見てくださってありがとうございます。作者のシアンです。

今回初めて後書きを添えてみましたが、とりあえずひとこと言わせてください。

「最後のは某海賊マンガのギア○○ではありません!」

参考にしていないと言えばうそになりますが、友希の強化や考えはできるだけ差別化しているつもりです(汗)。もちろん今回も今後も。

初めてなので少し長く話してみますが、「自分の頭の中の想像を何とか形にして誰かに届け楽しんでもらいたい」そう考えて始めた二次創作小説の投稿ですが、なにぶん自分に文章力がない! 自分で納得のいくように描写できなかったり皆さんに思いどおりの絵や感情を伝えきれている自身もありません。これは小説の評価にも直結するはずです。
さらに追い打ちをかけるように小説を書く時間が全然ないのです! 自分がまだ学生であるということもあって学業だけで一週間に何日も徹夜をする始末。
自分でいうのもなんですが想像力には自信があり、もうすでに頭の中には大量の設定や話のアイデアが溢れかえっているのですが、それに対して出力があまりにも遅すぎると頭を抱えています。
しかしながら想像し書き出し現実に産み落とすこの作業は今の自分の支えにもなっているのでやめたくはないのです。

今はまだ不完全な話の内容で不快に思われることも多いかと思いますが、どうか暖かい目で見守ってやってください。だってまだ仮面ライダー出てきてないもん! そこがある意味メインだもの! 
きっとこの先友希の辿る物語はもっと面白く刺激的なものになることでしょう。(プレッシャー)
まだ皆さんからの評価を見るほどのメンタルはありませんが、それでも一生懸命物語を紡いでいきたいと思います。これからも東方友戦録をよろしくお願いします。

ご傾見ありがとうございました!

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