悪鬼を滅する鳳   作:キラメイオレンジ

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思いつき&勢いで投降した作品ですがよろしくお願いします!


第壱幕 (きのえ)隊士・赤羽大地

時は大正。長きに渡る鎖国が解かれ、諸外国から華やかな文化が伝来し、急速に様変わりする日ノ本の国にって、夜の闇に紛れ人々の血肉を貪る存在がいた。

 

その存在の名は鬼――千年もの昔に誕生した1人の始祖により増やされた人のなれの果て。

 

太陽の光、もしくはその輝きを宿した刃で頸を斬り落とされない限り決して滅びぬ不滅の肉体と、人間のみを糧とするおぞましい性質を備えた異形の生物。人類の天敵。

 

鬼の始祖【鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)】によって増え続けるその闇に生きる怪物により、これまで何千何万、数えきれないほどの命が奪われてきた。

 

そして今宵も――

 

・・・・・

 

「ハァ、ハァ……! いやっ! こないで! 助けてぇえええええ!!」

 

通り慣れた家から程近い夜道を、1人の少女が必死に駆ける。

年の頃は14、5歳、間もなく嫁入りという女らしさが増す年頃だ。

 

しかし今、彼女を追い駆ける魔の手の正体はそうした年若い乙女の純潔を狙う暴漢の類ではない。求めるのが彼女の純潔ではなく、血肉。

 

肉欲ではなく食欲に付き従い追いかける人ならざる化物――鬼である。

 

「ヒヒヒッ、なかなか粋の良い獲物じゃねぇか? いいねぇ~精々存分に泣き叫んでくれぇ。泣き喚く娘の悲鳴を聞きながら生きたまま肉を食らう。それこそが最高の愉しみなんだぁ」

 

醜悪な下卑た笑みを浮かべながら人気のない竹林の中に娘を追い込み、その歪んだ泣き顔を観ながら昂揚する中年男の鬼。“人であった頃”から、何人もの女性を強姦した後、殺めてきた生粋の外道である彼の性質は、“始祖”との出会いによって鬼になった後、益々その醜さを肥大化させていた。

 

文字通り『女性を食い物にする悪鬼』なのだ。

 

「ヒヒ、竹林とは都合がいい。このまま夜明け寸前までじっくり生きたまま食ってやる。心配するな~? 俺は得意なんだ。なるべく死なせないまま女の肉を食うのがぁ。朝までたっぷり楽しもうじゃねぇえかぁ!」

 

「いやぁあああああああああああ!」

 

追い詰められ、目から大粒の涙を流しながら絶望の悲鳴を上げる少女。

 

その時、少女の涙で滲んだ視界に、新たな1つの影が現れた

 

白地に“赤い羽”の刺繍が施された派手な羽織を纏い、廃刀令が施行されて久しい大正の世にあって、腰に日本刀を下げた。長身の偉丈夫だ。

 

「ゲスな戯れはそこまでだ。――悪鬼。もうお前は誰も殺せない。俺が、殺させない」

 

「っ! その黒い服、刀……テメェが“あのお方”が言っていた“鬼狩り”とかいう連中かぁ!? クソが! 男が俺の前に立つんじゃねえ!!」 

 

女性を嬲るという愉しみを最も嫌いな巨躯の男に邪魔されて怒り狂い、鋭い爪を振り上げながら鬼狩りと称される赤羽の羽織の青年に襲い掛かろうとする悪鬼。

 

対し、青年は落ち着いた様子で腰から刀を抜き、『コォオオオオ』という独特の呼吸音を響かせながら腰を少し落とし、“鬼を滅する刃”を放つ。

 

「――鳥の呼吸 参ノ型 飛燕(ひえん)

 

刹那、迫る悪鬼に繰り出されたのは2つの斬撃だった。

 

一太刀目は青年自身に向かって振り降ろされた爪撃を鬼の両腕ごと断ち、二太刀目は鬼の唯一の急所である(くび)を切断。

 

鬼の視点からすれば、邪魔に入った男の五体を引き裂くその瞬間に、両腕と頭が身体を泣き別れした。そんな信じ難い状態だった。

 

「なぁああああああああ! バカな!? 俺は鬼だぞ!? 太陽以外じゃ決して死なない不滅の存在! あの方に選ばれた特別な存在!!」

 

(きみ)は選ばれた存在でも、不滅でもない。ただ、一匹の怪物によって醜く作り替えられた。滅ばねばならない存在だ」

 

“チン!”と、刀を鞘に納める音を響かせると同時に、頸を落とされた悪鬼は断面から炭化し、消滅する。

 

月明かりが照らす夜の竹林には、青年と腰を抜かした少女2人だけが残された。

 

「立てるか?」

「ひゃ、ひゃい! あ、ありがとう……ございます……」

 

青年から手を差し伸べられた少女は、声を裏返しながらも恐る恐るその手をとって起き上がった。

 

目の前の青年は、自分をあの得体の知れない化物から救ってくれた。

 

頭ではそう理解しつつも、人ならざる動きを見せた先の怪物を瞬く間に滅した青年もまた、少女の視点から見れば“常識の枠からはみ出た化物”に相違なかった。

 

本音を言えば、恐ろしかった……。

 

「カァ! カァ! 悪鬼討滅! 悪鬼討滅! 続イテ次ノ指令! 赤羽大地(アカバネダイチ)! 至急、2ツ隣ノ山へ迎エ! 若手隊士ガ苦戦中!!」

 

「ヒャアア! カ、カカカ鴉が、喋った!?」

 

「おい、あまりビビらせるな(あきら)。――2つ先の山だな? 分かった。(かくし)の到着は?」

 

「カァ! 間モナク!」

 

「分かった。すまないお嬢さん、出来れば家まで送り届けたかったが、また次の仕事が入ってしまった。もうすぐここに俺の仲間が来るはずだから少し待って送って貰ってくれ、全身黒づくめではあるが、大丈夫だから」

 

未だ自身に恐怖の感情を抱いている少女の感情を理解しつつ、青年は彼女に気を配るだがその様子見ていた晃と呼ばれたカラスは――

 

「サッサト向カエ! コノ幼女シュミ!」

 

「違うわバカタレ!! 今度同じこと言ったら焼き鳥にするからな!?」

 

厳格な主従関係などあったものではない物言いをする鴉を怒鳴りつつ、青年は少女に背を向け、未だ宵闇が支配する竹林の中へ姿を消した。

 

時は大正。

 

文明開化により急速に発展を遂げる国にあり、千年も前より人の血肉を食らう悪鬼が夜を支配する日本にあって、【悪鬼滅殺】の信念を心に刻み、言葉を喋る鴉を従え、陽の光を宿した刃を振るう剣士が居た。

 

人は彼らを【鬼狩り】と呼んだ。

 

 

 

 




赤羽(あかばね) 大地(だいち)
・本作の主人公。23歳。代々【鳥の呼吸】を使う隊士を輩出してきた赤羽家の養子。

・幼い頃、故郷の村を鬼に壊滅させられ、自身も食われかけたところを現在の養父【赤羽 剛三郎(ごうざぶろう)】に救われ、身寄りがなかった為、彼の養子として引き取られる。

・剛三郎自身、大地を自分の後継にするつもりはなかったが、命を救ってもらい家族同然に扱ってくれた赤羽家に恩を返したいという想いと、自分の様に鬼に家族を奪われる人間を1人でも減らしたいという想いから鬼狩りの道を志す。

・心優しく、犠牲者の怒りや悲しみに寄り添う強い共感性を持つ。鬼狩りとして才能は並程度だが、生まれつき恵まれた体格(身長180㎝)と血の滲む努力を重ね4年の修行の末に最終選抜に合格(当時14歳)。現在の階級は柱を除き最高位である【(きのえ)】。

・最終選抜合格の祝いに養母である明菜(あきな)に仕立ててもらった白地に赤い羽根の刺繍がされた羽織を纏う。

・日輪刀の色は臙脂(えんじ)色=赤に近く、【炎の呼吸】の派生である鳥の呼吸との相性はまずまず。刀の構造は切っ先から峰の半ばまで刃がある“小烏丸造(こがらすまるづく)り”。

・先述の通り才覚は凡庸だが、自身でもその事を自覚しているので努力を惜しまず鍛錬に余念がない事に加え、極めて慎重な性分の為、初見殺しが多い血鬼術(けっきじゅつ)を見抜く洞察力に長ける。鳥の呼吸は相手が攻めてきた時に放つ“返し技”に秀でている為、相手の動きをじっくり見切った後に反撃の人達で仕留めるカウンター剣術の使い手。

・凄まじい速度で隊士が死ぬ鬼殺隊にあって9年間五体満足に生き延びただけあり、百戦錬磨のベテラン隊士。実は甲に昇格して既に50体の鬼を討滅し【柱】への昇格条件を満たしているが、その時点で柱は既に上限の9人揃っている(原作の面子)為、“柱候補”止まり。また、幸か不幸か9年間の隊士生活の中で十二鬼月と交戦経験は僅か2回と極めて少ない。

・2年ほど前に(ひのと)(10段階中4番目の階級)時に当時の下弦の肆と会敵し、数名の隊士と共に重傷を負いつつもこれを討滅。その際に一気に甲に昇格した。

・大地自身『自分は柱の器じゃない』と自覚しており、昇格には興味がない。自分の役目はあくまで命尽きるまで人を守る刃であり続ける事と割り切っている。

・義妹である優那(ユナ)からは想いを寄せられ、義父母からもいずれ婿入りして欲しいと思われているが、本人は赤羽家への恩義が強過ぎて『畏れ多い』と思っている。

・元が神職の家系でもある赤羽家では代々、2人の子供に鳥の呼吸を伝授し、1人は鬼狩り、もう1人は巫女ないし神主として年に一度の神事で型を披露する風習があり、優那の指南役を任されている。本人曰く『優那お嬢様は絶対に鬼狩りにしない。死んでもさせない』


(あきら)
・大地の鎹鴉。雄。非常にお喋りで無駄に陽気。主ある大地を若干舐め腐っている。
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