ホラーゲームに転生させるとか、神は俺を嫌っているようだ(Re) 作:かげはし
それは、カラオケ屋での帰り道。紅葉からゲームについていろいろと話を聞いた後の事。
夕日丘高等学校に入学してからまだ三日も経っていないが、一年黄組の中心人物であるとはっきり断言できる男、星空天。紅葉の話では彼は直観力に優れている夕黄ゲームの主人公であるとのこと。
そしてこの男の実家関連のせいか霊的現象に強く、境界線の世界で死んだとしても、現実世界でポルターガイストに襲われても生き残ることが出来る程度には生存力が特化した人物である。
それは全て紅葉からの情報だが、それはどれだけ正しいのかまだ分からない。
幽霊がいるかどうかはまだ見ているわけじゃないのではっきりとは分からないが、妖精がいる以上可能性としては高い。
俺を見ている星空は、手を伸ばして言うのだ。
「手を組まないっすか?」
「手を組むって言われても……急に何の話だい?」
「あーすっとぼけなくてもいいっすよ。俺分かってるんで」
「……何で僕なのか話を聞いても?」
「それよりその変な口調止めてくれないっすかね。男の猫かぶりなんて気持ち悪いだけっすよ」
「君の口癖もなかなかのものだと思うけど? ……まあいい。その目を見る限り嘘はついていないようだ」
何故かは分からないが、素で話すことに抵抗がないため猫をかぶるのを止めた。
「星空、お前は夕日丘高等学校で何が起きているのか全て理解しているのか?」
「んー。それは自分に聞いてみてくださいっすよぉ」
「はぁ?」
「ああいや、なんでもないっす」
何かを隠してはいる。
しかしそれを話すかどうか悩んでいるのだろうか。
観察している限り、明らかに他の生徒とは違うと思えた。
現状、一年生の中で唯一普通でいられるのは青組のみであり、それ以外の赤組と黄組は妖精によるゲームを強制体験させられたせいか、正気を失っているような状態になっている。
しかしそれを先生や保護者は何も言わない。何も感じていないのか違和感を抱かないように弄られているのか。
とにかくこの現象は妖精による行いだと思っていよう。
────そう考えた、瞬間だった。
星空が俺の目を見て笑ったのだ。
「敵が妖精だけだとは限らないと思うっすよ」
「っ……今俺の思考を読んだな?」
「読みやすいのが悪いんでしょ。俺はただ勘でアンタが考えている内容を理解できたってだけっすよ」
「それはもう勘じゃないだろ」
「ハイハイ。それでどうするんすか? 俺と手を組むの、組まないの?」
俺は星空の提案に懐疑的に思えた。
訝し気に見つめている俺に、彼は何も言わない。ただ何かを言うのを待っているように見えた。
……正直に言えば、わざわざ手を組む必要性が理解できない。
だって今、夕日丘高等学校で起きているのは殺人だ。狂気的な死と隣り合わせの日々だろうに。生徒会の人々も、それ以外の先輩たちも全員が受け入れ、それが当然だと思い込んでいるすべてが理解できていない。
だからそれらも全部、妖精が何かしたのではないかと────死の恐怖や生存本能を鈍らせる何かを俺たちに植え付けたのではないかと思っていた。
紅葉はこの世界をホラーゲームの世界だと少しだけ思い込んでいるように、この男も何かしら実感しきれていないのだろうか。
手を組むなどと言えるような状況じゃないと思う俺が間違っているのだろうか。
(……いや、違うな。無条件で手を組むわけにはいかないのか)
この男が俺を選んだ理由。手を組むと言った意味。
それら全てに何か理由があるはずだ。
「手を組んだ場合のメリット、デメリットを教えてくれ」
「まあそりゃあもちろん、アンタが想像している通りっす。知りたいことを教えてあげてもいいっすよ? それにアンタにとってのデメリットはないっすねぇ」
「……つまり、聞かれたら答えるがそれ以上の事は教えないと言いたいんだな。デメリットもそうだ。俺に対してはないが、他はあるということか」
「さーって、どうっすかねー」
目を逸らしわざとらしく鼻歌を披露する星空に訝し気な目で見つめる。
その表情と態度からして、隠し事は多いはず……。
ならば、と。
「分かった。手を組もう」
「うわーマジっすか。やったぁ!」
何も信用はできない。
でもこのまま何もしないでいては手遅れになる可能性が高い。
ならば自分の手で何が起きているのか見つけないといけない。
紅葉秋音だけじゃない。それ以外の人間も利用して、何かを探らなくては。
「じゃあちょっと俺んちに来てくださいっす」
「何故だ?」
「ちょっと死んでもらうんで」
今日の天気は良いですねと言っているような軽い発言に、耳を疑った。
「…………どういう意味だ」
「アンタの中にいる寄生虫排除っすねー」
「はぁ?」
「一瞬とはいえ、妖精の傍に居たのがいけないんすよ。ほら、さっさと死んじゃいましょうか」