ホラーゲームに転生させるとか、神は俺を嫌っているようだ(Re)   作:かげはし

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第十四話

 

 

 

 

 さっさと死んじゃいましょうかと言われて頷く人なんて、他人を心から信じることが出来る馬鹿か好奇心旺盛な感情のままに突っ走る阿呆と限られている。

 鏡夜はその中の一人になるつもりはなかった。

 

 死んでくれと言われて頷くことはしない。そのために男と取引を持ち掛けたわけではない。

 ただ生き延びるために、学校で何が起きているのかを知るために。

 寄生虫だと言われても、鏡夜自身が納得できる話をしてくれなければ絶対に頷くつもりはなかったのだ。

 

 

(背後にもう一人、女がいたな……)

 

 

 苛立ちのままに鏡夜は激しく舌打ちを鳴らす。

 星空だけじゃなかった。鏡夜の後ろから狙った誰かがいた。振り向こうとした時に何かの衝撃が走り、気が付いたらここに居た。

 

 今いる場所は四角く狭い部屋の中。

 大人が四人程度入れる狭さの空間に閉じ込められている。

 天井には少々古びた照明がついている。しかし明かりが切れかかっているのか、数秒に何回か明滅し鏡夜の視界が真っ暗になる時があった。

 鏡夜は自身のズボンや上着のポケットを探るが中には何も入っていなかった。武器になるようなものも、スマホを明かり代わりにして使うことすら出来ない。素手で何ができるのか鏡夜は冷や汗をかく。

 

 

「俺を殺すために、ここへ連れてきたってことか……」

 

 

 死の恐怖。何が起きるのか分からない恐怖に足がすくむ。浅く息を吐き、汗をぬぐい周りを見た。

 誰かがいるわけではないのにざわざわと何か背中を這いずり回るような嫌な感覚。

 鏡夜を見るような、誰かの視線があると錯覚する。

 

 不意に、何かが動く音が聞こえた。

 カチリという音に肩が揺れ、その音の発信源を見た。

 その瞬間感じたのは浮遊感だった。

 部屋ごと落ちているわけではない。しかし何処かゆっくりと下へ沈んでいるような感じがする。

 

 何が起きているのか分からない。

 恐怖に体中が支配されて行くような感覚に襲われる。

 

 

「……大丈夫だ。落ち着け、こういう時こそ考えるんだ」

 

 

 周囲をもう一度用心深く観察する。

 ここはただの部屋ではない。硬く閉ざされた出入り口は二枚扉のようになっている。その隣にはいくつかの数字が刻まれたボタン並んでいるようだがそれがすべて数字かどうかは所々掠れていて読めないため分からない。

 

 そのうち一つだけ、明るく点滅するボタンがあったがそれに書かれていたのは『蝨ー荳倶ク?髫』の文字。何と書かれているのかは分からない。

 

 動いている感覚、複数のボタンとそのうちの一つが光っていること。そしてこの部屋の扉の特徴からから察するにここはエレベーターの内部なのだろう。随分と古びてはいるが、いったい何時作られたものだろうか。そして何処へ向かっているのだろうか。

 

 

「下に行かせてどうするつもりだ?」

 

 

 頭の中であの「さっさと死んじゃいましょうか」という星空天の軽薄そうな声がリピートされる。あの時、あの言葉の通りだとすれば鏡夜はここで死ななければならない。

 しかしどうやって。どうしてこの場所に連れてこられたのか。そんな疑問が思い浮かんでは消えていく。もしも目の前に星空がいたなら胸ぐらを掴んで思いっきり問い詰めてやりたい気分に駆られていた。

 

「……あれ」

 

 気が付けば、いつの間にかエレベーターの扉が開かれている。

 照明が切れて真っ暗になった瞬間が数秒あった間に開かれたのだろうか。

 

 しかし真っ暗になっていた間、何も音はなかった。浮遊感だってそのままあったはずだ。

 明るくなった瞬間、その一瞬ですべてが切り替わったような感覚に襲われたのだ。

 

「……まあ、妖精も生徒たちを別世界へ連れて行くからな。時間が飛ぶこともあり得るか」

 

 問題は、一瞬ですべてが終わっていたという状況。それがまた起きてしまった時。気が付けば一瞬で全ての景色が一変し、化け物に喰われかけている真っ最中だとしたらと考えるとエレベーターから外に出るのが躊躇われた。

 

 きっとこの状況における最終目的は神無月鏡夜を殺すこと。鏡夜を死なせることを前提に動いているのなら、彼が注意深く周りを見てそこから一歩も動かずにいる状況は仕方がないと言えよう。

 しかしエレベーターの中にいても状況が良くなるとは限らないと鏡夜は察する。

 

 よく見れば照明の明滅が激しくなっている。数十秒に一回、五秒間ほどだったのかいつの間にか数秒に一回、瞬き程度の速さで暗くなるようになった。

 しかもいつの間にかボタンの文字が変わっていた。数字が消えて、『鬲ゅ?陦後″蜈』という文字に変わっている。それが何を意味するのかは分からないが、ここに居たら駄目だという直感だけは働いた。

 

「っ……」

 

 鏡夜はエレベーターから外へ一歩踏み出す。ゆっくりと慎重に、周りを確認してから出ようとしていたが、いつの間にか扉が閉まるために動きかけていたことに気づき慌てて外へ出ることにした。

 

 エレベーターが閉まるのを見届ける。

 そして鏡夜は背後を見た。

 そこは鏡夜が見た中でとても大きな木造建ての内部の何処か。

 

 エレベーターから真っ直ぐ続いている奥は暗すぎて何があるのかはっきりしない。

 薄暗いが足元に照明がいくつかついているため一応視界は良好。真っ暗になることはないだろう。

 

 まずは周囲を確認するためにと、鏡夜は周りを注意深く観察する。

 壁を触ってみると、赤黒いものが飛び散っているのが分かった。赤黒い液体が壁から天井にまで飛び散るほどの何かが起きたというのか?

 

 

「ここに、誰かがいるのか……」

 

 

 まるで招かれているかのような感覚。

 ごくりと唾を呑み込んだ鏡夜は、もう後戻りが出来ない状況に歯がゆく思いつつも前へ踏み出す決意を固めた。

 

 

 

 

 

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