ホラーゲームに転生させるとか、神は俺を嫌っているようだ(Re) 作:かげはし
ゲームステージ『祭壇』、になりますね。
一歩一歩と進むごとに感じるのは圧迫感。窓もなく出口が見えない状況なせいか何時になったら終わるのだろうかと不安が過ぎる。
殺されるかもしれない状況に、逃げ出したくなる。前へ進まずこのまま立ち止まっていたい。星空が来る可能性をかけて待ち続けたいと思ってしまうぐらいだった。
しかしそれでもなお、前へ進むのには理由があった。
後ろを振り返ってもエレベーターがあった扉が見えなくなる程度の距離まで進んで、一度戻ろうかと思った時に────音がしたのだ。
それは軽やかな音だった。チンッという、何かが到着したような音。
エレベーターが止まり、鉄が擦れつつも扉が開く音が響いた。その奥、何かの息遣いが聞こえたのだ。
思わず逃げるために一度駆けた。しかし背後にいるソレは鏡夜が一度立ち止まり振り返っても姿が見えない距離に居た。立ち止まれば奴は止まる。進めば動く。そういう存在らしいと鏡夜は理解する。
よくわからない何かを見るために後ろへ後戻りするつもりは、鏡夜にはなかった。
しかしよくわからない何かがいるせいで緊張感と死への恐怖で心が疲弊する。前に進んでも、走ってもなお出口は見えないそれに小さく息を吐いた。
物理的観点からしてこの空間はおかしいと思える程度には長距離を進んだはずだ。それなのにまだ出口は見えない。
過去、誰が言っていたのか分からないが「無限ループ」と言う言葉が頭を過ぎった。もしもここの空間が境界線の世界と同じような構造をしているとして、どこかの空間と空間が繋がっているせいで永遠に進むことが出来ずにいるとしたら。
このまま倒れるまで前へ進んでしまう意味はないのではないか。
逃げられる体力があるうちに、背後にいるであろう何かと接触した方が無難じゃないだろうか。そう鏡夜は考える。
「……チッ」
本当は後ろを振り向きたくはない。
自分とは違う荒い息遣い。時折うめき声のようなものまで聞こえてくる。鼻がツンと突き刺さるような刺激臭が漂い、周囲の薄暗さと壁に飛び散る赤黒い何かのせいで惨劇が待ち受けているのではないかと嫌な想像をしてしまうのだ。
鏡夜には見えない位置に佇む影。その正体は分からない。
理解しなくてはならない。
後ろをじっと見つめていても、エレベーターの時のように状況が悪化するだけかもしれない。死ぬかもしれない恐怖に小さく息を呑み、やがてゆっくりとその背後にいるであろう何かに向けて進み始めた。
『────
→──
───』
鏡夜は反射的に周囲を見渡した。
急に何かの囁き声が聞こえたような気がしたのだ。うめき声を上げる何かではない。それとはまた違う奇妙な声だった。機械音のような音にも似たものだった気がすると、鏡夜は小さく首を傾ける。
「なん、っ────!!?」
何だったのだろうかと、独り言を呟くはずだった。
しかしその声は目の前に広がる異様な光景によって言葉が詰まり、衝撃となって襲い掛かった。
鏡夜の前に広がっていたのは一本道ではない。
陰に潜む何かでもない。うめき声も聞こえなくなっていた。
ただそこにあったのは数本の蝋燭に火が灯されている小さな部屋。エレベーターに入っていた時の空間より広く、血生臭い刺激臭に鏡夜は思わず鼻を手で覆った。
後ろを見るとそこにあったのは一つの扉だった。それも大昔に使われていそうな古びた障子だ。部屋の壁もまた赤黒く汚れている。
そして一番目を奪われたのは────鏡夜の目の前、部屋の中央に置かれた棺だった。
その棺の上に座り、眠っている人間がいたのだ。
静かに肩が揺れているため、死んでいるわけじゃないと理解する。遠くから手を叩いて様子を見るが、彼女は身動ぎ一つもしない。ゆっくり近づきその腕を掴んで揺らすが、それでも起きる気配がなかった。
「……まさか、彼女が白兎か?」
真っ白の髪の毛。目の色が赤ければ兎を想像させる見た目をしている少女。着ている服は夕日丘高等学校のセーラー服だ。しかしその色は本来の制服とは違い真っ白で、棺も合わさってまるで死装束のように見えた。
彼女の見た目、その正体については紅葉秋音から話を聞いてる。そう鏡夜は入学式から今までの全てを思い出していた。
(あの時の女と同じだ……)
紅葉秋音と出会う前、夕日丘高等学校で起きている異常事態に気づく前の鏡夜はこの少女と出会っていた。教室のクラスメイトに挨拶をしつつ観察し、そうしている間にやってきた少女。しかしその時は制服は真っ黒だったはずだ。女子生徒が来ているセーラー服と全く同一のものだったはず。
しかしその入学式の後彼女の姿は見かけなかった。先生などにも話をしつつ、鏡夜は全校生徒の顔と名前を一致させていた。
その結果分かったのは、彼女が夕日丘高等学校の名簿に載っていないのだということだった。
紅葉秋音の話によってあの真白の少女が冬野白兎と呼ばれる人外だと分かったため調査を終えることが出来たが……。
「何でこんなところにいるんだ」
問題は、どうしてこの場所に彼女が眠っているのかについてだった。
ここは境界線の世界とは違うはずだ。
そもそも何でここにいるのかすら分かってはいない。でも今関与しているのは星空天のはず。それなのにどうして。
眠っているだけの人間の少女に安堵していた心が凍り付く。この状況を考えるにつれて分かってしまうゾッとするような異様な事態に鏡夜はこぶしを握り締めた。
障子の先を見ようという勇気はなかった。それだったら、少女を起こしてしまった方が良い気がする。
鏡夜はそう決意し手を伸ばそうとした時だった。
『────
──
→───』
また、奇妙な音が響いた。
何だろうかと周りを探すが何もいない。とりあえず嫌な感じはしないのでほっと息をついた瞬間だった。
《 忘 れ る な 》
「はっ?」
真白の少女が低い声を上げ、目を開けていた。その目に生気はなかった。まるで化け物のような目だ。こんな場所じゃなければ、何も起きていなかったなら────赤色が兎を思い起こさせる、まん丸としているただの可愛らしい少女の瞳だとしか思えなかっただろう。
しかし何故なのか、その目を見続けてはいけないような気がした。
にっこりと笑ったそれに鳥肌が立ち、鏡夜は彼女から離れようとした。
しかしそれを少女は許しはしないのだろう。鏡夜の手を掴み、ギリギリと折れるぐらいの強さでもって引っ張ってくる。
「ぐっ、あ……!!」
激痛に耐え、汗を流す。掴まれていない方の手で女に向かって強く殴打を繰り返すが、それでも彼女は手をギリギリと握りしめてくる。
このままでは折られてしまう。骨が鳴り、バキッと嫌な音が響く。
鏡夜は必死に抵抗するが、引っ張り続けてくる少女の力が強く離れることが難しい。
むしろ彼女に近づいているような気がした。引っ張られ近づかれる。それに酷く恐怖する。
「やめろ離せ! 俺はここで死ぬつもりはないんだ! 離せぇぇ!!」
その声に、彼女は笑う。
まるでとっても楽しんでいるかのように。
「はい、そこまでよ」
聞こえてきたのは、あの真白の少女とはまた違う女の声だった。
、
、
、
、
、
、
、
、
、
、
、
、
、
、
、
ゲームステージ『祭壇』
プレイヤー、神無月鏡夜
状態(妖精警戒)、(海里の■■)
序盤『生存』
行動パートへ進みます。
プレイヤーを動かして■■から脱出を目指してください。
ゲームは現実の時間と全く同じです。今回のゲームステージで死ぬことは許されません。リトライは出来ません。リセットも不可能となります。死にたいならそのまま動くな。死ね
ゲームを進めますか?
→はい
いいえ
『はい』が選択されました。
必要な選択肢をお選びくださ────