ホラーゲームに転生させるとか、神は俺を嫌っているようだ(Re)   作:かげはし

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第十六話 

 

 

 

 聞こえてきた女性の声と同時に、目の前にいる真白の女が悲痛の叫びを上げるのが見えた。

 突風が吹き荒れ、思わず目を閉じた。いつの間にか手を離されていたため、鏡夜はすぐさま数歩ほど離れる。

 

 目を見開いていられないほどの風は、女の悲鳴と共にかき消えていった。

 

 いつの間にか女はいない。

 棺があった場所は何もなく、代わりに扉があった。後ろに見える障子と同じだ。

 

 

「なん、だったんだ……?」

 

 

 周囲を見渡すが何もいない。誰もいないのだ。

 あの女だけじゃない。鏡夜の近くで聞こえてきた声の主すら見当たらない。異様だと思えるほどの静寂な空気に包まれる。聞こえてくるのは鏡夜自身の荒い息だけだった。

 

 誰もいないためその場に留まることも考えるが、先ほどから異様な事態が続いているため鏡夜は前進することを選んだ。

 この場所で襲われたのだからまた襲われるかもしれない。この部屋にくる以前、あの背後から迫ってきそうだったよくわからない生き物がこちらへ近づいてきているかもしれない。もしもまた襲われたら次はちゃんと逃げ切れるだろうか。

 逃げられなかった場合、自分は死ぬのだろうか。そんな恐怖に身体が支配される。

 

 薄暗い部屋。影の部分から誰かが見ているかもしれない。何かがすぐこちらへ近づくかもしれない。そんな恐怖心と戦いつつも、少しだけ息を整えた鏡夜は目前にある障子に手をかけることにした。

 

 ゆっくりと開かれた先に見えたのは明るい景色だった。

 あまりの眩しさに瞼を一瞬閉ざした。そのせいだろうか。

 

 

「……またか」

 

 

 気が付くと鏡夜の周りはまた一変していた。

 今度は部屋じゃない。古びた景色に切り替わっていたのだ。

 

 廃屋というよりは、神社だろうか。ひび割れた鳥居に、木の根っこや蔦が巻き付いて倒壊寸前の小屋のような建物が見えた真正面に鏡夜は立っていた。真後ろを見てもそこはどこかの道路となっていて、全く知らない建物やら電柱やらが立ち並ぶのが見えた。

 地形的に見れば他より高い場所にあるのだろう。木と建物の間から見える夕日……もしくは朝日はとても眩しく、輝いて見えた。先ほどの恐怖心が全て取り払われるかのようだ。

 

 ここは一体何処だろうか。何故この場所へ連れてきたのだろうか。

 鏡夜はその答えに、心当たりがあった。

 

 先ほどの真白の少女。アレが冬野白兎だとすれば、ここはフユノ神社ということになる。

 紅葉の知識通りであればここはある意味一番来てはならない場所。

 

 

(星空は一体俺に何がしたいんだ。俺に何を求めているつもりなんだ……)

 

 

 この状況は全て星空が仕組んだもの。妖精の仕業ではない。

 一度死ねと言いつつも、死にかけたことはあってもまだ本当の意味で死んではいない。

 背後にある道路から人が来る気配はなし。例え太陽が見える地上で、明るいせいで恐怖心がなくても懐疑心だけは消えることがなかった。

 

 夢でも見ているのかと思えるほど異様な現象が続き過ぎて頭が痛くなる。そう鏡夜は眉間に手を当ててゆっくりもみほぐしつつ考えていた。

 

 

「妖精に頭を弄られたかもしれないってことだよな……なら何故すぐに処置をしない。今までの全てを見せて俺に何をさせようというんだ。今のこの状況も、無駄じゃないってことなのか?」

 

 

 神社の先に何があるのか。

 何を見せようと言うのだろうか。

 

 恐る恐る鳥居をくぐり抜けていこうとした、瞬間だった。

 

 

「ここがすべての始まり。貴方たちにとっての、最初の悪夢。……そのせいで世界の因果は切り替わった」

 

 

 バッと背後を振り返ると、そこにいたのは人間だった。

 つい先ほどまでは人なんて誰もいなかったはず。だからきっと普通の人じゃないんだろう。

 そう鏡夜は結論付けた。

 

 夕日丘高等学校の制服を着た少女だったけれど、それでも鏡夜は彼女に近づこうとしない。

 冬野白兎の件があること、今ここに人がいること自体おかしいことからして彼女はただの人間じゃないと鏡夜は警戒する。

 

 

「君は一体誰だい?」

 

「それはこちらの台詞よ。貴方は一体だぁれ?」

 

「僕は────」

 

「ああ、神無月鏡夜だなんてありふれた答えはいらないわ。それ以外の答えよ」

 

「はぁ?」

 

 

 断言するかのように言う少女に小さく首を傾ける。

 鏡夜は何を言われているのかが分からなかった。どう答えればいいのか迷っている間に、彼女は小さく息を吐いて鏡夜を見る。

 

 その目はとても冷めたものであった。

 

 

「別に私はあっ君と桃ちゃん以外……そうね、貴方の事なんてどうでもいいって思っているのよね。ただあの子たちが助けたいって望んだから、私はここへ来ただけなのよねぇ」

 

「……つまり、星空の関係者か」

 

 

 少女の声に嘘をついている感じは何もなかった。

 本当にどうでもいいのだろう。鏡夜がどうなろうとも彼女はその氷のように冷めた目で傍観し、死ぬ瞬間を見るだけだったかもしれない。

 

 しかし、と……鏡夜は気づく。

 彼女の声に聞き覚えがあった。あの真白の少女に襲われていた時に聞こえた声。その後に全てが一変したことから見て、彼女が助けてくれたのだろう。

 

 

「お前は何を知っているんだ」

 

 

 何故ここにいるのか。そう問いかけると、彼女は笑う。

 

 

「私が知っていることを教えてもあなたには無駄でしょうね。貴方が思い出さないと、全て手遅れになるってだけの話よ」

 

 

 そう彼女が言った瞬間、感じたのは苦痛だった。

 いつの間にか神社から真っ白の手が伸びていたのだ。それが首に絡まり、足や手を掴み、引き込もうとする。

 鏡夜は思わず踏ん張り目の前で話し始めた彼女を見たが────彼女は鏡夜を助けようともせず何の感情も込めていない冷たい目で見つめているだけ。

 

 

「頭の中に巣食う羽虫は私が潰してあげるわね。でもそれだけじゃ止まらないわ。アレは貴方がどうにかしないとね。自分がやった始末は、自分で片を付けないと」

 

「い、いったい何の話だ! 俺が何をしたっていうんだ!!」

 

 

 ずりずりずり、と。

 廃墟と化した神社の方へ連れ込まれていく。引きずられていく。

 

 鏡夜は冷や汗を流し、必死に抵抗していた。

 それでも声だけは────彼女の声だけは聞き逃すことはなかった。

 

 何故なのか知らない。死にたくないあまり必死に抵抗し、爪がはがれるほど引っ張ってくる手を解こうとしてもなお、頭に突き刺さるような声が止まることはない。

 

 

「ここはホラーゲームの世界なのよ。貴方にとってこの世界は、貴方が主人公で、貴方がゲームを動かさなきゃいけない唯一の人物なの。派生したゲームたるあっ君たちは主人公になれない。貴方がどうにかしなきゃね」

 

「はっ」

 

「忘れちゃうかもしれないけれど教えてあげる。あの世界で敵は羽虫だけじゃない。一匹だけではないのよ」

 

 

 

 聞こえてくる声が遠のいていく。

 ヒュッと息を呑む。いつの間にか神社に引き込まれていて、その建物の中に入ってしまっていた。

 彼女の声ははっきり聞こえるのに、その姿は遠のいている。

 

 後ろを見ると鏡があった。

 キラキラと光る鏡から漏れ出たのは、鏡夜を引っ張る無数の真っ白の手。

 

 

 

「アがっ」

 

 

 それに吞み込まれた鏡夜は、やがt────。

 

 

 

 

 

 ぐちゃ。バキ。

 ぐちゃバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキぐちゃぐちゃバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキぐちゃぐちゃばぎバキバキバキぐちゃバキバキバキバキバキキバキバキバキバキバキバキぐちゃぐちゃバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキぐちゃぐちゃばぎバキバキバキぐちゃバキバキバキバキバキキバキバキバキバキバキバキぐちゃぐちゃバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキぐちゃぐちゃばぎバキバキバキぐちゃバキバキバキバキバキキバキバキバキバキバキバキぐちゃぐちゃバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバ

 

 

 

 

 

「まあ、これも一つの贄ね」

 

 

 

 鏡夜が引き込まれた先で、異様な音が響く。

 それに嗤う少女はその小さな口を開いた。

 

 まだ鏡夜が聞こえていると判断しているかのように。

 

 

 

「──────。そうすればきっと、糸は切れるわ。その後は充分注意して、死なないようにね」

 

 

 

 小さく呟いた後、少女の姿は影も形も見えなくなった。

 

 

 

 

 






ゲームステージ『祭壇』

ステージクリア一定条件
『鏡夜の生贄』『真白の少女との邂逅』『残された疑問に答えを与えないこと』『アカネ神様の慈悲』『鮟偵?蟆大・ウ縺ォ谿コ縺輔l縺ェ縺?%縺ィ』

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