ホラーゲームに転生させるとか、神は俺を嫌っているようだ(Re)   作:かげはし

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第十七話 過去/独白

 

 

 

 いつの間にか、俺はどこかに座っていたらしい。

 

 薄暗い周囲を見渡す。蝋燭一つ明かりがついていないが、障子越しに明かりがあるためどのような状況なのかはっきり理解できた。

 ここは和室だろうか。十畳ほどの広さがあった。夜の和室と言えば何故かは知らないが廃屋を思い出す。しかしここは、古びているとは感じられない。

 埃一つ見当たらない畳。薄暗くて分かりにくいが新築の部屋だろうか。背後は障子が閉まっていて、その向こう側を見ることはできない。

 

 何故だろうか。正面に見える鏡越しに光が見えた。

 いや違う。鏡じゃない。これはテレビだ。最初見た時は鏡かと思ったが、それは気のせいだったようで、少し小さなテレビがついて何かを映し出すのが見える。

 

 

 鮮明な音と映像が俺の頭の中に入りこんできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新品の夕青1買ってきたは良いけれどなんか友人の話だと俺のゲームとは違って友人のゲーム以上に分岐と全く異なっていて、なおかつ序盤から選択肢がバグってんじゃねえのかって話らしいのでそれを確かめるために『夕青1のゲームリスタート』しまーす。

 

 夕青1を知らねえ奴がいるかもしれないので俺がそれを教えてあげよう。

 この夕青、通称『ユウヒー青の防衛戦線―』は様々な選択肢、ルート分岐、死亡フラグが存在します。まずキャラクター全員を生かす方法はあり得ません。あり得ないそうです友人の話では。

 でも何故か俺のゲームバグってんだよなー。三日ぐらい徹夜してた時にテンションハイになって馬鹿やらかしたときのせいかなー。あの時この夕青のゲーム持ってったしなんかバグったんじゃねえかな。まあいいや。自分語りはここまで。

 

 まず夕青1のゲームは会話パートと行動パートに分かれます。それぞれで必ず死亡フラグがあるので気をつけましょう。

 

 このゲームをクリアした猛者がいても、もう一度ゲームを始めたらそのままそっくり進むことなんて難しい。それぐらい選択肢は数多くあります。

 なので他のゲームとは違いRTAなんて出来るわけがありません。なので俺は夕青1のゲームをリスタートと称してリセット地獄を行おうと思っていまーす。

 

 というかマジで選択肢多すぎて本当に無理。

 

 とりあえず序盤から俺が絶対に生き残れると思ったルートからやってみようと思う。入れるかは分からないけど。

 

 さて序盤神無月鏡夜の入学式ですね。

 彼はちょっとした過去のトラウマのせいで人嫌いですが距離を取るためにわざと猫かぶりをしています。そう、本当は乱暴で自分勝手な性格ですが根は優しく身内認定した人間には最後まで救い出そうと足掻きます。

 時には自分の命さえ差し出そうとする主人公くんを救うために都合の良い選択肢が来るまでいっぱいリセットしましょう。

 

 友人の話だと普通はそんな簡単に選択肢が切り替わることなんてないって言ってたんだよなー。紅葉秋音の選択肢だって序盤は絶対ありえないとか言ってたけど、俺のゲームじゃ普通にあるんだけどなー?

 実況見てくれた方、夕青のゲームについて「いやいやありえないから!」とか何かしらコメント残してください。俺ちゃんと見て次に反映するんで……と。

 

 はい、学校へ入りました。

 教室にいるのは春臣ぐらいでしょうか。それと……白兎はいますしこちらをじっと見つめていますね。しかしリセットしましょう。俺が会いたいのは夏と秋音以外ありえません。特に秋音。彼女は戦闘特化の優れた女子高生ですからねー。我が夕青の防衛戦線トップである彼女がいないならまた最初からやり直しましょう。

 

 リセットするごとに真っ暗な画面で妖精がごちゃごちゃ何かを言うらしいですが俺は知りません。というかそんなこと一度もなかったんだがマジでバグってるのか俺のゲームは?

 まあいいや。俺のゲームだけイージーモードと言うわけで、リセットがしやすいのは結構楽ですしね。

 

 というわけでリセットしました。鏡夜の顔が……ああっと、鏡を見てからのスタートは駄目ですねー。すぐさまリセット。

 ああそうそう、まだ夕青を知らない人に教えると、このゲームは鏡夜視点から始まりますがリセットごとに位置が変わります。ベッドに起き上がってから、洋服を着替えてから、学校の鞄を持ってから。朝食を食べてから。両親に話をしてから……と、まあバリエーションは豊富です。その中で一番死亡リスクが高いのが鏡を見てのスタートになります。

 

 はい、敬語疲れたので終わり。

 鏡がやばいのはどうしてかというと、このリセットごとの始まりの仕方によって鏡夜の癖が異なるからなんだ。まあいわゆる隠しスキル? プレイヤーは絶対に見ることのできない鏡夜のパラメーターがリセットごとに異なるみたいだから?

 いや確実とは言えねえけどな。俺もゲームやっていてなんとなくそうなんじゃないかって思えただけだし。だからリセットするごとにパターンやら選択肢やら死亡フラグやらが変わるんじゃないかなって思うんだ。

 

 ……ああそれで、何で鏡を見てからの始まりがやばいかって話だけど夕青ゲームをやっている人なら分かると思う。

 知らない人に紹介すると、このゲームは夕日丘高等学校に入学した生徒を対象にとあるクリスタル防衛線を開催する時……つまり行動パートの時に死ぬと死亡フラグが増えるんだ。幽霊エンドってやつ?

 序盤に鏡を見てからのスタートは絶対に駄目。鏡夜が鏡を見る癖がついてるから自然と選択肢に『鏡を見る』が増えるんだ。

 

 ゲームで死ねば死ぬだけ理不尽が待っている。あの世に連れて行かれるリスクが高まる。

 

 ネタバレ込みで言うと、この世界は二つ……いや、三つかな? あの目玉がいた世界入れたら三つになりそうだし。とりあえず鏡夜が入れる世界ということで大雑把に二つに分けましょう。それが現実世界と境界線の世界。

 境界線の世界で妖精がクリスタルを守って―と理不尽なゲームを仕掛けます。そこで負けて死んでも現実世界では生きているのでゲームオーバーにはなりません。一番酷いのはその後、境界線の世界で負けて死んだら幽霊等にちょっかいを出されるようになります。

 現実世界で死ねばゲームオーバーです。流石に境界線の世界から出られないみたいな妖精ちゃんに肉体を復活させる術はね、ないよね。

 

 まあそれで、現実世界でのゲームオーバー……つまり、鏡は一番死亡フラグが多いんだ。

 なんせ鏡から出てくる幽霊化け物正体不明の何かしらがいるからな。俺が見た鏡エンドはもう三十以上はあるんじゃねえかな。そう思うと本当にゲームオーバーの描写が豊富なの凄い。ゲームに人工知能いるのかって思える程度には容量がやばいよな。

 

 

 というわけで何度かリセットを繰り返した結果ようやく夏に出会うことが出来ましたー。彼女に話をしてっと、白兎が乱入?

 ちょっとフユノ神社に向かってほしい? お願い?

 

 んんん?

 ……えーっと、何が起きているのか分かりませんがとりあえず白兎ちゃんに頼まれたので行ってみましょうか。確実に死ぬとは思いますがまあこういう序盤妖精に出会わないでの死亡フラグも面白いと思いますよたぶん。

 

 

 はいというわけでフユノ神社へ向かいます。

 これどういうルートなの? そう思う人たくさんいると思う。俺もそう! こんな選択肢初めて見たんですが!?

 

 ええナニコレ優等生として生活してる鏡夜が入学式すっぽかしてフユノ神社へ向かっていいの!!?

 白兎もそうだけど、初対面の女性相手に「分かった」っていいますかねあの人嫌いの神無月鏡夜が。

 

 ……やっぱり俺のゲームってバグってんのかな。

 ちょっと新しいの買ってこのゲームは売った方が良いかもしれない……かな?

 

 いやそれは後にしよう。

 このゲームはこのまま進めよう。もう行きましょう。

 こうなったら俺たちが見たことのないエンディングにしてやるんだ!!

 

 さて、神社へやってきましたが相変わらず廃屋ですねー。ここに白兎が住んでいるとか本当に可哀そう……。

 では行動パートに移ったみたいなので奥へ行きましょう。

 

 おっと、これは……紙?

 手記?

 

 いやでもなんかこう、血が付いた日記っぽいな……なんだこれ……。

 

 

 とりあえず読んでみよう────────

 

 

 

 

 

《――――つまらない。

 

 鏡の中。封印されたその本体は周囲の変化さえままならない事実に耐えかねて長い眠りについてしまった。

 しかし罪人として封じられたその身体は、安らかな終わりなんて迎えられるわけはなかった。だから眠るごとに力を裂かれた。町を全て見渡せる町の中心に位置する場所で太陽が沈むたびにいくつかの身体に引き契られた。

 

 そうして細かくなったモノがいくつか繋がり、ある意識が生まれた。

 それぞれに意思が宿った。本体は眠りについたままだったけれど、会話はできた。暇つぶしも可能だった。

 本体とは全く似ていなかったそれらは、やがて表世界にいる人の形を真似していった。

 

 人はそれを親子と呼ぶだろう。

 分身に近い何かだと思うだろう。怪物だと悲鳴を上げるだろう。

 

 その者たちに性別はない。食欲もなく、睡眠欲もない。

 ただ理解していたのはつまらないという感情。表世界へ飛び出して刺激が欲しいのだという欲求。

 

 あなたのおかげです。

 

 表世界を水面または鏡から見て、やがて出ていけたらいいなと思うようになって。会話をして、迷い込んできた哀れな生き物たちを喰らって。

 

 しかし何百年もそこから出ることが出来ないまま、あらゆるものを見ていた。

 

 ――――そんな時に出会ってしまった。

 見つけてしまった。知ってしまった。

 

 それはある意味彼らにとって不幸の連続だった。見つけたのは偶然だった。

 だから時間をかけてそれらを利用することに決めた。認識さえ変えれば――――表へ出られるのだと知ったから。

 

 あなたが死ねばいい。

 

 

《これでようやく、外に出られます!》

 

 

 それを阻止したのは、赤根神だった。

 赤い根っこと書いて、アカネと読む女神。

 赤根神に血肉と魂を譲渡した巫女が、表へ出てきた世界軸の全てを壊した。

 

 彼女は縁を切るモノ。神として崇められたモノ。

 それらが認識を変えたことによって生まれた神様だった。夕日丘町の大昔を知り、隣町にてそれらが表世界へ出ないように見張る役目を担った神様でもあった。

 

 あなたのおかげなんですよ。

 

 外へ出たい。そう思う欲求は高まる。

 

 だから諦めなかった。

 罪人であったモノから生まれたそれらは、とても執念深かった。

 

 何百年という年月が経つごとに自覚していく夢を叶えたかった。

 表世界へ出て、自由になりたかった。

 

 

 あなたのおかげで、ようやく始まる。

 

 

 そんなある日、ある時をきっかけにして、運命が交わった。

 ある少女を喰らったおかげで、因果が切り替わったのだ。

 

 それはあるホラーゲーム。ユウヒという名の妖精の物語を知る。

 

 そのゲームはある意味、自分たちと似ていた。

 

 

 

 だから私はユウヒなのです。私たち全員それを受け入れているのです。

 世界を変える力を奪えたのも、結果的に言えばあなたのおかげなのでしょうね。

 

 

 あなたが死ねば、扉が完成する。

 あなたが扉になるんですよ。鍵はあの男。でも彼は殺してほしいな~?

 まあ無理なら私がどうにかしますね。

 

 

 彼だけじゃありませんよ。神を含めたあの女。あいつらは私の敵なのです。

 

 

 だからすべて、殺してしまいましょうね?》

 

 

 

 

 

 画面に映っていた文字が全て真っ暗に変わった。

 それに戸惑う声が聞こえる。

 

 

 でもどうしようもないまま、俺は急に画面から遠ざかっていった。

 

 

 

《はーいというわけで、名前もよく分からないプレイヤーさん。貴方の魂は私がコネコネしちゃって私好みの可愛らしくて愚かな人形にしてあげますね。あーあー。それにしてもあなたってば、ゲームと合わせていろいろと面白いことしてくれましたよね。可愛いユウヒちゃんはその恩を忘れないために、貴方の魂をいっぱいコネコネしてあげますよー。痛いのも含めて恩返しなので頑張って耐えましょうねー!》

 

 

 

 急に、浮遊感に包まれる。おちていく。

 

 

 

《あなたが扉なんです。そのカギを奪って、扉を開けるために全部終わらせてくださいね~? 貴方が頑張れば、扉が開けばあなたのお仲間がいーっぱい増えますよ~? ほーら、痛い思いしたくなかったら頑張ってくださいねー!》

 

 

 

 妖精の声が嘲笑う。

 誰かの悲鳴。そして何かが割れるような、嫌な音がする。

 

 

 

 

《ありがとうございます。これでようやく私が、私達が自由に────》

 

 

 

 

 

 

 まだ目は、覚めない。

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

 本当は気絶させるつもりはなかった。

 ただ俺の家まで連れて行って、そこでアカネちゃんにどうにかしてもらうつもりだったのだ。

 

 俺の家は水仙神社。

 アカネちゃん────俺の神社に居てくれる赤根神様に頼んで、どうにかしてもらおうと思っていたのだ。

 赤根神様が桃子ちゃんの身体に入り、俺の近くへ来て協力してくれるまでは……。

 

 

「これ、誘拐って騒がれたらマジでシャレにならないっすよね……」

 

 

 家に連れて帰り、布団で眠っている神無月鏡夜を見下ろす。その顔は苦しみで溢れていた。呻き声すら聞こえる。きっと悪夢でも見ているのだろう。

 夢の中、現実とは異なる世界を歩き、殺そうとしているのだろう。

 

 その魂の色を見てみたいけれど、俺にはよく分からない。

 分かるのはアカネちゃんか桃子ちゃんぐらいだろう。彼女たちはある意味、繋がっているようなものだから。

 

 それにアカネちゃんは言っていた。

 神無月鏡夜の魂はぐちゃぐちゃに歪んでいると。魂が二つ、何かが混ざっているのだと。

 

 それをどうにかするための術は、俺にない。

 

 俺にあるのは直感能力。相手が何をしようとしているのか直感で理解し、死を間際に悟り、それを回避する能力に特化している。

 それはすべてアカネちゃんからの贈り物。桃子ちゃんのように重い代償を経て得た能力とは違う。

 

 星空家という家系にて、神様に庇護してもらっているから貰える特権。

 死ねば俺の魂は彼女のものとなるが、それまでは自由に生きることが出来るからまだ優しい方だと俺は思っている。

 

 

「……まあでも、神無月君に比べたらマシっすよね」

 

 

 独り言を呟く。それが誰にも聞かれていないのかは分からない。直感では誰にも……と分かってはいるが、神様は人の想像をはるかに超える存在であるから、俺には分からないっすね……。

 

 ただそっと、俺の膝を枕にして眠っている桃子ちゃんの頭をゆっくり撫でた。彼女は今、神無月鏡夜の意識を神様と繋ぐために眠っている。

 そういう能力は俺にはない。桃子ちゃんは神様と契約して力を得たから、貰っただけのこと。

 

 向日葵桃子は俺にとっての幼馴染。大事な人。

 幼い頃に家に来てずっと一緒だった家族と同じ存在。

 黄色のたれ目と泣き黒子が似合う容姿をした、蜜柑色の髪を三つ編みにした少女。胸が大きいのがコンプレックスだと言っていたが俺はそんなの気にしない。それよりも危険が伴っているのに無理を承知で突っ走る癖の方をどうにかしてほしいっす……。

 

 彼女は神様と契約をして、重い代価を支払っている。神様の庇護下に生まれている俺とは違い、俺を守るために力が欲しいと勝手に決めたのだ。

 守りたいのはこちらの方だというのに、神様は俺の気持ちなんて知らず勝手に決めていた。知った時には全てが終わっていた。

 この町で起きている惨状を知らなければ。彼女が家に来なければ。神様が気に入らなければ。

 

 そんなもしもを気にしては、もう終わってしまった後悔を繰り返す。

 でもそのおかげで今があるから、覚悟を決めないといけない。

 

 神様は理不尽な存在。

 アカネちゃんだってそう。

 

 本来はアカネちゃんなんて名前で呼ぶつもりはないけれど、そうしてほしいと彼女が命じたからそれに応じているだけ。

 神様は俺の命を守ろうとする。でもそれは、俺の命が神様のものだからにすぎない。

 

 それなら、あの妖精は何なのか。

 

 

「神無月君がカラオケ屋から出てきたあの時────アンタとすれ違った時に見えた直感に従った結果が今ってだけなんすけどね」

 

 

 このチャンスを逃したらいけないと思った。

 いつもだったら、もうとっくに諦めろと思っていた。何故かは知らないけれど、その日だけは確実に関わらなくてはいけないと思えた。

 

 

 

 そうすれば、なんだか全てが良い方向に繋がるような予感がしたから。

 

 

 

「大丈夫。大丈夫っす。きっと……」

 

 

 

 まだ間に合う。まだ始まったばかりなんだと────そう直感が、赤根神様が囁いているような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

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