ホラーゲームに転生させるとか、神は俺を嫌っているようだ(Re)   作:かげはし

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第十九話 リ セ ッ ト 

 

 

 

 

 海里と星空、二人を会わせたのは夕日丘の町ではなく、その隣町に位置する五色町。

 本来だったら紅葉の時のように夕日丘のどこかで……とは思っていたが、妖精の件を含めて危険性がある行為は避けた方が良いだろうと思い、隣町の全く来たことのない公園へ来ることにしたのだった。

 

 照りつけるような太陽。風に揺られて花びらが舞い散っていく。床はピンク色にまばらに染まり、絨毯のようにも見えた。

 今日は雲一つない天気のせいか、4月にしてはやけに温かく感じた。公園に咲いている桜は美しく、子供たちが駆け回り楽しそうな笑い声を響かせている。あの夢や妖精の件があったからこそ感じる、つかの間の平和だった。

 

 そこそこの大きさがあるベンチテーブルの椅子に座り、それぞれ顔を見合わせている。しかしその反応は異なっていた。俺が呼び出したのは海里夏と星空天。俺が星空の隣に座り、向かい合う形で海里が座っている。

 星空は顔を引きつらせつつも海里を見ていた。海里はペットボトルの炭酸ジュースを一口飲み、素っ気ない態度でもって俺たちを見ていたのだ。

 

 

「あはは……どうもっすね。海里夏ちゃん」

 

「ハイハイ。初めまして、星空くん」

 

「……ちょーっと! 良いっすかね神無月君!? 急に呼び出しておいて何で初対面のはずの女の子連れてきてるんすか!? なに、彼女自慢!?」

 

「ハッ、私が神無月の彼女だって? 私が、こいつと?」

 

「あっ、その反応だと相当嫌われてるみたいっすね神無月君ってばなんかやらかしたんすか? いやまあアンタ性格悪そうだしなぁ……」

 

「そうそう性格悪いよこいつ」

 

「おいそこ。俺で仲良くなるな。あと喧嘩売ってるなら買うぞ」

 

 

 眉を顰めた俺に対し、星空は肩をすくめた。

 対する海里は呆れたような表情を浮かべつつも、俺に向かって問いかける。

 

 

「────で、呼び出しておいてただ話がしたいだけってどういうつもり。私は紅葉に伝言してた、あの時の答え合わせをすると思ったんだけど?」

 

「ああ、働き蟻と怠け蟻についてか。当然、それも含めて話をするつもりで来た」

 

「……ふーん?」

 

 

 意味深に笑う海里が目を細めてくる。

 まるで俺を観察しているかのようだ。その目はなんとなく、アカネと最後に話した時を思い起こさせた。

 

 

「なんかよく分からない話するぐらいだったら俺帰ってもいいっすか? あっ、いや直感が……」

 

「駄目に決まっているだろう。ほら、立とうとするな。座れ」

 

「あーもう。分かってるっすよ直感が囁いたんでね! ってか、命令しないでくれないっすかね!?」

 

「オレ様何様鏡夜様」

 

「星空はともかく……海里、お前後で覚えてろ」

 

「ハッ、やれるならやってみなよ」

 

「いやいや落ち着いて、立とうとしないで。アンタら公園で喧嘩して大騒ぎ起こしたら大変なことになる────あれ、待ってくださいっすよ。えっ、この三人だと俺ってば仲裁役になんの!?」

 

 

 頭を抱える星空。何の直感を囁かれたのかは分からないが、察したような顔をした数秒後、何故か顔が絶望に染まる。妖精関連の話もまだしていないというのに何処に絶望したのか理解が出来ず小さく溜息を吐いた。

 海里も同じなのだろう。

 

 とにかく、話を進めなければと俺は星空と出会い、気絶し────あのゲームをしている誰かの声を聞いた最後までを話す。

 夢の内容についてはアカネから聞いていたのか、星空は頷いているだけだった。しかし分からないのが海里の表情だろう。驚きも訝し気な顔も何もしない。

 

 

「……鏡に引き込まれて喰われる寸前、アカネは言っていた。『貴方にとってこの世界は』と言っていたのが何処なのかについて考えていたんだ」

 

「神無月が見てた夢の世界なんじゃないの」

 

「それだったら『あなたにとってここは』……と、言えばいい話だろう。もしくは『この夢は』だな。でもそう言わなかった」

 

「……まあ、アカネちゃんは時々意味深なことは言うけど、じゃああの妖精の世界ってことなんじゃないっすか? アカネちゃんには詳しく話を聞いてないから分からないっすけど」

 

「……仮定の話だ。だが仮定と思うには少し出来過ぎているような気がするんだ」

 

 

 悪夢の中で見た死の瀬戸際。

 あれを悪夢と呼んでいいのか分からないが、妖精が作り出す境界線の世界に入れられたとしてもあそこは時間経過が起きない。一瞬ですべてが始まり、瞬きの最中……いや、それ以上の時間も経たず戻ってくることが可能。

 

 もちろん、星空が疑う気持ちは分かる。あの境界線の世界では時間の概念がないという根拠は何もない。わざと妖精が時間を動かし夢のように見せたという可能性もあった。全ての現象において、確実にそうとは限らないのだ。

 

 俺は体験してきたあの全てが夢だと感覚で理解できている。その感覚すら妖精に支配されていたらもうどうしようもないが……。

 

 

「星空の言うように妖精が住む境界線の世界かとも思ったよ。でもそれも違う。だってアカネはわざわざ『この世界』と言ったんだぞ。……おかしいと思わないか。境界線の世界と名前があるはずなのに、。つまり妖精がいる世界がホラーゲームの世界とは限らない。俺が見た夢もそうとは考えにくい」

 

 異様な緊張感に包まれる。

 何かを察したのか。理解しているのか。それとも俺を観察しているのだろうか。

 

 

「もしも……もしも、俺の考えが合っているなら」

 

 

 ────この世界がホラーゲームだと、最初に言ったのは誰だったか。

 

 紅葉秋音を殺せと言ったアカネが、何故彼女の言葉に似たことを言うのか。

 

 

「あのアカネという女が、ホラーゲームと言ったのがこの世界……現実とするなら、もしもここだったら?」

 

 

 アカネと話をして居た時に感じた恐怖。

 言葉の裏を読み取らなければ死ぬかもしれない焦燥感。

 

 

「この現実世界がホラーゲームの世界なら、どこかで必ずリセット……時間が逆戻りし、入学式のあの日までループしているんじゃないのか?」

 

 

 死んだあと、あの和室で見たゲームの光景が忘れられない。

 声だけしか聞こえないあの男はリセットを繰り返していた。

 

 それがこの世界でも適用できるとしたら?

 

 

「俺のみた夢であの男が言っていたのが確かなら、この世界は繰り返されている可能性が高い」

 

 

 このままではいけないと、心の奥底で燻る思いがある。

 疑念を確信に変えなくてはいけない。だから俺は話し続ける。

 

 

 

「ホラーゲームの分岐は数多くある。選択肢も多く残されている」

 

「リセットした瞬間、主人公の『パラメーター』が変動するといっていた。……まあそれは、確実じゃないようだが……」

 

 

 それがもしも、主人公だけじゃなかったら?

 主人公以外の誰かにも、全員適用されるのなら……。

 

 

「繰り返す理由が、何かあるはずだ」

 

 

「俺たちに何かをさせたい理由があるはずなんだ」

 

 

 子供たちの騒がしい声が聞こえる。楽し気な笑い声も聞こえてくる。俺たちがいる場所とは別世界のように隔たりがあると感じてしまう程度には温度差が酷かった。

 

 ただ、彼らは俺の言葉を黙って聞いていた。

 馬鹿にするような目で見る人はいなかった。海里ですら、無表情で話を聞いていたのだ。

 

 今はただ、二人とも俺の話について考えているように見えた。

 

 数秒ほど待つ。

 桜が机の上に舞い落ちて、一枚だけ海里の頭にちょこんと乗っているのが見えた。

 それを彼女は手で振り落としている。

 

 

「一つ聞きたいんすけど」

 

「ああ」

 

 

 少しだけ迷うように視線をうろつかせた星空が、俺に向かって問いかける。

 

 

「アカネちゃんは俺にとって家族のように近い、俺達の神様っす。この五色町の守護神のような人。だから気になったんすよ……なんでそれをわざわざ、俺に言ったんすか? 忠告が本当か嘘か質問してきてほしいってこと?」

 

 

 星空の言葉に首を横に振ってみせた。

 本当かどうか知りたいなら俺はちゃんと星空の家に行く。彼女に向かって直接問いかけてみせるだろう。

 

 でもそうじゃない。

 あの時の恐怖。鳥肌が立つかと思えた彼女の一瞬の変貌に、疑念があったからにすぎない。

 

 

「お前の直感は、神様からもらい受けたと聞いたが、その直感は本当に当たっているのか?」

 

「はぁ?」

 

「あのアカネという女性は、あの神様と名乗る存在は本当に味方なのか?」

 

「そ、そんなの当然っすよ!」

 

「ならなんで、お前をあの夕日丘高等学校に入学させたんだ。お前の家は隣町……この五色町のはずだろう」

 

「それは……」

 

「お前も何か、利用されている可能性がある。そう思ってここに呼び出したんだ」

 

 

 俺の声に激高した様子で、彼は立ち上がる。

 

 

「っ────生まれたときからずっと、ずっっと一緒にいたんすよ! 俺のことを見守ってきたアカネちゃんが、あの神様が悪い存在なんてあり得ない。アンタ、俺に喧嘩売ってるんすか!!」

 

「そうじゃない。あくまで可能性の範囲なんだよ。……あのアカネという女が味方だという可能性も十分高いんだ。ただ、当たり前だと思っていたそれが急に違っていたらと思うとな……ほら、目立っているぞ。座れ」

 

 

 呆然と、でも何かを言い足りないように口をパクパクと開けていた。

 絶対的な味方であるはずの存在に裏切られるだなんてこと、俺は過去に経験しているから分かる。これはいわば、一つの忠告にすぎないだけ。

 

 

「……こんな思いをするために、俺はアンタを助けようと思って近づいた訳じゃないっすよ」

 

「そうだな。俺もこんなこと考えたくはなかったよ。でも忘れないでくれ。まだ分からないんだ。何もかも……頭の隅にでもいいから覚えていてほしい」

 

 

 小さく頷き、また俺は口を開く。

 

 

「……それで一つ、あの夢を見て分かったことがある」

 

「またっすか?」

 

 

「ああ、あの時俺が死んだこと。そしてアカネが言った内容。あの時に感じた走馬灯のようなあの記憶の夢。────もしかしたら、死ぬことで何かを得るかもしれない」

 

 

 星空だって言っていただろう。一度死んだらどうかと。

 

 俺だけじゃない。紅葉も殺せと言っていた。

 そして見えたのはあのよくわからない記憶。アカネが説明しなかったホラーゲームの知識。

 

 

 例えば、死ぬことでホラーゲームの知識を得られたとする。それでもしも中途半端にリセットされたとして、入学式の間際で紅葉が記憶を思い出したと勘違いしていたら。

 

 前世の記憶だと言っていた。紅葉が言っていた全てがリセット前に垣間見た記憶で────あのゲームをやっていた男の思考や言動が紅葉秋音の心に直接叩きこまれてしまい性格さえ歪ませてしまうような何かがあったとしたら。

 リセットしていても忘れられないような何かがあったとしたら。

 

 あの紅葉は、あの夢の中で見たゲームをしていた男が前世の記憶だと思い込んでいる、もしくは洗脳されている状態なんじゃないだろうか。

 

 

「俺が死んだときに見た記憶が、殺すことが重要視されるなら……。紅葉を一度、意図的にでも死なせる必要がある。それも現実でじゃなく、境界線の世界か俺が見た夢のようなあの世界か……」

 

「えっ、人を殺すつもりっすか!?」

 

「ちょっと、声がでかいよ!」

 

「あ、すいませんっす……」

 

 

 海里が周りを気にしつつもまた立ち上がりかけた星空に怒鳴る。

 幸い周囲には俺たちの会話を気にする人はいなかった。

 

 

「もちろん星空の言う通り殺しなんて出来ない。それじゃあダメだ。もしかしたら、死ぬことによってデメリットがあるかもしれない……」

 

 死ぬことで死亡フラグが増えるかもしれないと言っていた。

 実際どうなるかは分からないが、危険性が伴っている行為をするつもりはない。あくまで死の間際を見極めるんだ。

 

 

「妖精か何かの介入が、俺たちの思考を蝕む何かをされるなら。例えば、死ぬことによって魂を弄られるような行為をされてしまうなら、俺はそれを避けたい。だから死ぬ間際。その一瞬を狙って救いだしたいんだ。俺としても人を、紅葉を殺すつもりはないからな」

 

「それで?」

 

「俺だけじゃ無理だから、お前たちも協力してほしい」

 

 

 正直に言えば、呼び出した大半の理由がそれだった。もちろん危機的状況を救い出す要員としてクラスメイトの中で選ぶとしたら桜坂春臣だろう。紅葉を殺しかける作戦について話さなくても、うまく誘導させればどうにかなりそうだという確信があった。

 

 それでも俺は、彼らを選んだ。

 協力してほしいことも含め、俺の考えが正しいかどうか答え合わせできるかもしれないからだ。

 

 海里は俺の言葉を聞いて、鼻で笑ってきた。

 

 

「私達にそれを協力しろと? 危険があるかもしれない、それに?」

 

「試す価値はあるはずだ」

 

「ふーん……じゃあさ、蟻の件はどうなったの?」

 

 

 今までの考えをまとめたうえで、俺は断言する。

 

 

「働き蟻が境界線の住人で、怠け蟻は俺達だ」

 

 

 女王は妖精。それに関連する化け物達。

 働き蟻に該当する境界線の住人とは、俺はまだ見たことのないクリスタル防衛戦での化け物なのだろう。

 

 怠け蟻は時に働き蟻に転じることもある。

 夕日丘高等学校に入学してしまった限り、妖精に何されるのか分からないという意味で怠け蟻を選んだ。

 

 海里は何かを悩むように、小さく目を閉じた。

 隣にいる星空を見たが、彼もまた海里の事をじっと見つめていた。

 

 やがて、彼女は小さな口を開く。

 

 

「……リセットってさ、記憶を無かったことにされるようなもんなんだよね」

 

「そうだな」

 

「じゃあアンタの考えが正しいとして、世界がホラーゲームのように出来ているならさ…………私の知らない周回があったかもしれないってこと? 私の知らない時にリセットされたかもしれないってことなの?」

 

「おい海里……?」

 

 

 ブツブツと呟き声を上げる海里。

 その様子は先ほど俺たちを馬鹿にし、喧嘩を売り続けた勝気な様子とは違う。

 

 何かを察して、絶望しそうになっている。

 違和感を必死に取り除こうとしている。

 唇を噛みしめ、時にブツブツと呟く。狂人のようにも映る。

 

 何を見たのだろうか。何を経験したのか。

 

 考えをまとめたのか、海里はゆっくりと俺たちを見つめてきた。

 その顔は少しだけ疲れているように感じた。

 

 

「……神無月鏡夜。アンタが考えていた話が正解かどうか、私がそれを保証してあげるよ」

 

「なに?」

 

 

 嘘をついているような目に見えなかった。

 何か確信があって言っている。断言しているのだ。

 

 

「私はこの世界が五回繰り返されているのを見た。何度も妖精を殺そうとして、何度も体験し覚えているんだ」

 

「はぁぁ!?」

 

「ちょっと待て、それはどういう────」

 

 

「まず私の話を聞いてくれない?」

 

 

 手の平を俺たちの眼前に向けてくる。

 彼女の力強い声のせいか、問い詰めようとした俺たちの勢いを削いでくる。

 

 

「私がいれば、紅葉秋音を殺す間際で救わなくてもいい」

 

 

 だから協力してあげると、彼女は言う。

 

 

「私には世界をリセットさせる力がある。だから神無月の言うように、世界が繰り返されているのを知っているんだ」

 

「はっ?」

 

 

 なんだ、それは……つまりそれは……。

 

 

「でもそれには大きな代償が必要になる。だから私はアンタのために一度しか使わない」

 

 

 それ以上は何も言わない。

 問い詰めても何も。リセットする力があると言うだけで、彼女はそれ以外を口にしない。

 

 呆然と星空は見つめていた。直感が何かささやいたのか、それで合っているのだと彼もまた頷いていた。

 嘘かもしれない。彼女がでたらめを言っている可能性もある。

 

 

 でも────。

 

 

 

「一度だけなら、協力してもいいよ。それで何か分かったら、私のリセット能力について教えてあげる」

 

「……分かった」

 

 

 何が起きるのか分からない。

 死の間際に何かが見えるかもしれない。

 

 

 星空にも協力してもらうことを約束して、俺は海里と取引に応じることにした。

 

 

 

・・・

 

 

 

(さすがに、紅葉を置いて逃げるだなんてこと、桜坂はしないか……)

 

 

 紅葉だけじゃなく桜坂まで巻き込むとは思ってもみなかった。彼の身体能力なら逃げられると思ってはいた。

 ……それでも結果的には、想像通りになってしまったが。

 

 しかしこれで彼女だけじゃなく、桜坂もまた何かを見るかもしれない。

 

 

 星空に頼んで正解だった。星空がいる黄色組は今、青組と合流するためと言って遠回りに図書館へ向かっている最中だった。

 すれ違ったのだ。もしも星空が協力せずこの商店街にいたなら、きっと彼女たちを救おうとするだろうから。あのアカネがいる星空の傍でリセットさせるつもりはなかったからな……。

 

 

 通り道にここを通れるよう誘導しておいて、良かった。

 罪悪感に心が押し潰されるが、これは仕方がない行為だと必死に思い込む。

 

 

「海里」

 

「分かってるよ。そんな焦らないで」

 

 

 バキバキと、喰われていく音がする。

 吐き気のする光景だ。それを見ていると気分が悪くなる程度に。

 

 

 海里夏は、彼女たちの目が死にかけている瀬戸際を見計らった。

 

 

 

 

「 リ セ ッ ト 」

 

 

 

 

 視界がぐるんと、揺れ動いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《あらあら、愚かにも私達に抵抗する道を選んだんですね。まあ妖精ちゃんとしてはそれも一つの目標に近づくかもしれませんし、ちょっとした暇つぶしに彼らの心が折れるまで付き合ってあげましょうかね~》

 

 

 嘲笑が響く。羽を動かした妖精が、神無月鏡夜をじっと見つめている。

 

 

 

《もう、本当に仕方ない子供達ですねぇ……》

 

 

 

 リセットする瞬間なんだろう。しかし妖精は動じない。しょうがないなぁとまるで出来の悪い弟を見ているかのように。何かに失敗しかけて助けを求めている子供を見守る庇護者のように。

 

 しかしその目は家畜を見ているかのようだった。

 

 

《どうやっても妖精ちゃんの目指す目標に一歩も近づかないなら、もういっそのことぜーんぶあの子たちに任せた方が良いかもしれないですねー。どう足掻いても意味なんてありえないんですから》

 

 

 

 妖精の声は鏡夜たちには届かない。鏡夜たちが侵入しずらい深層区域の奥深くにいた。

 彼女はただじっと、彼らを観察していたのだ。

 

 

 

 

《もういっそ、バグらせてもいいんですよ。この世界をね……》

 

 

 

 

 羽を動かし宙に浮き、ゆらゆらと揺れる。

 そうして楽し気に笑う。嗤う。

 

 

 

 

 

 

 

《ねえ、あなたもそう思うでしょう?》

 

 

 

 

 妖精はただにっこりと────こちらを見て、笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








あとがき

(Re)→リメイク、リスタート、リセット、リカバー、リベリオン。

他にもまあふんわりとですがいろいろと。このお話は前作とまた違うルート分岐ですからね。(Re)とタイトルにつけた意味はあります。ただルート分岐ってだけで、時系列は変わりありません。



プロローグは終わります。

次回から第一章ですよろしくお願い致します。
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