ホラーゲームに転生させるとか、神は俺を嫌っているようだ(Re) 作:かげはし
第零話 海里と妖精の戯言
海を漂う。
砂浜を歩く。貝殻を拾って、景色を楽しむ。
幼い頃の大好きな思い出が嫌いな物へ変化していく。
そんな思いをするのは何度目だろうか。
海へ繋がる地平線。砂浜以外何もない世界。私がいる場所は一本の道として左右に蝋燭が立てられている。でも蝋燭の火がついているのは前にあるもののみ。
後ろにある数本の蝋燭はすべて溶けて消えている。
それはつまり、私にとっての力の限界数。
私が神と契約し、得た力の一つ。
(これで一回分のリセットは終わった)
以前見た時より一つ増えた溶け切った蝋燭に私は溜息を吐きだす。
ここへ来るのはまだ数回。でも私がもう手遅れだと感じる前に────意図的にリセットをしたのはこれが初めて。
鏡夜たちがいたあの場所でリセットをしたのも、初めてだった。
《あーあー。こんなことをしても無駄だというのに、本当に人間って馬鹿ですよね~》
うるさい。喧しい。どっかへ行け。
頭の中で妖精の声が響く。それがムカついて、私は早くこの場所から出ていきたいと願う。
それでもまだ目が覚める様子はない。
そもそもここはどこなのか。夢の世界か神が作り出した力の源の風景か。よくわからないけれど妖精に入られている時点でもう手遅れだということは分かっている。
あの妖精の声がした時点で、もう失敗だって分かっている。
(せめて、私がいないところで頑張りなよ……鏡夜……)
《あらあら、無駄だって言うのに情けなく他人に希望を持つだなんて哀れとしか言いようがありませんねぇー。そういうところ大好きですよ、海里ちゃん》
うるさい。
ああもう、早くリセットを終わらせてこの妖精との無駄な会話を終わらせたい。
《駄目ですよぉ。そんな簡単に終わらせちゃったらつまらないじゃないですかぁ》
もう一度、私は深い溜息を吐いた。
私はリセットできる。
それはつまり、私と言う知識、その傷ついた魂がゼロに戻ることなく時間だけが巻き戻る現象。妖精が寄生虫のように引っ付いていれば奴もまた元に戻ってしまう。
《寄生虫だなんて嫌な言い方しないでくれます? アレから乖離した魂として名付けられたくせに》
喧しい。
《あーあー。でも本当につまらなーい。何度同じ過ちを犯したら気が済むんですかねぇ神無月鏡夜は。妖精ちゃんはちょっとだけプンプンなんですよぉ。私の領域を荒らしたんですから、ちょっとは痛い目見せなきゃって思っちゃうのに》
へーそう。じゃあ今度滅茶苦茶に荒らしてあげる。
アンタが嫌なことだったら私、なんだってしてやるから。
《なんでもするんですか。へー。それはちょっと楽しみですねぇー》
不機嫌だったくせに、また上機嫌に戻る。本当にこいつは大嫌いだ。
なんでこいつ死なないんだろう。早く潰れてほしい。虫のようにグチャっと。
《も―そんなこと言うと痛い思いさせちゃいますよー! 私はゲームマスター。貴方たちが馬鹿なことしないように見守ってるただの可愛い妖精ちゃんですから!》
あっそ。どうでもいいけど早くどっか行ってくれない?
《ツンデレですか。可愛いですねぇ》
嘲笑やめろ。死ね。
《うふふ。まあいいですよ。貴方たちが足掻くさまを見るのはとっても楽しい暇つぶしになりますし。せいぜい頑張って生き抜いて見せてくださいね?》
……ハッ、言ってなさい。
《じゃあまた後で、頑張ってくださいね~!》
嫌な目覚めだと思った。
あの殺したくなるほどに喰い妖精に見送りされるだなんて、どんな悪夢なんだと。
そんな苦い思いをしつつも、私はただ浮かんできた光に向かって真っすぐ手を伸ばした。
《あーあー。このルートは失敗しっぱい。また強くなってニューゲームして、ぶっ壊さなきゃ》
《まあどうでもいいですけど。どうせ暇つぶしの材料として弄ぶだけですし》
《私ってば、結構ヒント出してるんですよねぇ》
《ちゃんと答えを言ってるのにね》
《本当に、馬鹿な子》
《うーんでもどうしましょうかね~》
《どうしようかな》
《このまま繰り返し続けても、何も意味がないなら……》
《もう一度、あの日まで続けてみるのも手ですかねぇ》
《神無月まで遠いけど、もう一度経験してみるのも手かなぁ!》
《よーし、可愛い妖精ちゃんとして》
《愛らしいユウヒちゃんとして》
《頑張りましょうね》
《楽しもうね、海里ちゃん》