ホラーゲームに転生させるとか、神は俺を嫌っているようだ(Re)   作:かげはし

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第一話 やり直した人とそうじゃない人

 

 

 目を覚まし、飛び起きる。

 周りを見て、化け物がいないと分かった。両腕は無傷。食いちぎられていないことも分かった。

 

 ────そうして初めて、俺は自室のベッドで寝ていたのだと気づく。

 

 扉の向こう側から「秋音! 早く起きないと遅刻するわよー!」という母の声が聞こえてくる。どうして。俺はあの時、死んだはずだ。家にいたわけじゃない。ベッドで眠っていたわけでもない。 

 

 

「はっ……はぁ……し、しんで……しんでない?」

 

 

 心臓が痛い。

 悪い夢でも見ていたのではないかと錯覚するが、アレは夢なんかじゃない。

 

 妙にリアルな感覚だった。記憶も鮮明に残っている。

 あの時俺は化け物に食いちぎられて終わったはずだ。そのまま死んで、それで────。

 

 鏡夜に会いたいという気持ちが、その感情が消えたのは何故か。

 あの時俺を見殺しにした彼が何を思っていたのか怖くなったからか。主人公である彼を信じるのは当然なのに、そう思うことすら出来なくなったのはきっと、あの冷めた目で俺を見下ろしていたせい。

 あの死ぬ直前に聞こえてきた妖精の声。その幻覚。あのユウヒと同じ目で俺を観察しているような瞳が怖いと思えてしまったのだ。

 

 身体が震えて、立てない。

 情けないが涙がボロボロと零れ落ちて止まらないのだ。

 

 

「なんで、なんでだよ……」

 

 

 しにたくない。死ぬのがこわい。

 でもこのまま生きて抵抗して────それで、痛い思いをするのなら。

 

 心が揺れる。恐怖と絶望で吐きそうになる。立ち上がることすら難しく。眩暈に襲われる。酷い頭痛がする。気分も何もかも最悪だった。

 誰のせいかと言われたら、それはきっと化け物のせい。妖精のせい。

 でも何故だろう。

 

 俺は自分を殺したのが鏡夜だと思ってしまったのだ。

 信じていたのに。知識も何もかも全て鏡夜に託して、協力できることは全てやってでも生きていたかったのに。

 

 

 最後に見た鏡夜の目が忘れられない。

 

 

「鏡夜に裏切られた……いや、違う……ハハッ……」

 

 

 きっと俺は、信じるに値しない存在だったんだろうなと自嘲した。

 

 

「姉ちゃん! 早く起きねえと母さんが怒る……って、姉ちゃんどうしたんだ?」

 

 

 母に頼まれて起こしに来たのか。弟の秋満が扉を開けて部屋へ入ってきた。しかしその顔は不機嫌から一転、慌てたような顔で俺を見ているのだ。

 ボロボロと泣いている俺の顔に秋満までもが泣きそうな顔で自分の腕を引っ張ってくる。

 

 最近反抗期で素直じゃない性格な秋満が俺のことを心配してくれている。不安そうな顔で「顔が真っ白だぞ。熱でもあるのか? 母さん呼ぶか?」と聞いてくる。

 

 その優しさに少しだけ救われたような気がした。

 

 

「大丈夫だよ秋満。心配してくれてありがとう。姉ちゃん、ちょっと寝不足なだけだよ」

 

「そっか……ハッ、いや別に心配なんてしてねーし! ってか寝不足って遠足いく前日に寝れねー幼児じゃねえんだから体調管理はしっかりしろよなバーカ! あとせっかく今日は姉ちゃんが入る高校の入学式なんだから遅刻なんてしたら笑いものにされるぞ! 体調悪くねーんだったら早く着替えろ馬鹿姉貴!!」

 

「あはは……はいはい……ちょっと顔洗ってくるわ……」

 

「全く……」

 

 

 ベッドから起き上がれるか一瞬心配したが、何とか立つことが出来た。身体がふらついたが秋満が支えてくれたし……まあ弟はすぐ照れて「気を付けろよ馬鹿!」と言ってはいたが……。

 

 ……うん、よし。

 まだ覚悟は出来ていないけれど、このままじゃいけないのは確かだ。

 

 鏡夜が俺をどう思っているのか、どういう意味で俺たちを見殺しにしてきたのか聞かなきゃならない。

 

 そのために今、立ち止まっている暇はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 秋満は自室から出て行った姉に小さく溜息を吐いた。

 

 そうして自分も出ていこうとして、一瞬足に違和感が走る。

 足元を見ると、その先に一冊のノートがあった。どうやら踏んでしまったらしい。

 姉が雑に放置して忘れていたのかそれとも拾い上げる気すら起きない程度には気分が悪かったのか。いろいろと考えて秋満はそれを拾い上げて机の上に置くことにした。

 

 拾い上げたノートは、どこかのページが開かれ、隅から隅までびっしり書かれていた異様なものだと気づく。 

 

 

「……ん?」

 

 

 一番最初をめくり、そのノートに記載されている日付に気が付いた。

 

 

「……なんだこれ、姉ちゃんの日記か?」

 

 

 きっとそれが、始まりだったのだろう。

 

 

 

 

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