ホラーゲームに転生させるとか、神は俺を嫌っているようだ(Re)   作:かげはし

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第二話 第一印象は「頭がぶっ飛んでる女」

 

 

 

 

 話がしたいと言った俺は、校舎の裏側へ神無月鏡夜を連れて行く。

 

 二人っきりになるのが嫌だったのか困った様子で俺の頼みを断ろうとしてきたが、それでもなお食い下がると諦めてくれたらしく、なんとか俺の頼みに頷いてくれた。

 教室のど真ん中。クラスメイトが見ているなかでやってしまったため勘違いされた可能性もあったが、周囲にどう思われているとか考えている余裕はない。

 

 周りにどう思われているのかとかそれを考えるのは後、今やるべきことはこれから来るであろう悲惨なゲームをどう乗り切るのかについてだけだ。

 

 俺だけじゃ無理だと分かっているからこそ、彼の力が必要だった。

 

(一番最初。ここが肝心だ……神無月鏡夜に信用してもらう。そう、頑張らないと……ここはホラーゲームじゃない。死んだらそれで終わりだ。リセットなんて現実にあるわけがないんだからな)

 

 でもどうやって主人公たる神無月鏡夜に信じてもらえばいいのだろうか。

 

 まず主人公、神無月鏡夜(かんなづききょうや)は小さなトラウマを抱えた猫かぶりの少年だ。

 トラウマといっても親友に裏切られたという他人にとっては些細なものだった。ゲームではそれが誰なのか書かれておらず、ゲームを考察しようとする人々にとってその人物こそ重要な人なのではないかとかいろいろ噂されていた。結局俺が死ぬまでトラウマを与えた人物について明かされることはなかったけれど……。

 

 本人にとっては人を信じられなくなるような重い出来事の一つ。そのせいで性格が歪み、人を信じにくくなっている。

 鏡夜は美形で猫っぽく、身内認定されるまでは腹黒い選択肢しか出てこず、ある一定のイベントをこなせば他のキャラクターに対してツンデレになるのが特徴の主人公だ。

 その頭の良さ以外は攻撃も体力もないため他のメインキャラクターたちに支えられて生き残ることが出来るといった性能から、ゲームの難しさを引き上げているのは彼のせいなんじゃないかと言われている元凶。

 選択肢によっては即死もあり得るし主人公を操作する人にとっては「さっさと人を信じてくれよぉ! 一人で行動とかじゃなくて、協力プレイ大事だろ!!」っていう部分も多々あるけれど全部死亡フラグに向かって突き進む鏡夜のせいで投げ出す人がいて――――でもホラーゲームとして謎が多い部分を気にする人もいて、その後に出てきた夕赤などの続編ゲームが人気に火をつけた要因ともいえるけれど。

 

 神無月鏡夜なんて他のキャラクターに比べたらまだ優しく可愛らしい性格をしていると俺は思う。

 青組には個性豊かなキャラクターがいる。というか大半が危険人物しかいない。

 まあイベントさえこなせば優しくなるから多分大丈夫だろう。

 

 それに、最大の難関でみんなのトラウマとされた彼女だっているから、神無月鏡夜は夕青の中ではまだマシな性格だと思いたい。

 

 ここがホラーゲームの世界であるなら当然一番最初に攻略しなくてはならない存在が神無月鏡夜である。

 ここから先――――最短で神無月鏡夜に協力をしてもらい、これからどう対処すべきなのかを考えてもらう。協力してもらうようにする。そのためにはまず彼が興味を惹かれるような内容にしなくちゃならない。

 

 その緊張感からか、俺の背中は冷や汗で濡れていた。心臓もバクバクと鳴り響いている。

 

「僕に伝えたいことって何かな、紅葉さん?」

 

 愛想よく笑ってはいるが、きっと内心「あー面倒な奴に捕まった」とか思っているに違いない。

 校舎裏には誰もいないし、男女こうして向かい合う姿はまるで告白現場のようだと、そう無駄なことを考えてしまう。

 

 しかしこのまま黙っていても仕方がない。鏡夜は主席入学。新入生代表として挨拶もすることだし、暇なんてないはずだ。

 

「突然だけど神無月くん、死にたくないので助けてください」

 

「……急にどうしたの?」

 

 死ぬと言う言葉に反応した鏡夜が私の目を見る。

 頭がおかしいと思っているかもしれない。それなら――――。

 

「夕日丘高等学校には毎年死人が出てるって話知ってる? 不運の事故が数件と、行方不明事件がいくつか。でも学校で何度も起きているのにそれを誰も気にしていない。気に留めていないの」

 

「……それで、何で君が死ぬって話に繋がるんだい?」

 

「おれ……じゃなくて私は、この事故や事件の真相を知っているんだ」

 

「そういう話だったら警察に連絡した方が良いよ。僕なんかよりよっぽど頼りになるだろうし」

 

「警察に連絡しても意味がないんだよ!」

 

「……なら、詳しい話は入学式が終わった後でも――――」

 

「それも駄目だ! 奴にバレる可能性がある!!」

 

 叫んでしまった後になって後悔し、口を手に当てて余計なことを言わないよう気を付けた。

 その行動に鏡夜は訝しげな表情を浮かべていた。

 

「もしかして君は……その事件を起こした犯人が誰なのかを僕に教えるためにここに来たの?」

 

「違う」

 

「じゃあ僕に協力してほしいって何? いったい何に協力してほしいのか聞いてもいいかい?」

 

「それは……まず、神無月君が私の話を信じてくれるって約束してくれるなら話すよ。本当に協力してくれるって嘘をつかないなら――――そうじゃないと、言うことが出来ない」

 

 妖精は頭の中を覗く。そして最悪頭の中を弄られる。

 ゲームではリセットを故意に繰り返し行ったせいで妖精が未来を知っていると察して動くのだ。なんせ防衛戦は戦わずして逃げて隠れてを繰り返すゲーム。境界線の世界で化け物達を退治してもらうために、妖精は主人公の頭に余計なものを植え付ける。

 

 現実かどうか分からなくするような幻覚。発狂するかと思えるような気味悪い幻聴。予測していたはずの化け物の配置が異なる状況と、頭を弄られたせいでちゃんと考えることすら出来なくなり、人格すら影響を与え確実に殺しにかかる演出がたくさんあった。

 難易度が上がり過ぎて鬼かと思える人が続出した数々の問題に泣いた記憶があった。

 

 悪気もなく簡単にやってのけるのが妖精だから、現状鏡夜に負担がかかることはまだしたくない。妖精について軽はずみなことを言って、彼の頭を弄ってどうにかされたら困る。

 

(……俺も頭を弄られたくない)

 

 でも入学した時点で頭を覗かれないという点では不可能。

 だから今のうちに知恵を借りたい。どうにかして人格崩壊フラグから逃げ出したい。

 

「入学式までまだ少しだけ時間がある。だからお願い、君の頭脳が必要なんだ……君に信じてもらえるには、私はどうしたらいいかな?」

 

「はは……それを僕に聞くんだね。何も答えてくれない時点で信じるも何もないっていうのに」

 

「だって絶対信じてくれないって思ったから……」

 

 でも本当に、これからどう説明したらいいんだろうか。

 流石に鏡夜に会ってすぐ「あ、主人公に協力を頼もう! 妖精がこれから始めるデスゲームに俺達巻き込まれて死ぬんですよってことを!」なんて話しても無駄なのは分かっているんだけれど。

 

 

「紅葉さん」

 

 不意に、鏡夜に話しかけられて我に返った。

 よく見れば彼の手に携帯があった。

 

 彼は少し考えるような顔で私を観察しつつ――――そうして、つい先ほど見たような愛想笑いを浮かべていた。

 

「ネットで夕日丘高等学校について調べてみたら、君の言う通り死亡事故が多発していることが分かったよ」

 

「えっ、何時の間に!?」

 

「君が馬鹿みたいに考えている間にね」

 

「馬鹿みたいにって……」

 

「まあネットに書かれている内容が事実かどうかはともかく……君の話を聞かせてほしい。なんでそこまで僕にこだわるのか。君が何を知っているのかを」

 

 協力的に見えるけれど俺は知っている。鏡夜はまだ俺を信じ切れていない。猫をかぶった状態は変わらず、信じ切れていないのだろう。

 

 こぶしを握り締め、俺は覚悟を決める。

 

「ここがホラーゲームの世界だって言ったら、神無月君は信じる?」

 

「はい?」

 

「これから先、入学式の後妖精が現れる」

 

「ええと……妖精って?」

 

「夕日丘高等学校にいる妖精のこと。この学校で……ずっと昔からやっているゲームのせい。生徒は全員巻き込まれるんだよ。妖精が別世界へ強制的に連れて行って、俺たちに頼みごとを言って、化け物を殺してほしいっている死のゲームに。……そのゲームで死んだ生徒は現実で不幸の事故や事件が起きるよう処理される」

 

「おい急に何を……いや。ええと、ゲームの話はちょっとよく分からないんだ。というか、ゲームと事故や事件の話がどうつながるっていうんだ? 妖精なんてこの世界に存在するわけがないだろう。紅葉さん、証拠もないまま変なことは言わない方が良いと思うよ」

 

「あああああもう! 違うんだよ確かに変なこと言ってるって分かってはいるけど! でも本当なんだ! 頭おかしいって思われても仕方ないと思う! でも本当なんだ、このまま入学式に出たら確実に妖精が出てしまう! それで死ぬかもしれないんだよ!!」

 

 信じてくれと鏡夜を見る。必死に、すがるように。

 しかし鏡夜は目を細めた。何も言わず俺をじっと観察しているような冷めた目だった。

 

 このまま信じてくれなかったらきっと、入学式に妖精が現れるだろう。

 その後になってようやく信じてくれるかもしれない。でもそうなったらもう遅い。俺はきっと頭を覗かれる。見られる。全てを知られて――――頭を弄られる。

 

 それだけは嫌だ。

 まだ死にたくない。生きていたい。化け物に喰われるのも不可解な事故に巻き込まれるのも嫌だ。

 

「お願いします……神無月鏡夜……君の知恵を貸してください!」

 

 必死になって鏡夜に深く頭を下げる。

 彼が離れていくようなら土下座でも何でもしてやる。それぐらい本気だって伝わらないと彼は絶対に行動してくれないって分かっているから。

 

 

「……使える時間は20分程度」

 

「えっ」

 

「紅葉さん、学校ではよく起きているって言ってたね。それが本当かどうか確かめたい。ついて来てくれるか?」

 

 鏡夜がそう言って、俺の顔をじっと見つめてくる。

 

「正直言って、紅葉さんの言動が信じられない。夢でも見てたんじゃないかってね。でも……反応だけを見ると本当のことを言っているようにしか見えないんだ」

 

 だからそれを確かめたいと、鏡夜は言う。

 

「生徒会に行って話を聞こう」

 

 妖精の被害者となっているだろう先輩たちから話を聞くと、彼はそう言った。

 

 

 

 

 

 

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