ホラーゲームに転生させるとか、神は俺を嫌っているようだ(Re) 作:かげはし
とりあえず、鏡について探すことにした。
でもやっぱり鏡といえば真っ先に思いつくのは鏡夜なんだよなぁ。
それかラスボスといわれる白兎のこと、ぐらいしか思い浮かばない。
でも白兎は神無月鏡夜に執着している。
現段階ではきっと、俺達が近づいても警戒して何も話そうとはしないだろう。鏡夜と同じで人嫌いっぽいし。
(頭の中の記憶が、全部弄られていなかったらの話だけれど……)
記憶を弄るとしたら妖精にとって都合のいいもの。
だからもう、俺の知識は頼りにはできないけれど……。
でも、それでも信じたい部分はある。
違う、それしか縋りつけないだけ。俺は今までの記憶全部が捏造だなんて思えない。
だって俺は生きている。過去の記憶。家族と一緒にいた全て。
前世でゲーム三昧だったあの頃を思い出す。
それら全てが嘘だっただなんて信じることが出来ない。
でもそれすら妖精に弄ばれて弄られてたらと思うとなぁ。やってられねえな全く。
「さて、どうするか……」
今俺たちがいるのは鏡夜たちがいる教室────ではなく、屋上へ向かう階段の隅っこ。
そこに春臣と一緒に座り込んだ。
春臣は疲れたように深く溜息を吐いている。
「鏡なんてもん学校中探し回ったけどこれと言って手掛かりはねえな」
「うん、そろそろ入学式だしまたゲームが始まるからどうにかしないとって思ったんだけどなぁ」
やっぱり学校にはないのか。
でもそれなら何で夕日丘高等学校の生徒だけが狙われているのだろう。もしかして建物にはないのか?
地下……に、眠ってるとか?
いやでも掘り出すとか無理だろ。埋蔵金見つけるとかじゃねーんだから。
「未知なる者には未知なる者で対抗……って線も考えたけど、白兎と接触するのも難しいからね」
「それ以外にはなんかねーのか?」
「んー……まあ、神様はいるけど」
「……なんかまずいってか?」
「まずいというか、多分まともに相手してくれない可能性が高いというか」
夕黄に出てくるアカネ神様は星空天を守り抜くことに特化しているだけで俺たちを救ってくれるとは限らない。
ストーリー上、アカネ神が興味を示したのは夕青で言うと鏡夜のみ。でもそれは会話の中でしかないシーンだ。それに肝心の鏡夜と協力は無理。
「じゃあ、それ以外は」
「夕赤……つまり赤組との接触だけど、あの人たちはなんというか弱肉強食というか敵は全部ぶっ殺すな戦闘民族なところあるから」
「なんだそれ」
春臣が苦笑し、小さく呻いた。
うーんそれにしてもどうしたらいいものか。
妖精に拮抗できる相手はいないと考えた方が良い。
でもって何かしらの特殊な鏡を持ってる可能性が高い白兎に接触して、何とかすればいいんだけれど……。
「……あれ、そう考えると鏡夜がいないといろいろと動くのも難しくない?」
「神無月鏡夜が、ねぇ」
頭をガシガシと強く掻いた春臣が、天井を見上げた。
周りは通りがかる生徒たちの声で少しだけ煩い。俺達をチラ見してくる生徒もいるぐらいだ。
「────なんで神無月、なんだろうな」
「んえ?」
「ゲームの話聞いている限りゲーム関係者で出てくる奴は神無月ばっかだ。中心人物と言ってもいい。主人公だからか? 妖精も鏡夜に執着してんだろ? 運動神経皆無なあの野郎がよぉ」
「うん。ある意味ユウヒシリーズの始まりの主人公でもあるし……過去に白兎に出会って、彼女に執着されて。それがきっかけでいろいろあって……っていうのは覚えているんだけど」
「じゃあやっぱり、その白兎って女に会わなきゃいけねえんじゃねえのか」
「それは────」
俺の言葉を遮るように、春臣が考えながらも口を開く。
「神無月鏡夜の原点。ホラーゲームの主人公が執着されている秘密には何かわけがある……っていうのは、どっから聞いたんだったか。後輩に聞いた覚えはあるが、後輩って誰だ……?」
「いやなんの話?」
「悪い悪い。何でもない」
首を傾けた春臣が、また小さく溜息を吐く。
「問題はどうやって冬野白兎に会うのか。会うとしたら境界線の中になっちゃう可能性もあるんだよなぁ」
「おい紅葉、それは違うだろ」
「えっ、何が?」
「……あのな、一応念を入れて言っとくけど、俺達はその女に会うのが目的じゃねえ。鏡をぶっ壊してどうにかするのが最終目的だ。それだけは忘れるなよ」
「……ん、それは分かってる。だからこそ白兎に会う必要性があるかもしれないって話なんだよなぁぁ!」
駄目だ。頭脳担当の鏡夜がいないとやってらんない。
話がぐるぐる同じところを回っているような気がする。でもそれを打破するための解決策がない。
こういうのはマジで鏡夜の得意分野だからなぁ。だから任せていた……。
だから、裏切られたんだろう。
俺は足手まといとして、切り捨てられたんだ。きっと。
「……とりあえずまずは入学式をどうにかしなきゃいけない」
「入学式っつっても化け物に襲われた記憶なんてねえぞ」
「ああうん。夏が妖精を殺しちゃったから……」
「ほう? あの妖精に牙をむくとは面白い女子がいるのだな」
「まぁね。ちょっと警戒心が強いけど、いろいろと力を持ってるし、敵にしたくはない人、かなぁ」
「それは是非とも会ってみたいものだな」
「────ん、あれ。春臣はもう会ってるだろ?」
思わず首を傾けて彼を見るが、春臣は微妙そうな顔で俺の隣をじっと見つめていた。
そういえばさっき俺と会話していた声って春臣のものじゃなかったような気がする。
恐る恐る隣を見ると、楽な姿勢をとっている俺達とは違い綺麗な正座をしてこちらを見つめる少女の姿があった。
艶やかな黒髪をしている清楚な容姿。太陽のような真っ赤な瞳を持った、女子生徒。
威風堂々とした姿は、まるで王者のように輝いている。
「────なんでここに、
「おや、君は私の名前を知っているのか」
いやあなた、夕青とは別のユウヒシリーズに出てきた夕赤主人公の人ですよね?
なんでここにいるの???