ホラーゲームに転生させるとか、神は俺を嫌っているようだ(Re) 作:かげはし
夏に話しかけようとして無視されてを繰り返し、どうにか声をかけるタイミングを伺っていたらいつの間にか三日ほど経過していた。
まるでストーカーみたいなことしてるなと思いつつも首を横に振って気のせいだと思い込み、今日もまた夏を追いかけている最中。
あれから鏡夜は何かしら調べ物をしているのかあまり話すことはない。俺もこんな状況で話せるわけないし……。
「んーでもなぁ……」
通り道の隅に隠れつつ夏を伺う。
どうやら今日も夏は自宅へすぐに帰っていった。
この三日で見慣れた建物を見て、どうしようかと考える。
マジでストーカーかよと思いたくなるこの行動を続けていくうちに夏の行動範囲がちょっとだけ分かったような気がする。
彼女はあまり友達を作ろうとしない。一人で行動し、学校からすぐ家へ帰宅する。
何かをしている様子もなし。
怪しい行動すらしていない。鏡夜を狙うような行動すら────妖精が動く魔では何もしないつもりなのだろうか。
「ねえ、そこに居られるとちょっと困るんだけど……」
「うわっ!?」
玄関から出てきた夏が呆れたような顔をして俺を見ていた。
何時の間にそこにいたんだよおい。
「え、まさか気づいてたのか!?」
「いや気づくでしょ、バレバレだよアンタの尾行もどき」
またも嘲笑。確かにこの三日間はちょっと不審者みたいな行動しまくってたからなぁと、反省しておく。
少し恥ずかしく思いつつも、夏を見た。
「ちょっとだけ話できるか?」
「断る」
「いや扉閉めるなよ! せっかくなんだし少しだけでもさぁ!」
「セールスみたいなこと言わないでくれる? 私はお安くないんだよ」
「売買しに来たわけじゃねえよ! ちょっとだけ。ちょっとだけだから!」
「……はぁ。アンタのそういう強情なところ大っ嫌いだよ。ちょっと待って」
「……とか言いながら扉閉めないよな?」
「そんな性格悪いことするの神無月鏡夜ぐらいでしょ。私はそこまで捻くれてるわけじゃないから」
いやでも妖精について細かいことを何も言わない時点で多少は捻くれているような気がしなくもない。そう思っていると見抜かれたのか、夏が俺の事を一度強く睨みつけて玄関の扉を強く閉めた。
ちょっと待っててと言っていたので五分ぐらいは待とうかと思う。一応。
五分どころか三分ほど待っていたら夏が扉を開けて出てきた。
その姿は先ほどの学校の制服姿ではない。
よくわからないロゴがついているキャップをかぶり、少し大きめの白パーカーと青デニムパンツを着ている。靴はパーカーと同じく真っ白でピカピカのスニーカーだった。
あの真っ黒なセーラー服とは逆のボーイッシュな格好だ。短髪の夏にはよく似合うと思う。
「カラオケでも行こうか。アンタの奢りで」
「えっ」
「文句言うなら帰るよ」
「アッハイ」
ま、まあカラオケならなんとか……うん……。
・・・
鏡夜と同じく夏もカラオケ屋に行こうと決めたのはきっと、誰にも話を聞かれたくなかったからだろう。歌うことはせず、何故か般若心境の歌を軽く流しつつ、俺を見て口を開く。
「それで、何が知りたいってわけ?」
「えーっと……とりあえず妖精を殺した経緯。鏡夜が狙われている意味についてを中心に、夏が知っていること全部知りたいんだけど……」
「あのね、全部って言われてハイソウデスカって人いないと思うよ。全部ってどこまで喋ればいいのか分かんないし……」
「妖精についてどこまでって悩むぐらい知ってるのか?」
俺の言葉に夏が思わず真顔になった。
きっと図星だったかもしくは口を滑らせたか。何かを知っているのは分かったけれど、どこまで喋ればいいのか……ってことはつまり、何処まで喋っちゃいけないのかという意味で悩んでいるのだろうか。
「言っておくけど、今のアンタにいろいろ話しても意味ないって分かってるからね」
「今の?」
どういうことだろうか。今のって……もしかして、原作の紅葉秋音について言ってるのか?
やっぱりこいつ転生者か?
「……はぁ。なんかいろいろ誤解されてるみたいだから言うけど、私はアンタが考えているような人間じゃないから」
「心読んでるわけない、よな?」
「当たり前でしょ。アンタが分かりやすいだけよ」
そうしてそこまで大きくもない胸を張り上げ言うのだ。
「まあ、この三日間いろいろ苦労してたみたいだし……ちょっとぐらいなら協力したげるよ」
「え、ほんとか?」
「その代わり、もう二度と私を追いかける真似はしないで。私が何をしていようともちょっかいをかけないで」
「あー……うん、分かった。鏡夜はともかく、俺は何もしない」
鏡夜については分からない。夏の事を気にしていたみたいだし、もしかしたらちょっかいかけるかもしれないと言外にそう忠告する。そうすると夏は仕方がないと溜息を吐いて諦めたようだった。
────そうして、小指を伸ばして俺に向かって言う。
「約束しよう。絶対に破らないように」
「おう、約束な」
ゆびきりをして小指を離す。一瞬夏の顔がちょっと怖く見えたけれど、多分気のせいだと思う。
「それで、何が聞きたいわけ?」
「んー……じゃあまあ、妖精を狙った理由について話してくれるか?」
「ノーコメント」
「えっ」
唖然とした俺に対し、夏が鼻で笑ってくる。
もしかして俺を騙したのか……?
「ほら次」
「じゃ、じゃあ……ええと、鏡夜が狙われてる理由は?」
「それもノーコメント」
「いや!? じゃあ何なら話せるわけ!?」
「趣味かな」
「お見合いかよ!?」
「ちなみに趣味は
「地味だなオイ!?」
俺って今日何でここに来たんだろう……。馬鹿にされるためにわざわざ?
しかもこのカラオケって俺の奢りだし。何も情報がないまま鏡夜に会うわけにはいかないっていうのに……。
「とりあえず
「いや、いらねーよ!」
「蟻は女王蟻と働き
「なんか普通に話し始めたんだけど。え、何このひと……」
「働き
「ふーん」
「それでね、一見サボっているように見える怠け
「んー」
「鏡夜に伝えて、女王
「おう……ん?」
「じゃあちゃんと話したから、あとよろしくね」
急に立ち上がりバックを持って扉の外へ出ようとしていたので慌てて腕を掴んで止める。そんな俺に彼女はちょっとだけ鬱陶しそうな顔をしていた。
「いやいやちょっと待って!? えっ、ただ蟻の話してたわけじゃねえの!? 俺の質問まともにやらないで馬鹿にしてただけじゃねえの!?」
「アンタほんと馬鹿よね」
「やっぱり馬鹿にしてるじゃん!」
「はいはい。じゃあね紅葉秋音」
腕を振りほどいた夏は、もうこちらを見ることもなくカラオケ屋の個室から去っていった。
「……えーっと、つまり
学校になにかいるってことか?