誕生日って書いてありますが、誕生日要素全くないです(??????)
でも、許して。
実家から離れ、一人暮らしを始めていたあなた。
ニンジン農家として実際に畑に行く事はあるが、以前ほど頻度は減り、今では信頼出来る人に任せている。というのも、その功績を讃えられ、講演会などの話す様な行事が増えたためである。
非常に慣れないなと思いながらも、話し続ける日々を送っていた。
慣れない事をするという事は、非常に疲れることでもある。というわけで、毎日死んだ様に眠っていたあなたに、久々の休日が訪れた。
畑の管理は任せて休んでくれという言葉に感謝しつつ、久しぶりに酒を浴びて眠った。
勿論だが、家には誰もいないはずだった。
「ほらー! 起きてよ〜!」
──……んむぅ……?
あの声が、好きな人の声が聞こえる。
いや、そんなはずは無い。何故なら彼女はトレセン学園にいるはず……。
微睡む頭のまま、あなたはぼやける目を開けた。
テイオーが笑顔で覗いている。あぁ、きっとこれは夢なのだ。神様が頑張っているあなたに見せた夢。こんな幸せな事はない。
「あっ、起きた? おはよっ!」
──……ていおー
「わっ! んもぅ……」
笑顔を向ける彼女を抱える。久々の彼女の柔らかさに心が癒される。
そんな抱きついたあなたに対して、彼女は慈愛の籠った笑みで頭を撫でる。
彼女のポニーテールがゆらゆらと揺れ、少しずつ意識が覚醒してくる。
すると、あっ! と声を上げるテイオー。抱えていたあなたの頭をベッドに寝かせ、慌てた様に体を翻した。
「ご飯作りっぱなしだった! 起きたらリビングに来てねー!」
たったったっと彼女の去る音が聞こえる。
寝室の扉が音を立てて閉ざされ、漸くあなたはそこで彼女の温もりを淋しがった。
離れてゆく熱を逃さない様に、あなたは再び布団をかけて。
──あれ?
そこで漸く夢では無い事に気が付いた。
テイオーが自宅に来ている。しかも、ご飯を作りっぱなしだったって?
寝ている場合では無いのかもしれない。ベッドに腰をかけ、伸びをする。音を立てる背骨を労りつつ、あなたはリビングへと向かう事にした。
あなたの長くて短い一日が始まる。
ー
「起きたー?」
──うん、おはよう。テイオー。
「えへへっ、もうご飯出来てるからね!」
──ありがとう。
2人がけのテーブルに座り、テレビのリモコンを手に取った。そしていつも通りテレビを見ようとして──やめた。
味噌汁の匂いが漂っている。炊き立ての白米が湯気を上げ、焼き魚が香ばしい匂いを発する。スタンダードだが、非常に懐かしい食事。実家にいる時、いつも母親が作ってくれていた朝食だ。
テイオーが持ってきたプレートには、あなたの作ったニンジンが煮物として姿を表した。テイオーの朝食だろうか。
──いただきます。
「召し上がれ〜。頑張って作ったんだからね!」
味噌汁の味は、あなたの家のとほぼ同じだった。家に味噌を買って置いた記憶もないのだが、もしかしてテイオーが買ってきてくれたのだろうか。
「実はね〜、あなたのお義母さんに教えてもらったんだよっ!」
お母さんのニュアンスのズレを感じる。
そんな細かい事はどうでもいいが、態々習いに行ったのだろうか。
「ボクは花嫁修行もしてないし……どうしようって困ってたら、教えてくれたんだ!」
──うん、立派なお嫁さんだね。
「えへへ……いつでもいいよ? ボクは」
せめて卒業までは待とうか。
嬉しそうに微笑むテイオー。甘々さは残っているが、以前に比べて随分と余裕が見える。テイオーの自覚がそろそろ花を咲かせているのか。
かくいうあなたも、自宅で朝食を作ってくれるという行動に、あまり違和感を感じていなかった。
これが自然なのだと。脳みそがそう認識している。
エプロン姿のテイオーも。味の感想をドキドキしながら待つテイオーも。美味しそうにご飯を頬張るテイオーも。何故か不思議な感じはしなかった。
──ああ、そっか。
「どうしたの? もしかしてなんか変だった?」
──いや、幸せだなって。
「そうでしょそうでしょ! 頑張ったかいがあったよ! あなたにそう言ってもらえて!」
にっこりと笑う彼女には敵わないな。
そう思いながら、あなたはテイオーの作った食事を噛み締めていった。
ー
今日はなんと外に出る気分ではないらしい。
疲れていたあなたを気遣ってくれたのかと思ったが、そうではないらしい。
単純に、この自宅に一緒にいるという日常を楽しみたかったのだとか。
「もっと撫でてよ〜!」
彼女の鹿毛をわしゃわしゃと撫でると、気持ちよさそうに目を細めた。
現在、リビングのソファに座り、映画を見ていた。テイオーが持ってきた映画。内容は恋愛もので、離れ離れになったウマ娘とトレーナーが、数年後に出会って無事にゴールインするものだ。
かなりのヒット作だったが、あなたは忙しかったので、見ていない。気になってはいたので、幸運な事だ。
映画で若干過激というか、年頃の女の子が見れば「きゃー!」目をハートにしながら叫びそうな描写が多々あるが、そんな事が起きる度にテイオーはそれを強請る。
「ほらほらっ! 壁ドンしてよ!」
──うーん、そんなに良いかなぁ?
「いいからいいから!」
頼まれてやってみると、こつんと鼻と鼻がくっつく距離に。
それでも以前みたいに臆する事なく、テイオーは嬉しそうに微笑むだけだ。
一方のあなたは慣れていなく、その度に顔を赤らめてテイオーに撫でられる。
撫でる側が撫でられる側に。テイオーの余裕を益々感じる。
あなたはもっと照れるテイオーを見たい。その気持ちが募る。
「うーん、なんで離れ離れになったんだっけ?」
首を傾げるテイオー。
──確か、留学とかじゃなかったっけ。
「あぁ、そうだった! えへへ、忘れてたよっ!」
笑顔の後、テイオーは己の瞳に大人の余裕を宿した。
いつもとは違う彼女の瞳があなたの奥底を見透かす。ぐいっと迫るテイオーに、あなたは目が離せなかった。
「でも、ボクは離れないよ。ずっと、ずぅっと」
──僕も離れないよ。
「うんっ! 一緒に居ようね!」
ふっと彼女の炎が消え、何事もなかったかの様に映画が動いてゆく。
気が付けばもうクライマックスのシーンだ。留学から帰ってきたウマ娘が、凄腕のトレーナーのスランプを助け、そして一生添い遂げると誓うシーン。
映画の中の俳優の影が重なる。暈した描写ではあるが、あれはきっと間違いない。
テイオーが。いや、帝王があなたを覗く。
テイオーが帝王に変わる瞬間。あなたはそれを見計らっていた。
あなたが見たいのは。あなたが好きだと思ったのは。
帝王じゃない。
トウカイテイオーなんだ。
「うむぅっ!!!?」
彼女の驚く顔。
映画のエンドロールを傍目に、彼女との温もりが交差する。
それでも、あなたはテイオーから目を離さなかった。
彼女の息継ぎと同時に、離れてゆく。真っ暗になったテレビの画面に反射して、あなたとテイオーの顔が映る。いつになく、幸せそうな顔が──
「すきっ」
──僕もだよ。
そしてもう一度。何度も。幾たびも。
ー
「結局やられっぱなしだったよ……」
──まぁね。僕の方が歳上だし。
「もー!」
ぽかぽかと叩いてくるテイオーを撫でる。
疲れているあなたに対して、何かしてあげたい。リードしたい。というのが今回のテイオーの魂胆だったらしい。
いつも受け身になるから、偶には大人らしく振る舞う事で余裕を見せようとしたとか。
でも結局あの後、むすっとしながら甘えてきたし、諦めたのだろう。
テイオーの帝王らしさ。それも良いなと思ったあなたであったが、でもやっぱり──
「んぅ? なぁに?」
──何でもないよ。
「むっ! もっとちゃんと撫でてよね! 帝王の頭を撫でられるのはあなただけなんだからっ!」
甘えてくるテイオーの方が好きだ。
誕生日回で誕生日ネタ出してないのは詐欺じゃないか?誕生日記念回って事にすれば良いか(震え
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