発表が終わった→モンハン!スマブラ!書き方忘れた!
やっとかけました。クオリティには期待しないでください。久しぶりなので。
休日。なんと素晴らしい響きなのか。
疲れた体に休憩を。疲れた心に休息を。
今日は何も予定はない。ならば遅く起きても問題はない。なんなら二度寝でも構わない。ニンジンの世話は信頼出来る仲間に任せた。というかいい加減休めと言われたのが今日の休日の真実であった。
運び、世話をし、話をしに行き……そういえば最後に休んだのは何時だろうか。
まぁ、仕事の話はやめよう。何故ならば今日は休日なのだから。
だが、毎日の早起きの所為でうまく昼ごろまで眠れない。身に付いた習慣は中々強敵であった。
なら、何処かにでも出かけようか。そう思った矢先、携帯にメールが来ている事に気が付いた。
──トレーナー?
仲の良いトレーナーからだった。数多のウマ娘を育てる敏腕トレーナーである彼から何故連絡が……?
心当たりのないままメールを開いた。
メールには集合場所。時間、そして服装の指定があった。服装に関しては、何とも彼らしい『かっこいいやつ』といった大雑把なものであった。
はて、一体何処へ行くというのだろうか。スーツとかではないので恐らくであるが何処かへ遊びにでも行くのだろうか。
まぁやる事もなかったあなたは、持っている服の中で一番出掛けるのに適した物を掴んだ。髪を整え、簡単に朝食を食べ、そして出掛けることにした。
一体何の用事かは全く見当のつかないまま。
ー
──スズカ?
「すみません、突然の事で」
待ち合わせ場所の駅前に向かうと、そこに居たのはトレーナーではなく、彼が見ているウマ娘の一人。サイレンススズカだった。緑のついた半袖のブラウスにエメラルドグリーンのプリーツスカート。
休日の人混みに溶ける事なく存在感を放っていた彼女は、あなたの顔を見つけるなり、申し訳なさそうにこちらに駆け寄ってきた。
「トレーナーさんには昨日連絡するように言ったのですが……」
──いやいや、暇だったし大丈夫だよ。
どうやら犯人はあいつらしい。
まぁそれは置いといて、何故スズカが? 何か行きたい場所でもあるのだろうか。
──それで、今日はどうしたの?
「……もしかして、何も聞いてませんか?」
──駅前に集合で〜としか。
「トレーナーさん……」
──笑顔がこわいこわい。
目が笑っていない。頰に手を当てどうしましょうと言わんばかりに黒い笑みを浮かべるスズカ。
見られていた事に気が付いたのか、恥ずかしそうにポッと頬を染めると、何でもないと言わんばかりに首を振った。
「今日は遊園地にでも行こうかなって思って……」
──よし、じゃあ行こうか。
「えっ、でも突然で迷惑じゃ……」
──ううん、スズカが行きたいなら行こう。
「はいっ!」
よかった、いつものスズカになってくれた。
年相応の笑みを見せる彼女にホッとしつつ、あなたとスズカは電車に乗るべく駅へと歩みを進めた。
当然、空を切る彼女の手の行方に気が付かないまま。
休日だからか、電車は相当混んでいた。学生の頃は満員電車によく乗っていたが、まさか今になって乗るとは思わなかった。
空いた扉の向こうにぎゅうぎゅうの人。若干嫌な表情を浮かべそうになったが、隣でスズカは小さく「遊園地……! 遊園地……!」と言っている。きっとかなり楽しみなのだろう。そんな彼女に気を遣わせないためにも、あなたは覚悟を決めた。
はぐれないようにスズカの手を引っ張り、電車へと乗った。
「あっ」
──大丈夫?
「……はい、大丈夫──きゃっ!」
思わず転びそうになってしまうスズカの体を支え、反対のドア前まで行った。調べた限りだと遊園地のある駅は入り口とは反対側の扉が開く。このままいれば、降りる際にはずっと楽が出来るはずだ。
スズカをドアに寄り掛からせ、あなたは他者からの視線を遮る様に彼女の壁になった。掴んだ手はスズカがきゅっと握っていた。
電車が出発する。揺れが激しくなり、踏ん張るために足腰に力を込める。が、疲れからか思わずよろけてしまった。
右手はスズカと繋いでいる。彼女の体温がダイレクトに伝わってくる。
よろけた体をなんとか左手で──結局左腕をドアに押し付ける様になってしまった。寄りかかってくる他の人からの圧を感じさせない様に、あなたはスズカの壁になった。
──大丈夫?
「は、はいっ…… あなたが守ってくれるから……」
返事をしてくれたスズカの顔は先ほどよりもずっと染まっていた。いつもならば機嫌でも悪いのかとか考えてしまうが、あなたは朴念仁ではない。ではないからこそ分かってしまった。彼女が意識して仕舞えば、あなたも意識してしまう。
ぽしょりと呟いた言葉も、消える事なくあなたの耳に届く。それに何とか反応しないふりをして、優しく微笑んだ。
──うわっ!
「きゃっ!!」
もう一回。電車が揺れる。
眼前に広がった翡翠の様な瞳。こつんと甘く当たる鼻。
もう距離はゼロに等しかった。
ー
甘い雰囲気もなんとか。ぷしゅーと言いながら空いたドア。
慌てて下車し、駅を後にした。周りには見られてないだろうか。いろいろ心配事はあるが、とりあえず遊園地に向かう事にしよう。そうしよう。
遊園地の入り口、チケットカウンターへと向かう。人の少ないところへ並び、チケットを買おう。
「今ならカップル割りとかもありますけどー!」
──いや、僕らは──
「カップルです」
──え?
「カップル割りで」
一歩前に出てそう告げるスズカ。強く言うスズカに訂正出来なかったあなたは、受付の人にお金を渡し、無事に入園した。
「ほら、カップル割りの方が安いですから……迷惑でしたか?」
──いいや、大丈夫だよ。
「ふふっ、カップル…… カップル」
チケットを見て笑みを溢すスズカ。
そんな彼女を見て、カップル割りで良かったと思い、あなたはパンフレットを手にした。勿論、右手で。左手はスズカのものなのだから。
コーヒーカップで回し過ぎたスズカが「先頭の景色が──」とか、驚いた拍子に置いていかれたりとか様々なハプニングはあったものの、遊園地を満喫したあなたとスズカ。
今は閉園前に遊び過ぎて楽しめなかった園内のチュロスをスズカが楽しんでいる所である。因みにあなたはカッコつけて買ったコーヒー。本当ははちみーの方が甘くて好きなのだが、可愛い女の子の前で見栄を張りたい欲が出てしまった。まぁ、飲めなくはないのだが、少しずつしか飲めない。ベンチに座りながら、ちびちび飲む。
砂糖が多めにまぶしてあるチュロスを咥えながら、スズカは夕焼けを見ていた。そんな彼女の隣でコーヒーと格闘するあなた。
──美味しい?
「美味しいです。今日は、ありがとうございました」
──僕も楽しかったしね。
「でも、お金まで出してもらって……」
──いいって。こんな事でしかカッコつけられないんだからさ。
もぐもぐもぐ。長いチュロスがスズカの口へ消えていく。
夕陽に照らされた彼女は、視線に気が付いたのか、恥ずかしそうにそっぽを向いた。染まっているのは夕焼けの所為かどうか。
「久しぶりに遊園地に来て楽しかったです」
──前にも来たことあるの?
「はいっ……両親と幼い頃に。あんまり覚えてませんけど」
コーヒーはあと半分。もうすぐ食べ終わるスズカ。
閉園まであまり時間がない。最後に観覧車に乗るのだと決めたのだ。早く飲まなければ。ちなみに捨てるという選択肢はない。これは食を作る物としてのちっぽけなプライドだ。
ぐびぐびと飲むが、どうしても苦い。すると、苦そうにするあなたに気が付いたのか、スズカが心配そうに声をかけてきた。
「大丈夫ですか……?」
──うん、でもやっぱり苦いのはあんまり得意じゃないや。ガムシロップでも貰えばよかったかな。
「そう……ですか」
──どうしたのスズカ──ッ!
潤んだ瞳が広がる。いつになくずっとずっと近くに彼女を感じた。籠る熱があなたに自覚させた。コーヒーの苦味が消えて行く。口を甘さが支配するが、それはチュロスの砂糖か、それとも──
「これで、甘いですよね」
熱が離れていく。口に残った甘さだけが、今の出来事を現実だと言っている。
ベンチから立ち上がったスズカは、夕焼けへと駆ける。人間のあなたでも追えるぐらいの速度で。
「どうしたんですか、そんなに惚けて」
スズカがくすりと笑う。あなたにしか見せない笑みで。もう他の音なんて聞こえなかった。
「早くしないと、置いて行っちゃいますよ」
ー
私の大切なあなた。
レースで勝つ私よりも喜んでくれたあなた。
辛い時は応援してくれたあなた。
どんなに自分が辛くても決して弱音を吐かなかったあなた。
些細な事だけど弱みを見せてくれたあなたに、お返しがしたかったんだけど……やっぱり恥ずかしいわ……
でも、後悔はしてない。
前を走るあなたを捕まえるのは私だから。
私とあなたの景色は絶対に譲らないから……!
逃げるスズカを捕まえるのはあなたか。
ありがとうございました。久しぶりなんで心配ですが、何とか書きました。
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