「〜ですの」と「〜の」は結構違うけど、「〜の」の方が本心が出てるっぽくていいよね。
因みに過去一難しかったです。
ティーカップを揺らす。ゆらりと紅茶が、カップの側面をなぞる様に撓んだ。
落ち着かない。あなたの感想は一択であった。いつもならば実家の縁側。自室、そして畑にしかいないあなた。
そんなあなたが、優雅なティータイムなど、自分でも似合わないと思う。全く知らない植物が生い茂る植物園の様な場所。
どうやらメジロ家の私有しているものらしく、彼女の家が改めて大きいのだと知る。
そんなあなたを誘った彼女、メジロマックイーンは、苺の乗ったショートケーキの先端を、フォークで切っていた。
「って、話聞いてますの?」
──う、ごめん。中々落ち着かなくて。
「全く、そんなに緊張しなくても、ここには私とあなたしかいませんから」
だから緊張するんじゃないか。そんなあなたの言葉は出てこなかった。
せめて誰かいれば、ある程度は解れたかもしれないのに、燕尾服を着た執事の様な人は、マックイーンが帰してしまった。
彼女は小さく切ったケーキを口に入れ、その美味しいに頬を緩めた。落ちそうなほっぺたを押さえながら。
そういえばどうしてあなたが呼ばれたのだろうか。呼ばれたというか、ほぼ強制という言い方だったが、別段予定もなかったし……
「最近の調子はどうですの?」
──最近? まぁ調子はいいかな。ニンジンも問題ないし。
「それは良かったですわ。あのニンジンは、ケーキの様に甘く、それでもって健康にも良い。感謝してますわ」
──まぁ、それでもケーキには勝てないけどね。
そんな事を言いつつ、あなたは目の前に置かれたケーキを食べた。
甘い。いや、甘いだけじゃない。クリームの味、そしてスポンジが見事にマッチしている。それに上に乗っている苺も、クリームに負けない程甘い。
とても上品で美味しいケーキ。はて、益々分からなくなってきた。どうしてあなたが呼ばれたのか。頭を捻ってみるが、あなたには予想がつかない。
「あなたには言ってなかったけれど、実はあなたの研究にメジロ家が投資してますのよ?」
──えっ、もしかしてあの多額の投資は。
「そう、私がおばあさまに言いましたの」
勿論あなたの努力が大半を占めるその功績。だが、投資がなければ達成出来ていなかったのは事実だ。
研究初期、資金難に陥っていたあなたを助けたのは、何処からともなく舞い降りたお金であった。
マックイーンの指示だと聞き、驚くあなた。それに、あの頃は無名であったはずだ。今でこそ名の売れたあなたであったが、昔はただの土いじりをしている若者という認識しかされてなかった。
──何故、僕に?
「ふふっ、噂を聞きましたのよ」
──噂?
「ええ。無理だって言われた事をやり続けるお馬鹿さんがいるって」
間違いなくあなただ。
ニンジンを甘く、そして健康に良く。どんな料理をしても合う様な素晴らしいニンジンを作るなんて、物語でも書けばいいのにと馬鹿にされたことがあった。無理だと周りから言われ、まだ夢を見ているのかと罵られた事もあった。
でも、不可能はないって思っていた。奇跡は起きるんだって信じていた。その結果が、現在だ。
「そんなあなたの噂を聞いて、きっと出来ると。何となく……いや、確信しましたの」
──そのおかげで美味しいニンジンを作れたよ。
「えぇ、あなたは不可能だと言われた事を可能にした。奇跡を起こした」
ティーカップとソーサーがかちゃりと、音を立てて置かれる。
紅茶を口に含み、マックイーンはいつになく真剣な顔であなたを見つめた。
「私、もう走れないかもしれません」
──えっ……?
あなたは自分の耳を疑った。
「繋靭帯炎を患ってしまって……今では立つ事も難しいから」
──そんな……
「そんな悲しい顔をしないで下さいな」
決死の覚悟と言った表情であなたに告げるマックイーン。
今でも痛むのかもしれない。こうしている間にもかなりの激痛が、彼女を襲っているのかもしれない。
それでも毅然とした態度で、あなたに臨むマックイーン。
「もう無理だと。諦めようとした時、あなたの事を思い出しましたの」
──僕?
「えぇ、何の変哲もない学生が、非常識を常識に変えた様を。不可能を可能にして、奇跡を起こしたその物語を」
そう言われると恥ずかしいが、事実だ。
「努力を重ねて、何処からかの支援もあって。あなたは遂に成し遂げた」
──そうだね。マックイーンには感謝してるよ。
「ならば、私も奇跡を起こしましょう」
「痛みで辞めたくなるかもしれません。辛くて、諦めるかもしれません。それでも、私は走りたいと思った」
マックイーンの気持ちが伝わってくる。辞めたくない。諦めたくない。
「奇跡は、それを望み奮起した者の元に届きます。だって、あなたがそう教えてくれたから」
──マックイーン……
思わず言葉が漏れる。その表情は、あなたが見てきた誰よりも美しかったから。
「だから、あなたには助けて欲しいの」
──助ける?
首を傾げると、マックイーンはふわっと笑った。
「えぇ、私が、メジロ家があなたに投資をした様に。今度はあなたが私を助けて」
──でも、僕には何も──
「違うの。あなたがいいの」
──僕が?
ちょっぴりだけ朱に染まるマックイーンのほっぺた。
テーブル越しに手が差し出される。トレーニングの過酷さの伝わる、可愛らしい手だ。
「あなたがいてくれたらそれでいいの。何か…… いや、それはまだ早いですわマックイーン! 」
──?
「こほん! 決して何か特別な事をして欲しい訳じゃありませんの」
一気に染まる頬を見て首を傾げるが、咳払いと共に彼女の調子が戻ってくる。
差し出された手が、あなたに近づいてくる。
「私の側で笑ってくれれば、一緒に話してくれれば、きっと私も頑張れると思うから……」
儚げに笑うマックイーン。あなたは此処でその手を取らないと。彼女が消えてしまいそうだった。
ただ、テーブル越しはあまりにも遠い。手は確かに伸ばせば届く。ただ、違う。マックイーンが手を伸ばして得る物は、あなたではない。奇跡が寄り添った勝利ではならない。
だから、あなたは席から立ち、マックイーンの側に寄った。
そして驚いた表情のマックイーンの手を取る。緊張が顔に表れていたのか、くすりと笑うマックイーン。
「ふふっ、もしかして緊張してますの?」
──当たり前だよ。だって手を握るのだって初めてだし。
「大丈夫ですわ」
そう言ったマックイーンは恥ずかしそうに笑った。
「だって、私もですから」
そう言ったマックイーンの手は温かった。
ー
最愛のあなた。
初めは唯の夢を見ている人かと。
ただ、夢を見るのと夢を叶えるのでは違う。私はそんな叶えたあなたに惹かれたのかもしれません。
いつしかあなたの姿勢に、そしてその笑顔に、私は虜になっていましたの……って何を言わせるんですのゴールドシップ!!
何々? その内このビデオを見せるって……駄目! 消しなさい!
だって恥ずかしいんですもの。それにメジロ家として、気品溢れる立ち振る舞いをしなければなりませんから。
でも、もしも。
そんな関係になったとして。あなたが望むのであれば。
メジロ家の一員ではなく、
あなたのマックイーンとして、寄り添いますわ。
日間一位感謝。これも読者の皆様のおかげです。ありがとうございます。
次は同作品一位を目指して頑張ります。
因みに感謝の課金をしたらテイオーが出ました。しかも前衣装。
書けば出るので、みんなでウマ娘二次増やしていくぞ
フォローや読了ツイートありがたいです。また、感想やリクエストはTwitterリプやDMでも大丈夫なので、どんどん送ってくれるとモチベが上がります。
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