ゲヘヘ……、時代はTSロリ時代だぜぇ……!
月見里side
よう、俺だ。
少し放置されかけていた俺だったが、気づいてくれた奴らが押し寄せてきた。ふっ、まるで人気アイドルになった気分だぜ。女子はいいが男子は寄るんじゃねぇ、俺は女子にしか欲情しねぇんだよ!あと何故か焦ったような顔だった。何でだったんだ……?
まあとにかく、俺はこの学校に転入するらしい。特待生として。特待生として。大事なので二回言いました。何か響きがいいよね。特別感があって俺はご満悦ですよ。
もしかして俺の物語が始まってたり。いやータイトルどうしよっかなぁ。やっぱ『異世界で無能力者の俺は拳一つで無双する~ハーレム最高だぜ~』とかかな。でもまだヒロインは出てないんだよなぁ。空から降ってきてくれないかなぁ、美少女。
真面目そうな男子がクラスの皆に何やら伝えている。なんだろう、早くも俺の魅力に気付いて布教でも始めたのだろうか。でも残念、月見里教は男子厳禁なんだよね。
「月見里くん、食堂まで委員長であるこの僕が引率しよう」
ん?なんだよ急に。昼飯を食べに行こうだぁ?はっ、俺がそんなチンケな誘いに乗るかってんだ。美少女に生まれ変わってから誘ってこいや。
「そうか……。今日はオムライスが出るからぜひとも味わって欲しかったのだが……」
どこへ行けばいい。
「ちょ、飯田!月見里ちゃん先に行っちまったよ!」
「うおっ、何だアレ。ちっさ」
「なんだと!?いけない月見里くん、迷子になってしまう!」
「あ、そこ仮眠室」
ここは食堂じゃないのか。仮眠室って何?ていうか広すぎるぞこの学校は。俺の前世での学校なんてちょっと大きい庭付き一軒家サイズだったぞ。田舎だったからなのか?都心の学校はこのサイズが普通なのだろうか。税の無駄使いに思えるがな。
「うわあああああああ!?なんで月見里ちゃんがここにぃ!?」
「む、確か君はUSJにいたあの時の……」
マリモみたいな髪の男子が慌ててソファから立ち上がるも、対面に座っていたガイコツみたいなおっさんは冷静に反応していた。
なんだろう、すごく見ちゃいけない現場を見た気がする。まさかこいつら付き合ってんのか?もしそうだったらこの学校ホモ多すぎじゃね?やばい学校に入学しちまったかもしんないな。
一応頭を軽く下げてからそっと扉を閉める。
「ちょ、これは違うん――――」
部屋の中からはまだ声が聞こえたが気にしない気にしない。ほら早く用事済ませちゃって下さいよ。ああもしかしてそういう関係がバレるのが怖いんですね?安心して下さい。俺はそんなみみっちいことしませんよ。
ただ、校内放送で暴露するだけですから。それもここら一帯に聞こえるぐらいの音量で。最近はそういう趣味も受け入れられつつありますからね。たぶん大丈夫っすよ。少し世間で騒がれるだけですから。
「月見里、食堂はあっちだぜ」
丁度廊下を歩いてた赤髪ツンツン男に声をかけられる。指を指した方向は仮眠室とは真反対だった。……俺って方向音痴なのか。いや、元々食堂の位置を知らなかっただけだし。
そういえば死柄木さんと出会ったのも俺が路地裏に迷いこんできたときだよなぁ。今何してるんだろう。
まあ、俺のおかげで逃げることが出来たんだし?俺の銅像を造って崇めてるかもしれんな。いいね月見里教、死柄木さんは男だけど特別に俺の椅子役として入信させてあげようじゃないか。
ガラッ
「し、止折ちゃん!さっきのは誤解なんだ!」
扉を開けてマリモ頭が抗議しているが、ぶっちゃけ男と男の恋愛になど興味はない。校内放送も冗談だし。
一応もうしないよという念を込めて、親指をグッとして突き出す。
「何がグットなの!?」
おま、そんぐらい分かれよ。さては貴様鈍感だな?その道ではグイグイ利かせてんだろ。過度な鈍感は恨みを買うからな、やり過ぎには気をつけろよ。それと夜道にも。
どうでもいいけど、夜道に気をつけなって何処ネタなんだろう。ラップとかでよく聞くがマジで分からん。誰か教えてくれめんそ。
ぐうぅぅぅ……。
腹が鳴った。うん、腹減った。マリモにかまっている場合じゃなかったわ。思えば今日はまだ警察の人から貰ったキャンディーしか食べてなかったな。そりゃ腹減るわ。めっちゃ俺の腹がオムライスを求めている。俺の腹がオムライスだぜぇ(錯乱)。
「ちょ、行かないでぇぇぇぇ!?早っ!?足早っ!」
後ろから何やら声がしたがオムライスだろう。間違えた、幻聴だろう。頭までオムライスに飢えてやがる……。これはいかんな、早く食堂に行かねば。死んでまうわ。餓死で。ガチで。
―――――――――
緑谷side
止折ちゃんが仮眠室に乱入する事件があったけど、それについては誰にも教えないでとお願いしておいた。気にしていない様子で頷いていたから、たぶん守ってくれるはずだ。
僕たちはお昼ご飯を食べるために食堂に来ていた。
プロヒーローのランチラッシュがつくる料理はどれも絶品で、どれも格安で食べれるからお得な気分だ。雄英の魅力の一つでもある。
「………………………!!」
キラキラと目を輝かせ、列に並ぶ止折ちゃんを僕達は後ろから温かく見守っている。今の気分は娘の成長を見守るお父さんだ。
お父さん元気にしてるかな……、出張で家には帰ることは少ないけど電話で聞いた声の限りは元気だったと思う。今度会うときはお土産を持ってくるって言ってたけど何を持ってくるんだろう。後でお母さんにお父さんの出張先を教えてもらおうかな。
そういえば先生は止折ちゃんは僕達と同い年だと言っていたが、どうしても年下にしか見えないなぁ。ほら、時折背伸びして厨房を覗いているのが可愛くて、そのせいか止折ちゃんの周りには人だかりが出来ているし。
中にはスマホで撮影している人もいる。注意しようかと思ったけど、彼女を見る目が娘を見るかのような目だったのでしないでおいた。僕もさっきまでそんな目で見ていたしね。
危なそうな人は相澤先生に連行されていった。完全に犯罪者の目だったね……。峰田くんらしき姿があった気がするが気のせいだろう。
「………………わくわく」
「はい、おまちどうさま!」
「あーっとです」
ランチラッシュが差し出したお皿を、止折ちゃんがぺこりと頭を下げて受け取る。くっ、皆が写真に収めようとする気持ちがわかった気がする。ランチラッシュも硬直したまま動かない。直撃はマズかったか……。
止折ちゃんは周りの人だかりが目に入らないのか低い身長を活かして足と足の間を縫うように、とてとてと歩く。
「お、月見里ー!こっち空いてるぜー!」
切島くんが手を振って呼ぶと満面の笑みを浮かべて少し小走り気味に向かう。
「……はいお待ち!親子丼ね!」
「あ、ありがとうございます!」
まだ余韻に浸っているのかやや上擦った声で渡された昼食を受け取り、僕のことを待っていてくれていた飯田くんと麗日さんと一緒に止折ちゃんの後を追う。
そこには、背が小さいためか足をブラブラさせて椅子に座っている止折ちゃんがいた。もしかして僕たちを待っていてくれたのだろうか。なんて優しい子なんだ。
まだ少しの間だけしか一緒にいていないけど止折ちゃんの性格がすごく分かった気がする。自由奔放だけど、ちゃんと配慮が出来て誰にでも優しい女の子っていうのが彼女の印象だ。耳朗さんのイヤホンジャックで白目を剥いていた上鳴くんを心配そうに見ていたしとてもいい子である。なんでUSJ襲撃事件のときにあの場にいたのかは気になるけど。
止折ちゃんの横の席を見ると、悟りを開いたかのように微笑み続ける八百万さん達がいた。
「どうしたの八百万さん?」
「いえ……なんでもありませんわ」
「そ、そっか」
「強いて言えば……何かに目覚めたような気がします……」
「ダメだ!そちら側に行ってはいけない!」
確かに僕も目覚めかけたけども!ここで踏みとどまらないと後に引けなくなってしまう!
「緑谷くん。早く食べてしまわないとお昼ごはんが終わってしまうぞ」
「ご、ごめん!」
「親子丼も冷めちゃうよ?」
「うむ、食べ物を粗末に扱ってはいけないからな」
飯田くんの指摘で残り時間が少ないことに気づき、慌てて近くの席に座り親子丼をテーブルに下ろす。両の手の平を合わせ―――
「いただきます!」
―――親子丼にがっついた。
親子丼の味の感想
オムライスに刺さっていた旗を止折ちゃんが「なんだコレ」みたいな目で見ていたのが可愛かった。
オールマイトとの昼食の約束は、緑谷が止折ちゃんを追いかけてしまったので破られました。一人残されたオールマイト……どんまい。
あ、緑谷は壊理のこと「ちゃん」付けで呼んでいたので止折もそうしました。