どこかであったかもしれない物語。

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 部活で書いたものです。



舞う春の下で

 高校最後の登校日、いわば卒業式の日、今の時代には珍しく靴箱に一通の手紙が入っていた。差出人の名前はなく、淡いピンクの封筒の中には小さなカードにそっと文字が添えられていた。

『放課後、裏庭の桜の木の下で待ってます』

 悪戯だろうか。容姿だって優れているわけでもないし他にも優れている点がない自分に、こんな物来るわけがない。……でも、それが本心だったらそれもそれで申し訳ない。

 悩んだ挙句、相手が悪戯だろうが本心だろうが自分の内にある好奇心を優先させようと決めた。

 

「起立、礼」

 放課後。挨拶が済めば最後の時を分かち合う時間になる。泣き腫らした顔で写真を撮る女子や担任に絡みに行く男子など、少し違ってはいるもののいつもと変わりのない放課後のようだった。そんな教室の中をするりと抜け出し、手紙の通り裏庭の桜の木に向かう。

 できるだけ人が外に出てこないうちに、と少し息を切らせながら告白の名所と言われている裏庭の桜の木の下に行くとそこには一つの人影があった。

 足音に気づき小回りに振り向いたのは壇上でよく見る顔。癖のない綺麗な黒髪に透き通るような白い肌は舞う桜によく映えていて、思わず心が高鳴ってしまったのが不甲斐ない。

「突然ごめんなさい。来てくれてありがとう」

 向けられた笑顔は美しかった。

「全然気にしないで。それで、どうしたの?」

 模範的な返事をするが、その後言葉は帰ってこなかった。

 しばらくの静寂が訪れる。流れる風が木々の葉や花をさらさらと揺らす音だけがその場を包んだ。

 どうしたものか、何か気に障るようなことを言ってしまったのかと一人頭を抱えていた。

 

 

「――好きでした」

 

 

「え?」

 周りの音すら意に介さない力のこもった声でまた綺麗に笑っていた。――けれど、頬に雫が伝っていた。

 僕がその言葉を理解しないでいるうちに彼女は横を通り過ぎ校舎の方へ消えていった。僕はただその後ろ姿をじっと見る事しかできなかった。

 

 教室に戻れば僕の姿を見て「何してたんだよ」と笑いかけてくるクラスメイトがいた。未だに帰った人はいないようで教室内はうるさい。適当にはぐらかして返すと、すぐにいつもの雑談を投げかけられる。ただ、その内容がタイムリーすぎた。

「生徒会長さ、すぐ海外に引っ越すらしいぜ。それにもう帰ってこないってよ」

 僕の中で納得がいった。あの言葉は失恋なんだろう。

 追いかけなくてよかった。そうしたら未練を残させてしまうところだったかもしれない。

 あれでよかったんだ。あれで。

「……おい、どうした?なんか上の空だな」

「いいや、何でもないよ」

 彼女のあの姿もあの言葉も忘れないでいよう。いや、忘れることはできないのだろうな。

 

 相変わらず、青い空の下で桜の花弁がひらりひらりと舞っていた。




 短編集みたいな感じでまとめてみたいですね
 やるとはいってない

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