困惑する彼の前に、一人の少女が現れる。
少女は飛羽真を待っていたかの様に、彼に話しかけ……
せっかく同じ名前だし繋がりを作れるアイテムもあるし、いっそのこと作ってしまおうということで作書いたものです。
書いたのがセイバーの7話くらいの頃なので、セイバー本編との齟齬があるかもしれませんが、そこは二次ということで一つ……
楽しんでいただければ幸いです
「ここは……」
気がつくと、神山飛羽真は赤い夕日が輝く丘に立っていた。
あたりには無数に剣が刺さっている。
どこかの戦場なのか、あたりからは腐臭と血の匂いがした。
ここは一体どこなのか。
確か自分はアヴァロンでキングオブアーサーのライドブックを手に入れ、ソード・オブ・ロゴスに戻る途中だったはずだ。
「来ましたか」
そんなことを考えている飛羽真の耳に声が聞こえた。
凛と張った、しかしどこか儚げな女性の声。
そちらの方に体を向けると、そこには青いドレスを纏った金髪の少女がいた。
外国人だろうか。とても美しい顔立ちをしている。
「君は誰?」
飛羽真は少女に問いかける。
「答えずとも、今の貴方ならすぐに分かるはずです」
少女は飛羽真の懐を指差し、告げる。
飛羽真はなんのことかと懐を探り、手に当たった何かをとり出す。
キングオブアーサー。
騎士王の伝承が記された豆本、ワンダーライドブックだ。
この本にはブリテンの騎士王、アーサー王の伝説の全てが記されている。
少女が指したのはこの本なのだろうか。
飛羽真はキングオブアーサーを開く。
それと同時に本のページが一気に開かれ始め、文字の一つ一つが大きな光を発した。
その光の中に見えるのは一人の少女。
先程の少女と同じ顔立ちの、いや、同じ少女だ。
青いマントを纏い、黄金の剣を携えた少女。
その姿はまるで……
「まさか!」
飛羽真は思わず声を上げる。
その反応を見て少女はうなずく。
どうやら飛羽真が思った通りらしい。
彼女は本物のアーサー王のようだ。
「で、でもどうしてここに」
飛羽真はなんとか本を閉じ、少女に問いかける。
「あなたの持つその本、ワンダーライドブックに呼ばれたのです」
「呼ばれた?」
「ええ」
少女のドレスに風が渦巻く。
ドレスの上から鎧が現れる。
「あなたがその本を手にする者にふさわしいか……見定めるために」
渦巻く風は少女の手に収まる。
「剣を抜きなさい」
「……わかりました」
飛羽真は言われるがままにソードライバーを取り出し、腰に据える。
キングオブアーサーとは別のライドブック、勇気の竜の物語、ブレイブドラゴンを開いた。
『かつて、世界を滅ぼすほどの偉大な力を手にした神獣がいた……』
ライドブックをドライバーにセットし紅蓮の炎を宿す聖剣、火炎剣烈火を引き抜いた。
「変身!」
烈火抜刀!ブレイブドラゴン!
『烈火一冊!勇気の竜と火炎剣烈火が交わる時、真紅の剣が悪を貫く!』
剣をふるい、奇跡を描く。
炎の斬撃は剣士の仮面を覆う。
真紅の炎を身に纏う火炎剣烈火に選ばれた勇者、仮面ライダーセイバー。
その姿はまるで竜の業火に包まれているかのように、赤く輝いていた。
「行きますよ……アーサー王さん!」
「ええ!」
セイバーの合図とともに赤の剣士と青き騎士王はぶつかった。
二つの剣が交わり、戦いの音が響く。
アーサー王の風の剣はあらゆる形へと姿を変え、セイバーに迫る。
時に重く、時に鋭く。
形を変え、少しずつセイバーを追い詰める。
「くっ……そ…!」
その攻撃をなんとか凌いでいるが、これではジリ貧だ。
このままでは何もできずにやられてしまう。
「だったら!」
セイバーは攻撃を弾きながら二冊のワンダーライドブックを取り出す。
緑色の天に向かって伸びる蔓が描かれた本と、セイバーと同じ色の赤いバイクが描かれた黒い本だ。
『とある少年がふと手に入れたお豆が、巨大な木となる不思議な話……』
緑色の方を開き、両方の本をドライバーにセットする。
『創刊!ディアゴスピーディー!』
『烈火抜刀!二冊の本を重ねし時、聖なる剣に力が宿る!』
ワンダーライダー!
『ドラゴン!ジャックと豆の木!二つの属性を備えし刃が、研ぎ澄まされる!』
勇気の竜の右半身、深緑の大木の左半身を持つ姿ドラゴンジャッ君。
その姿への変身と同時に、黒いワンダーライドブックがバイクの形を取った。
『発車爆走!ディアゴスピーディー!』
セイバー専用のライダーマシン、ディアゴスピーディーだ。
「先ずは引き離……⁉︎」
「はぁっ!」
アーサー王の剣が振り下ろされ、セイバーを打ち据える。
セイバーの体から火花が散り、赤き剣士の体が宙に舞った。
「っ……!」
体をひねりつつ、セイバーは左手から土豆を放ち、アーサー王を攻撃する。
しかしその攻撃は全て阻まれ、土豆は地に落ちる。
セイバーは更にドラゴン・ワンダーを放つが、その攻撃さえも騎士王は軽く弾いてしまう。
「そんなものですか、セイバー!」
騎士王の声を聞きながらセイバーは騎士王の剣を受け止める。
しかし少女騎士の剣は見た目よりもはるかに重い。
少しずつ、セイバーの膝が地に向かう。
「負け…るかぁ!」
だがセイバーは全力で剣をはね返し、騎士王を斬り付ける。
聖剣の二つの閃光が騎士王の胸当てを撃ち、騎士王はその衝撃で後ずさった。
「今だ!」
その言葉と同時に、アーサー王の足元が輝き巨大な蔓が生えた。
先程打ち落とされた土豆をドマメノキマスクの力で一気に成長させたのだ。
蔓は空中で巨大な迷宮を描いた。
セイバーはディアゴスピーディーを駆り、蔓を一気に駆け上がり、騎士王に向かって突進した。
ディアゴスピーディーのスピードを乗せた斬撃を騎士王に見舞う。
騎士王もそれを迎え撃つ。
しかしスピードの乗った攻撃はやはり重く、今度は騎士王の方が押され始めた。
「くっ……!」
「一気に決める!」
セイバーは聖剣をドライバーに戻し、もう一度引き抜く。
『必殺読破!ドラゴン!ジャックと豆の木!二冊切り!ファ・ファ・ファイヤー!』
「はあああああっ!」
バイクから飛び、騎士王に向けて必殺の一撃を叩き込む。
「爆ぜよ、風王結界!」
騎士王はその攻撃を剣から暴風を放ち、受け止める。
火炎十字斬と風王鉄槌。
二つの一撃が蔓を揺らし、その衝撃は大地まで届いた。
拮抗したまま、二つの一撃は動かない。
その状況を破ったのはセイバーの方だった。
ブレイブドラゴンのページが押され、本から赤き龍ブレイブドラゴンが現れたのだ。
赤竜は炎を放ち、その炎に押されてセイバーの攻撃の威力が増す。
炎に押されたセイバーは風王鉄槌を突き破り、騎士王の体に火炎十字斬を叩き込んだ。
騎士王の体が吹き飛ばされ、蔓に叩きつけられた。
しかし騎士王は華麗に鶴の上に着地する。
先程の一撃を受けてなお、剣を構えセイバーを見据える。
青き少女騎士の目に映るのは己の敵としてのセイバーのみだった。
見ると、アーサー王の剣が隠していたその姿を見せている。
先ほどまで風のように揺らぐ何かに姿を隠していたその聖剣が姿を現したということは。
「今から本気を出すってことか……」
飛羽真の体が震える。
それは恐怖か武者震いか。
どちらにせよ、ここまで来たのなら。
「全力で立ち向かうだけだ!」
セイバーが駆け出す。
右手の火炎剣烈火を鞘に戻し、セイバーは一つの本を取り出す。
『この大鷲が現れし時、猛烈な竜巻が起こると言い伝えられている…』
赤きライドブック、ストームイーグル。
ブレイブドラゴンと相性が良い、赤き本の内の一つだ。
それを鞘に合わせ、剣を引き抜く。
『烈火抜刀!』
竜巻ドラゴンイーグル!
『増刷!ジャックと豆の木!烈火二冊!荒ぶる空の翼竜が獄炎を纏い、あらゆるものを焼き尽くす!』
二つの赤きライドブックと、大地の力を宿す深緑のライドブックが共鳴し合い、セイバーは大地と空の勇者、ドラゴンイーグルジャッ君へと変身した。
セイバーは剣をふるい、騎士王を攻撃する。
騎士王はその手に持つ聖剣を構え、セイバーを迎え撃つ。
二振りの聖剣はぶつかり合い、再度激しく火花を散らす。
金の閃光と紅色の閃光が空を駆ける。
「む」
騎士王が顔をしかめた。
最初の撃ち合いの時よりもセイバーの力が増しているのだ。
騎士王の持つ聖剣が見せた真の姿に、火炎剣烈火が共鳴しているのだろうか。
火炎剣烈火の力が増大しているのは、セイバーも感じ取っていた。
一際大きな火花が散り、二人の剣士の間合いが開かれる。
セイバーが攻撃を受けて吹き飛ばされたのだ。
セイバーが仰向けに倒れる。
「そろそろ終わりにしましょう」
そう言い、騎士王は聖剣を自身と水平に構えた。
聖剣に向かい、念じ、言葉を紡ぐ。
セイバーはなんとか立ち上がろうとするが、思ったよりもダメージを受けてしまったらしい。
体幹が安定しない。
「束ねるは星の輝き……」
聖剣に光が集まり、一条の輝きを形作る。
光の束はセイバー達が立っている蔓よりもはるかに長く、巨大だ。
あんなものを食らってはどんな豪傑だろうとひとたまりもないだろう。
セイバーは自身の体に鞭打ち、なんとか立ち上がる。
「輝ける命の奔流……」
聖剣に集まった光が一直線に伸び、巨大な黄金の剣になった。
これこそ、アーサー王の伝説に語られる究極の神造兵装。
主人の勝利を約束する、絶殺の一撃。
「受けるがいい!」
黄金の剣が、セイバーに向けて振り下ろされる。
セイバーも火炎竜巻斬で対抗しようとするが、光の奔流はそれの発動よりも早く、セイバーに迫る。
「エクス、カリバァァァーー‼︎」
少女の咆哮と共に振り下ろされた聖剣が、セイバーを飲み込む。
光の勢いは止まるところを知らず、蔓を切り裂き、大地をえぐった。
主を失い、力を失った蔓が枯れながら大地に倒れ伏す。
騎士王は地面に着地する。
あたりを見回すが、セイバーの姿はない。
「さすがに、やりすぎたでしょうか」
そんな不安を口にしながら、騎士王は周りを見る。
その時だった。
空に竜の咆哮が響き渡ったのだ。
騎士王はハッとその咆哮を見る。
そこにいたのは先ほどセイバーに呼び出された赤き竜、ブレイブドラゴンだ。
そしてその背には、赤き剣士を乗せていた。
「セイバー!」
騎士王は驚き、彼の名を叫んだ。
エクスカリバーは星を守るために作られた究極の聖剣だ。
その力を受けて立っていられるものはいない。
いや、それどころか跡形もなく蒸発してしまうだろう。
ならば耐えたのではなく。
「その竜のおかげで回避できたということですか」
騎士王の考えは当たっていた。
あの時、光を受ける直前。
火炎剣烈火はパートナーの危機を救うべくブレイブドラゴンを呼び出し、エクスカリバーがセイバーに届く前に彼を救わせたのだ。
「やっぱり、強い……」
戦いの中で騎士王の強さを実感し、セイバーはそう呟く。
やはり誰もが知る、伝説の英雄には敵わない。
しかし。
「どんな敵が相手でも、俺は絶対に諦めずに戦う!」
セイバーはキングオブアーサーを取り出し、ページを開く。
『とある騎士王が振り下ろす勧善懲悪の一太刀…』
「これが俺の答えだ!」
先程の攻撃で吹き飛ばされたジャッ君と土豆の木の代わりに、それを鞘にセットする。
聖剣を引き抜き、セイバーは更なる姿へと至る。
『烈火抜刀!』
竜巻ドラゴンイーグル!
『増刷!キングオブアーサー!烈火二冊!荒ぶる空の翼竜が、獄炎を纏い、あらゆるものを焼き尽くす!』
勇気の竜、竜巻の大鷲、そしてアーサー王。
三つの大いなる力を宿し、仮面ライダーセイバーは王剣に選ばれし伝説の勇者、ドラゴンイーグルアーサーへと至った。
セイバーは剣を戻し、剣のトリガーを二回押す。
『必殺読破!ドラゴン!イーグル!アーサー王!』
セイバーに光が集まる。
それは剣士を覆うと共に赤く輝く炎となり、足を燃やす。
セイバーの手の中のキングエクスカリバーが巨大化し、騎士王に迫る。
「物語の結末は……俺が決める!」
『三冊撃!ファ・ファ・ファ・ファイヤー!』
セイバーの背に赤き翼が現れる。
荒れ狂う大鷲、ストームイーグルの翼だ。
セイバーは火竜の背から飛び、騎士王に向けて急降下する。
ライダーキック。
全ての仮面ライダーの持つ、仮面ライダーの象徴とも言うべき技。
その技を構えるセイバーの背を押すように、炎の息吹がセイバーを包み込む。
火竜の炎と騎士王の剣に乗って、騎士王に迫る。
騎士王は再度風王結界を展開し、セイバーの攻撃を受け止める。
しかし。
「ハアアアァァァァァァーー!」
剣士の咆哮に合わせ、炎は一層燃え上がる。
セイバーの全力の一撃、火龍蹴撃破は風王結界を突き破り、巨大な爆発が当たりを包み込んだ。
少しの間を置いて、爆発による噴煙が晴れる。
噴煙の中には二つの人影。
それは、変身が解け満身創痍の神山飛羽真と、砕けた鎧を纏う少女だった。
ぼろぼろの体で気絶している飛羽真に、騎士王は近づき声をかける。
「お疲れ様です……セイバー」
セイバーはドライバーからキングオブアーサーを手に取り開く。
それに描かれているのは騎士王の体験した全ての物語だ。
騎士王の知るアーサー王伝説の真実、全てがこの本には載っている。
その物語を自身の力として託すのにふさわしいか。
騎士王がセイバーをここに呼び、剣を交えたのはそれを見定めるためであった。
騎士王はキングオブアーサーの表紙を閉じ、飛羽真の手に握らせる。
「たとえ希望の薄い戦いであっても全力を出し、立ち向かう……蛮勇ではありますが、それほどの勇気を持つあなたになら、この本と私たちの物語を、託しても良いかもしれませんね」
気絶したままの飛羽真に騎士王はそう声をかける。
「私たちの物語を頼みます。仮面ライダー、セイバー」
騎士王が最後にそう言うと、太陽の沈みゆく丘は、跡形もなく消え去った。
「はっ⁉︎」
そんな声を上げながら神山飛羽真は目を覚ました。
何故か頬がひんやりと冷たい。
見ると目の前には石の壁……というか床が。
どうやら眠っていたらしい。
アヴァロンにたどり着いてあの巨人と戦っている時まで、ずっと気を張っていたからだろうか。
しかし、それでもこんなところで寝ることはないだろう。
何故こんなところで寝ていたのか、飛羽真は不思議に思った。
「何かを、託された気がするけど……今は考えても仕方ないか。早く賢人のところに戻らないと」
そう言って飛羽真は走り出した。
今も戦っているであろう友の元へと。
その手に輝く、騎士王の物語とともに。
セイバー最近面白くなってきてよきよき……
好きな作品が好かれるようになると嬉しいなあ