喫茶店・ホースリンクへようこそ!   作:アヴァターラ

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 どうしてもやりたかった一発ネタ

 えー、うれしいことではありますが、感想をたくさんいただいております。今まで一応すべてに短くではありますが返信させていただいておりました。ですがそろそろ作者の手が追い付かなくなってきておりまして。誠に申し訳ございませんが、これからは作者の返信したい、もしくはする必要がありそうなものにのみ返信をさせていただきます。

 規約上、感想への返信は自由ではありますが、一応のけじめとして前書きの場をお借りして皆様にお知らせしたく思います。よろしくお願いします。

 もちろん感想はすべてに目を通させていただいておりますのでこれからもどしどしお送りください。モチベが上がるとモロに執筆速度に影響が出るタイプなので。ガソリンはいくらあっても困りません。


はちみつホットプリン

 本日の営業、予約時間がみんな早かったせいか昼にはもう予約客を捌いてしまった。思ったよりも早く終わったことに拍子抜けした今日の担当ウマ娘たちも迎えに来たトレーナーに抱き着きながら帰っていき(何かを怖がってるように見えた気がするが)、俺も俺で閉店の準備をしてウマッターに営業終了の嘶きをする。満員御礼の感謝である。いやー今日のはちみつプリンは傑作だったみたいで持ち帰れませんか!?というお客様がたくさんいた。もちろん持ち帰れますよぐへへ、持ち帰り用の箱の絵柄はどうしますか?トウカイテイオー、メジロマックイーン、ゴールドシップ、シンボリルドルフ等々ご用意がありますが・・・みたいな会話を繰り返して完売!最高!

 

 ウマッターに乗せたいまにもとろけそうなはちみつプリンの画像へ「食べたい」「ネット販売して!」という声が届く届く、ふはははは!いやーたまにあるこのスマッシュヒットがたまらんねえ!と思っていると閉店のドアプレートがかけられているハズのドアがそろりそろり遠慮がちに開いた。俺が不審に思って目を向けるとそこにいたのはメジロマックイーン、常連ではあるが閉店後に来ることはとんとない(開店前には来るが)お行儀のいいウマ娘である。

 

 「ご、ごきげんようですわ」

 

 「おー、マックイーン・・・?お前なんかあったか?」

 

 「ななな何もありませんことよ!?」

 

 「・・・ほんとかー?」

 

 俺が疑問を覚えたのはまずマックイーンの尻尾と頭。顔はいつも通り平静を保ってるように見えるが何となく元気がないように思える。そして耳、何時もだったら俺の店に来る=甘いものを食べにくるなので上機嫌にパタパタせわしなく動いているのだが今は絶不調という感じで頭にぺったりと垂れてしまってピクリとも動かない。そして尻尾、垂れている、そりゃもうぐんにゃりとでもいえばいいのかという感じに垂れている。トレーナーじゃないが俺にもわかる、今こいつとんでもなく気分が落ち込んでいる。何があったんだろうか?

 

 「やっぱお前おかしいぞ?保健室にはいったか?」

 

 「いえその、いったからこうなったといいますか、いったおかげでこうなったんですの・・・」

 

 「ああ???」

 

 いまいち要領を得ないマックイーンの言葉に俺が首をかしげる。右手で左肩近くを抑えるように立つマックイーンの姿に怪我でもしたのかと思ったがそんなことがあればまずうちには来ない、マックイーンはそこらへんはしっかりと考えている子だ。ますます疑問が増える。とりあえずカウンターの椅子を勧めて彼女が着席したので気分が落ち着くようカモミールティーを淹れて出してやる。彼女は一言お礼を言ってそれを飲み、ほうと一息ついた。

 

 「う~~~ん・・・やっぱお前大丈夫か?」

 

 「あまりしつこいのは嫌われますことよ?問題ないと言っておりますのに」

 

 「だってお前表情普通なのにこっちはめちゃくちゃ沈んでるじゃねえか」

 

 そう言って俺はマックイーンの頭に手を置いてしなっている耳ごと頭をなでる、彼女は気持ちよさそうに目を閉じ逆に俺の手に頭を擦り付けるようにしてくる。反応自体は普通・・・うーん・・・何が原因なんだろうなあ・・・としっかり手入れが行き届いてサラサラしてる彼女の髪と柔らかい耳を撫でる。手を放すころにはぺったりしていた耳もちょっと沈んでるかな?くらいに戻った。尻尾も垂れず普通に少し動いている。こりゃ完全になんか嫌なことがあって落ち込んでいるだけだな?そういうことなら・・・

 

 「マックイーン、プリン食うか?今日のやつは傑作なんだ」

 

 「はい、いただきますわ」

 

 「おう、ちょっと待ってな。今回のやつは出来立てじゃねえと美味しくないんだ。15分くらい待ってくれよ」

 

 「ええ、もちろんですわ。今日はスピカはお休みですので」

 

 「そっか」

 

 

 俺は厨房に戻って卵、牛乳、生クリーム、はちみつを手早く混ぜてプリン液を作る。残念ながら営業の分は完売御礼だ。お代わりに備えて多めに作ってやろう。ちょっと大きめの耐熱皿にプリン液を流し込んであらかじめ熱しておいた蒸籠の中に入れてしばらく蒸す。固まったあたりで取り出し、ゴルシの知り合いの養蜂家の人にもらった巣蜜を上にトッピングして、完成。シンプルではあるが美味しいと自負している。そしてこのプリンがなぜ完成直後が一番おいしいのか、その理由はこれが温かいまま食べるホットプリンと呼ばれるものだからだ。しっかり固まった冷たいものと違い、温かいものは甘みが強く、滑らかさが出しやすい。卵の含有率も高めにしてあるからまったりとしていてクリーミーなのだ。

 

 「お待たせ、はちみつホットプリンだ。熱いから気をつけろよ」

 

 「温かい・・・プリンですの?」

 

 「おう、外国じゃ割とメジャーだぜ?発想としちゃ茶碗蒸しみたいなもんだ。割と出来立てのプリンを食べるのはよくあるみたいでな。スーパーで売ってるカッププリンじゃまず出来ねえ、自作するかきちんとケーキ屋で買ってあっためるこったな」

 

 「なぜスーパーで売っているものではできませんの?」

 

 「ああ、あれは実はプリン風ゼリーと言っていいもんなんだ。蒸して固めるもんじゃなくて寒天で固めてる。だからあっためても蒸しプリンの出来立てとは別もんになるんだよ」

 

 「!!!???そう・・でしたの!?」

 

 「なんでそんな愕然とした顔になるんだ?あれもプリンだから別に問題はないはずだろ?」

 

 「いえその、何を信じていいかわからなくなりまして・・・」

 

 「お前はプリン一つで人間不信になるなよ・・・それよりもほら、あったかいうちに食べてくれ」

 

 「は、はい!いただきますわ!」

 

 そういってマックイーンはプリンをスプーンで掬う、ほわっと湯気がたち、とろりとはちみつがプリンを覆う。ふう、ふうと息を吹きかけて少しだけ冷ましたマックイーンがパクリ、とプリンを口に運んだ。もぐもぐと咀嚼して飲み込んだ彼女の耳が元気よく動き出して、どことなしか平坦だった表情に赤みが差してきた。お、気分がよくなったみたいだな。お菓子一つで吹き飛んでしまうようなことだったのかもしれないが沈んでいるのをずっと見ているのは趣味じゃない。どうせなら笑っていてほしいし、楽しくなってくれればそれが一番だ。

 

 「おいしい、おいしいですわ!」

 

 「ああ、よかった。機嫌もよくなったみたいだし、安心したわ。しっかし、今日何があったんだ?奢ってやるから聞かせてくれよ」

 

 耳を上下に激しく動かしながら美味しそうにプリンを頬張ってくれるマックイーンを微笑ましく思いながら俺がそう尋ねると彼女は少し迷うように瞳を伏せてから口を開いた。

 

 「その・・・実は今日・・・トレセン学園で健康診断がありましたの。それで・・・あの・・・予防接種を・・・」

 

 「予防接種かぁ・・・なるほどな。ならお前がそうなるのも納得だわ」

 

 「へ・・・?あの・・・それだけですの?」

 

 「それだけって?」

 

 「いえ、今までこういうことがあった時、小学校では皆さん「えー?そんなことで?」というような反応ばかりでしたので・・・」

 

 「ああ、まあウマ娘と関わってない人だったらそうだよなあ。俺は一応ウマ娘のほぼ全員が注射や点滴、採血の類が多かれ少なかれ苦手っていうのは知ってるからな。あのルドルフでさえ顔が青くなるんだ。不思議じゃないよ」

 

 「・・・え?」

 

 「それにトレーナーもそうだろ?多分予防接種があるならどのチームもみんな休みになってるはずだ。トレーナーも分かってるから今日は休んで気分転換しろってことで休みなんだろうさ」

 

 なるほど、予防接種ね。やっと納得いったわ。あまり一般的に知られていることではないが、ウマ娘は注射の類が大の苦手だ。大人のウマ娘でも受けると決まったら顔が青くなるというのだからそれはもう種族的な本能のようなものなんだろう。俺もルナという幼馴染がいるからわかる。初めて見るはずの注射器になぜか恐れおののいて泣き出してしまったルナを抱っこしながら予防接種を受けさせたことで少し調べてみたんだが、どうも彼女たちはなぜか注射器、点滴といった医療器具を初めて見るにも関わらずそれに異常な恐怖を覚えるらしい。

 

 これには彼女たちが受け継いだ異世界の魂が関係してるのではという学説が現在主流ではあるが実際詳しいことはわかってない。まあつまり簡単に言うと「大の注射嫌い」なのだ。ウマ娘という種族はみんな。ちなみにルナの初予防接種の際に俺は抱き着かれて締め上げられたせいで肋骨が3本折れたことをここに記しておく。ウマ娘のパワーってやっぱやばいわ。

 

 「そういうことでしたの・・・トレーナーさんにはお礼を言わなくてはなりませんわ」

 

 「気にしなくていいと思うけどな。それにキチンと受けてからここに来たんだろ?偉いじゃないか。どうしても勇気が出なくて逃げるやつも毎年毎年いるくらいなんだから。そうだな・・・例えば・・・」

 

 

 

 「うええええええん!!テンチョー!匿ってぇ!!!!」

 

 「今ここに来たこの引っ付き虫みたいなやつとかな」

 

 「テ、テイオー!?」

 

 ドアが乱暴に開き、鹿毛のポニーテールを跳ね上げたウマ娘、トウカイテイオーがドアを潜り抜け、半泣き・・・というかもうほぼ泣いて俺を見つけたと思ったらマックイーンなど目にも入らんと言わんばかりにカウンターごと飛び越えて俺に抱き着いてきた。俺は首に強烈なダメージを受けながら逆肩車の体勢になりくすんくすんと鼻を鳴らして俺の頭に抱き着くテイオーゼミに話しかける。

 

 「テイオー、今日は予防接種の日なんだって?マックイーンから聞いたぞ。お前、逃げてきたな?」

 

 「ピエッ!?だってだってぇ!あんなおっきなお注射だなんて聞いてなかったんだもん!針も太いしさー!」

 

 「確かにそうですが・・・一般的には普通だと聞いておりますわ」

 

 「マックイーンは余裕そうだったじゃん!メジロの誇りにかけて!とか言っちゃってさー!ボクは無敵のトウカイテイオーなんだからお注射なんて必要ないんだよー!」

 

 多分それやせ我慢だぞテイオー。よかったなマックイーン、ばれなくて。さてさてこのわがまま帝王をどうしたら素直に予防接種に向かわせることができるのか。何かを思い出したようにスマホをチラ見したマックイーンの「私のライバルがこんなに情けないなんて・・・」という目から逃げるように俺にひっつくテイオーに説得の言葉をかける。

 

 「ほら、無敵のトウカイテイオーなら注射ぐらい大丈夫だろ?ちゃんと受けてきたらご褒美やるから、な?」

 

 「・・・ほんと?」

 

 「ああ、ほらマックイーンが食べてるやつ。はちみつホットプリン、俺の傑作なんだ。頑張ってきたら美味しいやつ作ってやるから、な?」

 

 「テンチョーもついてきてくれる?」

 

 「なんだ、俺も一緒じゃないとだめなのか?昔のルドルフみたいなやつだなー・・・いいよ、一緒に行ってやる」

 

 「カイチョー?カイチョーもお注射苦手だったの?」

 

 「ああ、前日になると俺に引っ付いて離れなくてな。ご両親に威嚇してたくらいだ。まあ結局俺に抱き着きながら受けるのがいつものパターンだったな。ほら、ちょうど今のお前みたいに。テイオー、別に注射が嫌いなのはしょうがない。だけど、それは学園がお前が余計な病気をしてレースに出られないなんてことににならないように気遣ってくれてるんだから、ちゃんと受けてくれ」

 

 「うん、わかった。その、迷惑かけてごめんね、テンチョー」

 

 「気にすんな。そうと決まれば一緒にトレセンまでいくぞ」

 

 ようやっと予防接種を受ける気になったテイオーの力が緩んだので頭から降ろして幼児にするような抱っこの体勢になった。こういう時にものをいうのは体力と筋力であるが毎日過酷な調理と重い調理用具を手足のように振り回している俺にとってテイオーくらいのサイズなら全然軽い、超余裕。あんまりにも怖がりすぎてたせいか涙にぬれる顔を拭ってやってマックイーンに声をかける。

 

 「つーわけでマックイーン、ちょっとトレセンまで行ってくるから。食べ終わってお代わりしたかったら待っててくれ、帰るんだったらドアだけ鍵かけといてくれ。じゃ、テイオー、いくぞ」

 

 「うう~~~!!わかったよ~。テンチョー、手繋いで~」

 

 「はいはい」

 

 テイオーを下ろしてエプロンを脱いでかけた俺がドアのほうに向かいながらテイオーの要求を聞き入れて手をつなぐ。やっぱり怖いのか尻尾を足の間に入れるくらい垂れ下げ耳をしおしおと萎えさせたテイオーに昔のルナの姿を重ねながら靴を履き替えようとするとスマホとにらめっこしていたマックイーンが口を開いた。

 

 「いえ、その必要はありませんわ」

 

 「え?でもテイオーには予防接種を受けさせないと・・・」

 

 「ええ、それはそうです。ですので、こういたしましょう」

 

 パンパン、とマックイーンが両手を顔の横で2回鳴らした。すると俺が開ける前だったはずのドアがガチャリと開いて白衣に身を包んだ人物が現れた。

 

 

 

 

 

 「私の主治医ですわ。トレセン学園の校医もしておりますの」

 

 

 「主治医です」

 

 「で、出た~~~~~~!!!」

 

 へぇこの人が、と思うとテイオーが悲鳴を上げてまた半狂乱となって俺の頭に戻って行ってしまった。機械的な音を立てて俺のほうに近づく主治医さんを見てテイオーが恐怖に上擦った声を上げる。

 

 「な、なんでここでお注射持ってるの~!?」

 

 「それは私がトレセン学園の校医だからです」

 

 「わけわかんないよ~~~!!」

 

 「いや訳はわかるだろ。ほらテイオー、ちょうどいいからここで受けちまえ。ほら腕だして」

 

 「ああ、そのままで構いません、では失礼して」

 

 主治医さんは座った俺に抱き着いて震えるテイオーの腕の制服を手早くめくりあげ、消毒しそして躊躇なく

 

 

 ブ ス リ

 

 

 「ぴぎゃあああああああ~~~~~~!?!?!?!?」

 

 思いっきり針を突き立てて注射した。耳元で絶叫が響いた俺の聴覚が半分ふっとんだ気がしたが1秒もかからず注射は終了して主治医さんは絆創膏を張り付け、服をもとに戻して一礼して出て行った。流石はメジロ家お抱えの医者、震えるウマ娘にあんな正確に注射をするとは・・・。

 

 「ほら、終わったぞテイオー。離してくれないとご褒美が作れないぞ~」

 

 「うう~~~痛かったよ~~!」

 

 「でもすぐだったじゃないか。暴れなかったし偉い偉い。な、デジタル」

 

 「はい!大変立派でした!震えるウマ娘ちゃんも・・・うへへへ・・・」

 

 主治医と一緒に入ってきたらしいナース服のデジタルの腕にも絆創膏があることに気づいた俺はデジタルをマックイーンの隣に、その隣にテイオーを置いて逃走を封じてからテイオーとデジタル、そしていつの間にか食べ切ったマックイーンの分のプリンを作るためにエプロンをつけて厨房に行くのだった。

 

 15分後、そこには笑顔で談笑しあう(うち一人は昇天しかけ)3人の姿があったとさ。ついでに夜にうちにきたルナを慰めるのに3時間かかったことをここに記しておく。おわり




 作中で言及した注射の件ですが公式設定ではありません。が作者はリアルで牧場に勤めておりまして、馬ではありませんが牛の世話をしております。その際に注射をする機会が間々あるのですが、手に持った注射器やらを見ると牛たちは露骨に嫌がりだすのでそこから発想した次第です

 牛は比較的頭のいい動物でありまして、ならばそれよりも頭がいい馬だったら注射器とかも理解するよね?特に競走馬なんて獣医さんと隣り合わせだったわけですし。
じゃあその魂を受けついたウマ娘たちも苦手なのでは?という理由です。魂に刻まれた感じですかね。

 長々と申し訳ありませんでした。お許しください

 え?アンケートに全部がない?全部書いたら作者どうにかなっちゃうので許して
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