喫茶店・ホースリンクへようこそ!   作:アヴァターラ

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 やあっと職場体験編が終わりです。もう引き延ばしても面白くないのでここですぱっと終わります


職場体験・仕事編 ハンバーグプレートランチ

 職場体験がスタートする、今日という日に。マックイーンとテイオーがキタサトコンビの俺の店におけるトレーナーとして応援に来てくれたわけであるが、新しい勝負服に身を包んだ二人がキタサトコンビに挨拶を済ませキタサトコンビはさっそくと言わんばかりに今日から着ることになる出来立てほやほや、ピッカピカの勝負服に着替えに更衣室まで小走りで走って行った。

 

 「二人の勝負服かぁ~・・・マックイーンはどんなのだと思う?」

 

 「ふふ、きっと可愛らしいものだと思いますわ。楽しみですわね」

 

 和やか~に会話してるのは手際よく掃除を終わらせたテイオーとマックイーン、はちみーを手に普段のレースでは見られないぐらいの穏やかな顔で会話を楽しんでいる。そして俺は延々と作業をしている。それはなぜか?今日のメニュー、気合を入れすぎて作業工程がとんでもなく多くなってしまったからだ。今日の日替わりメニューはいわゆるランチプレート、一皿に多種多様な料理を乗っけたものだから、仕込みが予想以上に多くなってしまったのだ。

 

 まず主菜、これはニンジンハンバーグ、付け合わせにサラダ、ナポリタン、バターコーン、型に盛ったお山のごはんに箸休めのピクルス、ソースもピクルスも自家製、これにデザートのチーズケーキパフェが加わる。いや~皿を分けると運びにくいだろうって思って一皿にまとめたんだけど却って失敗だったかな?マジで作業が多すぎた。

 

 とりあえず何とか仕込みをすべて終わらせるとさっそくという感じでキタサトコンビが二人そろって更衣室から出てきた。どうやらデジタルが手伝って初めて着たとき、デジタルがカメラを構えながら長々と注意事項を語っていたのだがそれをきっちり守って着替えてきたらしくデジタルが着付けしたときと同じように着れているようでひとまず安心した。

 

 「わー!キタちゃん、ダイヤちゃんかわいい!なるほどー、確かに勝負服だね!」

 

 「とてもよく似合っておりますわ!一緒に頑張りましょうね」

 

 「ホントですか!?ありがとうございます!」

 

 「やったねキタちゃん!マックイーンさんもありがとうございます!」

 

 「よっし着替え終わったな。じゃあまず注意点から、今日はテイオーとマックイーンにそれぞれついて行ってくれ。料理を運んだりするのもちょっとだけやってもらうけどメインはテイオーとマックイーンな?お客さんに握手やらなんやらを求められたらテイオーとマックイーンが対応してくれ。キタとダイヤとしたがるやつはちょっとアレかもしれんからな。ワイワイ雑談する分には存分にやってくれ」

 

 「「はい!」」

 

 「おっし、じゃあ開店だ!看板立ててくる」

 

 そういって俺はトウカイテイオーにじゃれつくキタサンブラック、マックイーンに頭を撫でられ嬉しそうにしてるサトノダイヤモンドを残して俺はドアをくぐってドアの前にある看板をクローズからオープンにひっくり返し、持ってきた今日のメニューが書かれた黒板付き看板を立てて店の中に戻るのだった。あと道端でデジタルが死んでたけど何時もの事なのでそのままにしておくことにする。店に来る前に力尽きるなんて何があったのやら・・・

 

 

 

 

 

 

 カランコロン、とドアにつけてるベルの音がなる。本日一人目のお客様だ。時刻は10時ごろ、お昼にしてはまだ早いだろうけどブランチとしてとるなら申し分ないだろう。緊張でほっぺをリンゴのように染めたキタとダイヤがテイオーとマックイーンに促されて挨拶をする。

 

 「「いらっしゃいませ~!」」

 

 「え、あ、ああどうも。予約した戸塚です。そういえば職場体験って・・・ああなるほど。」

 

 「いらっしゃいませ!こちらの席にどうぞー!」

 

 「すいません、ありがとうございます。お嬢ちゃんたちもよろしくね」

 

 きちんと挨拶をした二人にとりあえず安心した。テイオーがすぐにお客さんをテーブルに案内してドリンクを聞いてきた。俺はオーダーのカフェオレを手早く作って、キタに手招きする。ちょこちょこと寄ってきたキタにお盆を渡してその上にカフェオレを乗っける。おたおたしながらおっかなびっくり運び始めたキタをテイオーが見守り、ダイヤとマックイーンがはらはらした顔をしている中、キタはこぼすことなくカフェオレをお客さんに提供した。うん、花丸。

 

 「お、お待たせしました!カフェオレです!」

 

 「お、ありがとう。頑張ってね」

 

 「は、はい!」

 

 そうしているともう一度ドアのベルが鳴った。つまりはお客さんだ。次はダイヤの番、マックイーンが安心させるように肩に手を置いて促す。いらっしゃいませと全員で挨拶をしたのちにマックイーンとダイヤが席にお客さんを案内する。

 

 「こちらですわ。お飲み物はいかがなさいますの?」

 

 「えっと・・・ダージリンをホットでお願いします。あの、メジロマックイーンさん、この手帳にサインを・・・」

 

 「ええ、勿論ですわ。いつも応援ありがとうございます」

 

 「わぁ。ありがとうございます!あと、そっちのあなた・・・職場体験の子だよね?頑張ってね、応援してるから!あ!よかったら名前教えてほしいな!レースデビューしたらファンになるから!」

 

 「サトノダイヤモンドです!よろしくお願いします!」

 

 「いい名前ね。じゃあお仕事頑張ってね!」

 

 聞こえてきたオーダー通りにポットの中に茶葉を入れて紅茶を入れる。カフェオレと違って運ぶものが多いから大変だけどダイヤには頑張ってもらおうかな。お盆を手渡し、紅茶の入ったカップ、ティーポット、角砂糖、フレッシュ、小皿とスプーンをセットする。ダイヤは持っていくものの多さにちょっと大変そうだがそれでもゆっくりではあるものの運びきった。

 

 流石にきれいにセットするのは無理だと思うのでお手本ということでマックイーンが小皿の上にカップを乗せ、スプーンを添えた後お替りを入れやすい位置にポット、角砂糖、フレッシュを置いて戻ってきた。うんうん、こっちも花丸満点、と。さて俺はランチプレートを仕上げないとな。

 

 四角い皿の左上にデミグラスソースをたっぷりかけたニンジンハンバーグを乗せ、その隣にナポリタン、サラダ。サラダの下にご飯、ハンバーグの下にピクルスとバターコーンをセットしてこういうものには欠かせないご飯の上にテイオーとキタをかたどった旗をセットする。料理はひっくり返しでもしたらまずいので今日はテイオーたちが運ぶことになってるのでテイオーがささっとお客さんにサーブした。流石やっぱり慣れてることはあるなあ。

 

 そうすること15組くらい。昼休憩を交互に挟んでもうすぐ今日のお客さんが終わるかな~といったところだ。キタとダイヤも段々慣れてきたみたいでテイオーやマックイーンと一緒にお客さんと話したり、むしろファン側に回ってテイオーやマックイーンがいかにすごいかという話をお客さんに解説してるくらい。

 

 マックイーンもテイオーもキタサトの熱にタジタジだ。どんだけ自分たちの事を尊敬しているか、好きなのかを延々と聞かされたらまあそうなるわな。最終的にお客さんと熱い握手を交わしていたが俺は特に気にしないことにする。

 

 「おーいデジタル、いるんだろ?なんか飲むか?」

 

 「ひぃえ・・・いっぱいですぅ~~もう何も喉を通りません~~~!!!!」

 

 何となくいるんじゃないかと思ってデジタルに声をかけると案の定俺の真上、天井裏あたりから声が返ってきた。道路で死んでたがどうやら復活したらしい。どこから見てるのとかどうやって入ったとか疑問は尽きないがどうやら何もいらないようなので営業が終わってから引きずり降ろしてテイオーとマックイーンで挟んで膝の上にキタサトを乗せておけば逃げれんだろ。ついでに料理をキタでもダイヤでもいいからあーんしてもらえ。

 

 「何か重大な命の危機を感じます~~!でもでも逃げたら一生後悔するような気も・・・」

 

 「楽しみにしとけ~~」

 

 「なんなんですかぁ~~~~!!!」

 

 敏感に己のある意味幸せな命の危機を察したらしいデジタルが声を上げるのをスルーし洗い物をしていると店のドアが開いて二人組の男性が入ってきた。あれ?二人組?今日は全員おひとり様だったはずなんだけどな・・・?もしかして何も知らない一見さんか?

 

 

 「いらっしゃい。ご予約はお済ですか?当店完全予約制となっておりまして・・・ご予約がなければ申し訳ありませんがお引き取りをお願いします」

 

 「えっあの・・すいません。これって使えますか・・?」

 

 「俺のも同じなんですけど・・・」

 

 そうして男性二人が見せてくれたのは俺の店の一回だけ使える優待券だった。なるほど、これなら予約なしでも店に来ることはできる。だけど俺は渡した覚えないぞ・・・?誰だ?蹄鉄?モルモット?はたまた別のトレーナー?うーん接点が見つからないが・・・まあ持ってる以上お客だ。きちんともてなしてやらないと。

 

 「優待券での入店ですね。失礼しました。それではお席のほうへ案内させてもらいます。おーい!」

 

 券を確認した俺がそれを受け取って別のお客さんと談笑してるテイオーたちに声をかける。意識をこっちに向けたテイオーとマックイーンは普通なんだけどキタとダイヤが男性客二人も見た瞬間ものすごくうれしそうに笑ってはじかれたようにこっちにやってきた。もしかして券渡したの君たち?大人で仲いい人がいるんだねえ・・・ちょっと意外かもしれない。

 

 「みなみさんにますおさん!来てくれたんですね!」

 

 「いらっしゃいませです!こちらにどうぞ!」

 

 「ごめんね、急に来て」

 

 「せっかく券もらったし、使っておかないと悪いかなと思ってさ」

 

 「そんな!来てくれて嬉しいです!」

 

 「はい!キタちゃんも私も楽しみに待ってたんですよ!」

 

 やっぱり二人の知り合いだったのか。眼鏡をかけたみなみと呼ばれた男をキタが、ますおと呼ばれた男をダイヤがそれぞれ手を取って席に案内して座らせた。あれもしかして結構仲いい感じ?ますます意外、どういうつながりなんだろうか?マックイーンもテイオーも首をかしげている。

 

 ドリンクを聞いて戻ってきた二人に向かってテイオーが耳にこしょこしょと内緒話のように話しかける。くすぐったいのかピクリと耳が動くが聞かれた内容を理解した二人が話し出した

 

 「ねえねえキタちゃん、あの二人とどういう知り合いなの?」

 

 「えっ?みなみさんにますおさんですか?それはですね、テイオーさんとマックイーンさんのレースの時、いつも私たちが一番に並んでるんですけど」

 

 「2番目に必ず来るのがあのお二人なんです!何度か一緒に並ぶたびにそこで少しずつ仲良くなれたんです!」

 

 「そうなんですわね・・・そういえば天皇賞の時お二人と一緒にいたような・・・?」

 

 「ほお・・・そうなんだ。じゃあ特別だ。ランチプレート、二人が運んで行ってあげてくれ。テイオーとマックイーンはドリンクな」

 

 「ホントですか!?やったー!」

 

 「はい!頑張ります!」

 

 というわけで作ったランチプレートを二人に渡して運んでもらう。流石に大きなランチプレートに少しよたよたしながら運ぶ二人に二人が若干ハラハラしながら見守っているがきちんと運んで渡すことができた。

 

 「ありがとう、おいしそうだね」

 

 「いや、実はここ一度来てみたかったんだよね。二人ともありがとうね」

 

 「ごゆっくりどーぞ!」

 

 「はい、どういたしまして」

 

 二人ともきちんと運ぶことができてうれしそうだ。みなみさんとますおさんも穏やかにお礼を言っているし、いい人なんだろうなあ・・・とりあえずはキタとダイヤに近づく不審人物じゃなくてよかった。仲もいいみたいだし、できればこれからも仲良くしてやってほしい。

 

 「こ、これは・・・!箸を入れるだけでほろりとほどけるハンバーグ、ニンジンも甘くて柔らかい!肉汁も噛めば噛むほど溢れてくる・・・!」

 

 「どうした急に」

 

 「いや、実は一度食レポというものをやってみたかったんだ」

 

 「確かにうまいけどさ・・・いや、あの二人が運んできたんだから美味しさもひとしおだな!」

 

 「だな!」

 

 うん、多分完全にただのいい人だ。キタとダイヤが心を許すのがわかる気がする。談笑しながら食事をする二人の周りをくるくる回りながら会話に参加する二人をテイオーとマックイーンと一緒に見守りながら俺は残りの仕事を進めるのであった。

 

 

 

 

 

 「あの、いいんですか?テイオーさんとマックイーンさんのサインまでもらったのに・・・」

 

 「また使える優待券までもらってしまって・・・?」

 

 「いいんですよ。せっかくキタとダイヤが優待券を渡したんですから、また来てください。お二人で来られてもいいですしキタとダイヤと一緒に来てもらっても歓迎しますよ」

 

 「すいません、ありがたくいただきますね」

 

 「ありがとうございます。キタちゃんもダイヤちゃんもありがとうね。テイオーさんとマックイーンさんもありがとうございました!」

 

 「大丈夫だよー!キタちゃんたちと仲良くしてあげてね!」

 

 「ええ、どういたしまして。末永く応援をよろしくお願いいたしますわ」

 

 そうしてみなみさんとますおさんの二人は帰路につき、職場体験の一日目が終了した。さっそく俺は天井を突っついて転がり出てきたデジタルを確保して、テイオーとマックイーンで挟んで膝の上にキタサトを配置した。デジタルはどうやら天井にいたときからいっぱいだったらしくその時点で活動を停止したが俺は気にせずに夕ご飯を用意することにした。

 

 そして20分後、俺の予想通りにキタサトコンビに食事をあーんされながら恍惚の表情で何とか命をつなぎながら幸せをかみしめるデジタルの姿があったとかなかったとか。真実は同室のタキオンが知る。さてあと6日、頑張って働いていきましょうかね。




 お付き合いいただきありがとうございました
 次はまた別の話を考えていきたいと思います。アンケートもご協力ありがとうございました。

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