喫茶店・ホースリンクへようこそ!   作:アヴァターラ

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 最近なんかたんねえなあ・・・と感じ、作者が考えたのは
 「ルナちゃんが出てないんだ!」ということでした
 ルナちゃんメイン回が必要だと思ったのです。


マスターさん、皇帝との休日

 今日も今日とて労働に励む・・・わけではなく、休みである。なんで休みかといわれれば労働基準法の何とやらで有休を5日間1年のどこかでとらないと理事長が御上に叱られてしまうので、という何ともしょっぱい理由である。別に休みは嫌いじゃないよ?でもいくらギリギリだからってゴールデンウイークばりに5日間休みにしなくてもいいじゃない。暇だよ、暇。しかもカウンセラーの仕事のほうも「絶対!休養!」って言われたからなんもできんじゃん。マジでどうしようかなあ・・・キャンプでも行くか・・・?そうだな、それがいい。ついでに配信もしようじゃないの。

 

 「つーわけで出かけようと思うんだけどさ、ルナ。ついてくる?」

 

 「いく」

 

 どういうわけか俺の店の2階にあるルナの部屋で昨日泊まった我らがトレセン学園会長シンボリルドルフに聞いてみたところ行くとのことですので二人でキャンプに行こうと思います。ちなみになんでルナが俺の店というか俺の家にいるかというともうすでに余裕で卒業できる&地方へのスカウト遠征の振り替え休日が彼女に与えられているからです。いやー、久しぶりにこの頭が働いてないルナを見るな。相当疲れていたと見える。

 

 普段なら「うん、ご一緒させてもらおう」みたいな感じだろうけど今は「いく」ですよ。かわいいねー俺の妹分は。撫でてやろう、よしよし。ルナの耳が俺の手の中でピクピクと嬉しそうに動き、ルナも撫でられるのは好きらしいので自分から俺の手に頭を摺り寄せてくる。じゃあ準備しようかなあ!気合い入れて美味しいバーベキューとかキャンプ料理とかしよう!というわけで・・・荷物を車に乗せる・・・前に一服しよ。

 

 「ルナ~ブラックでいい?」

 

 「兄さんのブレンドが飲みたい」

 

 「はいよ」

 

 返ってくる答えは一緒だけど、このやり取りに愛着を覚えてしまっている俺はいつもと同じようにルナに聞いて、ルナもいつもと同じように俺に返してくれる。何でもないこのやり取りが、俺の日常の象徴なのだ。ゴリゴリと豆を挽きながら、誰に言うでもなく俺はそう思うのだった。

 

 コーヒーを飲んでようやく頭の回転がかかってきたルナに手伝ってもらって、俺の仕入れ用のでかい車、まあハイエースなんだけど・・・に次々と荷物を入れていく。ルナもさすがはウマ娘、俺がだいぶ力をこめないと持ち上がらない木炭の段ボールとかBBQ用の台とかそういうものをひょいっと軽々持ち上げてぽいぽいと言わんばかりに車に入れていく。ぐぬぬ・・・なんか兄として男として負けた気分・・・勝ち目なんてないんだけどさあ・・・なんかこう、ね?あるじゃんそういうくだらないプライドみたいなもの・・・。

 

 「さて、着替えよし、テントよし、食材よし、配信機材よし、大型バッテリーよし。ルナー、そっちの準備は大丈夫ー?急に決まったから着替えとかさ。何なら待ってるから寮に取りに行ってもいいぞ」

 

 「大丈夫だ。着替えならこっちにもあるし、私もそんなに荷物の多いほうではないからな。それに・・・兄さんと久々に一緒にキャンプに行くんだ、少し掛かっているのかも、な」

 

 遠征で使っていたバックに、おそらく着替えやらを詰め込んだのだろう。特に大荷物というわけではない・・・ただ一つ、愛用の蹄鉄シューズのケースを除いては、だけど。走るつもりなのか。まあウマ娘はみんな常にランナーズハイみたいなもんだからなあ。特に昨今のキャンプ場にはウマ娘用のコースとか、シャワーだのが用意されているところも多い。坂路に近い場所もあるから、夏の合宿の時、海に行けなかったら山に行くというチームもあるくらいだ。ちなみに坂路の申し子という二つ名でおなじみミホノブルボンは毎年きっつい坂路があるキャンプ場で合宿してるらしい。

 

 車に二人そろって乗り込み、俺はウェブカメラを車載用の位置に調整して、ルナの膝にPCを置く。ルナは何をしようが車酔いとかそういうものに無縁なタイプなので大丈夫。顎に手を当てて頷いたルナはPC用の眼鏡をかけてPCを開いてカタカタと・・・なんでパスワード知ってんの?まあいいや、配信の準備をしている。そしてウェブカメラが起動して配信が始まった。なんで指示する前にできるのか、どうしてやり方を知ってるのか、気になるんだけど大概の事はあっさりこなすルナの事だ。きっと説明書でも読んだんだろう・・・たぶん。

 

 「はいはーい、ホースリンクの店長だよー。配信では久しぶりだね。この前あげた「アグネスデジタル、ウマ娘を語る」は面白かったー?」

 

 

 ・お久店長!今度行くからよろしくぅ!

 ・ん?車載配信?どこ行くん?

 ・同志デジタルは相変わらずやばいと思いました

 ・言ってることトレーナー目線だもんな

 ・でもまだデビュー前のウマ娘の事いろいろ知れてよかったわ

 

 「お、ってことは休業明けに来てくれるのか?腕を磨いて待ってるよ。さてさて、どこに行くかなんだけど・・・東京を飛び出してキャンプに行こうと思う!久しぶりに店にいなくていい休みをもらったからねー。というわけで同行者を紹介するぞ。はいこちら!」

 

 「ん?私か。コホン・・・シンボリルドルフだ。今は引退しているがこれでもレースでそれなりに活躍したんだ。それと今はトレセン学園で生徒会長をしている。こういったことは初めてだから気恥ずかしいが緊褌一番、頑張ってやってみようと思う」

 

 「ルドルフ、固い固い、もうちょっと砕けてもいいからさ。そんな生徒会の挨拶みたいなもんじゃなくて・・・」

 

 「難しいな・・・こんなことを兄さんは毎回やってるのか?さすがは、兄さんだ」

 

 「むしろ俺は大会のあいさつとかのほうが難しいと思うんだけど・・・」

 

 「いや、あらかじめ原稿を作って覚えればいいんだから難しくないと思うのだが・・・その場で物事を考えて臨機応変に話すのはすごいと思うんだ」

 

 「難しく考えすぎだわ、この頭がかたいのか?ん?」

 

 「兄さん、赤信号とはいえハンドルを離して頭をぐりぐりしないでほしい・・・」

 

 

 ・えええええええええええええええええええええええええ!?

 ・存じております(震え声)

 ・こここ、皇帝が!皇帝の声が聞こえた!?

 ・それなりというレベルじゃなかったんですけど・・・生ける伝説なんですけど・・・!?

 ・とんでもない配信ですね・・・店長ちゃんと配信残せるようにした?

 

 「あー、どうだっけ?ルドルフ、設定のとこのタイムシフトオンになってる?」

 

 「なってない、かな」

 

 「じゃあ残らんわ。すまんな」

 

 俺がルナにそう尋ねると設定画面を見たルナが確認して返事してくれた。俺これいつも忘れるんだよねー・・・別に俺の日常というかそういうの見ても面白くないと思うからオンにしなくてもいいと思うんだけど。配信の途中でオンにできないのがめんどくさいわ。まあ今日の配信は残さなくてもいいでしょー・・・おっとこの道を左っと。

 

 ・なんでええええええ!?

 ・うわああああ!!!貴重な皇帝のオフショットがああああ!!!

 ・いや、まだ手はある!!!アナログだ!画面録画と録音機をスピーカーの前へ!

 ・そうか!その手があったか!

 ・店長はどうして毎度毎度配信を残してくれないんだ!!

 

 そんなこんなでサクッっとキャンプ場についた俺たちは意外と楽しそうに視聴者の質問に答えているルナを置いてキャンプの受付をしてから車で場内に入り、ちょうどいいところを探す。寝るのはルナが車の中、俺がテントなのでテントを立てやすいちょうどいい場所を探してそこに車を止めて設営に入る。でも俺もそれなりになれたもの、一人用のテントならばすぐに設営はできるわけで。そんでもう一つ食事をとるようの椅子とか机とを入れるためのでっかい吊り下げ式のテントをルナと一緒に設営して荷物を放り込み、準備完了!さーてなにつくるかなあ!

 

 

 ・いいなーキャンプ、楽しそう!

 ・あれ?シンボリルドルフどこいった?

 ・設営終わってから見てないような?

 ・テンチョー!どうしてボクを誘ってくれなかったのー!?カイチョーずるいよー!

 ・落ち着いてくださいまし。それに私たちは休日ではありませんわ

 

 「あールドルフ?あいつなら着替えに行ったよ。ちょっと走るらしいからな。あとテイオー、お前今日授業だろ、マックイーンも。放課が終わったらきちんと授業受けろよ」

 

 なんか携帯が騒がしいから見てみたらどうやら配信を見つけてしまったらしいウマ娘たちから連絡が来てた。ついでに見覚えのあるアカウントからのコメントに俺はそう返して車から食材をぎっちり詰めたクーラーボックスを取り出す。そんで調理台、焚火台、BBQコンロを組み立てる。まだ日は高いが料理は基本手間暇かけるほどうまくなるので昼食と夕食の調理を始めることにしよう。

 

 

 ・あええええ!?トウカイテイオーとメジロマックイーン見てんの!?

 ・そうだよー!ボクが無敵のトウカイテイオー様だー!

 ・もう、調子に乗って後で後悔しても知りませんことよ?メジロマックイーンですわ、お見知りおきを。

 ・もしかしてほかのウマ娘もいたりする?

 ・あと多分見てるのはー・・・ライスとブルボンとー、カノープス、スピカ、あとグラスとエルも見てるんじゃないかなー?

 ・そうですわね、多分トレーナーさんの中にも見てる方はいらっしゃるのではないでしょうか?

 ・ウマ娘はともかく、トレーナーは仕事しろ

 

 「ホントだよ。書類仕事する時間だろ今って・・・」

 

 「すまない、待たせた。ん?どうしたんだ兄さん?」

 

 「いや、テイオーが抗議をしてきてな・・・なんで誘ってくれないのー、だと」

 

 「ふふ、まったく・・・後で機嫌を取ってやらねばな」

 

 俺はそういえばと思って調理の準備をする手を止める。あのエキシビジョンマッチを終えてから俺はルナが走る姿を見ていない。そう思うとせっかく走るのだから眺めていたいという気持ちが強くなってきたので聞いてみることにしよう。2,3時間くらいなら昼は軽くして夜に楽しく料理すればいいんじゃないかなあ。まあ俺がルナが走ってる姿を見るのが好きなんだけど。

 

 「なあルドルフ、走りに行くならついて行っていいか?久しぶりにお前が走ってるのを見たいんだけどさ」

 

 「もちろん、兄さんが見てくれるなら私も嬉しい」

 

 

 ・マジで!?皇帝の走りを間近で見れるの!?

 ・レースでもないのに・・・!!!最高じゃん!

 ・録画!録画ですわ!貴重な研究資料ですのよ!?

 ・わわっ落ち着いてよー!?トレーナーに言ってやってもらお?

 ・ウマ娘の皆さんざわめいてるの草

 ・皇帝の走りを録画できるんなら誰だってそーなる俺も今画面録画を開始した

 

 そんな感じでこじんまりとしてはいるが自然に囲まれていてロケーションはばっちりのキャンプ場のコースへ移動した俺たち、準備運動を始めるルナ。そしてそれを終えてトントンとはねてからレースのスタートような姿勢になって一拍のための後、ドン!と走り出した。まるでレースのスタートのようであるがルナにとっては体を温めるウォーミングアップだろう。それにしても俺のような人間の何倍も速いんだけど。

 

 一周1500mほどのコースをあっという間に走り切って俺の前を通過したルナがどんどんと加速していく。一筋の流星のように、躍動感がある走りはフォームのブレなさもあってかある種の美しさを備えているようだ。風がルナの前を避けるイメージすら沸き起こる。一定の音で加速していく蹄鉄が地面をたたく音が心地いい。

 

 ・はっや!なにウマ娘って全員こうなの!?

 ・これカイチョーまだ余裕で流してる感じかなー?

 ・ええ、レースならもっと速いですわ。フォームもお見事ですわね・・・

 ・えーっと・・・というかどこまで走るの・・・?

 ・たぶんカイチョーならこのペースで30分くらい走ってられると思うよーあっ予鈴!

 ・トレーナーさんにお願いできましたしこれで失礼いたしますわ 

 

 そうして何周もコースを走ってきたルナがようやく俺の前に戻って止まる。少し汗ばんでいるがスタミナ的にも全くこたえていないようだ。本当に軽い運動程度のつもりだったんだろうな。実に気持ちよさそうだ。レースが好きだけど引退してからレースに出る機会はめっきり減っているからな、フラストレーション溜まってるのかもしれないなあ。好きなだけ走れて気持ちよさそうだ。

 

 「ふう、ここのコースは気持ちいいな」

 

 「お疲れさん、相変わらず奇麗な走りだな。久しぶり見れて満足したよ」

 

 「・・・ほんとか?本気で走ったわけではないのだが・・・・」

 

 「本気で走ったら俺じゃケアできないから遠慮してくれ。怪我でもされたら俺は首を吊るぞ」

 

 「・・・やめる、やめるからそんなこと言わないでくれ」

 

 ・トーンが本気で草

 ・皇帝を傷つけてはいけない

 ・店長の声がマジすぎる

 ・俺が代わりに吊るから店長はシンボリルドルフと仲良くしてもろて・・・

 ・命を大事しろ

 ・引退した皇帝の走りが見れるなんて今日はいい日だあ

 

 そんな感じでキャンプ場に戻って、俺は冷蔵庫の片隅に眠っていたスペアリブを塊のまま焼き上げ、ルドルフと分け合って食べるのだった。美味しそうにご飯を食べる姿は、今も昔も変わらないな。俺は頬袋ができているルナを見ながら、こっそりとほほ笑むのだった。

 

 

 

 ・スペアリブでっか。めっちゃおいしそう

 ・シンボリルドルフって何しても美人なんだな

 ・あーテンチョー!それなに!?いいなーーー!!!

 ・美味しそうですわね・・・

 ・はわわわ・・・会長さん麗しいですぅぅ・・・ひょええええ

 ・姿が見えないと思ったら・・・マスターくぅん、私にもお弁当を用意してくれたまえよ

 ・肉・・・じゅるり

 ・ちょ、あんたスマホによだれかかってるで!?

 




 ちょっと急いで書いたんでクオリティ低め。ちょっと最近モチベ下がり気味なので続きは気長にお待ちください

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