『雄英一年最強ベスト4が出揃ったところで、ひとまず小休止入ろうか! こっから益々、白熱してくぜ楽しみにしてろよな!!』
実況と共にスクリーンに映し出されるのは、大勢の中から勝ち抜いてきた、たった4人の男たち。
雄英体育祭。誰が言ったか、スーパーヒーローと云われる全員がこの戦いを潜り抜けて来ている登竜門。
その中でも一年ステージは、理由はさて置いて過去最高と云われる盛況ぶりだ。将来、ヒーローに成りたいと思う者たちにとっては絶対に外したくはない最高のチャンス。
「チゥゥゥゥゥゥゥッ!」
医務室で彼女の“個性”による治療を受けている彼もまた、そのチャンスを持っていた者の一人だった。
「あ、ありがとうございます。リカバリーガール」
「ハリボーだよ、お食べ」
「はい……」
彼女──リカバリーガールから体力補充のためのハリボーを受け取り、口にする。
飯田天哉はそのチャンスを逃してしまった。
『また、凡速か飯田』
「……くそっ」
分かっている。自分の力が足りなかったことに、そしてその言葉は己を貶すために言ったわけではないことに。ただ納得のいかないことがある。
「なぜ、御舟くんは僕のトルクオーバーを見切れた……?」
個性把握テストでの高志朗の記録が本気だとすると、トルクの回転数をオーバーさせてまで放った超加速の方が遥かに速い。
「まさか……」
飯田の動きを見切ったのではなく、“決め打ち”という、あらかじめ着地点を予想して高志朗が動いていた可能性もある。
また彼の“個性”に『動体視力上昇』の付帯効果があったのなら、速度の差は度外視される。その場合は真正面から破られたことになり、飯田の精神を更に削ることになるだろう。
しかしいまの彼は、敗因ではなくその結果に悔やむばかりである。
「……兄さん、ごめん」
反省し、次に活かさなければならないことも分かっていたが、いまは後悔の念が先立ってくる。
“次はこうしよう”ではなく、“あの時こうしていれば”という思いが噴出し、それによって生み出された、憧れの存在への申し訳なさが湧き出てくるのだ。
「ちょっと、アンタは怪我人じゃないでしょうがシッシッ!」
「すみません、リカバリーガール。あ、ちょっと叩かないでください、少しだけですよ」
「……ホントだろうね?」
「き、君は……なぜここに」
「少し話をしたい」
医務室に入って来たのは、他ならぬ高志朗だった。
木太刀を持ったまま、飯田の前に現れたのだ。
「くっ…なぜ来た御舟くん!」
「まあ聞け。最後の加速、あれは凡速では無かった。確実に俺の速度を上回った走りだったんだ」
一瞬、飯田の表情が緩んだが、すぐに悔しそうに高志朗の握る木太刀に視線を逸らす。
「今更何を……ぼっ…俺は負けた。それよりなんだキミは! 緑谷くんには追うなと言っておいて、君だって来てるじゃないか!」
「何の話だったか…」
腕を組んで考える高志朗に、飯田は置いてあった自分の眼鏡を付けながら言った。
「御恍けは止してもらおう。初の戦闘訓練の授業の後、教室から出て行った爆豪くんを、緑谷くんが追おうとした際にキミが止めに入ったじゃないか。
あれは“負かした相手の傷に塩を塗り込む行為だから止めろ”そういった意味で引き止めたのではないのか!?」
入学して初めて行われたヒーロー基礎学の戦闘訓練の授業。チームは結果的に勝利したものの、爆豪自身は敗北を自認。緑谷が追おうとしたところ、高志朗が止めたことがある。
ただ結局のところ、緑谷は制止を訊かず爆豪の元に走っている。
形を見ればいまの高志朗の行動は間違っている。言っていることとやっていることが噛み合っていない。
だがまったく悪びれていない。
「おっそれは済まなかった。
で、だな」
「勝手に話を進めようとしないでくれたまえ!!」
「えー? 心狭」
「
「ん? ああ、
「んん……? なんでキミが『僕』などと言って……」
高志朗の返しに訝る飯田の脳内では、しめやかに木魚が叩かれ、そしてすぐに鈴が鳴った。
「は、謀ったなァーッ!!」
「おい落ち着け」
高志朗の両肩を掴み揺らしまくる飯田。
「どうせキミも坊ちゃんと思っているんだろう!?」
「いつもと違う話し方だったから気になっただけだ。シークレットだったのか飯田、すまん気にしているとは」
「緑谷くんたちに続き、御舟くんにまで知られてしまうとは……不覚!」
それだけの理由で身悶えする意味が分からなかったが、面白そうなので話を引っ張ることにした。いまの飯田は打てば響く鐘同然だった。
「『僕』とは『しもべ』とも読むらしい」
「なんだそれはやめたまえ!」
いつもの奇妙な手の動きで誤魔化そうとする飯田の様子に、面白くなってしまった高志朗。
ワナワナと震えながらもと嘆く彼に、高志朗はいい加減に引っ張るのを止めた。
良い所の家に生まれれば、一般的な家庭よりも可愛がられもするだろう。
家族だからという理由を差し引くと、優秀な血筋を受け継がせていきたいと思う生き物が人間だ。そこは今も昔も変わらない。
「落ち着け大丈夫だ。大きい家だと周りからの目を気にするようになるのも無理はない」
「ぬぐっ……気休めは結構だ!」
「俺の家も、かつては多くの門弟に剣術を教える……まぁ自慢の家だったんだ」
「……!?」
飯田の家事情やコンプレックスを刺激してしまったことに申し訳なく感じた高志朗は、苦笑いで話し始めた。
「しかし、超常黎明期が過ぎると、百単位で居た門弟はその数を減らしてしまった。
いまは数人の高齢剣士たちと俺のみ。いまは知る人しか知らない、時代に乗り遅れ没落した旧家だ」
当時は“異能”と呼ばれていた“個性”が各地に現れ始めると、長年の修練が必要な武道全般──特に武器の携帯が必要な武術は軽視され、即戦力足り得る超常能力“個性”が世に台頭していった。
「黎明……!? そんな昔から、キミの家は剣術を教えていたのか!」
「ああ」
「なん……と。まるで御伽噺を聞いているようだ」
置いといて、と高志朗は話を本題に戻す。
「……その脹脛の特徴はプロヒーローの《インゲニウム》だな?」
飯田はガタっと驚いた。
「! 知っていたのか!?」
「東京にはよく来ていたからな、それで何度か見かけたくらいか。バイクをも追い抜く加速力を持っていたな」
代々プロヒーローを継ぐヒーロー一家だ。“個性社会”から名を上げてきているこの飯田家も、いまの御舟家よりは遥かに隆盛している名家。
「都内に幾つも事務所を置いているそうだな。正直羨ましいぞ」
「あ、ああ! 自慢の兄さ!」
元気を取り戻した飯田に安堵を覚えながらも、高志朗はその言葉を聞き逃さずにいた。
「兄なのか。そんな近しいとは思わなかった」
「ありがとう。なんだか、気を遣わせてしまったようだ。先ほどは頭に血が昇っていたため、すまない」
ふっと、飯田が表情を曇らせて続けた。
「未熟なのは俺の方だ。俺にキミの行動を咎める資格なんて無いはずなのにな」
「俺は気にしてない。ではな」
「うむ!」
そう言い残すと、立て掛けてあった木太刀を持ち直した高志朗は医務室を出て行った。
────保須市某所、路地裏。
「ハァ…金、名声。どいつもこいつもヒーロー名乗りやがって」
ボロを身に纏った男は、呪詛のように言葉を吐き出す。
「てめぇらはヒーローなんかじゃねぇ」
顔全体を覆う包帯から覗かせる口元。そこから発せられるのは、世に数多居る職業ヒーローたちに向けられた憎悪と罵倒。
足元には、その男をして“偽物”と断じる一人のヒーローの残骸。肩には“ING”の文字が刻まれたヒーロースーツ。
──生死は分からず。
“ヒーロー殺し”この名が明るみに出るのは、そう遠くない未来にある。
「おっと、麗日」
「わっ、御舟くんや」
医務室から退室した高志朗が廊下を歩いていると、麗日と角でぶつかりそうになった。
「すまん…む?」
「な、何?」
彼女のいつもの雰囲気が違うことに気付いた高志朗は、まじまじと顔を見つめた。麗日が戸惑いつつも足早に通り過ぎようとしたときだった。
「…泣くなよ」
「直球!」
微笑を含ませたその言葉は、どこか馬鹿にされた気分になったのかムッとして振り返る麗日。
「そこスルーするとこやん!? なんで拾ったん!?」
デリカシー無さすぎや……というかタイミングが最悪や、と何やら麗日が震えながらブツブツと呟いている。
「爆豪め、女の子泣かせるとは……男の風上にも置けん奴だ」
「御舟くんも人のこと言えない事やったけどねいま、抉ったけどね私の心を。てか、そんなんやないし」
「うん?」
赤く腫れた目元を擦った。
「別に爆豪くんの所為やないよ。誰が相手でも負ければ悔しいに決まっとるやん」
「……そうか、悪かった。よし仇は討つぞ」
「だからそんなんやないって言うてる」
なんなんもー、と困り顔の麗日。しかし彼女の苦難は続く。
「あ?」
控室からの帰りだったのか、麗日を負かした爆豪勝己その人が通りかかってしまったのだ。
「爆豪くん!?」
「お、爆豪。このヤロー麗日の恨みは俺が晴らす!」
「だから御舟くん、そういうことやめて! てか楽しんどる!?」
「んだてめぇ出会い頭に喧嘩売ってんのか。けどまぁ丁度良い所にウロチョロしてくれてやがったな」
苛烈な攻めとは裏腹に思慮深い面も併せ持つ爆豪勝己。高志朗にとってはやり辛くもあり、曰く賢い相手。
両手をポケットに突っ込んだまま、爆豪は高志朗に対し、ギンっとガンを飛ばした。
「──全力のてめぇをぶち殺す。なのに、んだその棒切れはぁっ!」
「ああ」
高志朗の持つ木太刀を見てキレる爆豪。
「ああじゃねえっ。まさか、
木太刀、木刀。
木製の練習用の得物。高志朗の持つそれがそうだ。
ここまでそれで勝ち抜いてきた。
発目、飯田と打ち倒して来た。
だが、俺をそんなモブどもと一緒くたにするんじゃねえと、爆豪の燃えるような瞳が物語っていた。
高志朗は剣帯に差してある物を叩く。
「木製と侮るな。これも嗜みある者が振れば立派な凶器よ」
「開始早々、耐えきれず折れましたじゃあ話になんねぇんだよ!」
「……何が言いたい、お前さん」
目を細める高志朗に、爆豪は彼を指差した。
「真剣使えや。USJで使ったような──」
「ちょっと爆豪くんっ…ゎっ──」
止めようとしてきた麗日を押し退ける。
「
響き渡る宣戦布告。発せられる声色から、これは本気なのだと、その場に居る二人に理解させた。
「言いたいことは良くわかった」
「へっ、なら──」
「しかしどう言おうともルール上、刃物の使用は禁止されている」
その言葉に、麗日も高速で何度も頷く。
「最終種目開始前に配られた用紙にも明記してある。ミッドナイト主審も言っていたろう」
「……んなこと知ってんだよ」
息を吐いた高志朗は、面倒そうに頭を搔きつつ指を差し返した。
「それに、お前さん分かっているのか? 俺が真剣を振るということは、流血沙汰を全国のお茶の間に届ける破目になるぞ。放送事故もいいところだろう?」
「…戦闘訓練では使ってたろうが!」
「人に向けてはいない」
「USJ!」
「命を賭けた戦いだった」
間を置くも、爆豪はぶち切れそうな頭を捻り……吐き出すように言った。
「武器申請行くぞ。両者合意の上なら学校側も納得すんだろうが!」
「聞かん坊め……麗日は戻ってくれ。巻き込んで済まなかったな」
「えっいや、でもっ」
「長くなりそうだ。付き合わせるわけにはいかん」
「う、うん……」
麗日を会場に戻らせ、残った2人。
高志朗は、溜息を吐いて腰の木太刀を抜いた──そしてそれを、爆豪に突き付ける。
「爆豪、これを折れ」
「あん?」
「この木太刀を折るか砕くか…どちらでもいい、成功すればお前さんの要求を聞き届けよう」
「……!」
一瞬呆けた顔もすぐさま崩れ、獰猛な笑みを剥き出しにして突き付けられた高志朗の得物を乱暴に掴んだ。
「もっとも、審判団のセメントス先生やミッドナイト両先生方。サポートアイテム係のパワーローダー先生の説得は容易では無いだろう」
「死んでも許可させてやらぁ!」
「この世に絶対は無い。それに、俺の得物を破壊した上で説得できなければ、お前さんとの試合は放棄させてもらう。お前さんは不戦勝だ」
「んだと……!」
爆豪が珍しく動揺の声を上げた。意味が分からない、訳が分からない。ここまで来て自分から勝負を降りるなど、正気の沙汰ではない。
いままで豪胆な態度を一貫していた爆豪の、木太刀を掴む手が緩む。
雄英体育祭に出場するだけでも凄いことなのに、その更に準決勝にまで勝ち進んだ。棄権なんて死んでも出来ない。
この一大イベントを蹴ろうとしている目の前の男が、急に薄気味悪く感じた。
「っ……てめぇに意地ってものは無ぇのか! 棒切れぶち折るのも説得もクソ余裕だが、そうやって最初から勝負を投げ出す奴はクソだ! つか予備持ってねえのか!」
「先生方の説得に自信が無いのか? ならやめておけ。そして予備は無い。安心しろ、この一振りは名刀だ」
「その名刀真っ二つにしてやらぁっ!!」
木太刀の掴む手から既に火花が散り始めている。爆豪は激昂しつつも破壊しようとしている。高志朗の肝心要の一振り──数百、数千、数万単位で打ち続け、鍛え上げた木刀改め、“樹木の太刀”を。
火花が散る音は段々と強くなり、そして──
「マジの剣術……使ってこいやっ──このクソ侍がぁぁぁっ!」
『さぁーあ! 始めていくぜ準決勝第一試合! ベスト4に名乗りを上げた男たち、最初の対戦カードを紹介するぜ!
心操、常闇と、危なげなくも名だたる強者を打ち倒してきた、緑谷出久!
対人では最強か? 圧倒的な力で堅実に勝ち星を上げてきた氷の貴公子、轟焦凍!
レディ!
「!」
轟が最初に取った行動は、氷結で緑谷の動きを止めることだった。
「
迫り来る氷塊を、緑谷は拳で横殴りに砕く。
「……ちっ!」
「ぐっ──
『轟の氷結を緑谷、渾身の拳で粉砕! いい勝負すんじゃねえのこれ!』
『いや……』
「耐久戦するつもりか? 悪ぃが、俺の氷は更に固くなるぞ、緑谷」
「うっ──だぁっ!」
極低温に手をかけるほどの練度の氷に、再び拳で対応する。
(8%の力じゃ砕くのが精一杯! こんなに差があるのか────)
頭を振る緑谷。それは驕った考えだ。
(いや、分かってたはずだ。僕の力は、つい最近のモノ。相手はそれよりも小さな頃から一緒だった“個性”だぞ!?
敵わないなんて百も承知!
「……くっあぁ!」
「クソ、力業にも程があんだろ……っ」
三度目の氷塊を砕き、歩を進ませる緑谷。
そして接近──轟の腹に、一撃を入れる。
「がっ……!」
『不屈の闘志で轟をぶっ飛ばす! 氷の猛襲を粉砕して突き進む緑谷! だがこれは……?』
「あぁ……!」
「ごふっ」
吹っ飛んだのは轟だったが、苦しそうなのは緑谷だった。
轟に触れた先から凍らされた。氷漬けになった拳から本人の体温を奪っていく。
『直撃と同時に緑谷の拳を凍らせたか……被弾を察しての轟の判断の早さが尋常ではないな』
「強い……!」
「俺は負けねえ。負けられねえんだ。お前にも……。あいつにも二度と……!」
『
本戦開始前に、轟の身の上話を聞かされた。最初はどうして話すのが自分なのだろうと緑谷は思った。
確かに、自分はオールマイトの力を受け継いだ。けれど、この基礎地盤の薄さで本領を発揮することはできない。少しは鍛えたつもりだったが、やはり誤差の範囲。
しかしそんな自分に、轟はオールマイトの力を連想した。
野望に抗う唯一の方法。それは、母親から受け継いだ氷結の力だけで頂点に登り詰めること。当然、プロとしてだ。
彼の父親であるエンデヴァーのことも緑谷は聞かされた。家庭での所業も……。
しかしそんな轟のやり方に緑谷は賛同できなかった。本気で戦おうとしない轟に怒りすら覚えたからだ。
そこで轟は一旦話を切る。
『…これは、お前には直接関係のねぇことだが』
一息吐いた彼の口から出た言葉は、先程の重苦しいものとは打って変わった。
『もう一人、勝たなければならない奴がいる……』
『勝たなければならない人……かっちゃんのこと?』
一番最初に幼馴染の顔が浮かんだが、轟はゆっくりと首を横に振って否定する。
『過去、俺が
『惨敗……? 轟くんが?』
『同じ条件でリベンジすることで、俺はあの時よりも強くなったと
「お前もあいつと同じだ。俺の氷を正面から砕き、近付いて来る」
「くっ」
「けど、終わりだ。その拳、もう使いもんにならねえだろ」
緑谷の拳は、氷を殴り続けた弊害で中手骨の先の皮が剥け、腫れ上がっている。
力の加減は間違えた反動でなったわけではない。轟の出す氷が固すぎるのだ。
『轟、先程とは比べ物にならない氷結だ! 緑谷は──避けない!!』
「どこ見てるんだ……!」
「!!」
何度目になるか分からない氷を、緑谷は骨が崩れた拳で打ち砕いた。
「リベンジしたい人? エンデヴァー? いま、目の前にいるのは僕だ!!」
「……!」
「轟くんがいままで歩んできた人生、その境遇。正反対だった僕には計り知れるものじゃない。けど、みんな本気でやってるんだ。ヒーローになるために!!」
『お母さん、僕、嫌だよ。お父さんみたいになりたくない……』
『……でも、ヒーローにはなりたいんでしょ? いいのよ、おまえは────…血に囚われることなんてないの』
「うるせぇ……!」
「第一……!」
「ぐっ……!」
緑谷が轟に頭突きを喰らわす。
氷の固さは温度の低さによってその硬度が変わる。他にも理論は多々あるが、いま轟が出している氷は、明らかに通常のものとは一線を画している。
近くに寄るだけで感じる凄まじい冷気。
しかし実際は、それを体外に放出し操っている轟こそが、その冷気に晒されている最たる者だ。
“個性”は強力だが、体質は旧人類のそれとさほど変わりは無い。
だから皆、“個性”に合った身体能力を得るために思考を凝らすのだ。サポートアイテムもそのために存在しているといっても過言ではない。
ゆえに、いまの轟は緑谷よりも震えている。極寒に耐えている。
気合いでなんとかなるほど、彼の“氷結”も生温くはない。
それもすべて、
「第一、リベンジって、なんだよ……!」
「……!!」
「キミも一回負けてるなら、全力を出そうとは思わないの!?」
轟が誰に負けたかなんて緑谷は知る由も無い。けれど、悔しかった。
「いまの僕なんて、本気を出すまでもないのかっ!?」
半分の力だけで優勝できると思っているその心が。
「俺は、親父の──」
「キミの、力じゃないか!?」
すでに両手が使い物にならないほどに腫れ上がっている。満身創痍の緑谷が、轟に向かって再び一歩踏み出す。
「こんなにも凄い“個性”を持っているのに、過去に囚われて、キミが自分に制約を課していることが僕は──凄く悔しい!」
「なんで、てめぇが悔しがるんだ……!」
『血に囚われることなんてないの。なりたい自分に、なっていいの──焦凍』
「────」
小さな種火が、轟の体内で燻ぶる、そして──
『これは────!?』
轟の中心で、爆炎が迸った。
『炎──!?』
「焦凍ォオオオ!!!」
観客席に居た、エンデヴァーが猛々しく体から湧き出る炎を荒ぶらせながら。
「やっと己を受け入れたか!! そうだ、いいぞ!!
ここからがお前の始まり!! 俺の血をもって俺を超えて行き…俺の野望をお前が果たせ!」
1―A組、生徒席。
『御舟にも使ったことが無ぇ、
「……轟の炎、初めて見たな」
「地獄の業火の如し。……御舟は見たことがなかったのか?」
「無いぞ、なんでだ?」
轟の出した炎の熱気を肌で感じながら、腕を組んだ常闇が高志朗に問いかけた。八百万も隣から口を出す。
「私も気になっていましたの。轟さんは、御舟さんのことをとても意識していますわね? どうしてなのかと…」
「え、いや。でもあれは、なぁ? そんなこと言えば、緑谷だって、勝負挑まれてたじゃないか。何が違う?」
「俺も轟のことはよく知らなかったけどよ、『御舟にだけは二度と負けねえ』ってつぶやいてたの聞こえたぜ? 騎馬戦で」
「あっ、バ上鳴」
空気の読めない男、上鳴電気。
轟の名誉のために話さないでおこうと思ったことが、いま掘り下げられようとしている。
いや、名誉のためでなくとも話すつもりは無い。
(そして轟、つぶやくって……そんなに俺を恨んでるのか!?)
「何々? 轟と御舟がなんだって?」
「うわぁ! 急に後ろを取るんじゃない、この冷えたテープめ!」
「地味に酷くないその言い草」
涙目になる瀬呂。それを慰める高志朗。
「すまん言い過ぎた。ほら、試合見よう?」
「轟と御舟が
「上鳴、試合見ろ試合!」
「え、それマジ?」
「まさかお二人にそのような繋がりが……?」
「へー、爆豪と緑谷も同中らしいし、顔見知り多いな?」
耳郎や、そして切島など、他のクラスメイトの視線も集中する。
しかし、そこに助け船が漕ぎ付いてくれた。
周囲の環境の異変をいち早く察知した高志朗だったが、その異変が直後に会場全体を揺るがすほどの災害の予兆とは思いもしなかった。
「なんか熱いのと冷たいのが同時に来てるような……────っ!?」
会場の中心で、巨大な爆風が引き起こされたのである。
主人公の持つ木太刀は、まぁ木刀とも言います。武術では木太刀呼びらしいです。剣道と剣術を差別化したかったためそうしました。
最新刊も買えてねぇから、えれえ怒られちまったよ……どうすんだこれ……どうすんだって聞いてんだよ!
一年ぶりの投稿、お待たせして申し訳ない。誤字脱字ありましたらどうか……。