雄英剣風帖   作:剣鋭

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第三幕 抜き打ち

『私が投映されたわよ! …なんってね』

「…何をやってんだこの人は」

 

 御舟邸、高志朗の部屋。

 

 雄英高校からの合否通知が届いたのを機に、稽古を取り止め、部屋に戻った。

 封を開くと映像が目の前に映し出された。そこにはいつものあられもない姿のミッドナイトではなく、スーツに身を包んだ姿でそこに居た。

 

『まずは試験お疲れ様! 早速だけど、試験結果を手早く伝えるわ!』

「なんという心臓に悪そうな通知の仕方だ。書面の方がまだ気が軽い気がするぞ」

 

 ミッドナイトが鞭を振り回す。女教師であることからか、スーツの時であろうとも鞭との親和性が神懸っていた。

 

『まず筆記試験は──残念、ボーダーラインに到達していなかったわ』

 

 鞭を床に叩きつけ、腕を組んだ

 

『あなた、あれ程勉強しなさいって言ったのに落としちゃうなんて情けないわよ!』

 

「…そうか、まぁ、予想通りだ。やはり、落ちたか──」

 

『巻きで? 何よ、私はこの子しか担当してないから時間は押してないはずよ』

 

 どうやら撮影者に急かされたものの、論破してしまったようだ。だがもはや今は、不合格だという事実に後悔の念がこみ上げるばかりだ。

 

本来(・・)ならここであなたの不合格ってなるところね。

 けれども、我が校は自由な校風が売り!

 実技試験! 敵P(ヴィランポイント)120に、救助P(レスキューポイント)77。合計197点! あ、救助P(レスキューポイント)は今試験の隠し点よ! 審査制になっていて、他の受験生を何らかの形で救けると加点されるわ! 凄いわね!

 何が凄いってあなた、実技試験だけならぶっち切りの主席なの。まさに他の追随を許さない怒涛の快進撃!

 何が言いたいかって? ──合格よ』

 

「なん──て言ったこの人!?」

 

 ミッドナイトの唐突な合格発表に口が塞がらない。良かったのだ、別に。ヒーローになる術はあった。だが、どうしても期待してしまう。

 

『実技試験、素晴らしい活躍だったわ。戦闘力だけじゃない、周囲への影響力が尋常ではなかった。よって、あなたは合格とします』

 

「そんな馬鹿な…自由、すぎるだろう」

 

『来なさい、ここがあなたのヒーローアカデミアよ!』

 

「高志朗、お前、旅先でこんなべっぴんと知り合いになったんか」

「御祖父!? 居たのか! いやこれは先日話したヒーローの──」

 

 ぬっと出てきたのは高志朗の祖父、陣七だった。頭をがりがりと搔いて呆れ気味に言った。

 

「血は争えねえもんだわ。わしも女にゃ事欠かなかった。お前の親父の清一郎も女遊びが絶えん問題児じゃったわい」

「やめろ、聞きたくなかったぞそんなこと」

「諦めろ、お前にもその血は確実に流れておる。──良いか、高志朗」

 

 突然、真剣な表情をする祖父、陣七。

 

「女も良いが、夢中にはなるな。それはきっと、必ず隙になる」

「…ああ」

「ま、ウチの血筋じゃ無理な話か。どうしてか昔から女運が良いからのぅ」

「女運が良いって…例えば?」

 

 手を顎に添え、考える陣七は厭らしそうに口角を上げた。

 

(ヴィラン)から救けた女と一晩限りの関係……かの」

「何だ、作り話か」

「何ぃ!? 嘘だと思うのか!」

「嘘も嘘だろう。そんな超常黎明期みたいなことがあってたまるかよ」

 

 超常黎明期とは、“個性”がまだ“異能”と呼ばれ、認知され始めだった頃のことだ。世の中が無秩序であり、混沌の渦中にあったと云われる。

 

「ま、そんなことはいいか。兎にも角にも、まずはおめでとう。よもやあの高志朗が、日本に冠たる雄英高校ヒーロー科の試験を突破するとはな」

「…筆記は確実にお情けだったよ」 

 

 


 

 

「あ」

「おお」

 

 二人の時が止まった。

 

 それはそうだ、『俺、落ちるから』と言った二か月後くらいにばったりと顔を合わせてしまったのだから。

 あちらとしては、居ないと思っていた人間が自分と同じ校章とボタンを付け、同じ学校の校門をくぐろうとしていたのだ。止まりもするだろう。

 

 俺としても、とてつもなく気まずい。いや、『余裕で受かったぜ』と大口叩いて初登校日に居ないなんてことの方が間接的に痛すぎる。そうなったら多分俺は、この辺りの遠征は避けることになるだろう。

 

「おー拳藤」

「…」

 

 遠慮勝ちに手を振ると、こっちに大股で歩いて来た。下を向いていて表情は伺い知れない。

 

「お互い、無事に合格したみたいだな」

「みたいって……お前なぁ!」

 

 笑いながら背中を思い切り叩いてきた。

 

「『筆記で落ちてる』なんて澄まし顔で言われたときは驚いたんだぞ! 一時とは言え、一緒に戦った仲間が居ないなんて、そんなの……そんなの──寂しいじゃないかよ」

「職業ヒーローはそういうことが多いんじゃないのか? 即席のチームアップは日常だと聞くぞ」

 

 そう言うと、拳藤は俺の肩に手を置き、もう片方の腕は目元を擦る。

 

「うるさい…」

 

 なるほど。拳藤は底抜けに優しい心を持った女子であると、いま理解した。

 

「…拳藤、お前さんは優しいな」

 

 ここまで真っ直ぐに物を言われると、こちらまで恥ずかしくなってくる。

 こういう人間が、万人に好かれるヒーローになるのだろうな。

 

「ったく…ところで御舟、お前クラスは?」

「A組だ」

「私はBだ。別々だな、じゃあ──」

「ああ、お互いに切磋琢磨しようじゃないか」

「…ああ!」

 

 互いに握手。早くもこんな戦友と知り合えるなんて、幸先が良い。

 

「おい」

「うん? まだ何かあるのか?」

 

 首を傾げる俺に、拳藤が突き出してきたのはスマートフォン携帯だった。

 

「連絡先、交換しないか?」

「…逆ナンパ?」

「んなわけないだろ、が!」

「あだ!」

 

 


 

 

「A組…ここか」

「…御舟か」

「だ、誰かと思えば、いつぞやの」

 

 教室にある巨大な扉を前に意気込むも、その直前に下から話しかけられたことで立ち止まる高志朗。

 《イレイザー・ヘッド》。寝袋に包まってゼリー飲料を啜る姿は怪しいという他は無い。

 

「お前で最後だ、さっさと入れ。ついでに入口でくっちゃべってる奴らをまとめてから行け」

「くっちゃべってる……」

 

 顎で示した先には、確かに扉の前で話している生徒が二人居た。

 頭を搔きながら教室に足を踏み入れる。

 

「談笑中すまんな、席に着いてくれるか」

「うわ!? ごめんね!(髪型むっちゃサムライや!)」

「邪魔だったよね、すぐ退くよ!(この人どっかで見たことあるような…)」

 

 言われると、すぐさま二人は所定の座席に着席する。しかし、そのやり取りに異を唱える者がいた。

 机に足を乗っけた金髪の少年である。

 

「おい、何仕切っとんだ? てめぇも俺らと同じ制服だろうが。てめぇこそ先に席着けや、チャンバラ野郎(・・・・・・・)

「ちょっ、かっちゃん! 悪いのは僕らだったんだよ!」

「別にてめぇを庇ったわけじゃねえ自惚れんなカス!」

 

 怒声に、溜息を吐く高志朗。色々と聞きたいことがこの金髪の少年にはあったが、いまはそんなことよりもやるべきことがあった。

 

「言われんでも席には着く、それから…」

「ああ? まだ何か文句でもあんのかよ!」

「鼻毛が出てるぞ」

「はぁ!? 出てるわけねえだろうが! 出てるわけねー…」

「嘘だぞ、良かったな」

 

 自信ありげだったまでは良かったものの、堪らず気にしそうにした金髪の少年に真実を伝え、席に座る高志朗。意外と繊細のようだ。

 何やら手を爆発させて怒っているが全く気にしていない。

 

「はい、時間までに静かになりました。でも次からは誰に言われるでも無く席に着くこと。合理的に行こう」

 

 突然の浮浪者の登場に、クラスが唖然としていた。

 伸びっぱなしで乱れた髪に、無精髭、そして極めつけは寝袋と来ている。

 

「このクラスの担任を受け持つことになった、相澤消太だ、よろしくね」

『た、担任!?』

「早速だが、コレ着てグラウンドに出ろ」

『!?』

 

 


 

 

「“個性”把握テスト!?」

 

 雄英高校指定の体操服を着てグラウンドに出たA組の面々は、担任から告げられたことに驚愕を隠せずにいた。

 曰く、雄英高校は自由な校風が売り文句であり、それは教員側にも言えることなのだと言う。

 

「入学式やガイダンスをすっ飛ばしか…」

「その通り、中学でやった八つある種目の体力テストを、いまから君たちにやってもらう。もちろん──“個性”は自由に使って構わない」

 

 何かの機械、そしてボールを取り出した相澤は、高志朗の方に歩いてきた。

 

「実技試験がトップだった御舟、お前中学の時は何mだった?」

「…170mです」

「それって身長やない? ブハっ。しかもメートルて……っそ、想像してもうた」

 

 ギロっと睨みつける相澤。

 

「嘘です。108mです」

「108ぃ!?」

「えぇ…」

「“個性”使わずにそれって…」

「はい静かに、とりあえずコレ持って投げてみろ。ソフトボール投げだ、御舟。はよ投げろ」

 

 言われるがままに高志朗はボールを握りしめ配置に着く。

 “個性”を使う。【剣気】を腕に纏わせる。

 

 “剣の理合”を理解する者にしか使えない“個性”。

 何か即物的なものを必要とするわけでもない。

 

 “剣の理合”とは、常人が使う剣法においての必然的な原因と結果を指す。

 簡単に言えば、『こう動けば、こうなる』という、人の力では支配し動かすことのできない、物事の当然の筋道のことだ。

 

 常に常人の視点を忘れず、剣術を使いこなすこと。

 超常能力の使い方を模索していく超人たちが多いこの社会で、古に存在した日本剣術を再現できなければ使うことはできない。

 

 普通の人間が振るう剣と体の『合理的運動』を理解し、実践できる者が、この“個性”を行使することができるのだ。

 

「目が赤く光った!?」

「それがあいつの“個性”か?」

「つってもなんつうか、地味……」

 

 発動時の外見的特徴は、瞳の奥が赤く灯ることだ。瞳自体に能力は無い。

 

「行くぞ──」

 

 ボールが手から離れた瞬間、辺りに突風が吹き荒んだ。

 

「御舟、ソフトボール投げ1,250m」

「うぉっ…!」

「いきなりべらぼうな数字出た…」

「あの赤い目でなんかするかと思ったのに…」

 

 【剣気】は習得すれば汎用性は高い。足に纏えば俊足を、腕に纏えば強肩を得る。単純な筋力の増強ではないのが複雑であるのだが。

 

剣を握る時以外はあまり使いたくはないのだがな

「スッゲー! “個性”思いっ切り使えるんだ!」

「面白そーだな!」

面白そう?

 

 途端、教師相澤の纏う空気が変わった。これは怒っているというより、呆れているのだろう。

 

「ヒーローになるための三年間、そんな腹積もりで過ごす気でいるのかい?」

 

 ──自分たちが何のために雄英(ここ)に来たのか、今一度振り返ってみろ。そう言わんばかりに、幽鬼のような雰囲気のまま相澤は宣告した。

 

「よし。トータル成績最下位の者は、見込み無しと判断し、除籍処分としよう」

 

 その、あまりに理不尽な宣告にある者は意気込み、ある者はただの脅しだと意気揚々に、ある者は除籍の恐怖に怯える。

 三者三様の反応をさせながら…

 

「自然災害、大事故……身勝手な(ヴィラン)たち。いつどこから来るか分からない厄災。

 日本は理不尽にまみれてる」

「…」

「そういうピンチを、覆していくのがヒーロー」

 

 ちらりと、相澤の視線がこちらに来たのを、高志朗は見逃さずに真っ直ぐに見つめ返した。

 

「これから三年間、雄英は全力で君たちに、苦難を与える。

 ────Plus Ultra(更に向こうへ)さ。全力で乗り越えて来い」

 

(ヒーローにしては型破りな人かと思ったが…ここまでとはな。“抹消ヒーロー”《イレイザー・ヘッド》相澤消太。だが俺は、俄然あなたを気に入った!)

(意気込む者が何名か、その他は困惑の色あり……か。今年(・・)はどうなるか、非常に楽しみだ、諸君)

 

 


 

 

『256Kgw!』

「こんなものでは、まだまだ…」

「あ、あの…」

「うん?」

「あっ! ひ、ひ引き止めてごめん!」

 

 俺が握力測定を終えると、小声で話しかけてきた者がいた。こいつは確か…

 

「…お前さん、朝教室の入口で女子と話してた」

「ぼ、僕はみ、緑谷出久! よろしく。そ、それで聞きたいことがあるんだけど、いいかな? 御舟くん」

 

 随分と緊張しているみたいだが、まさか朝方のあれを気にしてか。ならこうしてやろう。

 

「構わんが、何だ。ちなみに俺の好きな物は刺身だ。ウニは当たり外れがあるが当たると美味い、外れると臭い」

「え!? えっとえっと、僕はかつ丼が大好物で──って違くてね御舟くん!?」

 

 なんてノリの良い男なんだ緑谷、こいつはおそらく協調性のある男だろう。

 朝方俺に絡んできたあの男よりは余程ヒーロー気質だぞ。

 

「で、なんだ、早く言え、次の種目が始まる」

「御舟くんが話逸らしたんだよね!? 理不尽っ!」

 

 良いじゃないか、ますます気に入った。

 

「その、失礼を承知で聞くけど、御舟くんの“個性”って筋力の増強型かな?」

「気にするな。しかし筋力か……そうとも言うかもしれんが、一括りにはできないな」

「そうとも言う?」

 

 首を傾げつつ聞いて来る緑谷。丁度、50m走の種目なので実践して見せよう。

 

「たとえば、普通の筋力増強型は足の周りの筋肉などを発達させて走るだろう。たぶん、おそらく」

「う、うん」

 

 俺は位置に着く。足に【剣気】を纏う感覚は、筋力の増強というよりとてつもなく弾性に富んだクッションのようなものか。

 

「俺の“個性”は、筋力というより、運動量の増幅や、瞬発力を得るためのいわば発射台のようなものだ」

 

 スタートの合図により、俺は大地を蹴る──

 

『2秒13!』

「ふ、風圧すっごい…これって──」

「この様に、瞬発力を得ることによって速く走れる。持続的に速く移動するには、常に己の中の生命エネルギーを放出し続ける必要があるから大変なんだがな」

 

 まぁ、中国武術に見られる『気』の運用に似たところがある。武侠系の小説や漫画、時代小説などを読んでいれば分かりやすいと思うが。

 

…改めて考えると、本当に夢は現実になったと常々思う。気を纏えば鋼鉄を超える強度を得られるとか、岩をも砕くパンチを繰り出せるとか……俺の場合は、鋼鉄をも斬る剣腕を得る、とかな。

 

「生命エネルギー…。それってつまりは、使うことによって体力を普通より多く消費していくってことだよな。でもそれができるってことは御舟くんはそれだけの器を持ってるってことで、そのためにはやっぱり躰を鍛えることが一番の近道だよな。あ~僕ももう少し早く自分を鍛えていれば……ブツブツ」

「これだけ聞いて来るということは、お前さんも増強型なのか?」

 

 何やら独り言が多いようだが、まぁ気にしない。独り言なら俺にもあった、特に御祖父への愚痴でな。

 

「うん…初めて使ったときは、全身の骨が折れる感覚を覚えたんだ。そんなことが無い様に僕なりに考えたんだけど、いまいちで…」

「全身の骨が折れる感覚…ということは、俺のように強化する部位を予め決めておいて、お前さんは“個性”を使おうとしていたのか」

「そ、その通りなんだ…!」

 

 骨が折れる感覚を覚える程の激痛か。ならここで何とかしなければ、こいつは普通と変わらん記録しか出せないで終わる。

 だが、どうやら勘違いしているようだな。

 

「俺の“個性”は【剣気】という高エネルギー体を纏う。お前さんの“個性”は?」

「僕のは【超パワー】だよ」

「筋力の増強型なら、俺のような使い方は向かんな」

「え…!」

 

 いま確信した…こいつは最初の俺に似ている。“個性”という仕組みを理解していない、できていない。

 一般的な“個性”の発現時期は四歳までと言われていて、それゆえに発現時は“個性”を扱い切れない状態だ。

 個人差はあるが、体が成長するに連れて“個性”に適応していくのが普通。

 

 緑谷はまるで、“個性”発現したての赤子だ……。

 

「お前さん、自分の“個性”を技か何かだと思っていないか?」

「技。…!」

「せっかくの【超パワー】、全身に使えるのだろ? ならば痛まない程度(・・・・・・)に行き渡らせれば良いだけだ。一点に集中するから偏りが出て激痛に苛まれる。何と言えば良いかな、そう──」

「分散しつつ、常に“個性”(スイッチ)を入れておく……! そうか!」

 

 俺が言う前に緑谷がソフトボール投げで実践に入り始めた。ブツブツと何かを呟きながら、かと思うと奴の体から紫電がうねり始めた。俺より派手な特徴だなおい。

 分散と言ったのはおそらく、こいつ自身が“個性”に馴染めていないので、少しずつ慣れて行こうという考えだろう。

 

「5%! フルカウルぅぅっ…!」

「お! 何だ何だ、あいつスゲーことになってんぞ!」 

「へー、同じ増強型でも御舟より派手」

「おい誰だ、今俺を地味と言った奴は、出て来い」

 

 謎のハスキーボイスが俺を間接的に馬鹿にした。気の強い奴が多いな雄英(ここ)は。

 

 そんなことより緑谷だ、思い付きで出来るようなものでもなさそうだが、大丈夫か?

 そんな俺の心配などは他所に、緑谷はボールを投げ放った。

 

SMASH(スマッシュ)!」

 

 俺と同じような風圧を生みながら、緑谷の手から離れたボールは遥か彼方へと飛んで行く。

 

「671m!」

「でき…た?」

「体は」

「痛く…ない! 御舟くん!」

 

 笑顔でそう言う緑谷。こいつは本当に…

 

「…誰かに何かを教えてもらう──まして、同級生に教えて貰ってそんなに笑えるとはな」

「ありがとう、君のおかげだよ」

「正直、面白半分でお前さんに教えたが…感服したよ」

 

 俺自身の復習のために説明したつもりだったが、こいつにも糧になったようで何よりだ。

 

「おいこら……デク、テメェ! どういうわけだ!」

 

 今までの種目と打って変わった緑谷のとんでもない記録に驚いたのか、金髪のあいつが何故か手を爆発させながら走ってきた。

 

 だが、それは爆発が止んだと同時に理解した。

 

「落ち着け、爆豪。まだ授業は終わっていない」

「ぐっ…んだこの布、かてぇ……!」

「か……かっちゃんの【爆破】が消えた? あ、ま、まさか!

 ()ただけで人の“個性”を抹消する“個性”! “抹消ヒーロー”《イレイザー・ヘッド》!」

 

 今気づいたのか。いや、まぁこの人はそうだろうな。

 

 俺がこの人とミッドナイト先生に救けられたあの事件。後日報道されたのはミッドナイト先生と、名を伏せられたプロヒーローと俺だけだった。

 俺の見解が正しければ、相澤先生はメディアを極端に避けているのだろうな。

 

「炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ『捕縛武器』だ。爆豪、次誰かに突っかかろうとしたらまずお前から除籍にするぞ」

「うぐっ…くそがっ!」

 

 それからは、何の問題も無く全員がテストをこなしていった。

 目立っていたのは、いままでの五種目で伸び悩んでいた緑谷の記録が、ソフトボール投げから著しく上昇したことか。

 

「んじゃ、パパっと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数値だ。口頭で説明するのは時間の無駄なので一括開示する」

 

 

1 八百万 百11 麗日 お茶子
2 御舟 高志朗12 口田 甲司
3 轟 焦凍13 砂藤 力道
4 爆豪 勝己14 緑谷 出久
5 飯田 天哉15 蛙吹 梅雨
6 常闇 踏陰16 青山 優雅
7 障子 目蔵17 瀬呂 範太 
8 尾白 猿夫18 上鳴 電気
9 切島 鋭児郎19 耳郎 響香
10 芦戸 三奈20 葉隠 透

21 峰田 実

 

「オイラ、最下位ー!?」

「ちなみに除籍はウソな」

『!?』

「君らの最大限を引き出す──合理的、虚偽」

 

 ハッ、というしてやったりな顔でそんなことを言いだす相澤先生に、当然クラスの大半は仰天と安堵両方の反応を同時にこなすという器用なことをしていた。

 ここにいる者よりはこの人のことは知っているつもりだが、俺は除籍の件、本気のような気がしていた。やると言ったらやるという無言の圧力がこの人に有ったのは確かだった。

 

 


 

 

「御舟くん、ごめん呼び出して」

「急にどうした緑谷」

「いや、そんなに大したことじゃないよ」

 

 “個性”把握テストの後、俺は緑谷に呼び止められた。二人で話したいということだったが、一体何のだろうか。

 

「朝から聞こうと思っていたことがあるんだ。でも、迷惑をかけたら悪いし、と思ってた」

「うん?」

 

 意を決したように、緑谷は口を開いた。

 

「御舟くんは(ヴィラン)と実際に戦ったことはある? もしくは、その──倒したことって、ある?」

「あるぞ」

「あわわ、ごめんこんなこと聞いて。変だよね忘れてってえぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

 何を驚くことがある、俺は素直に質問に答えただけだ。

 確かに、警察のおかげで迅速に消していただいた動画を、消される前に視られていたというのは驚きだが。念のため情報源を確認してみよう。

 

「どこで知った? 視た?」

「…ネットに挙げられた動画で、ちょっと」

「そうか。では消される前にそれを視聴したということか」

 

 あの時は人も大勢居たし、世の何人かは認知していると思っていた。

 事件自体は報道されたが、警察の図らいで俺の名前は伏せられていた。よってそれを知っている人間はあの場に居たか、ネットに挙げられた動画を視たかになるわけだ。

 俺は緑谷の肩を叩いて笑った。

 

「こんな身近にいるとはなぁ。しかしお前さん、挙がってから消されるまでの刻はそれ程無かったはずだが、暇だったのか?」

「ぼ、僕はその、お、オールマイトの動画を欠かさず視てる関係上、自然と御舟くんが出てる動画に辿り着いたというか、ははは…」

「日常的にネット動画をサーフィンしてたということか、納得した」

 

 まぁ、緑谷は無闇に言い触らすような男ではないだろう。朝と、先ほどまでのやり取りで信じよう。

 すると、突然緑谷が何かのノートを持って迫ってきた、凄い勢いだな。

 

「僕は、あの動画を視て変われたんだ。その、御舟くんはあの時、“個性”を使わずに戦ったって…本当?」

「一応な。警察には一時信じて貰えなかったが。ある人のおかげで俺の“個性”無使用主張はすんなり通ったんだよ」

「じゃあ、やっぱり。本当にあの戦いは“個性”を使わずに……~っ! 凄い!」

 

 緑谷は、興奮したり、興味のある話になったりするとこんなに喋るんだな。

 しかしオールマイトのファンか。ボール投げの時の掛け声で何となく察していたが、どうやら重度のオタクのようだ。




 本作のデクさんは、オールマイトと出会う前から体を鍛えています。
 そのため、早目に強化します。


 原作でももっと主人公して欲しいんだけどなぁデクさん。


評価お待ちしております!
あと、把握テストの結果表が上手くいかなかったのはごめんなさい。
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