流行らない居酒屋の話【本編完】オマケ中   作:ノイラーテム

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そして動き出す

 計画を仮決めすると推敲しながら細部調整を進めていく。

 以前に訪れた酒屋や醸造所にクラフトビールや洋酒を日にち指定で注文できるか、幾らくらいなのかを尋ねる。

 

「叔父さんも?」

「ああ。君と同じように鮎を分けてくれってね。こういうところは似るんだねぇ」

 妙な所でなくなった叔父さんの知り合いに合った。

 釣りキチの中にはアユ釣り舟を個人所有する者も多く、特に元は教職員や公務員だった面々はあまり異動が無い事もあって定年後に購入することがあるようだ。

「もっと早くに教えてくださればよかったのに」

「ワシもタケ坊と忌んだ猛が叔父甥とはこの間知ったからのう。読み方は同じでも漢字は違うし、苗字もそうなのじゃから気が付けというのも酷じゃろう」

 この日は御隠居の伝手でそう言った人を紹介してもらった。

 この間の猪もだが現金ならば幾ら食事代ならば幾らと話を詰めたのだ。お互いに無理をしない範囲であくまでついで、狩猟や仕出しなど何かを要求する時は割増条件で……としておいた。そして猪のソーセージなどジビエ系の保存食は供給が安定しないので積極的に商品とはせず、基本は町内会や農協の催しなどにそのまま流れる事にした。

 

 ジビエの処理や注文で保存食を作っても特に儲けなどないが、こうした集まりに顔を出して話を聞くのは面白かったし、その流れで知り合った人々へ結果的な宣伝ができる方が大きかったと言えるだろう。

 

「へえ。やっっぱり叔父さんは一人でやってたのか」

「みたいだよ。夏祭りとか収穫祭みたいな時だけ知り合いに頼んでたらしい」

 当時を知る人に話を聞けたのは大きかった。

 昭和の時代は今より人通りが多かったらしいが、それでも平成に入ってからは見込みよりも人が減ったのが大きいらしい。昔に導入した高価な調理器具の返済や店舗を補修したりと費用がかさむこともあり、気軽に楽しくやる為に一人だけで店を回していたらしいのだ。

「となると上手く行っても人を雇うのは難しいってことか?」

「どうだろうな? 倉庫兼仮眠室だけ存在してる二階部分を改装して、ちゃんとした住居にするか古民家カフェみたいにするか悩んでたらしいから、貯金はそれなりにあったと思うよ」

 実際の話、健は遺産分けで店を指定しただけで、他の者は扱い易い金銭や物を指定していたはずだ。今思えばその中には改装費用や、場合によっては新しい機材の代金。もしかしたら良い銘柄の酒やアンティークの器か何かもあった『かも』しれない。

 

 もちろんそこまで大層な品は存在しないだろうし、金も改装費用の頭金くらいだろう。健が受け取ったのは店だけだし、他人に渡った物を勘定しても意味がないので忘れる事にした。

 

「どのみち俺の腕とお前のアイデア次第だろうな。この辺の開発計画も聞けたけど玉虫色らしいし、地道に頑張るとするよ」

「それが一番だろ。頑張れば美琴ちゃんのバイト代くらいは出せるだろうぜ」

 ここで重要なのは一人でも十分に回せる店構えだったということだ。

 叔父さんの時代から住民が減っているのは確かだが、その当時はそれほど集客努力をしたわけでも傾向と対策を建てたわけでもない。減っていく人々に合わせて貯金しながら色々と考え、イザ今から何かしようという所で亡くなったようなのだ。店を他に移すという計画で無かった以上は、それなりに採算が見込めるという事だろう。

「まあな。どっちかといえば美琴に古民家カフェの話を知られる方が怖いよ」

「ははっ。叔父さんの遺志だとか言って乗り込んで来そうだしな」

 そういって健は茹で終えた麺を小さく小分けしていった。

 本来ならばフライパンで野菜を炒めながら味を付けるところだが、今回は色々なソースを試すために小分けしていく。普通流行らないが蕎麦のように浸して味見することにした。ソースの種類は豊富だし、お通し用・小鉢用・大皿と分量を見分けておかねばならないからだ。

 

 麺は普通のスパゲッティだが、当日は形状や味の差という意味で穴の開いたペンネと芋を使ったニョッキも用意する。ソースはトマトソースやクリームソ-スなどのソースベースを用意して、フライパンや片手鍋で追加の味を足してソースを完成させる方式だ。

 

「酒は?」

「定番だが今日はワインだな。当日までにウオッカやテキーラなんかも少しずつ用意する。自家製はサングリアと梅酒を注文だけした」

 パスタ祭りには洋酒を合わせるので色々用意するが、サングリアと梅酒のみ自家製を発注したのは理由がある。

 サングリアはフルーツを漬けたワインであり、梅酒はもう少し酒の種類がバリエーションに富み梅を色んな酒で漬け込んだ物。今回は手に入れ易い物を選んだので一酒ずつしか頼んでないが、余った洋酒で試すつもりなのだ。豊の指導よろしく在庫管理は徹底しているし、免許は持っているので店で出だけならできる。もし好評ならば梅酒祭りを拓くことも可能かもしれない。




 という訳でようやく亡くなった叔父さんの話が出てきました。
知っている人は客に居たけど、話に出して無かったから気が付かなかっただけ。
聞いてみたら叔父さんがやってたことも地道な努力というか、一人で楽しんでただけですね。
店舗に借金なかったのは改装費用を貯蓄してたからですね。

なおこの店は基本一階建てで、ちょこんと二階のようなナニカが載ってる形式。
普段は仮眠室にするか、使わない調理器具やらテーブルを放り込んだらいっぱいいっぱいに成ります。
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