流行らない居酒屋の話【本編完】オマケ中   作:ノイラーテム

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オマケ7

 とても厳しい現実が目の前にあった。

 業務用スーパーで売ってる『メガ盛りパック』の味付け焼肉一つで大人三人が満足してしまう事実である。

 

「あたしはもう無理。お腹いっぱい」

「いや、最近の業務用は凄いね。お前さんのアレンジもあるんだろうがさ」

「殆どそのままだぞ。後味とかは変化させたがな」

 早々と美琴がリタイヤし、残り二人はレタスに肉を挟んで片付け始めた。

 メガと呼称するだけに量があるというのもあるが、あまり食欲が回復していないことも大きい。それほど食欲がないのにこの有様である。分量からくる満足感と、秋口の腹具合という物は侮れまい。

 

「と、言う訳でこのレベルがライバルになるわけよ。対策とか何かしてる?」

「それなんだがな。……一応は考えはした」

 食後のデザートにフルーツのゼリー寄せ。

 美琴が作ったやつの残りだが、甘味漬けとはいえそろそろ処分しないと厳しいのでさっさと始末する。とはいえそろそろ飽きて来たので、お試しに買った梅シロップで酸味を施して一度凍らせたものだ。それを考えればゼリーというよりはシャーベットとでも言うべきか。

 

「揚げ物フェアはこないだ話した通りなんだがな。一度完成させた物が最初は微妙に思えたんだ。そしてこいつを追加する事にした」

「おっ。串揚げを小さくしたのか。こいつは考えたな」

 食事に満足した所で追加で揚げ物を始める。

 この状態で食事したいとは思えないが、海老の頭やチーズを揚げ始めれば気分が変わってくるから不思議だ。もう何本かくらいならば食べても良いかもしれないと思え始めて来た。

 

「今までと明らかに毛色の違う味だし、欲しいだけ選んで食べられる。甘い物があればくれよ」

「今日はこんな所だな」

 海老の頭は軽くて触感がサクリとし、チーズは逆にトロリとしてる。

 それを食べている間に追加して、サツマイモの欠片と果実の欠片を揚げた物を追加してビールで流し込んでいった。

「何が良いかって、お前さんなら味の保証があると判った上で、どんなのがあるか試しながら行けるのがいいぜ」

 一口大だから食べ易い。

 物足りないかもしれないが値段も手ごろだし、そもそもお酒のアテなので困らない。

「一応はポテト祭りの時を参考にしたよ。バリエーションはないがこちらの方が種類は多いしな」

「そのくらいで良いんじゃねえか? こいつも揚げ物のバリエーションだ、そこから派生する必要はねえさ」

 ポテト祭りの時はメインは素材の切り方の差であり、皮つき・細切り・太切り・丸のままくらいだった。

 それに塩コショウやケチャップ・マヨネーズなどの各種ディップを用意し、自分で好みの味を選べるようにしたのだ。一応は他のポテト系の料理も一時的に増やしたが、一番売れたのはやはりフライドポテトであった。今回も基本的には唐揚げが一番売れると思われている。

 

 ゆえに串揚げの盛り合わせは余技であり、唐揚げの延長線にあるものだ。用意した素材を一口大に切って、様々なお試しができるだけに過ぎないとも言えたのだから。

 

「もう気が付いてるとは思うが、世の中はモノ消費じゃなくてコト消費に成ってんだ。お前さんの料理なら保証できる、この店ならば愉快な思い出が作れる。その一環なら問題ないと思うぜ」

「そうだな。段々と判ってきた気もするよ」

 居酒屋で凄い料理を出す必要はない。

 美味しく食べられる料理があり、酒がある。その保証があって安心して店を訪れる事が出来て、この店ならば楽しんで酒が飲めると判っているから来るのである。ここは料理と酒というモノを消費する場所ではなく、楽しい時間を共有するというコトを消費する場所に成りつつあるのだ。

 

 冒険というのはその延長上であるべきなのだろう。新しい料理のお試しをするとしても奇妙な料理ではなく、今回みたいにいつもと変わった作り方や味わい方であれば安心できるのだから。

 

「今更だが、そうだと判ってればフェアは二カ月か三カ月に一回で良かった気もするな」

「まあそうだがよ。お前さんがどんな奴か判るにゃ必要だったんじゃねえか? まあ来年からは好評な内容は残して、一部上書きにしとけば良いさ」

 重要なのは健が活気のある店を作る為の材料だ。

 普段はいつも通りの店であり、新しい試みはフェアで行う。

 

 今のところ毎回毎回、何をするか苦労している。

 だが一年も経てばみんなフェアに慣れて来るだろう。そしてそのフェアも新定番で組み直し、惰性で料理してないことを示す程度に新しい試みを試せばよい。今までの苦労はそのための時間であるのだと思えてきた健たちであった。




 そろそろオマケではなく章の名前を付けるべきかと思えて来たこのごろです。
今回の内容は大した話ではありませんが、「モノ消費からコト消費へ」
という有名な言葉を主人公が自覚したという回に成ります。
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