流行らない居酒屋の話【本編完】オマケ中   作:ノイラーテム

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オマケ10

 弁当業界の過酷な現実を見て、気の重くならない訳がない。

 居酒屋経営が伸びなかったら、弁当を売るなりカフェでも同時やれば良いと思っていただけに深刻だ。そんな計画は無意味だったかもしれないのだから。

 

「このくらいか?」

「かも。……栄養価を考える方は全然だめよね」

 まずは判り易い栄養価を考えて、色々盛り込んだ方を作ってみた。

 美味しそうだが500円は取らないと元が取れそうにないし、一つ一つの料理がチマチマとして『これは!』というウリがまるでない。豊がサンプルに手に入れて来た弁当と比べて、美味しいがそれだけだ。ここから400円台に落とそうと思えば相当な劣化を招くだろう。

 

「こうしてみると、このボリューム弁当に行き着いた理由も判るな。インパクトはあるし自分が好きなメニューを選んでローテーションして行けばいい」

「正直な話、酢の物とか別に好きじゃないしね」

 一方でボリューム弁当の方は良い感じに見えた。

 健がハンバーグ弁当をまず真似し、近所の農家で手に入れた米を二種。普通のモノとクズ米配合版で原価と味を試してみる。ソースも豊かに言った通り、照り焼きと大根おろしの二種を用意し、画一的ながらも低予算で良い味に仕上げている。

 

 そして美琴が考案したのがクリケットを並べて、ご飯またはパンを選べるものだ。こちらは以前に作った細いクリケットをチョイスして、基本二種・カレーの三味構成にしてあった。

 

「兄貴。こっちのハンバーグって豚や牛以外にも使ってんの?」

「むしろ鶏がメインだな。安く仕入れられるからどうしてもそうなる。実のところ照り焼きの方も同じだから、単純に大根おろしだと気が付き易いだけだ」

 試食を始めると美琴が首を傾げた。

 いつもと違う味になるのは仕方がないとしても、混ぜるミンチの配合が明らかに違ったからだ。通常は牛と豚で油の味を変えるためにどちらかが多くなるのだが、コレは明らかに風味が違うのである。

「合わないか? 安さ狙いで代用品に偏り過ぎたかもしれんが」

「んー。そうでもないけど……むしろ隠すよりも、鶏メインってことを表に出さない? つなぎに豆腐を入れてヘルシー路線とかね」

 言い方や見出し方で印象は変わるものだ。

 後から鶏ベースのハンバーグだとバレるよりも、最初から公表してヘルシーさで売る方が安全である。

 

 お茶で口を洗った後に照り焼きソースへ小指だけ付けて、ペロリと舐めて味を確認してみる。そして色合いを見ながら額に皺を寄せると、改めて箸を使って試食を再開する。

 

「やっぱりこの照り焼きソースだと濃い過ぎるわ。ちょっとクドと思う。むしろこのハンバーグなら薄味でヘルシーさと値段のW推しが良いんじゃないかなあ」

「言いたいことは判るがボリューム感が落ちるぞ? 満足感が得られんと思うんだが」

 弁当のハンバーグといえばコッテリ感とクドさで瞬間的な満足感を得るものだ。

 レストランなら豚を控えめにしたハンバーグステーキというのもアリかもしれないが。健としては弁当ならば醤油強めの照り焼きか、いっそデミグラスソースを作る方がよさそうな気がする。

 

「そこは逆に小さくしてしまうのも手じゃない? 思うんだけど弁当一つで済ませるってのも古い気がするのよ。考える事が増え過ぎちゃうし……」

 そういって美琴は試食で小さくなった残りのハンバーグをナイフでカットする。

 そして付け合わせのポテトも除けてしまい、下敷きにしたキャベツのみをお供とした。それだけでなく、自分が作ったクリケットの方もナイフで半分くらいのサイズにしてしまう。

 

「私としてはこの位のサイズでちょい足しにするかな。これならご飯やパンは別売りでいいわ。豊さんが言ってた豚汁とかコーヒーも合わせて、セット価格にしちゃうの」

「用意するのは構わんが……なんだか菓子類が年々目減りして行く感じを思い出すな」

 気が付けば分量的には当初の三分の二、または半分程度に見える。

 まるで原材料費が高騰したり勢が上がるたびに、ポテトチップスやパンが少しずつ減っていく様子を思い出させて悲しくなった。

 

「後はこれが重要なんだが……。確か女子も普通に喰うし満足感を求めてるって話じゃなかったか? これじゃ足りんだろ」

「これでいいの。ううん、これがいいのよ。さっきも言ったでしょ、これは『ちょい足し』なの」

 対格差はあれど女性が食事を食べないという事はない。

 ダイエットであったり見栄であったりと、食べない様子を見せることはあるが、体力維持の為にそれなりに食べているとのことだ。男子が判り易く味の強い食事をガッツリするのに大して、女性は考えながら食べているというだけだと美琴は言っていたはずなのだ。

 

「ちょい足し?」

「そう! 自分のお弁当や、他の店だったりこっちで用意した普通のお弁当。そういうのに物足りない部分を出すのよ。それなら少量で自分好みの味を足せるほうがいい。それこそ、お結び一つとコレを合わせた食事を二回すれば良いだけだしね」

 美琴は手を洗って塩を用意すると、ご飯を小さく俵型のお結びで作り始めた。

「一回目は鶏と豆腐のハンバーグと一緒に。二回目はクロケットと一緒に。これなら違う味を頼めるし時間もかからない。形状にこだわればオシャレにだって見える。満足するまで食べたきゃ、ご飯だけ家から用意することもできるわ」

「二回食べるならいいのか。二回……不思議な感覚だな」

 どうして一回の分量を減らし、食事時間も減らす必要があるのか健には分からなかった。

 だが美琴としては他の用事を熟したりする為にも、パパっと食べて栄養と気力を補充。他人からは少食に思われつつ作業をこなし、暇を見つけてまた食べるという方が良いのではないかと言い出した。

 

「まあいいんじゃないか? 小さくするというアイデアは俺としては目新しいし、これなら確かに余計なサイドメニューも要らんしな」

「あ、そうそう。普通の弁当も用意するだけ用意しといてね。選べる、自分で選んだ自分だけの正解ってのが重要なんだからっ!」

 狐につままれたような気分だが、美琴の為の計画なので健も納得する事にした。

 




 という訳で弁当に対する回答回です。
ガッツリ食べられるボリューム弁当を用意した上で、小さく値段の安いモノも用意する。
そちらは物足りなさそうだけれど、小腹を落ち着かせたり、他の弁当に組み合わせるには十分。
「ちょい足し需要」を狙ったミニ弁当に成ります。
狙いが外れたら大変ですが、そこは普通のボリューム弁当も置けばよいので。

ボリューム弁当(300円)、ちょい足し弁当(200円)、豚汁・コーヒー(100円)。
こういうのが揃ってる移動販売のワゴンがある感じですかね。
ボリューム弁当以外は、「弁当と同時に買えば50円引き」と書いてある感じで。
ちょい足し弁当二つの場合は両方値引きで300円、ちょい足し弁当とコーヒーは250円ですね。

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