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鍋物フェアそのものは平穏無事に終わった。
鶏肉や魚介類などいつもの材料による水炊きがメインで、特別に用意する物もモツ鍋くらいなので材料の推移に予想が付くからだ。イザとなったらモツ鍋に使うホルモンだって揚げ物にできる。
「年末の仕出しフェアって、どういうサイクルになるの?」
「当日に食べて味見をして、必要なら詰めて帰ります。その後に数日居ないならば指定日と指定量で予約できますよ」
一月頭にフェアが無いため、十二月は頭と下旬で二回のフェアがある。
月末のフェアは時間がない事もあり持ち帰り可能な仕出しフェアなのがだが……。不思議なのはこんな風に、気にするお客が多かったことだ。
「じゃあその日に自分で食べて確認。良いと思ったのを持って帰って家族や友人で味見して、好評だったものを買いに来れるって事ね?」
「そういう事になりますね。流石にあまり多いと色々な意味で困りますが」
仕出しフェアではいつもの料理を、長期保存向きで調整して出す予定だ。
冬場に加えて食中毒が起き易い食材や調理法を避けるので、割りと長持ちできる。持って帰って冷蔵庫に入れておけば数日ならば余裕だ。何なら味の劣化し易い飯類なども避ける手が使えるだろう。美琴のちょい足し弁当ではないが、直ぐ味の落ちるライスは要望次第で入れなくても良いのだ。
弁当的な使い道もできるし、年末ならば職場で食べるなり宴会に使えもするから、味を知っているお客にはそれなりに人気が出るのも判る。客の少ない居酒屋なので手間も気にしなくて良いが、あえて健が警戒するとすれば、ドタキャンで十数人分が無駄に成ったら致命的な大赤字になるくらいだろうか。
「逆に料理を指定して、初日から持ち帰り前提で頼むことはできるかのう? 家内が喜びそうな煮物中心のつもりじゃが、孫が来ると判れば追加でハンバーグや唐揚げを頼む感じになるやもしれん」
「それも予約さえいただければ構いませんよ。ご隠居ならご自宅にお届けもできますしね」
どうしていつものフェアよりも人気があるのか察することができた。
この辺りにはスーパーや夜も開いてる食事処もないのである。離れた場所にコンビニがあり、もっと離れれば大型スーパーも存在はする。だがパっと酔ってパッと買って帰る店は少なく、コンビニでは味気ない……そういう人たちが購入を考えているのだろう。
おせち料理はキチンとしたところに頼むだろうが、忘年会代わりにちょっと特別な料理を頼むと思えば判る気もした。豪勢な料理だと値段も張るが、ここの料理ならば小鉢一つが400円だしセットなら1000円だ。比べるのはフライドチキンの山盛りや揚げ鶏なので、十分に勝負できるだろう。
(それを踏まえるとここから加える改良や用意するセットは何かな? できれば必要以上に豊には頼りたくないしな。聞くとしてもおおよそ固まってからだ)
何時までも頼めないし、頼むとしたら正規料金を払ってから頼みたいものだ。
まず保存に向くと言っても、家で食べるならばナッツや干物類は不要だろう。客に頼まれでもない限りはその辺りは避けて、この店ならではの物を中心に据える。ローストビーフやチョリソに山賊焼きなどパーティ系に向く物と、先ほどご隠居が頼むかもしれないと行った煮物やハンバーグに唐揚げなどは仕出し料理の定番である。
それだけならば特に考える必要はない。
おおよそのメニューは既に考えていたし重視する内容だって大きくは変わらない。
(重要なのは客が頼み易くすること、持ち返って家族と食べたいと思えるようなキッカケだ。仕出し料理だから食べたいわけじゃない。年末で特別な料理が食べたいと思う気持ちや、その興味を湧かせる対象だ)
そう言って健はパンフレットやポップを見直す。
複数客狙いのセットを考えた時もそうだが、豊はこういった物を用意して情報を増す必要があると口にしていた。そして判り易くシンプルにする部分と、数を増やして参照できる総量を増さねばならないとも。
料理の内容は既に決まっているのでその辺りを増やす必要はない。
増やすとしたらセットや予約に関する項目だろう。写真部分は年末向きの料理を載せておけば良いとして、『予約するなら何時まで』か『予約すればどんな特典があるのか』ということなど、客にとって安心できる項目が並んでいれば良いかもしれない。それを表のテーブルと中の小上りに置いて沖、誰でも手に取れるようにしておく。
あとは売れるからと言って無闇に仕出しフェアをやるのではなく偶に、今回の様に忙しかったり、季節の折り目などお客が欲しがる時機を見計らうべきか。
(だいぶ形になって来たな。相談するとしたらその辺が完成した後。……来年はもうちょっと何とかしたいものだ)
この一年を振り返り、ようやく見えてきた黒字経営目指して気合を入れ直す健であった。
という訳で年末の所まで書いてエンドとなります。
これまでお付き合いありがとうございました。
書くだけならばまだ書けそうですが、ネタも無く成って来たので惰性になりそうです。
もしまた書くとしたら別のネタが浮かんでからでしょうね。
その上で次は『美味しそうな描写』を頑張って居れてみようかと思います。
設定的に帳尻合わせたり、可能な限り短い周期で労力入れずに……と執筆方面の努力はしましたが。
料理物なのに美味しそうかどうかは二の次居なっていたような気がします。
次回なり、他の作品での料理描写なり、美味しそうにしたいものです。