【FE聖魔】気持ちのオモテとウラ【ヨシュア×ナターシャ】 作:いりぼう
原作:ファイアーエムブレム聖魔の光石
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彼の気持ちと彼女の気持ち。
二人の気持ちは、まるでコインの表と裏。
「あんたはいずれ、俺にほれる。」
そう言った時から――――――
そう聞いたときから――――――
表と裏が、一つになる。
※ニンテンドー発のSRPG【ファイアーエムブレム 聖魔の光石】の登場キャラクター
【ヨシュア】と【ナターシャ】のカップリング二次創作小説です。
≪設定≫
・原作【ファイアーエムブレム聖魔の光石】本編中
・ヨシュア×ナターシャの支援レベルB→A想定
・ナターシャ視点→ヨシュア視点→二人視点
※注意
・原作ネタバレ注意!
・多少の解釈違いがあるかもしれません
――――――あんたはいずれ、俺に惚れる。
彼は確かに、そう言った。
いつものように賭け事として告げられたゆえに、最初は冗談だと思ってた。
でもその時の彼は、いつもと眼差しが違った。
彼は、いつもどこか飄々としている。
初めて出逢った時も、全く掴みどころがなかった。
慌てて彷徨う私に急に声をかけたかと思えば、次に出逢った時には敵対している。
もう彼に斬られる直前だったのに、賭け事一つで味方になってくれて。
本当によくわからない人だった。
その後も、その掴みどころのなさは相変わらず。
誰と接するときも、手の内を見せず、距離を保ちながら。
でも、相手のことをよく見てて、ここぞでは得意の賭け事。
自分の土俵に持ち込んで、理想通りに展開する。
きっと私に対しても、そうなのだろう、と思っていた。
でも、私の側にいる彼は、
普段より、少しだけ――――――ほんの少しだけ、
優しい顔をしているような気がする。
話している声も、どこか嬉しそう。
それでも、やっぱり掴みどころはなくて、
どこまでが本心かわからなくて。
だからあの時も、きっと何かの冗談だろうと思った。
でも、いつもの瞳と違った。
真っすぐに私を見て、心を掴んで離さない――――――そんな瞳。
冗談なのでしょう、と、疑った。
冗談であってほしくない、と、願った。
色んな気持ちでいっぱいになってしまった私は、
ついその場から逃げ出してしまった。
いつも側にいてくれて。
気づいたら私も目で追っていて。
そんな気持ちを、賭け事になんてしてほしくない。
だって【いずれ】じゃなくて、もうとっくの前から――――――
私は貴方に惚れているのだから。
――――――ご冗談はやめてください、か…。
日頃の振る舞いってのは、こういうところに出るもんなのか。
本気で想っていることも冗談として伝わるってのは、因果なもんだ。
思えば、出逢った時から一際目を引く存在だった。
あんな美人、今まで出逢ったことがない程。
でも、その日の俺は本当にツキがよくない。
闘技場でスッたかと思えば、雇い先にもバレて減給処分。
極めつけは、仕事で始末する相手がその美人シスターときたもんだ。
本当にツイてない。
たまたま出逢った美人を、仕事だからってやむ無しに斬るとか、夢見が悪くなるに決まってる。
そんな中、彼女はとても綺麗な瞳をしてた。
一点の曇りもなく、真実を敵である俺に、真っすぐに伝えてくる――――――そんな瞳。
人生は退屈で仕方がない。
そう思ってた俺に、【人生】というチップを賭けてみたくなった瞬間が訪れた。
夢見が悪くなるならば、彼女を斬らなければいい。
体よく賭け事にしてしまって、自らが負けて味方になればいい。
ツキが良くないなら、イカサマをしてしまえばいい。
勝ち負けの操作なんて、何の造作もない。
都合のいい言葉が、俺の頭の中を駆け巡る。
でも、本能には嘘はつけねぇよな。
だから俺は、本気。
すべてを、このコインに委ねた。
それからというもの、俺は自然と彼女の側にいて、
彼女の危険には、いつも駆けつけていた。
ただ一心に、彼女の笑顔が見たい。
俺が味方すると言った時にはじめて見せた、あの笑顔。
軍の味方の、そして俺の、
心を癒やしてくれる、その笑顔。
もう一度、見たい。
もっと、見たい。
そう思うと、自然と近くにいる。
あんたはいずれ、俺に惚れる。
そんな虚勢、よく張ったもんだ。
本当に惚れてるのは、むしろ――――――
戦闘中に、余計な事を考えるもんじゃない。
敵に不意を突かれ、攻撃を受けてしまう。
ギリギリのところで勘づいて躱したおかげで深手は負わなかったが、
「つっ…。」
これは、処置が必要だな。
「大丈夫ですか、ヨシュア様。」
俺は彼女が関わる事となると、とことんツイてるらしい。
すぐ側にいてくれていたみたいだ。
カッコ悪いところも見られちまったが、彼女が手当をしてくれるなら、これ以上ない幸せだ。
「ナターシャ。近くにいたのか。」
彼は、いつも通りの口調でそう言った。
あんな事を言った後なのに、気持ちが揺れているのは私だけ…?
気づいてほしい。
私の気持ち。
賭け事になんてしてほしくない、本当の気持ち。
そう思うと、自然とこう呟いていた。
「…気になる方の近くにいるのは…当然です…。」
少し恥じらいながら、彼女が放つその言葉。
俺が彼女を守った時と、同じ――――――
自分の心臓が、少し跳ねたのが解った。
それを誤魔化すように、俺は自分に言い聞かせる。
ほら見ろ、言った通りだ。
彼女はもう、俺に惚れてるんだ。
心の中でまた虚勢を張って、いつも通りに振る舞ってみせる。
「あぁ、かすり傷だ。でも、あんたに手当をしてもらいたい。頼む。」
またいつも通りに返す彼に、少しだけ寂しさを感じると同時に、
自分に任せてくれた、という嬉しさが込み上げてくる。
「はい…。」
私は簡単に言葉を返し、彼の傷の手当てを始めた。
丁寧で優しい手当。
仄かに香る甘い匂い。
幾多の戦闘での傷が目立つ腕。
紅く燃えたように煌めく長い髪
そして、愛おしいその横顔。
この瞬間が、いつまでも続いていてほしい。
これから先も、ずっと。
そう思った俺は、告げる。
また、冗談だと思われるかもしれない。
それでも懲りずに、俺は同じ方法で君に想いを伝えていく。
出逢ったあの日と同じように、
真っ直ぐに君を見つめて、
自分のすべてをチップとして賭けて、
今度は君と共に歩む人生を手に入れたい。
なぁ、ナターシャ――――――
賭けをしないか?